中々まともな文章ができませんでしたが、場数を踏んで頑張ることにしたのです。
諦めなのです。
よろしければお付き合いください。
今回、ほぼ設定垂れ流しです。
多分身体のスペックだけ言うなら保護される側じゃなくて保護する側なのだけど、まあ中身が俺だから仕方ないと言えば仕方ない。
どうも、闇喰らいのミディール(憑依)です。
今やトランクの入り口近くにある、むしろ入り口のすぐそばと言うべき草原のセットを支配してしまった一般通過古竜です。(なお竜が一般的かどうかはこの際考慮しない)
ちなみに草原を支配するまでの経緯として『空いてる場所を探してとりあえず草原に居座ると、魔法動物が草原に近づかなくなって、すっかりミディールは草原の覇者になっていた。』なんてことがあったり。
それを見たニュートが何を思ったのか、俺がいた森を再現してか草原に霧を作ってくれました…事実上の公認支配者だよどうしてくれよう。
...草原は後に新設されていた。なんか申し訳ない。
さて、一切図ったわけではないのだが、この草原は入り口に近いためなのか、目を閉じて集中していれば外の情報を微かに拾える。良い立地だ。
トランクの中、というより自然界で原始的な生活をするのは生粋の現代っ子からすればまあ退屈だと感じるもので。普段から特にすることもない俺はというと、もっぱらトランクの外に意識を集中しては魔法界やらの様子を探っていた。
立地の良さを利用して、流れ込んでくる匂いや音から外のさまを探る。要は娯楽か、暇潰しの類いだった。
とはいえ外の様子を知ることと、日に一度はやってくるニュートとの会話、くらいしか娯楽がないのだから悲しくなってくる。
最近はニュートに海外ドラマじみたコミュニケーション方法を試みているが、どうも。
とまあそんな感じで、とてつもなく暇を持て余しているように思えるのだ。
今日も目を瞑り、手に入った情報を組み合わせては外の様子を推測していた。
――今日は一匹のニフラーがとてとてと木の階段をよじ登り、トランクの入り口に手を挟み込んで外の様子を窺っていた。空いた隙間によって今日はいつもより外の様がありありとわかった。
運ばれてくる微かな潮の香りや単調な機械の駆動音、老若男女の入り混じったような様々な声と鮮明に聞こえてくるのだ。
楽しそうであったり、調子が悪そうであったり。実に賑やかな喧騒が主だっている。
『そろそろ着くからな』とか『私ニューヨークは初めてだから楽しみ!』とか。新聞でも読んでいるのだろうか、ボソボソと『魔法動物飼育禁止に、グリンデルバルド失踪。大変なことだ…』なんて声まで。聞くところもう陸が見えてきているらしい。
それらを塗りつぶすように、ひときわ大きな音が。トランクを床に置く音だろうか。そろそろニュートもトランクに入ってくるようだ、時間的にも目的は昼食か。
さあ、さっき得た情報から状況をちょっと推理してみようか…と、思ったより得られた情報が露骨きわまりない。
『この世界を内包したトランクは、ニューヨークに向けて海上を進んでいる』のだ。というかもうすぐ着くっっぽい。
とてもわかりやすく言えば、今日は『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』その当日だ。
待ってました。
(どうあれども、原作を乗り越えないとなにも始まらないからね仕方ないね)
原作の流れをおさらいすると、えー、パン屋志望のノーマジ、ジェイコブ・コワルスキーと魔法動物の入ったトランクを取り違え、手に持つ魔法のトランクから魔法動物を脱走させてしまうはずで。
俗にこれを収容違反と呼ぶとか呼ばないとか。
逃げたのはニフラーとオカミーと...透明になるやつに魔法サイだ。
各種1頭ずつ。
ついでに虫。
収容し終わったころにはオブスキュラスによって市民に魔法の存在が公になり、アメリカの魔法省どころか魔法の存在を知らない非魔法族たちを丸ごと大混乱に巻き込みはじめる。
