年末は体調を崩して、年始は仕事が忙しいです。
あととある温泉宿で舌切り雀助けるために働いたりしていたので更新が遅くなりました。
私の名前はアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。
正史ではない打ち切られた人類史、異聞帯のサーヴァントだ。
私はマスターであるカドックと共にカルデアと戦い、破れ、死んだ。
本来なら私はそこで終わり。
異聞帯のサーヴァントだから例え再び召喚されても、その私はワタシではない。
正直カドックを助けれて嬉しかったけどあの後カドックの行く末が気になっていた。
だけれどどういう運命のいたずらかワタシはワタシのまま再びこの世に現界することが出来た。
そしてカドックともう一度会うことが出来た。
カドックは信じられないと表情をしていたけど涙を流してワタシとの再会を喜んでくれた。
彼は認めてくれないけどあの時の彼は涙や鼻水で顔がグチャグチャだった。
我慢したけれど、人目が無ければきっとワタシも同じような表情をしただろう。
ワタシを蘇らせたのはこの第8の異聞帯の王ティアマト神、そしてイレギュラーのクリプター、アシュトン・レイナードだった。
「おはようアナスタシア君、早速だが君を蘇らせたのは俺たちだ。」
彼は見た目からして威圧感のある外見だった。
でもそれ以上に外道ではないけど、逆に必要ならどんな汚い手も平然と行える男だった。
「遠回しなのは苦手なんだ。端的に言うけど俺たちに協力してくれないか?対価は君とカドックの命だ。」
ワタシに否を言うことは出来なかった。
だってワタシと再会したカドックは本当に嬉しそうで、彼と再会したワタシは彼との生活を失うことがとても怖かったから。
しばらくの間この異聞帯で時を過ごした。
此処はロシアと違って暖かくて食べ物も多く、民はロシアから一緒に来たヤガも含めてみんな笑っていた。
ヴィイは暑すぎて嫌だと言っていたけれどワタシは雪の白色しかない前の異聞帯よりも好きになってしまっていた。
カドックも仕事が大変で文句ばかり言っていたけどロシアの時よりも気楽そうだった。
正直、この異聞帯に来てワタシ達は以前よりも幸福だったと思う。
でもワタシにはこちらに来た当初からワタシ達に対して、ワタシ達お互いを人質にとるアシュトン・レイナードへの不信を拭うことが出来なかった。
「君にある重要な仕事を任せたい。」
「どうせ拒否権なんてないのでしょうけど、どういうつもりかしら?」
この異聞帯でのカドックとの生活も慣れてきて手放すには難しくなってきたころ、ワタシはアシュトンのもとへ呼び出された。
彼もワタシが自分に対して不信を感じていることは知っているはず。
彼の話が本当ならばそんな重要なことをワタシに任せるなんてどういうつもりだろう?
「ふむ。言葉の通りだよ。俺に君の力を貸してほしいんだ。人手不足でね。」
「そうじゃない。ワタシが貴方に対していい感情を持っていないことは分かっているでしょう?そんなワタシを排除するならまだしも重要な案件を任せるなんてどういうつもり?」
「・・・う~ん。初対面の時の態度が悪すぎたか?言い訳になるがあの頃も今と同様仕事に忙殺されててね。San値が足りなかったんだ。俺は・・・そう、臆病でね。カルデアのマスターのように対面して大した時間も経過していない存在を信じることなんて出来やしない。だから俺は絶対的な枷を用意することにしているんだ。誰が相手でもね。」
「君やカドックに関してはお互いの存在がお互いの枷だ。まあ・・・分かっているだろう?一度失うはずのモノをもう一度得た君は・・・二度失うことは耐えられない。」
「⁉・・・。」
アシュトンは昏く嗤う。
「そんなわけだから、キッチリカドックという枷を付けることのできた君は裏切らないだろ?だから信じることが出来るようになった君に任せたい仕事があるんだよ。」
アシュトンはその厳つい外見から豪快な人物に見られることが多い。
アシュトンはそのノリの良さから臆病さとは無縁の人物と思われることが多い。
だが一度死んで、さらに爆殺により死の淵を味わった人間が無条件で他者を信じることが出来るほど能天気だろうか?
