FFX スピラを旅する異世界人   作:カムパネルラ321

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仕事でバタバタしていましたがようやく落ち着いたので投稿...
楽しみにしていてくださった方、お待たせしました。


サルベージ船⑤(修正済)

「死」そのものが海底深くに潜んでいる。誰もがサルベージ船の下で餌を待ち構えて大口を開けている魔物を幻覚した。息をひそめ、意味がないと知りつつも、無意識に音を立てないようにしてしまう。

 

アニキがモニターを見つめながら、静かな、しかしはっきりとした声で船を進めるように指示を飛ばす。『シン』は町や都を破壊こそすれ、海上の船一つ一つをわざわざ攻撃することはあまりない。『シン』によって沈められる船の多くは、『シン』から離れた『シン』のこけらやこけらクズに襲われたり、『シン』が生み出した大波によってひっくり返されたりすることが原因である。

 

総じて「『シン』に襲われた」という表現をするが、その状況は千差万別である。サルベージ船とアルベド族を率いるアニキは『シン』と接敵するいかなる状況においても冷静に対処できる胆力と正確な判断力を兼ね備えていた。

 

操縦士に普段の半分程度の速度で進むよう指示し、アニキは皆に向き直る。そして静かに語りかけた。

 

曰く、余計な混乱を避けるため、操縦室にいる者は『シン』が船の真下に潜んでいることを誰にも伝えないこと。他の船員には「『シン』は去ったが、念のために船を出してこの場から離れ、最寄りの陸上へ向かう」といった伝達をすること。冷静かつ合理的に行動すること。

 

アニキは緘口令を敷き、操縦室の者たちに何事もないように振る舞うよう命令を出した。操縦室に集まっていた者の多くは幹部やリーダーといった肩書を持つ者たちだったため、それを当然のこととして了承し、部屋を出て部下や仲間たちの下へと戻っていった。

 

操縦桿を握る何人かの操縦士たちはこれまでになく慎重な顔つきで、様々なメーターと表示されている海図を見比べながら船を進める。一先ずは指示通り、陸上を目指して船を進めるようだった。

 

気が付けば、はやてはアニキと対面していた。アニキは何も発しない。ただ、眉間にしわを寄せて何か思い悩んでいるように見えた。

 

〈……ハヤテ〉

 

〈…どうした〉

 

〈 リュックを、頼む 〉

 

〈 ……‥‥ 〉

 

〈 俺は良い。だが、いざとなればアイツを優先してほしい 〉

 

〈 アニキ、あの子は…… 〉

 

〈 お願いだ 〉

 

そういってはやての手を取り、握りしめる。アニキのリュックを想う心が手を通して直接伝わってくるような気がしたはやてだった。ふと、アニキの目を見る。

 

家族の為に、覚悟を決めた目だった。

はやてにとって、なじみのある目である。

 

〈 ……わかった。そばにいる時は、必ず助ける〉

 

〈 そ、そうか!よかった!ありがとう!! 〉

 

悲壮な顔から一転、元の明るい顔へと戻るアニキ。そこ抜けた明るさというか、少しお調子者のような一面はリュックのそれに大変良く似ていた。やはり家族なんだと再確認したはやてだった。

 

〈 けれど、 〉

 

繋がれたままの手を、今度ははやてが強く握りしめる。

 

〈 ? どうしたはやて?〉

 

〈 アニキも守るさ 〉

 

家族は、一緒にいるべきだ。

はやては言葉にこそ出さなかったが、アニキとリュックには一緒にいてほしいと思った。彼らは家族なのだ。リュックを守るのであれば、アニキも守らなければ嘘だろう。

 

それに、なによりアニキは、いや、()()()()

 

〈 ……ハヤテ? 〉

 

はやては何も言わない。ただ、強い意志をその目に宿しているだけだった。

はやての黒い瞳には何が写っているのか。アニキは分からなかった。

 

 

〈 ハヤテ、お前… 〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二 人 と も 何 や っ て ん の さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙に冷たい声が操縦室に響いた。

 

