FFX スピラを旅する異世界人   作:カムパネルラ321

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サルベージ船②(修正済)

サルベージ船の船員になって、ひと月が過ぎた。

 

はやてはサルベージ船に乗り込む仲間たちの仕事を手伝っている。はやての役割は主に3つ。船内およびデッキの清掃、食卓番、そして海に沈んだ遺跡や古代機械の探索補助である。探索補助はリュックの助言によるものだ。

あの時、小さくないストレスを抱えていたリュックはひとしきりはやての部屋で泣いた後、泣き疲れてしまったのかそのまま寝いってしまった。はやてとしてもリュックを起こすのははばかれたため、抱え上げてベッドの上に寝かせてあげた。疲れが取れるようにとこっそりケアルをかけ、それからアニキのもとへ事情を説明しにアニキの部屋を訪れたはやては、つたないながらもアルベド語でリュックは自分の部屋で寝ていることを伝える。

 

アニキははやてがアルベド語を話し始めたことにたいそう驚いたが、リュックが精神的に疲れているのだと知ると色々と思い当たる節があったのか、部屋まで案内してほしいと言った。目元を赤くはらしているが、しばらくみなかったほど、幸せそうに眠るリュックを見つけると、アニキは兄として妹の苦しみに気づいてやれなかったことを悔やんだ。しかし、はやてに兄ならこれからかっこいいところを見せてやればいいのだと発破をかけられると、纏っていた暗い雰囲気を一掃せんとばかりに気合を入れ、同時にはやてに感謝した。

 

翌朝リュックは目を覚ましたらしいが、弱り切って子供のように泣き喚いた自分を思い出して恥ずかしかったのか、その日ははやての部屋に引きこもってしまった。はやては他の船員同様ハンモックをかけて共用寝室で眠ることになったが、さらに翌日、遺跡探索をするからいい加減出て来いとアニキに言われたリュックは、顔を真っ赤にしながらも部屋から出てきて、はやてにぽしょぽしょと感謝と謝罪を述べた後、部屋を明け渡したのだった。

 

大したことではないと、リュックの頭を撫でたはやてはデッキ清掃のための掃除道具を取りに行くためその場を離れようとすると、リュックがその腕をつかんで引き留めた。リュックによると、はやては幻光虫を知らないほどスピラの常識を忘れているから思い出すためにも探索についてきた方がいいという。

 

確かに、はやては未だ魔法を使ったまともな戦闘も経験していなかったし、道中色々な話が聞けるなら渡りに船だと思ったのだが、しかしいきなりはやてのような素人が探索チームに混ざったら、場を乱してしまいかねないのではと問うた。

それについて、リュックは「ついてきてくれないの…?」と言わんばかりに、はやての服を控えめに引っ張りながら、不安そうな目をはやてに向ける。これにはうっ、と罪悪感を抱いてしまったはやて。アニキに判断を仰ごうと目を向けた。

 

 

とても面白そうなものをみたと言わんばかりの顔をするアニキがそこにいた。

大変にやにやしている。愉悦、と顔に書いてあった。

 

 

アニキがぽそっとアルベド語で何かを言う。するとリュックは更に顔を真っ赤にして、はやてをおいて兄妹で取っ組み合いを始めてしまった。更に騒ぎを聞きつけてやってきた仲間が兄妹喧嘩をみて、やんややんやと囃し立てた。リュックは何事か叫びながらアニキにとびかかり、アニキはリュックを煽るように言葉をつなぐ。

 

アニキの煽りスキルが高いのか、火に油を注いだような勢いでリュックは暴れる。周りの仲間ははやし立てるばかりで、まるで止めようとしない。

せまい部屋で何をやってるんだか、と呆れるはやてだったが、仲間も、アニキも、リュックも、晴れ晴れとした顔をしていたものだから、何も言えなくなってしまった。

 

結局、「リュックの指揮する班で遊撃員として探索の補助を行え」との指示がアニキからなされた。

遺跡の探索にはこれまでに3度向かっている。初回はなれない動きで皆の足を引っ張ってしまった。やはり、魔物に直面していざ戦闘が始まるとどのように動くべきか戸惑ってしまった。

 

皆には攻撃魔法と回復魔法が使えると説明していたが、攻撃する場合はどのタイミングで何を対象に何の魔法を放てばよいのか迷い、どういったサポートが求められているのか把握できていなかった。

