FFX スピラを旅する異世界人   作:カムパネルラ321

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長らくお待たせしました。
PCの不調とモチベの低下が原因です...
また時間を見つけながらこっそり投稿していきますので、よければお付き合いください。


それとしばらく広島弁は封印してみます。
個人的にもどうかなぁと悩んでいるところですので、もしかしたら全章で修正が入るかもしれません。

あと後半グロ注意です。


ビサイド村③

「こっちだこっち!」

 

「お、おい。そんな急ぐなよ。オレはトレーニング上がりだっつぅの」

 

「戻ってきたと思ったら慌ただしいわね」

 

チャップはワッカとルールーに戻ってきたことを伝えると、旅の土産話もそこそこに二人を討伐隊宿舎に連れて行った。その相変わらずの様子にやれやれと息をつく二人。特にルールーは数週間ぶりに帰ってきた恋人の様子に少し釈然としない思いだった。

 

こちとらたまにはさみしく思っていたというのにこの男と言ったら。

後でしっかり二人の時間を取ろうと心に決めるルールーだが、ひとまず急かすチャップを追いかけて宿舎の入り口をくぐる。

 

「………あなた」

 

そこにいたのは、つい先日迷子になったユウナを助けてくれた得体のしれない男。

名前を何と言ったか……

 

「二人に紹介するな。調査先の遺跡で出会った探索者のはやてだ。行方不明者の情報提供をしてくれたんだ」

 

ああ、そうだ。

はやて、といったか。

 

はやてはワッカとルールーを見て、少し驚いたような笑みを浮かべながら軽く頭を下げる。

 

「仲間とはぐれてみたいでな、合流するまでこの村に滞在することになった。もし困っていたら力を貸してあげてほしい。はやて、こっちはワッカとルールーだ」

 

「どうも、柊木はやてと言います。はやてと呼んでください」

 

少しの間を世話になりますとワッカと握手をする彼は、傍から見れば好青年のように見える。しゃべり方といい、佇まいといい、どことなく気品が感じられる。しかし、ルールーにとって、彼は「無」から「有」を生み出す存在であり、理解の外にある男。決して悪い人間でないのはユウナの件で理解しているが、苦手意識を覚えてしまう。

 

「はやてか! オレはワッカだ。こいつの兄貴で、まあビサイド・オーラカのキャプテンをやってる。な~んもねぇ村だが、まあゆっくりしてけな」

 

「ありがとうございます、ワッカさん。それから……ルールーさんでしたね。先日はどうも」

 

「え、ええ。あの時はありがとう。ユウナも私も、助かったわ」

 

「いえ、僕も助けられた身ですので。それにしてもまたお会いするとは、不思議な縁ですね」

 

「そうね。エボンのたまものかしら」

 

当たり障りない会話を続けているとチャップがルールーの言葉に反応した。

 

「ん? はやて、もしかして俺と会う前からルーの事を知ってたのか?」

 

「ルールーさんとはあの遺跡に行く前の港町で偶然会ったんだよ。迷子になってたユウナちゃんとも知り合いだよ」

 

「ぅえ?! そ、そうだったのか。言ってくれりゃあ……って無理な話か」

 

「あはは、まあこうしてまた知り合えたんだし、改めてよろしくお願いしますね、ルールーさん」

 

「敬語も敬称もいらないわ。彼がお世話になったみたいだし、楽に名前を呼んでくれたらいいから」

 

「そう? わかったよ。ユウナちゃんは元気かな」

 

「ええ、今は従召喚士としてお勤め中だから明日まで寺院から出てこないけど、そのうち会って話してあげて。あの子も喜ぶわ」

 

「じゃあ顔を見たら挨拶させてもらおっかな」

 

「つーか、おいおい、ルー。お前がいたのにユウナを迷子にしちまったのか?」

 

「色々あったのよ。また後で話すわ」

 

ワッカは当然の疑問をルールーに投げかけるがさらりと流されてしまう。

どうやら訳があるみたいだ。

 

「お、おう。いやでもキマリもいたんだろ? ルーが目を離してても、アイツはいつもそばにいるじゃねえか」

 