あやうく魔法が白日の下晒されかけるこれは、はっきり言って世界の命運がかかっている出来事だ。
恐ろしいね(他人事)
そんな魔法界の運命を分けかねない大事件を前にして、外へ繋がる階段を降りてきたこの主人公は一体外で何をしていたのやら。
すぐに入ってくると思っていたのに対してようやく姿を現したニュートに疑問の目をやる。
竜の表情がどこまで伝わるか甚だ疑問なので、できるだけ感情を込めるようにするのも忘れない。
海外ドラマ特有の無言のコミュニケーションってやつを毎回こう試しているのだが。
「やあ、ミディール」
やたら気さくな挨拶が返ってきた。
こうしてどうも伝わっていない。
視線を外し、悔しかったので苦し紛れに皮肉を込めて
「…ずいぶんリラックスしてることで」
とか返すと、深刻そうな表情でニュートはそのまま魔法動物の餌やりに行ってしまった。
リベンジを誓いつつ横たわる。
まあこんな感じで俺の日常はリラックスしていると言うかのんびりしている。
特にこれといった動乱があったわけでもないわけで緊張する必要もないのだろうけど。
なんとまあ。
「平和だなぁ」
それに尽きた。
◇
ダンブルドア先生によれば、どのような人もなにかしら胸の内に秘密を抱えているらしい。
「どのような形であれ人を成長させる栄養だ」。
おそらくは、一人で考えてそれを貫き通すことが重要であるとか、そういった意味合いの言葉であろう。そんな言葉をニュートがまだホグワーツにいたころに言われた記憶があった。
まさに今のニュートには、大雑把に数えても三つの秘密があった。
一つに、ニュートが魔法使いであること。
魔法界の住人であるニュートの杖。コート。トランク。その中身にまで、みんな魔法が込められているのだ。
言うまでもなくマグルには明かしてはならないものだ、もちろん例外はあるが概ねそうだろう。
一生ついてまわるであろうこの魔法使いであるという事実は、魔法を知らない者には体験しようも無い素晴らしい体験をニュートにもたらした。
魔法使いでなければ、魔法動物学者になることもなかったのだ。
次に、今現在アメリカで禁止されている魔法動物たちと、NY行きの船に乗っていること。原作でもそうだが、そこでしか買えない「お土産」を買うためだった。
そう長く滞在する気もなく、この隠し事はすぐに消えて失せるだろう、と考えていたのだ。
紆余曲折はあれ、深刻に考えてもいなかったが故の行動だったが、しかし見事なまでに法律違反である。
残念ながら魔法省の取り締まりによって目当てのものは店ごと無くなっていたわけだが、図らずもこの火遊びとも取られかねない行為は、ニュートに素晴らしい出会いをもたらすことになった。
無二の親友。生涯の伴侶。
まだ誰も知らない。
最後の秘密は、ニュートの持つ魔法のトランクには魔法省がどうしても知りえない魔法動物が約一頭ばかりいるということだった。
これがどうも一番の問題として、ニュートの数少ない心配の種になっている。
『今までに見たことも無いような、恐ろしい魔法動物』。
魔法動物学者のニュートが、その言葉の意味についてまともに考えているとは言いにくいものだったが。ところがその魔法動物の危険についてニュートはよく考えた。
ダクソらしく台詞にすれば、
今もそんな考えをしながら船に揺られる彼は、扉にあるとりつけの鍵を回しては、部屋で一人トランクの中身を気にかけていた。
部屋の床に置かれたトランクがごとりと重い音を鳴らし、NYまで一時間を切った船の一室で、ひとまずトランクを置いたニュートは思考の途中にふとイギリスの森を思いだした。
灰色の岩と大樹が満ちる、薄暗く、霧がどこまでもついてまわる小さな森だ。
幹から新たな芽が頭をだし、ひび割れた岩の隙間まで苔が這っていた。人はおろか鳥や虫すらも近づこうとしない魔の森。
雫が滴る若葉の絨毯に身を任せ、体を丸めたまま威圧感を放つ巨大なドラゴンはそこにいたのだ。
『ミディール』。地下の神。妖精の王。ケルト神話の一端を担う神の名だ...