最終的に、初回はファイアを数発とプロテスの班全体への付与、また怪我をした班員をケアルで癒すことしかできなかった。

 

それでも十分ありがたいよ~と言ってくれるリュックだが、命がかかっている以上できるだけ力を尽くしたいとはやては考えていた。また、自分が使用できる魔法とその効果の実験もしたかった。そのため、二回目の探索までに使用する魔法の種類を細分化し、紙に纏めて一覧にした。FFシリーズの各魔法を覚えている限り数字ごとに仕分けし、効果も思い出して記載。二回目の遺跡探索では整理した使用可能とみられる魔法と効果を戦闘の中で積極的に確認し、適切な魔法を適宜使用することで探索に貢献した。

 

昨日の海底遺跡では、これまでの反省を踏まえつつ、班の足並みに合わせて、ひたすら全体の補助に回ったおかげか、リュックは今までの探索の中で一番楽だったとのお墨付きを与えた。仲間の皆も手放しにはやてを褒めて、なかには戦いのセンスがあると激励した者もいた。はやても、今では実戦でも使える魔導士として重宝されていると自覚している。

 

 

リュック班長を筆頭とする班にとって、はやては異彩の魔導士だった。多くの場合、魔導士は攻撃型の黒魔導士か回復型の白魔導士のいずれかに分類されるが、はやてはその両方の仕事を担うことができる。攻撃においては火・氷・雷・水といった4大魔法はもちろんのこと、かまいたちのような風を生み出したり、魔物を小さくしたり、カエルにしたり、石柱を発生させてぶつけたり、魔物の時を止め行動不能にしたりした。

 

回復するときは、大抵ケアル系かエスナの二種類だけを使っているようだった。そもそもリュックの班で大けがをするものが少ないためだ。その代わり、補助系はありとあらゆるものを試しているようで、見たことも聞いたこともないものがほとんどだった。体力が二倍になったような感覚を覚えたり、一定時間魔物の物理攻撃を無効にしつつ、魔法攻撃も吸収するという魔法をかけてもらったりした。班全体の姿を消し、さらに体をわずかに浮かせて班の足音を完全になくした時は、驚くほど簡単に敵の不意をつけるようになり、魔法の恐ろしさを再確認することとなった。

 

はやてによるとまだまだできることはあるらしいが、()()()()()使()()()()()を選択している段階とのことだった。普段の戦闘では銃や大型機械、道具を使うことが多いアルベド族にとって、はやてとの探索は魔法の恐ろしさを再確認する機会となった。また、そんな魔法を際限なく、こともなげにポンポンと打ちまくるはやてに一抹の恐怖を抱くこともあった。

 

 

ただ、この恐怖はすぐに霧散することとなる。

 

 

ある時、水中に大量のピラニアがいて地上から潜ることができないという状況に直面したはやては、水中のピラニアどもを一掃しようとサンダラを放った。バリバリバリと音を上げて現出した雷は、はやての目論見通り水中のピラニアをまとめて感電死させたのだが、はやてはすぐそばにいたリュックに厳重注意を受けてしまった。

 

アニキとリュックを昔からよく知る仲間たちには周知の事実だが、リュックにとってサンダー系魔法はものすごいトラウマなのである。できる限り使わないか、使う前にはせめて一言伝えてほしいと抗議されたはやて、リュック班長に内股気味に震えながら涙目でにらまれては、イェス、マムと従うほかなく、また班員達は、幼い少女にぺこぺこと頭を下げるはやてを見て、同情の念を抱くとともに、いつしか恐怖心を抱かなくなったのだった。

 

将来は尻に敷かれるタイプになるかもしれないと思われる有様だった。

 

 

 

 

 

 

「ハヤテーん、新しい遺跡が見つかったってさ~」

 

サルベージ船のデッキをブラシで擦っていたはやての下に、資料をもったリュックがやってきた。はやてはちょろちょろと継続的に放っていたウォーターの魔法を止め、ファイアーで軽く炙ることでデッキ上の水気を蒸発させた後、リュックに向き合った。

 

「お、新しい遺跡かあ。よかった、整理した魔法のチェックができる」

 

