千恋*万花~福音輪廻~ 作:図書室でオナろう
完成次第上げてかなければならないレベルで話が進まない……とりあえず上げときます……
あとなんか急にお気に入り増えた。なんで?
所変わって志那都荘。
「それは大変でしたね」
「わかってもらえて何よりです……」
結局あの後、俺と茉子は適当な理由をでっち上げて早退。ついでに気絶したレナも早退させて事情を説明した。
「けど、アブノーマルなプレイに興じていたというわけではなくてよかったです。ヘンタイになってしまったのかと思ってしまいました」
……なんでそういう方向行くかなって。
が、しかしだ。レナの言うことは何も間違いではない。どう考えてもそっちに転ぶのは致し方ない──とでも言ったところか。普通であれば。
ただ彼女はこちら側であるからこそ、また妙な事に巻き込まれたかくらいで済むと思ったが気絶する程とはこれいかに? というかそんなにエロ耐性無いのかね君……?
ちょっと純情が過ぎるのではないかとも思いつつ、とりあえず話が通って何よりだと一安心。茉子迫真の説得もあってすんなり受け入れられた。
「……しかし、恋を知りたい神様ですか。なんとも色々考えさせる話でありますね。タタミ神となる前に何か、恋に関係することでもあったのでしょうか」
不思議そうなレナの発言。
言われてみれば確かに不思議である。
あの犬神は、レナを見て姉君と言っていた。横恋慕とはまた違った話だろうが、その姉君の恋の行方が、犬神にとって何か遺恨となるようなものであったのだろうか。
神々の恋というのは、得てしてロクでもないものだが……さてこの地の神様は何をどうして恋を知りたいと思うようになったのだろうかね。
少しの沈黙の後、レナは俺たちに対してとんでもない事を言ってきた。
「カオル、マコ。二人でデートをしてみてはどうでしょう。普段から仲の良い二人なら、普段してないことをすれば恋人っぽく見えたりして、それが解決に繋がるんじゃないかな〜と思うてあります」
「恋人のフリ……ですか」
茉子と俺がデート。
……いやこれ逆に難しくね? どうするんだよ。奴ら曰く「側から見れば恋人のやりとり」とか言われてるんだぞ? どないせいっちゅうんじゃ。
うむむと俺が唸っていると、慌てたようにレナは補足を挟む。
「あっ、いえ。別に無理にする話ではないと思いますので、これは一つの方法として考えておけば良いかと。わたしも正直、なんと言ったらいいのやら……といった感じなので」
レナ自身もその場しのぎでしかないことを自覚しているのか、やや険しい顔をしていた。
そして、レナはどういうわけか──
「カオル、申し訳ないですけど席を外してもらえますか」
なんて言った。
ま、女同士色々あるんだろうさ。
「ん? あぁ、そういうね。了解」
特に抵抗する理由も無く、俺は部屋の外で待機することにした。もちろん聞こえないようにやや離れたところに移動している。
──でえとなるものか。よかったな──
そしていきなりこのザマである。
うるせぇなクソッタレ。余計惨めになるだけだろうが。
──……はぁ──
てかお前もお前だよ。
何猫被ってたんだか。俺相手に被ったところで意味なんてねえだろう。
──あのね馨。あれは猫被りじゃないの──
うぉっ、いきなり変わるな気色悪い。
──そもそも、私は虚絶じゃないから──
は? と。
その発言に首を傾げていると、暗闇の中から現れたのは……いつぞや夢で見た和装の女。長い黒髪と相まって、大和撫子というものを具現化したようなものだ。
何処と無く見覚えのある顔立ちは、何故か忌避感を与えてくるが、その理由は全くわからない。
「こうして顔を合わせるのは初めてだね、子孫殿」
そいつは心底呆れ返ったジト目を俺に向けながら──
「改めて。私は伊奈神京香──遥か過去の亡霊、そして殺し殺されの輪廻を描き出した張本人。あなたの憎むべき存在の一人だよ」