ルールーは頭に手を当て、首を振りながらため息をついて見せる。その動作と同時にワッカとチャップは身構える。

 

「だから。あとで話すって言ったでしょう」

 

「う、うす」

 

「うっす」

 

「何でチャップまで反応してるんですかね」

 

呆れた様子でチャップを見やるはやて。

 

「あっ、いや、まあ……。ははは」

 

……なるほど、尻に敷かれるタイプなのか。

はやての考えていることを感じ取ったチャップはごまかすように笑った。

 

「そ、そーだ! チャップ! お前、この村を案内してやれ! これからしばらくいるんだろ? 寺院にも一回顔出しとけ! な?」

 

「お、おう! そうだな兄ちゃん! さすがキャプテン言うことが違う! じゃあはやて早速……」

 

「あっ、ちょ、ちょっと、まちなさ……」

 

ワッカの言葉にこれ幸いと、はやてを連れて宿舎から飛び出そうとするチャップだったが、はやてが待ったをかける。

 

「あ、ごめんなんだけど、できれば少し体を休ませてほしいかな。戦闘疲れもあるみたいで少し体がだるいんだ」

 

そう言って宿舎奥のベッドを指さし、ふと宿舎の奥に目を向けて、すぐにまたチャップに視線を戻した。

 

「色々と整理したいこともあるしさ、いいかな?」

 

「あ、ああ。そういうことなら、俺は全然構わないぞ」

 

わくわくした面持ちでビサイド村を眺めていたはやてのこと、すぐにでも村を案内して欲しがると思ったチャップだったが、存外気疲れしていたのかと思い直す。

 

「……はやて、疲れてるなら近くの砂浜に行くか? 俺のハンモックがあるし、あぁ、どうせ寝るなら俺らの家でも…」

 

「チャップ、はやては疲れてるのよ。休ませるために連れまわしたら本末転倒じゃない。行くわよ、また後で夕方にでもご飯に誘いなさい」

 

ルールーはチャップの腕を取って、やや急かすように宿舎から出ようとする。

 

「え? お、おぉ。はやて、それでいいか?」

 

「うん。お気遣いありがとう」

 

「……こちらこそ、かしら」

 

若干引きずられるように宿舎を後にするチャップを笑顔で見送るはやて。

2人がテントから出る時に、ルールーが小さく礼を述べた。

 

「……ちょっと露骨だったかな」

 

「か~! 余計なこと言っちまった。わりぃなはやて、2人の為にきいつかわせて。全く、どんだけあいつはお前が好きなんだっての」

 

「何も嘘をついたわけではないさ。実際、少し船酔いもあって……うぅ。まさか上陸してからぶり返してくるとは……ヨソウガイデス」

 

「ま、のんびりしてってくれ。昼寝でもしてろ、疲れてるんだろ?」

 

「うん、そうさせてもらおうかな」

 

はやては宿舎の奥に並べられたベッドの一つに腰掛け、装備を解く。

 

「夜飯時になったらチャップをよこす。オレも寝たいんだが、チームのやつらと会議があるんでな」

 

「ありがとう」

 

じゃあな、と一言ワッカは宿舎を後にする。

はやてはしばらくの間装備を緩めたり、持ち物の確認をしたりしていたが、一息ついたところで宿舎奥のセーブスフィアに近寄った。

 

屈んで手をかがすと、体の疲れが吹き飛び爽快感が体を突き抜ける。さらに自分の「何か」が残されたように感じる。いつも通りだ。

 

セーブスフィアは今のところ半透明で、存在感を消して人の目から隠れているようだった。サルベージ船のセーブスフィアでもそうだったが、やはりはやて以外には認識されない。原作のゲームでは、このセーブスフィアから飛行船にテレポートすることもあったため、てっきり認知されている物体だと考えていたはやてだったが、今のところセーブスフィアを使用する者ははやてだけである。

 