「ちがうぞ~、お宝を探すんだよ~!」

 

「あ、そうだったそうだった。つい、ね」

 

クスクスと笑うリュック。

 

「ハヤテって変な魔法使うよね。どこで覚えたんだろね?」

 

「さあ…案外魔物から教えてもらってたりしてね」

 

「あはは! ハヤテならありそ~!」

 

「いやいや、冗談で……そういえば青魔法とかもあったな」

 

「青? 黒とか白とかじゃなくて?」

 

リュックは聞いたことがない魔法に首をかしげる。はやては時々「そういえば」と言って新たな魔法を思い出すことがある。大抵変わった魔法なので、どんな魔法が見られるのかわくわくした。

 

「ま、そのうち見せる機会があるさ」

そういってはやては資料に目を通す。どうやら、とある無人島の遺跡に古代機械があるかもしれないとのことだった。すでに調査用機械を飛ばしているようで、大体の地形はマップとして確認できた。

 

「結構広い無人島だね。リュックの班以外に、どれくらい投入される感じ?」

 

「空飛ぶ古代機械を見つけるための機械があるみたいだから、できるだけたくさんの人を調査に回すんだってさ~」

 

 

「空飛ぶ古代機械…飛空艇だとしたら、()()か」

 

「うん?どうかした?」

 

「いいや、なんでもないよ」

 

はやてはFFXに登場する飛空艇を思い出した。確かあれは海底に沈んでいたはずである。

物語の中盤以降で手に入れていたような気がするが、それに関するものだろうかと推測する。

そうであるならば、この調査は何としても成功させる必要があるだろう。

 

 

手元の資料が、すこし重たく感じた。

 

 

「ま! まずは調査に行った機械の情報を待たないとね~! 数日後くらいだと思うから、のんびり待とーよ」

いっしっし、とリュックが笑う。そうだなあと生返事をしたはやては、デッキに転がしていた大きな魚とり網を手にする。

 

「じゃ、今は晩御飯用のお魚を捕ることに集中しますか」

 

はやてが海に手を向ける。そのポーズ自体に意味はない。はやての様子を見たリュックは「げげっ」と女の子らしからぬ声を上げ、スススと距離をとる。

 

「そ、その魚の取り方心臓に悪いんだよう… どうにかならない?」

 

はやては以前、雷魔法を海に放って魚を捕まえていたことがある。それを思い出すリュックだったが、はやては雷魔法は使わないよと言った。

 

 

「あれ、あまりよくないんだ。生態系を壊しかねない。魚以外のサンゴとか、水中の虫とかもまとめて殺しちゃうからね。だから今日は別の魔法を使ってみる予定」

 

雷魔法じゃないと聞いてほっとしたリュック。雷でないなら何だろうと興味がわいて、見学しようとはやての隣に立った。

 

「じゃ、まずは船をいったん止めてもらおうか。ブリザラ」

 

舟の進行方向とは少しずれた位置に、氷柱を発生させる。船の操縦席から見えるはずだ。これは、「魚を捕まえたいからいったん止まってくれ」という合図になる。

 

少しして、サルベージ船のエンジンが止まった。

 

「なんというか、普通の使い方じゃないよね。魔法力の無駄づかいだ~」

 

リュックが少し呆れ気味にいう。

 

「合理的な使い方だよ、僕の場合はね」

 

はやては自身の最大MP量を調べてみようと、空に向かってファイガを打ち続けたことがある。結果、飽きるまで打ち続けても一向にMPが切れるような現象は起きなかった。リュックのいうところの「MPが減る感覚」が全くないのである。最大量は分からなかったが、少なくともファイガを何百と連発してもなくならない程度にはあるのだろうというのがはやての暫定的な結論であった。放たれたファイガの数を数えていたリュックが、100を超えたあたりから口をあんぐりさせてびっくりしていた。

からなかったが、少なくともファイガを何百と連発してもなくならない程度にはあるのだろうというのがはやての暫定的な結論であった。放たれたファイガの数を数えていたリュックが、100を超えたあたりから口をあんぐりさせてびっくりしてい

た。

 

「それはともかく。うまくいくかな? 《七式:トルネド》 」

 