とても優雅に、見る者を魅了するような美しい一礼と共に……自らを伊奈神京香と……そう名乗った。
始まりとなった復讐鬼の女。
この地の稲上の呪わしき因果を紡いだ女。
強いて憎むとすれば、この女が俺の憎悪の矛先ともなるが……
「あっそ」
そんなことはどうでもいい。
問題は──
「で? あんたは出てくる理由が無いよな。魔物を憎み殺し続けるだけなら虚絶の方が都合いい筈だが」
「あら、所々で出てたつもりなんだけど虚絶の愉快な点だと思われてたのかしら」
「てっきりもう残滓くらいしか残ってねえと思ってたよ」
「残念ながら意志力……ううん、気合と根性で魂を現世に縛り付けるくらいは余裕余裕」
「化け物め」
「笑えない冗談だなあ」
ケラケラと笑う、この化け物の目的だ。
「はっ、数千年前も憎しみを滾らせ続けて殺せ殺せと嘯く女を化け物以外の何者と言えばいいんだよ」
「元が大き過ぎたってことか……なるほど」
「説明しろよご先祖様」
「後でね子孫殿」
はぐらかされるのも想定内だ。
まぁここで誰かに聞かれても面倒なだけだし、ここはご先祖様に乗ってやるとするか。
腕を組んで壁に寄りかかると、そこのご先祖様は顔を覗き込んでくる。ムカつくので顔を逸らすと、また覗き込まれる。イタチごっこをするつもりは無いので仕方なく向き合って文句をつけてやる。
「やめろ」
「ほんとそういうところそっくり」
「……似てんの? あんたと俺が?」
直系の子孫とは言えない関係なんだが、何故似ているのだろうか。先祖返りの所為か? いやでも……と、頭を悩ませていると、ご先祖様はシンプルに切り込んできた。
「好きな相手に素直になれないところとか。実際さ、大好きなんでしょ。あの女の子のこと。夜這いかけたら?」
「んなはしたない真似出来るか。それこそ裏切りだ」
「どうかなぁ。あの子、多分ムッツリスケベだし」
「関係あんのそれ」
てかえらく現代語に慣れているなぁ。
「そりゃキミから色々吸って学習してるし。あぁ、いっそ古文の授業にしてあげた方がよかった?」
「勘弁してくれ。それとナチュラルに頭読むな」
「ごめんごめん。年頃の男の子だし色々と桃色な妄想もするよね」
「……そんなこと……」
「ちなみに私は好きな男をネタに──「わー! わー! うるせぇやめろや! 誰がご先祖様の性事情聞かせろって頼んだよ!?」……今の人ってのはだいぶ純情だねェ。別にそういう意味でもないのに」
んな大昔のジョークを言われても……とか思いながらため息を吐く。化け物とは言ったが、人の視点に立ては俺も化け物だ。そう警戒することもないのかもな……
「……あっ」
しかし急にとても間抜けな声を出すご先祖様。はてどうしたのやらと顔を上げると、とても間抜けな横顔を見せている。
「おいおいなんだその間抜け面は……って、あ」
そしてその間抜けを笑いながら、俺もまた間抜けな声を出して、間抜けな表情をする。
──茉子とレナが、それはもうすごい表情で俺たちを見ていた。呆れ、怒り、悲しみとかとかとか……まぁ色々なものを乗せた視線をジッと向けている。勘弁してくれ。
レナはともかく、茉子に至ってはなんか殺意みたいなものまで出してるぞオイ。
「誰ですかその女」
絶対零度の声と視線がご先祖様に叩きつけられる。
「絶対今アマって思ったよこの子!? びっくりだわ。えっ、ちょっと待って、いい子やなぁとか思ってたんだけどいきなりぶぶ漬け食らわしてくるって……」
しかしご先祖様、これをスルリと回避する。ワチャワチャと表情が変化して、何処と無く言い回しがどっかの誰かそっくりだからとても気になる。
「馨くんから離れて下さい」
そんなヘラヘラしたご先祖様に痺れを切らしたのか、だいぶ敵意を持って茉子が言い放った。こんなにツンケンしたコイツを見るのは久しぶりだが……なんだ、どうしたんだ?