セーブスフィアで何ができるのか、サルベージ船にいる時に色々と試行錯誤してみたものの、体の疲れを飛ばしてくれる以外の効果は確認できていない。実験的に、けがを残した状態でスフィアに触れた所あっという間に完治したため、その回復能力はかなりのものだという点は分かっているが、逆にそれ以外の効果については何もわかっていない。何故半透明になったり色濃く顕現したりするのかについても謎のままだ。

 

この村にいる間にもう少し何か解明できればいいのだが……

 

少なくとも今できることはないため、後日、時間を取って検証することを決めたはやて。

 

ふと、サルベージ船の事を思い出す。

 

「皆、僕の事探してるかな……いや、探してるだろうなあ」

 

とても仲間想いのアニキたちが行方不明になったはやてを探そうとすることは、はやてにとって想像に難くない。ただ、通信が途切れるまでの経緯を振り返ると、かなりぶっとんだ通信だったというか、はやて自身の叫び声や破壊音が通信機を通して皆が聞いていたと考えると、はやてであれば「生存は絶望的」だと判断を下すだろう。ホラー映画であれば間違いなく死んでいる流れだ。

 

合理的な考え方を良しとするアルベド族、しかし仲間意識がとても強いため、可能な範囲で捜索を続けるに違いない。そうなるとアニキたちの貴重な物資を多く消費させてしまい、はやてが市場で購入した追加物資も意味がなくなる。

 

はやてはアニキたちを安心させる意味でも、資源の無駄遣いをさせない意味でも、可及的速やかに連絡を取る必要があると再認識する。

 

合流できなくとも、せめて、自分が無事であることだけでも伝えられたらいいのだが。

 

そう思いながら一先ずはやてはベッドに腰掛け、何をすべきかについての優先順位を付けることにした。

 

1.死なないこと

これは説明するまでもない。己の命と安全が最優先である。

 

2.生活基盤の確立

アルベド族との合流がいつになるか分からない以上、ビサイド村での生活も長期化すると見たほうが現実的だろう。チャップからは討伐隊名義で情報提供料をいくらかもらっている。少なくはないが、長くに滞在することを前提にすると十分とは言えない。ルッツに討伐隊へ誘われたはやてだが、立場的には協力者であって、正式に加入したわけではない。強制力がない代わりに安定した実入りは望めない。ただ、ルッツからフリーの冒険者として村民からの依頼に応えていく形がいいとアドバイスを受けたため、目下、はやてはそれに従おうと決めた。冒険者という単語に惹かれたことは秘密である。

 

3.ビサイド村の村民と親睦を深めること

これはチャップやワッカ、ルールー、ユウナたちと親交を深めることも含まれる。原作の開始に影響を与える可能性もあるが、怪しい言動を取っていると判断されると最悪の場合村から追い出されることも考えられる。そうなるとアルベド族とコンタクトを取ることが難しくなるかもしれない。建設的な人間関係の構築はマストだ。また、先に挙げた原作の主要登場人物と友好的にすることで、物語が始まった時に多少なりともはやてにとって良い影響があるだろう。できるだけ、村民達の手助けになれるよう行動しようと決めたところで、はやては自身の考えがひどく打算的だということに気が付く。

 

まったくもって自分らしい。偽善とはまさにこの事である。

情けは人の為ならずというが、果たして、このことわざは言い訳に使ってもいいのだろうか。

 

4.アルベド族とコンタクトを取ること

手段は直接的あるいは間接的なもののいずれか。はやて自ら安否を知らせることが最も望ましいが、ルッツの案内の下「作戦」とやらに参加しているアルベド族とコンタクトを取ること……、つまり後者が現状最も確実な流れである。時間こそかかれど、まずはルッツからの指示を待つことに決める。優先順位を決めると、意外と後ろの方に回るのかと驚いたはやてだが、1.から3.は前提であるため、実質この4.が目先の目標になる。

 

5.新たな攻撃・防御手段の研究

モルボルたちには、まさに地獄を見るような目にあわされたはやてだったが、おかげで自身の能力について認識を改めることができた。はやては、自身の能力は「FFシリーズの魔法を無尽蔵につかえること」だと捉えていたが、それはあくまでもはやての能力の一側面に過ぎなかった。今では魔法以外のシステムも使用可能であり、物理的な攻撃や事象への介入も行えることが分かっている。今一度「できること」と「できないこと」の見直しが必要だ。今後の戦闘において、これまでとは全く異なる行動を取ることになるだろう。