ぱっと出入り口のドアに目を向けるはやてとアニキ。お風呂上がりだからか、珍しく髪を流したままのリュックが立っていた。いつものスイミングスーツではなく、ショートパンツにT-シャツというラフな格好だ。

 

「リュ、リュック!? トヤネ ハンベヨヨシ?! ラッチオマハキ チミセサオア?!」

 

リュックをよろしく云々のことを聞かれていたのかと思い、顔を赤くするアニキ。

 

「何でって、ハヤテがいつの間にかいなくなってたから探しに来たんだよ。っていうか、いつまでてーにぎってんのさ~~!」

 

つかつかと操縦室に入ってくるリュックは握られたままのアニキとはやての手にチョップを入れる。しかし思いのほか強く握られていたため、一度のチョップでは離れない。「えぃ!ふん!」と連続チョップをおみまいしてようやく二人は手を離したのだった。

 

「ハシミッセンガ?! アルベドゾム マハヘモ!」

 

「うるさ~~い! ハヤテ! ほら行こうよ! 今日は一日そばにいるって言ったでしょ! ハヤテの部屋でゆっくりするって言ったじゃんか~!」

 

そういってはやての後ろにまわり、退出させんとぐいぐいとはやての背中を押すリュック。

 

「ちょっと、リュック、押さな、ちょ、わかったわかった戻るから押さないで?!」

 

「もう! みさかいないのかな~! 男はダメだよもう!」

 

「何の話…」

 

ハッとなって思い出す。

そういえばさっきの状況って、はたから見れば見つめ合って手を取り合ってるように見えなくもないと気が付いたはやて。冷や汗が出る。

 

「なんか盛大な誤解してませんかねリュックちゃん?!」

 

「お話は部屋で聞きま~す!」

 

リュックとはやての二人はわいわい騒ぎながら操縦室を後にした。

ぽつんと取り残されたアニキは嵐のようにやってきては、はやてをさらっていったリュックに呆然としていたが、すぐに優しそうな顔に戻った。

 

「リュックム、 サオンガボ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、はやての部屋。

今、はやては床に正座して、ベッドに座るリュックに必死に弁明していた。船が大きく傾いたせいで少し散らかったため、簡単に整理整頓をしていたが、終わるや否や正座するよう言いつけられたのだった。

 

「そう、つまりアニキは魔法を使ってみんなの助けになってくれって頼んできてたわけなんだよ」

 

「ふ~ん」

 

「いいリーダーじゃないか。皆のためを想ってどこの馬の骨とも知れない僕に頭をさげ…」

 

「馬の骨じゃないもん!」

 

「は、もうしわけございません」

 

「も~、わかってないなぁ、も~~~!」

 

「あんまりもぅもぅ言ってたら牛になっちゃうぞ」

 

「茶化すなあ~~~!」

 

うがぁーっ!と分かりやすく憤慨するリュック。

 

「だいたい、何で操縦室なんかにいたのさ~。部屋にいないから心配したんだよ」

 

「ごめんごめん、リュックの様子を見るってアニキに伝えとこうと思ったんだよ」

 

「え~ どうだか~」

 

「たのむよ… 僕は女の子が好きだって。ね?」

 

はやてはなかなか機嫌を直してくれないリュックにどうすべきかあれこれ思案するが、これといった解決策はなにも思いつかない。ちょっとしたことでリュックに怒られることは、アルベド族に引き取られて二週間前後経った今までで何度もあった。結局自然と怒りが収まるのを待つしかないのだ。

 

以前、魔物との戦いの中である女アルベド族を攻撃から庇ったことがある。とっさのことだったので押し倒す形になったのだが、間一髪攻撃を避けることができた。ただ、本当に咄嗟のことだったので、右手が彼女の胸に当たっていたのだ。もちろんすぐに手をどけて、魔法を放って魔物を倒した。

 

不慮の事故である。はやてはすぐに謝罪し、意外なことに全然気にしなくていいと快く許しを得ることができた。これからは気を付けようと意識を切り替えようとするはやてだったがそうは問屋が卸さなかった。きっちり事の顛末を見ていたリュックから有難いお説教をいただいたのだ。