答えは否。
解凍されて蘇ってから、彼は他者に対してまず自分を裏切らないように保険を設けるようになった。特に自分の力では対処しようのない相手、サーヴァントに対しては。
尚、これの対象外は無条件に己を救ってくれたティアマトか、縛るべき枷がない癖に勝手に泥から生えてきて協力してくるギルガメッシュだけである。
「ああどうしてワタシが貴方を警戒していたのかよく分かったわ。同族嫌悪なのね。」
ワタシはやっと理解した。
生前自分と家族の幸せは処刑により幻のように唐突に終わった。
だからワタシもアシュトン同様、本質的に易々と他者を許容できなくなっているのだ。
だから自分にとって心許せるカドックのような存在がアシュトンにとってのティアマトであり、それを理解しているからこそアシュトンはワタシが自分を裏切らないという確信を持ったのだ。
「やっと少しは貴方を理解することが出来たわ。でも似ているだけね。ワタシはカドックを待っているだけだった。でも貴方は枷を付けるという酷く後ろ向きな方法だけれど他者を信じようとしているのね。」
「・・・う~んそうなのか?ただ腹黒いだけのような気もするけど・・・。」
「ええきっとそうよ。」
アシュトンは相変わらず厳つい顔で首を傾げている。
彼は間違いなく私たちが裏切れば冷酷に私たちを切り捨てるだろうし、自分やティアマトを守るためでもそうするだろう。
だけどそうでなければきっと彼は私たちに応え続けてくれる。
何故かそんな気がした。
「?ま、まあよく分からないが好感度が上がったのはいいことだ。最近は好感度が足りないとBADENDまで一直線だったりすることも多いしカドックがいるからヤンデレルートもないはず・・・だよね?」
「ちょっと何を言っているのか分からないわ。それで?」
「え?」
「それでワタシに何をさせたいの?内容にもよるけど協力するわ。」
「ええ・・・。態度が変わり過ぎて不安なんですけど。とりあえず俺が君に任せたい仕事は大したことじゃない。それは・・・」
「それは?」
「皇女である君に頼むのもアレだがティアマトの侍女、というか彼女の相手をして上げてほしいんだ。」
「?・・・ああ!つまり仕事の忙しいあなたの代わりに彼女が寂しくしている。それが心配だからワタシが彼女を慰めればいいのね!?」
「はあ?何故だ?」
「?」
コテンと首を曲げて、小鳥のように可愛らしいアナスタシア
「?」
コキリと首を曲げて、これからジャングルの奥地でプレデターと戦い始めそうなアシュトン。
「どういうこと?」
「ティアマトが寂しがってるから相手をするというのは合っている。だが彼女が寂しがってメソメソして病むようなタマじゃあない。彼女の場合、寂しさを紛らわせるために新種族生み出して俺と賢王とカドックのライフポイントをガリガリ削って、ついでに世界がアカンことになって剪定待ったなしになるんだ。」
「元人類悪は伊達じゃないのね・・・。」
「ああ本当に伊達じゃないんだ・・・。俺超頑張ったんだ。」
「・・・ちょっと用事を思い出したから席を外すわ。」
ワタシはスキルにないはずの直感を感じた。
何か嫌な予感がしたのだ。
その場で180度回転して部屋から脱出しようとしたのだが、振り向くとソコには扉の前で無言で宝具を展開しているスパルタ兵。
しまった!謀れた!
「逃げるつもりか?世界を救う偉業だぞ?カドックだったらきっと人類裏切ってストレスで目の下に隈作ってでもきっとヤルぞ?」
ソレはロシアで半ば病んでた頃のカドックまんまじゃない!?
「こんなの偉業じゃないわ、ただの罰ゲームよ!?」
「だったらゲームを楽しめばいいだろ!?」
翌日からワタシはティアマトの侍女として彼女が暇を持て余さな、いや寂しがらないよう全力で彼女と接した。
放っておくとロクなこ、じゃなかった余計、いや暇を持て余す神々の遊びをし始めるので超頑張った。
そろそろ北欧にいきたい。
けれど大令呪なしでスルトって倒せない気がしてならない今日この頃。
オフェリアの死亡フラグ +1