戦闘に限った話ではないかもしれないが。

 

一本ずつ指を立てながら優先順位をつけ終わったはやては忘れないよう内容を反芻する。日本語で書けばいいが、それでも決してメモには落とせない内容であるため、きちんと記憶する必要があるのだ。

 

「スマホがあればなあ……世界観的にもぎりぎりセーフだろうし。充電さえできればネットに繋がってなくても……無理か」

 

ベッドに背中から倒れると、低い天井が目に入る。

大きく深呼吸するように息を吐く。

 

すると、嗅いだことが無くとも心休まる花の香りが鼻をくすぐり、耳をすませば鳥の鳴き声や村民たちの話声、子どもの駆け回る音などが聞こえた。

 

自然と体から力が抜ける。そうして、ああ、緊張していたのかと今更になって気が付いた。セーブスフィアに触れたおかげで疲労感は感じられない。しかし、どうにも動き回る気になれないはやてだった。

 

「……本当に寝てしまおうか」

 

そう言うとはやては靴を脱いで、枕に頭をのせるよう体勢を整え、目を閉じる。手のひらを組んで、みぞおち辺りに乗せると、あっという間にまどろみ始めた。

疲れていなくても、人は眠れるのか。それとも精神的な疲れは回復されないのか。

 

ぼんやりそんなことを考えていたはやてだが、1分も経たないうちに眠りに落ちてしまった。

 

 

 

はやてがビサイド村で眠りこけている一方、サルベージ船のアルベド族たちは遺跡深部の調査を行っていた。はやてからの通信が途絶えた後、補給を行うために急ピッチで港へ戻り、一転遺跡に飛んで帰ったアニキ一行だったが、かなり無理をしているにも関わらず誰ひとりとして弱音を吐かなかった。はやてはかけがえのないない仲間であり、同志である。自分たちの為に一人残って遺跡の調査を行っていたというのに、どうして彼を見捨てられようか。

 

多少の危険など省みず、誰しもがはやて捜索の為に全力を尽くすつもりだった。

 

そして、仲間の中でも人一倍、はやて捜索の為に行動を起こしている少女がいた。

 

〈 リュック、これまでに出現した魔物の行動パターンと各ポイントに配置した機械についてだが…… 〉

 

〈 リュック、遺跡最深部のマッピングが終わったみたい。ほとんど一本道みたいだから予測経路の計算もすぐ終わるわ 〉

 

リュックは仲間からの報告に逐一目を通し、魔物との戦闘に参加し、調査結果の分析も必ず行う。

ハヤテに関する手がかりがあれば飛んで行き、たとえ見当ちがいなものだったとしても決して手を止めることなく調査を続けた。

 

〈 ねえ、リュック。あなた、働きすぎよ。少しは休んで…… 〉

 

〈 だいじょーぶ。それより、さっき見つけた遺跡の破壊跡と魔物がほとんど見当たらないことだけど……〉

 

仲間は休むようしきりに声をかけているが、リュックは意に介さず、ひたすら調査に打ち込む。疲れが抜けきっていないにも関わらず体を酷使し続けるため、目の下には真っ黒な隈が残り、どこかやつれたようにも見える。動けなくなると調査できないため、栄養補給は欠かさないようにしているものの、食事中ですら調査結果と機械と向き合う様子は、まさに鬼気迫るものだった。

 

気絶するように眠るか、捜索活動を行うか。二つに一つの行動だった。

 

〈 リュック………。そうね、私も頑張らなくちゃ 〉

 

そんなリュックをあえて止めないのは、アニキからリュックの好きにさせるよう厳命されているからだった。リュックは、自分の目で見て、自分の頭で考えなければ気が済まない性質である。頑固と言ってしまえば早い。

 

結局、リュック自身が納得しなければ引き留めても意味がない。

 

いよいよ物理的に動けなくなったら一時帰還させようと仲間の一人が心に決めていると、仲間の一人が焦ったようにしてリュックたちの前に飛び出した。

 