霧に浮かぶ巨大な黒い身体。岩のような鱗。その身を包んで余りある翼。どれもがいままでの魔法界において観測された、どの魔法生物をも優に上回っていた。
その中にはドラゴンもふくまれており、言語を介する巨大なドラゴン、それだけでも頭の無い役人にとってどれだけ危険なものかーー。
そこまで思い返して、ニュートは思考がズレはじめていたことと、自分が倒したトランクに手をあてたまま止まっていたことに気づいた。
ぱちぱちと留め具を外しながら、またかつてを再確認するように、考えをなぞりはじめる。
今度はズレがないよう。
ーー誰も知らないのだ。
思考の海に半分浸かると、そんな言葉が浮かんだ。
少なくとも今の時代には『闇喰らいのミディール』の名は、その人格も、あるいはその存在の有無すら誰も確証を持てていない。
そもミディールと出会ったこと自体がまるで運命の糸に導かれるよう偶然が溢れたものだったのだ。あの先生すらも知らないに違いない。
ならば関わらせたくもないのである。
ミディールの存在そのものがニュートの抱える秘密だった。
誰も知らない。
ミディールが抱える闇も、誰も。
どのような過去があり、どうして心を閉ざしてしまったのか。ニュートも知り得なかったのだ。
ニュートの悩みとは、「どうやったらミディールの心のキズを癒せるのか」だった。
無論、今現在ミディール(憑依)にそんなものはない、ということはここで明記しておこう。
そんなことは露知らず、思考を巡らせるニュートは『どうしようもない』結論を出しかけて、慌てて思考の海から自分を引っ張り出した。
その結論は欲しくなかったからだった。
倒したトランクの留め具を外し、あたりに人がいないことを見て、開いたトランクの口に足を突っ込む。
革靴が木の段差にあたったことを確認するや否や、片手をトランクの縁にあてたかと思うと、ニュートは柵でも飛び越えるようにトランクに飛び込んだ。
明らかに部屋の床よりも深く入れられたニュートの体はそのままするりとトランクに飲み込まれて、頭が底に消えたころには、一人でに閉まったカバーがその影すらもまるで手品のように跡形もなく消してしまった。
一方でトランクに入った彼は階段を降りた先、すぐの霧が立つ草原に視線を走らせると、すぐにミディールを見つけだしていた。
探そうと思って見つけない方が難しい巨体だ。
薄い霧でできたカーテンの向こうに大きな黒龍が身体を丸めて横たわっている。目を瞑っているのだろう、身じろぎしない姿はまるで眠っているようだ。
緩慢な動きで頭を起こしたミディールはまるで今ニュートに気づいたように、ゆらりと頭をよこしてくる。
中空で視線がかち合い、ミディールの視線に射抜かれたニュートはとたんにはりつくような体のこわばりに襲われた。
ミディールの目には疑うような色が浮かんでおり、警戒されていることは明白で、立ち去るよう警告しているようだった。
ニュートは微笑を浮かべ、警戒する必要はないと伝えるためにも、ミディールへなるべく気さくに声をかけた。
落ち着いた発声でゆっくりと。
「やあ、ミディール」
数秒の間があった。
しびれで感覚が消えたような錯覚に陥ったがすぐにそれも失せた。
ミディールが視線を逸らし、頭をもどして横たわったのだ。
「…ずいぶん肝の据わったことだ」
溜息と共に吐かれた言葉にはどこか呆れが含まれている。
圧倒的な存在感は鳴りを潜め、その姿は穏便で理知に富んでいるようにさえ見えた。
魔法動物と関わる中、こういう目で自分を見る動物たちを無数に見てきた。
見世物にされていたオーグリー、傷を負わされたヒッポグリフ。ひどい環境にいたニーズル。
彼もその魔法動物たちと同じだと思った。
人を信頼できない。
言葉を弄しどれだけの力があっても、ニュートにはミディールが怯えた動物に見えて仕方なかった。
ケルト神話の名前を知っている以上、彼がいつか人と関わったことは確かだ。そこで何かがあったと考えるのが妥当であり、残念なことだが、魔法使いなら赤子のドラゴン程度どうにでもできる。
もし『そう』であるなら、世界中を数億という人間が支配する世界の中で、体を隠せないドラゴンのミディールに。
(平穏に生きられる場所はあるのか?)
腹をすかせた魔法動物の一匹が大きくいなないた。思考がかき消される。
頭をゆるくふって、食事にしてやろうと歩きだしたニュートの背にミディールの声が届いた。
誰に言うでもなく、囁くように小さな声だった。
「平和か…」
――くだらない。
聞こえなかったその言葉の先を、ニュートは確かに聞いた気がした。
ニュートが置かれる状況と性格をふまえると、これくらいしかミディールと関係を持たせる方法が思いつきませんでした。
偉大な竜ムーヴをさせたいからね仕方ないね。