だがご先祖様は余裕綽々といった表情で実に楽しそうに笑いながら。
「わーぉこれってジェラシーってヤツ? あは、実物はもっと可愛いや。キミもそう思うよね? レナちゃん」
茉子を可愛いと評価してからレナにキラーパスをした。もちろんレナは想定外なので──
「ひょわっ!? 急にわたしに振られても!?」
……可愛い。
「んー、まァこんなもんかな。また後でね馨。私帰るから。あとレナちゃん。ちょっとキミね、やらしいの直結思考はどうかと思う。気をつけるんだぞ、お姉さん心配だからな」
と、ご先祖様は言い放ち、ドロリと影に溶けて消えた。
その様子を見て、茉子は何かを納得したような表情を浮かべたが、しかし一瞬で不機嫌な表情になってツカツカと近寄ってくる。
「な、なんだよぅ」
「変な香水とか付けられてない?」
「いや全然」
「……」
ズイ、と顔を寄せてスンスンと匂いまで嗅がれてしまう。小声で「あは、馨くんの匂いだ……」とか言ってるの聞こえてるぞお前。
──ひゅー、愛されてるねぇ?──
やかましい!
──もういっそ告白しちゃえよォ──
出来ないんだよ俺は!
彼女が俺を異性としては見れないだろうし、そもそも俺は魔人だし……不幸にするし……
そう返したところで。
──ふーん……魔人ねェ?──
さっきまでの浮ついた声が鳴りを潜め、冷たく恐怖すら覚えるような、嘲りの声が響いた。
呆れ返るようなため息の後に京香は──
──大きく出たな小僧。殺人技巧に振り回されて、殺しと戦いの区別すら付かぬ愚者が。魔人を名乗るなよ貴様。雑兵狩りで驕ったつもりか──
元来の彼女の口調と共に、稲上馨の異常性を斬って捨てた。
唖然とするしかない。復讐鬼であったことは知っていたが、まるでそれは初めから戦いに生きた者の発言そのものだった。
自己否定はまあいい。というか、実際魔人としては底辺だろう。
力だけで見れば。
だが存在としてはほぼ同じの筈だ。人並み外れた性能を持ちながら、それを十全に使えば人なぞ塵芥のように潰せてしまう俺たちは紛れもなく魔人だ。
だというのに……魔人を名乗るなと言い切った。その心中がわからない。
──つーかさァ? キミ馬鹿だよね。人を不幸にする? だから何よ。どうせ生きている限り迷惑かけるしかないし、別にいいじゃん──
でも、俺は……
──なるほどね、キミは刀の怨念に突き動かされてきたのか。だからそういうネガティブな発想に繋がると。よし来た、ここはご先祖様に一つ任してみなさい──
どうするつもりだ?
──まぁお楽しみ。虚絶の話の後にでも──
「……もしかして、キョーカなのですか? あの人は」
「まぁ……君のよく知るキョーカの中身というか、複雑な話らしい」
レナの疑問にサッと答えつつ、余計なことしかしねぇなファックご先祖様と内心毒を吐く。芳乃ちゃんも茉子もご先祖様には色々複雑な感情を抱いているであろう……とは予想していたが、まさか俺が極めて複雑な感情を抱くことになろうとは。
「んで、話は終わったの?」
「ええ。別に大した話ではないので」
「でもこれは乙女の秘密なのでカオルは聞かないで上げて欲しいのであります」
「へいへい。そこまで無粋じゃないよ」
話を戻せば乙女の秘密。
なら首を突っ込む話でもあるまいて。
「じゃあ、いつまでも世話になるわけもいかんし、俺たちはここらで帰るか?」
「そうですね。確かにお邪魔でしょうし、帰らないと。またなっても困るだけだから」
まぁ事情説明くらいしかするつもりもなかったし、乙女の秘密とやらが予想以上に長引いた感じだしな。
茉子もさっさと帰ることに異議はないようだ。こいつだって迷惑になるのは嫌いだろう。
ただ……
「そうでありますか」
少し寂しげなレナを見ると、罪悪感というか……悪いことをしたなぁという気分になってしまう。
考えてみれば彼女、気付けば渦中にいるのに、必ずと言っていい程に知らなくていいんだと言われる側なんだよな。
……知る側も知らない側も辛い、か。
世の中ってのは不公平に出来てる。
悲しい程に──
なんとかしてやりたい。なんとかしてやりたいが……正直、あんなに人の良い彼女にこんな血と憎悪に塗れた話を振りたくもないし、関わって欲しくもない。彼女はここに来るべきじゃない。
「レナ、その……あんまり教えられなくてごめん」
「? 何故そのようなことを? 別に私は、なんだか悪いことをしてるみたいで少し童心が踊ってたり、このまま甘いものでも食べに行きたかったなあと思ってるだけでありますが……」
……はい?