 

はやては懸命に説明したが、結局リュックの機嫌が直ったのは翌々日のことだった。

 

そんなこともあり、これは長引くかもしれないと未来の自分に同情していると、リュックは腰掛けていたベッドからおもむろに立ち上がり、きっと口を結んだ。

 

「ど、どうされましたかね・・・?」

 

恐る恐るリュックに声をかけるが、リュックは何も返答することなく、室内をうろうろと歩き出した。何か悩んでいるようにも見える。はやては立ち上がり——まだ立っていいって言ってない!と言われないよう慎重に——、リュックの手を掴む。本人が大丈夫だと言うので横になれとは言わないが、それでも無意味に歩き回ったり立ち上がったりしないよう、せめてベッドか椅子に座らせようと思ったのだ。

 

手をにぎられて一瞬体がこわばったリュックだが、すぐに力を抜いてはやてを見上げた。

かと思えば、すぐにうつむいてしまう。

 

はやてはあまり気にせず、リュックをベッドまで誘導して座らせる。するとリュックはベッドに上がってぺたりと座り込み、はやての枕を抱え、顔をうずめて沈黙してしまった。

 

沈黙が部屋を埋め尽くす。

ゴウンゴウンという船のエンジンの響きが伝わってきた。

 

「…………」

 

「…………あの、リュック?」

 

「……じゃ、じゃぁ、じゃあさ、か、確認なんだけどさ~?」

 

枕に顔をうずめたまま、もごもごと話し始めるリュック。枕のシーツは昨日取り替えたばかりだから匂わないはずと少し焦り気味のはやては極力それを顔に出すまいと続きを促す。

 

「はいはい、確認ね。はい。どぞどぞ。あ、よければ枕はこちらに」

 

「か、確認なんだからね?! 確認!」

 

「ええはい存じ上げておりますともはいご確認ですね」

 

それとなく枕を引っ張ってみるはやてだが、びくともしなかった。

 

「あ、あのね? そのぉ~」

 

「うん?」

 

枕からちらりと顔を上げてリュックは問いかけた。

 

「ど、どんな女の子がす、すく、すき、なのかな~なんて……」

 

「ん? タイプの女の子ってこと?」

 

「え? まあ? まぁそんな感じかな?! もちろん確認だよハヤテが嘘ついてるかもだし! あはは!?」

 

「ついてませんて…」

 

がばりと顔を上げてごまかすように笑うリュック。やはりお年頃なのか、確認とは言えど男の人にタイプを聞くのは恥ずかしいのかもしれない。

 

「だったらほら! 説明してごらんよ~!」

 

「えええぇ… まあいいけど。タイプ、タイプねえ」

 

「ど、どきどき…」

 

女の子のタイプ。

はやては、この手の質問が少し苦手だった。

 

「そうだなあ、あんまりそういうことにはこだわらないタイプだからなぁ僕自身」

 

「つ、つまり…?」

 

「フィーリングが合えばだれでもいいかな」

 

「ふ、ふぃーりんぐ…?」

 

「うん」

 

「………これ、喜んでいいのかな?」

 

「うん? なんて?」

 

「う、ううん! 何でもない! というかそれじゃあ女の子が好きかどうか分からないじゃんか~! もっとこう、何かないの~?」

 

「えええ…、見た目の話?」

 

「性格とかも!」

 

なかなか難しい質問である。

 

「んー、そうさな…」

 

「さな?」

 

「……そうだなぁ、あれかな? 明るい性格が好きかな?」

 

女の子がよく言う「優しい人が好き」みたいな事をいうはやて。

別に希望も何もないため、それっぽいことを言ってお茶を濁す気満々である。

 

「っ!! そ、そうそう! そういうの! えへへ! ほかにはほかには?!」

 

急に身を乗り出してくるリュック。

実は恋愛話がしたいだけなのかもしれない。

 