〈 リュ、リュック! コイツをみろ、おそらくハヤテの服の一部だ!! 〉

 

〈 ―――――っ!! 見せてっ!!!!〉

 

半ば奪い取るようにして見たそれは、間違いなくはやてが着ていた服の一部だ。大きく裂けたのだろう、布面積が大きい。重装を嫌ったはやての服だ。よく覚えている。しかしそれはリュックの知る色をしていなかった。

 

〈 リュック!! それ、ハヤテの服なの?! すぐに機械で解析をかけ———っ?!〉

 

その布は、人の血で染まっていた。血がにじんだ程度ではない。まるで、血液で布が染められたような。生半可な出血量ではない。それこそ、命に関わるほど。

 

〈 そ、そんな……… 〉

 

〈 この先に大規模な戦闘跡がある。そいつは岩の隙間の血だまりに沈んでたんだ〉

 

鉄の匂いと腐敗臭が鼻腔を突き刺す。

仲間がはやての服の一部に絶望している一方で、リュックは努めて冷静に言う。

 

〈 ……ハヤテは、白魔法を、なんかいも使えるんだよ。100回でも、200回でも。魔物の体液かもしれない。ねえ、これがあったところまで案内して。調査を続けるから〉

 

〈 あ、ああ。すぐに案内する。こっちだ、ついてきてくれ〉

 

リュックは赤く染まった布の切れ端を仲間に託し、案内の下、先ほどの手がかりが見つかった場所まで急いで向かう。道中の魔物たちはほとんどはやてが仕留めたのだろう、驚くほど静かで、魔物の気配もなければ生物の気配もしない。ところどころで舞うように浮遊する幻光虫を手で払いながらたどり着いた先で、リュックは息を飲んだ。

 

〈 この辺りだ。あちこちで魔力残滓も検知されている。データ化できないものもあるが、少なくともハヤテがここで例のモルボルと思しき魔物たちと戦っていたのは間違いない〉

 

光源が設置されていないためかなり薄暗いが、それでも眼前に広がって見えたのは目を見張るような、凄惨な戦いの後だった。岩壁や地面はえぐれており、硬いものが何度も叩き付けられた跡もあった。リュックが呆然と周囲を見回していると、ある物に目がとまった。駆け寄り、拾い上げてみると、それは叩き潰され、使い物にならなくなった機械で———

 

 

赤黒い何かに染まり、人のものと思しき体の組織の一部がこびりついていた。

どうしようもなく、死を知覚させるものだった。

 

〈————ひぅ〉

 

喉が勝手に震えた。みぞおちが急激に冷えていくような感覚を覚える。

目を背け続けていた一つの事実を、強烈なまでに見せつけられたような気がした。

 

リュックの足から力が抜け、その場にへたり込んでしまう。機械を抱えてうずくまるリュックに駆け寄る仲間が言葉をかけるがまるで耳に入らない。言葉を失って呼びかけに答えないリュックを心配し、意識をはっきりさせようと小型の投光器を出し、周囲が照らされた瞬間。

 

おびただしいほどの血痕が地面から天井まで、ホースで撒き散らしたかのように付着していた。ほとんどは黒く変色していたが、渇き切っていないものは光を反射して光沢を放ち、えぐれてくぼんだ所には血だまりができていた。魔物との戦闘に慣れない者でも致死量だと断言できるほどの、人の血だった。

 

ただ攻撃を食らったのではこうもいかないだろう。振り回され、たたきつけられ、穴を開けられ……ありとあらゆる方法でいたぶられたのだと分かる。

 

魔物との戦闘に慣れたリュックには、それが分かってしまった。

 

 

 

 

 

いやだ。

 

 

 

 

 

いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、アルベド族は遺跡の最深部へとたどり着く。しかし、はやての姿はなく、また探していた通信機も発見することはできなかった。やむなくアニキは撤収の号令をかけ、全ての機械が回収され次第、アルベド族たちは遺跡を後にした。

 

 

数日後、はやての捜索ミッションは打ち切られることとなる。

 




い    や  だ
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