あっさりとそう返されて俺は唖然とする。横で茉子はクスクスと笑った後に、困惑する俺に捕捉を入れる。
「ほら、レナさんはこういうこと馴染み無いですから、結構ワクワクしてたりするってさっき言ってたんですよ」
「……つまりなに? 俺の勘違い?」
「で、ありますね」
「ですね」
「はっず……」
赤っ恥かいたよぅ。
顔の熱を自覚して頭を抱えると、それを見た茉子は腹を抱えて本気で笑い、レナはオロオロしながらも小さく笑っていたのだったとさ。
「カオルは可愛いですねぇ」
「やめてよぉ!?」
そんなどっかの黎明みたいな言い方されると余計に恥ずかしいよレナァァァ──ッ!!
■
「あー、恥かいた」
「あは。真っ赤になってたの可愛かったよ」
「うるせー」
帰り道。
馨の隣を歩くことの嬉しさと楽しさに密かに心を躍らせながら、茉子はレナとのやりとりを思い返していた。
──馨が出て行った直後。
レナは真剣な表情に切り替えて、茉子を見つめた。
その視線は気を抜けば飲み込まれるほどの威圧を持った力強いもので、相対する彼女もまた姿勢を正して言葉を待つ。
「マコ」
「なんでしょう」
「カオルのこと、好きですね」
「………………………………………………………………………………」
単刀直入に言われた本題に、茉子はシンプルに沈黙した。実にたっぷり1分以上の沈黙である。
「何故……………………それを?」
動揺という動揺を隠せず無様を晒しながら、これまた沈黙と共に無理なポーカーフェイスで問う。
しかし帰ってきた答えは──
「隠すならもう少し上手く隠さないと。マサオミとカオルを同じように扱っていると自分では思っているのでありましょうが、あまりにもロコ、ロコ……コロモ、じゃない。ロコツ? という奴ですよ」
あぁ無情かな。
診療所での公開処刑を超える切開であった。更なる動揺が茉子を駆け巡る。多分彼女はボロボロだろう。もはやポーカーフェイスは崩れ去り、等身大の常陸茉子が現れている。
それほどまでに焦り、そして動揺した顔だ。
「そんなにですか……!?」
「そんなにであります。多分クラスのみんなも察してると思いますよ」
「え、マジですか。ワタシ忍者なのに……」
「ニンジャでも無理なものは無理と、古事記にも書いてあるのですからマコも諦めては?」
なんだか間違った日本史をぶつけられながら、茉子は深い諦めのため息を吐く。
(……ワタシ、そんなにわかりやすいかな……)
そこまでわかりやすかったかと思い返してみるが、茉子としては『いつも通り』をしているだけに過ぎない。例えそれがどっからどう見ても好きだということがモロバレなものであったとしても、彼女にとっては隠し切れているものなのだ。
(馨くんには、バレて……ないよね? ──怖いよ……ワタシとあなたの関係が壊れるの、怖くて……)
ただ、もしそれがバレていて、気を遣われていたとしたら……やっぱり、怖い。もしも想いを告げてしまったら……と思うと怖くてたまらなくなる。
そんな様子を察したのか、レナは安心させるように言った。
「カオルはニブチンだから、気付いていないので安心してください」
「ホント、ですか?」
「はい、ホントです。こういうことでウソは言えませんので」
「……よかったぁ……」
心底ホッとした様子の茉子を見ながら、レナは内心馨がそんなに敏感な男ならこんな面倒な事になってないなと感じた。
……いや、馨が敏感で積極的な男でも茉子が面倒くさいので大して変わってないかもしれない。
脳内を駆け巡る雑念を振り払い、レナは茉子の言葉を待つ。
しばらくして彼女は。
「ま、そうですね。ワタシは確かに馨くんのことが好きです。愛していますよ」