「ん~、あとは、そうだな…あれかな?いつもはふわふわしてても、きちんと締めるときには締めることができるとか」

 

「うん! 皆のリーダーとかできてたらいいよね~!は、班長とか!」

 

「うん、たしかに。皆を引っ張れる人ってのはポイント高いかもなあ」

 

「そ、そうかなあ~? えへへへ」

 

何故か照れ臭そうにしているリュック。

何と無しにリュックを見つめるはやて。

 

「………………あとはそうだな、金髪とか憧れるかもなあ」

 

「…えっ??!!」

 

「ほら、僕って黒髪だろう? 金髪って純粋に綺麗だなあって思うよ」

 

「えっ、えっ、えっと、」

 

「それから家族を大切にできること。特に兄妹かな」

 

「わ、わ、わわわ…ど、どうしよう、ぜんぶあてはまってるよ~…」

 

目に見えてわたわたしだすリュック。

にんまりしながらリュックをみつめるはやて。

 

「機械の扱いが得意だったら教えてもらえるよね。きっといいだろうなあ」

 

「お、教えてあげられる…はわ、はわわわわ、これって、これってもしかして」

 

愉快に混乱モードへ陥っているリュックへ微笑みかけるはやて。

 

「は、はやて……」

 

目を潤ませ始めた。ここいらが潮時だろう。

 

「あとは、そうだな、力持ちだったらいいなあ」

 

「…え? 力持ち?」

 

「うん。個性的な見た目にも惹かれるね」

 

「‥‥‥‥あれ?」

 

「うん? どうかしたかな?」

 

リュックははやての好みを整理してみる。

 

つまり、はやてのタイプは明るくて、リーダーシップがあって、金髪で、機械に詳しくて、家族を大切にできて、力持ちで、個性的な見た目……

 

 

 

力持ちで、個性的な見た目…?

 

 

 

つい、とはやての顔を見上げた。

 

 

 

 

とってもにんまりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「  ア ニ キ じ ゃ ん か  ‼‼‼ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっはっはっはっは!!!!」

 

 

見たことないぐらいに大笑いするはやて。目に涙を浮かべ、我慢できないとばかりにベッドへ倒れ込んで笑っている。

 

ここに至ってようやくリュックは揶揄われていると自覚した。

 

 

 

リュック は いかり に みちた !

 

 

 

「ひどいひどいひどい~~~~!!!! ばかにして~~~!!!!」

 

「あっはっはっは!! ごめんごめん! いやだってあんまり素直に反応してるから、つい!」

 

「つい! じゃないよも~~~!!!」

 

「あははははははは!」

 

リュックは恥ずかしさやら悔しさやらを己のこぶしに込めてはやてにとびかかった。

 

「も~!も~~~!!! はやては! もうっ!!」

 

「あはははははははは!!!!!」

 

「わらうな~~っ!」

 

はやてに乗り上がってぽかぽかと叩くが、まるで効いていない。いつもなら腰に力を入れて殴れるが、羞恥心やらなにやらのせいで全く力が入らなかった。

 

それでも悔しいからとりあえず叩いてやる。

 

「あははは!あ、いたっ!痛いって!ちょ、ごめ、ごめんって!ごめんごめん!」

 

あおむけに倒れているはやてに馬乗りになって顔をぺちぺち叩いていたらさすがに聞いたようで、素直に謝るはやて。しかし、その口元が彼がまるで反省していないことを物語っていた。

 

「なにわらってんのさ~!もぅ!えい!えい!」

 

「うぇっ?! おうっ?! ちょ、腹の上で跳ねないで! ごめんってば!」

 

「えーい! この! いじわるハヤテなんかこうだ~!」

 

リュック自身も楽しくなり始めたのか、楽しそうに笑いながらはやてのお腹をトランポリンにする。引き締まってこそいるが、さすがに少女の重さをカバーしきれないのか衝撃がダイレクトに内臓へ伝わる。

 

「ぐぇ! うぅえっ! ゆ、ゆるして! ほぉう?!」

 