はやてが詠唱のようなものをつぶやくと、50mほど離れた海上にあたり一面のものを巻き上げようとする白い竜巻が発生した。竜巻自体は小さく、精々10mに届くかといった規模だが、巻き上げられる海水の量はかなりのものだった。かなり下の方の海水まで巻き上げているらしい。巻き込まれれば、まず無事ではいられないだろう。

の方の海水まで巻き上げているらしい。巻き込まれれば、まず無事ではいられないだろう。

 

目を凝らしてみると巻き上げられている海水に交じって、魚も巻き上げられていることが確認できた。

 

「よし、ブリザガ」

 

巻き上げられている海水に氷魔法を放つ。すると、巻き上げられた海水の一部が凍り付き、氷の塊となって落下し海上にぷかりと浮かんだ。

 

「おお~、すごいすごい」

 

リュックは無邪気に拍手する。

 

「さて、どうかな。魚も一緒に凍ってるといいんだけど。《九式:レビテト》」

 

はやてはふわりと浮いて、サルベージ船から海面へと降り立つ。

 

「あ! ずるい! いいなー!あたしもいく~!」

 

氷柱を回収しようとした途端、リュックの声が降ってきた。

 

「すぐ戻ってくるから。そこで待ってて」

 

「え~! ずるいよハヤテ~! あ、そうだ! 班長命令だぞ~!」

 

「えええぇ、なんでまた」

 

はやては呆れた表情でリュックを見上げる。

 

好奇心旺盛な子だなあと逆に感心していると、

 

「はやて~、キャッチしてねー!」

 

「は? え、ちょ」

 

リュックはいったんデッキに引っ込んだかと思ったら、えい、とはやて目がけて飛びおりてきた。

 

「こらこらこらこらこら、ちょ、うおっと!」

 

「えっへへ、ないすきゃっち~」

 

咄嗟にリュックを受け止めるはやて。

 

目論見通りに事が運んでご満悦なのか、リュックは嬉しそうに笑っていた。

 

「……しょうがないなあ」

 

ハヤテはリュックを横抱きに抱えなおして、そのまま氷柱に向かう。

 

「らくちんらくちん~」

 

「お転婆にもほどがあるんじゃない? リュック班長?」

 

「こういうのってさ、自分で見て判断したり、考えてみたりしないとなーんかおちつかないんだよね」

 

「さいで」

 

海面に浮かぶ氷の塊にたどり着く。予想通り、10匹以上の魚が塊の中で凍っていた。

 

「ほえ~、すっごいなあ…」

 

感心した様子でのぞき込もうとするリュック。こら、おちると声をかけ、はやては抱え直し、リュックが落ちないよう少しばかり強く抱きしめた。

 

「———っ」

 

急に借りてきた猫のようにおとなしくなったリュックだが、好都合だと言わんばかりにはやては作業を進める。

 

「とりあえず持って帰ろうか」

 

両手を使いたいから降りてくれとリュックにレビテトをかけるはやて。無言の抵抗を受けたが、どうにかリュックを海面におろし、大きな氷の塊を二人で押したり引いたりしながらサルベージ船に持って帰った。

 

船の横につけるとクレーンで引き上げられ、チェンソーのような機械で氷の中から魚が切り出された。この魚は後に調理場に運ばれ、下ごしらえが行われる事になる。

 

一段落ついたはやては、デッキの手すりにもたれかかる。リュックは兄貴に頼まれた用事があるとのことで、船内に戻っていった。

 

(魔法の使用にはだいぶ慣れたな。僕も部屋に帰ってセーブスフィアに触れておこう)

 

便宜的にセーブスフィアと名付けられた謎の置物は、今もはやての部屋に鎮座している。相変わらず薄ぼんやりとしているそれは、他の人には見えない仕様になっているらしい。

 

何となく毎日触れているはやてだが、疲れが吹き飛ぶ以外の具体的な効果は未だ不明のままである。原作ではセーブポイントであったし、自分の何かが残される感覚はあるため、恐らく「セーブ」が行われているのだろうと思うはやてだが、まさか

試しに死んで確認するわけにもいかない。

 

要研究事項だが、一先ず保留されていた。

 

〈 ハヤテ。ごはん、てつだえ 〉

 

クレーンを操作していたひとりのアルベド族がはやてに話しかけた。魚が解凍されるまで別の食材の下ごしらえをするらしい。日没までまだあるが、特にやることも無いはやては快く応じる。

 

〈 わかった。先、部屋、もごる 〉

 

〈 もどる、だ。ゆっくり こい 〉

 

サルベージ船の仲間たちは平易なアルベド語で話しかけてくれる。はやても毎日練習し、頻出単語の暗記も行っているおかげで、シンプルなコミュニケーションなら成り立つようになった。長い文章になったり、早い口調で話しかけられたりすると

分からなくなるが、仲間たちは言葉を選んでゆっくり話してくれるため、はやても積極的に話しかけようとしている。

 

ちなみにはやてが最初に覚えたアルベド語単語は〈 ゾレンハラミ 〉。「ごめんなさい」と言う意味で、主にリュックに対して使われる。

 

はやてのアルベド語を覚えようと努力する姿勢は好意的に捉えられており、女性達には【はやてん訛り】と呼ばれてしばしば話題に上がって盛り上がっている。はやては時々幼い子供のような言い間違いをするが、それが可愛い、母性本能がくすぐ

られるとウケているのだ。俗に言うギャップ萌えであった。

 

さらに【はやてん訛り】を話題にきゃっきゃっと食堂で盛りあがる女性達を不思議そうに見つめるはやてと、頬をふくらませて拗ねる様子を見せるリュックの両名を生暖かい目で見守るもの達もいる。

 

通称【リュックちゃんの初恋を見守り隊】と呼ばれる集団である。鈍感そうなはやてと自身の心に無自覚なリュックのやり取りに萌える者達の集まりで、ここ最近【リュックちゃんの初恋を実らせ隊-遥か尊き年齢差-】との熾烈な戦いが静かに繰り

広げられているという。いずれの隊も、構成員の多くが女性である。

 

男衆には機械にロマンを感じられる盟友として積極的にはやてに話しかける者が多い。驚くほど機械に通じているはやてと話をしていると、新しい機械の改造アイディアが生まれると話題になっている。

先日、はやてのアイディアと監督のもと機械を改造し、【カラオケ】なる機械が発明された。現在はどんな音楽を取り入れるか検討段階にあるらしい。

 

はやてがアルベド語を学ぶという事を通して、仲間たちの中に新しい風が吹き込まれている。アニキは仲間内の結束が強くなっているのを感じた。ヒト族の言葉を学んでみようかと考え始めた者もいるらしい。実にいい流れである。

 

オヤジを筆頭にアルベド族が計画する【とある計画】がより強固になると、アニキは決意を新たにしていた。

 

着替えるために部屋に戻ったはやてはセーブスフィアに手をかざす。いつも通りの感覚を覚え、手早く着替えて下ごしらえの手伝いに向かおうと上着を脱いだ。

 

下も脱ごうとベルトに手をかけた時、急にセーブスフィアが発光した。

 

「な、なんだ!」

 

目が眩んだはやてはエスナを自身にかける。視力が戻ったはやてが見たのは、海の遺跡で見かけた、元の色をしたセーブスフィアだった。

 

「…元に、戻ったのか?」

 

手をかざしてみると、先程と同じ感覚を覚えるだけだった。

 

「…………まあ、いいか。後でリュックにコレが見えるかどうか確認してもらおう」

 

急にはっきりと見え始めたセーブスフィアだったが、それだけである。

 

大したことはないと判断してさっさと着替えたはやては調理場に向かおうとドアに手をかけた。

 

その瞬間、サルベージ船が大きく揺れる。

 

「ぐっ……!」

 

荒れた天気で揺れた時とはまるで違う。船を飲み込まんとする大きな波に攫われそうになったようだった。

 

「何が起きてるんだ!」

 

はやての部屋のベッドがスライドする。椅子などはひっくり返ってしまった。

 

まともに立ち上がることができない。

 

「くそったれ!《十二式:レビテガ》!!」

 

他の船員達も同じ状況のはずだと考えたはやては、船員全体に浮遊魔法をかける。これで全員立ち上がって移動することができるはずだ。揺れる船体に四苦八苦しながらも、どうにか船のデッキに飛び出るはやて。

 

 

 

 

 

 

 

海面から突き出る小山がそこにあった。

 

一人のアルベド族が船体から身を乗り出して叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「シ、シーーーーーーーンっっ!!!!!!」

 

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