マウントを取られている以上何もできない。さすがはリュックといったところで、的確にはやての重心をおさえてくる。肉弾戦はからっきしのはやてに、なすすべはなかった。

 

「えい! え~い! はあ、はあ、ん、まいったか~! はぅ、ふぅ、あふ」

 

「がふっ! おふぅう! はっ、はあっ、ゆ、許してください…」

 

さすがに何度も跳ねていると息も切れてくるのか、リュックの息は荒々しい。はやてもはやてで、大笑いしていたせいで呼吸は乱れ、さらに肺から空気を押し出されるものだから荒い呼吸になってしまっていた。

 

リュックの額から汗が伝い、きれいなあご先で雫となって、はやての服にぽたり、と落ちた。

蒸し暑いのか耳までほんのりと紅潮していた。

 

「んふふ~、だ~め、んっ、はあ、まだまだ、おしおきする、んだから」

 

はやての胸を上からおさえるように手をついて、微笑むリュック。

お風呂上がりだからか、運動による汗によるものか。はらりと顔にかかるしっとりとした髪を耳にかけて、リュックははやてを追撃せんと腰を上げた。

 

 

 

がたっ!!ガタガタ!!!

 

ばんっ!

 

 

音を立ててドアが開き、何者かがはやての部屋になだれ込んできた。

一人二人なんてものではない。10はくだらない人数のアルベド族たちが、一斉に倒れ込んで入室した。

 

リュックは物音に驚いてビタッと動きを止める。見ると、いつもはやてにどうアプローチすればいいかアドバイスしてくれるお姉さんたちだった。

 

両者、静まり返る。

 

ただ、リュックとはやての荒い呼吸音がこだましていた。

リュックは力が抜けて、ぼすっとはやてのお腹に腰を落としてしまう。

 

「ぐっ!も、もう限界だ。いろいろ出そうだからいったん離れて、リュック…」

 

必死に吐き気をおさえていたはやては乱入者の存在に気が付いていない。

ゆえにとんでもない爆弾を投下してしまった。

 

 

 

 

 

きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!

 

 

 

 

 

姦しい叫びが船内に響きわたる。

 

 

 

リュックヒャンダ トソハオアミガンム オドッセウフーーーーーーーー!!!

 

フネモ! リュックヒャンダフネハオモーー!

 

ミオヒオチチシ ミノンハコオダサアヤッサシ ヒダミハミカ! ヘミモルソア!

 

ミノッピミ リュックヒャン ヅフアカーーーーーーーー!!!

 

 

アルベド語で何事か叫び、蜘蛛の子を散らしたように退散する乱入者ども。

 

リュックはぽかんとしていたが、自分とはやての間を何度か視線で往復し、今の現状を再確認し、さっきのお姉さん達のセリフを反芻すると、

 

 

 

「ヤッセーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

疾風のごとくはやての部屋を飛び出していった。

今すぐ弁明しなければ、取り返しのつかないことになる。それくらいは、初心なリュックにも容易に想像できた。しかし、ほうほうに散ったお姉さんたちを集めることは困難を極め、結局噂は尾ひれ羽ひれをつけて瞬く間に広まってしまう。決して消えない黒歴史の爆誕の瞬間だった。

 

 

後の伝説、「リュックちゃんご(淫)乱心」である。

 

 

女たちの叫び声とリュックの必死な弁明は操縦室まで届いていた。

操縦桿をにぎる操縦士たちは苦笑している。

 

〈 おまえら、『シン』が足元にいんだぞ…?〉

口令を敷いているとは言え、のんきな船員たちに小さくため息をこぼすアニキ。

自然と体の力が抜けてしまう。部屋に残った者たちもやれやれと頭を振っていた。

 

 

気が付けば、先ほどまで部屋に満ちていた張りつめた緊張感と死への恐怖は霧散していた。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐふっ…」

 

一方、初速の為に容赦なくお腹を踏みつけられたはやては、苦悶の表情で気絶していたのだった。

 

 

 

 

 

 




サルベージ船は⑩までを予定してます。
のんびりとお付き合いくださいな
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