己の内面を隠す事なく、素面でこう告げた。
「そこまではっきりと言えるならなんで……」
「だからこそ、なんですよレナさん。ワタシと馨くんの関係性は兄と妹、姉と弟の表裏一体……必要に応じて互いの立場を変えて甘え合う。それが延々と続いてしまったから、ワタシは彼に想いを伝えられない」
その言葉にはなるほどと、レナは頷いた。
が。直後である。
「馨くんは兄としてワタシの弱いところを受け入れて、甘えさせてくれた。弟としてワタシに弱いところを見せて、甘えてくれた。先に来るものは、家族愛なんです」
……はて? と。耳を疑うような発言が飛び出てきた。
(いや全然ハト外れですよマコ……)
「ワタシを姉か妹として見ている。異性として見ることは無いし、ワタシだけが彼を異性として見ている。無理に想いを告げて苦しめたくないし、拒んだ後悔をさせたくない」
悲しげに語る茉子の言葉を聞いて、レナはふと疑問を覚える。
馨が茉子を特別扱いしている、そして茉子も馨を特別扱いしている。馨も茉子も想い合っているというのに、かつての関係性から異性として見るにはあまりにも難しいと思い込んでいる。実に面倒な……だが二人の極めて複雑な事情を考えれば、その面倒くさい部分を切り捨てられない。
(言ったらこれ絶対に否定される流れですね。うーむ、わたしでは難しい問題です)
そしてかなりの頑固者である二人に、想い合っているのだと伝えても否定されるのが関の山だ。
二人のうちどちらかが、想いを伝えねば二人は決して結ばれない。伝えてしまえば転がり落ちるように結ばれる……そういう確信がレナにはあった。
(これは……どうしたものでしょうか? デートで意識が変わると良いのですが)
……まぁ、その第一歩にして最終段階が難しすぎるのだが。
妬心を煽ったとしても、彼らは妬心の上手なやり過ごし方を知っている。まずそういう方法は難しいだろう。
(マサオミとヨシノみたいに、どっちかのエンジンがかかりやすければ良いのですが、これでは厳しい……どちらも奥手すぎるのです。いっそエロ同人みたいな展開でも起きたら……あっ、起きてアレでしたね……)
なんかもう泣きそうになった。
超奥手、かつ相手を思いやるからこそ身を引き合う男女なんて相手にしたくない。裸を見たりしてまんざらでもなさそうなのに「いやそんな事は……」は無理があるでしょと。
が、しかし。
両方とも可愛らしくて仕方ないのだ。
「レナさん?」
「はっ、失礼しました。とにかくマコはもっとアピールしてみるのですよ」
「アピール……」
と、ナニを想像したのやら、茉子は頬を赤らめて俯く。そんな様子に愛らしさを覚えてついつい抱き締めたくなったが、そこはレナ・リヒテナウアー。見事に耐えてみせた。
……が、顔がニヤケているのはご愛嬌か。
「……アピール……裸見たっていいって言ったのに、手も出してくれない馨くんへのアピール……」
ただ茉子からしてみれば、裸見ても馨の馨くんが馨さんになった程度くらいしか反応してくれないような相手に、どうやってアピールしたものか……というところだ。
そもそもそういうことして鬱陶しく思われないだろうか? また変な誤解されないだろうか? 色々と不安がある。
「マ、マコ? どうしたのですか?」
「でも鼻の下伸ばしてくれたし……きっと魅力が無いってことじゃないと思うけど……」
「何もその……そういうアピールではないのですが……」
「だってレナさん、馨くんですよ? 人のおっぱい触っておいてうるせぇ出てけとか宣う馨くんですよ?」
「それはきっとテンパってただけでありますよ」
「それにしたってワタシに黙ってナンパしてたりとかするし、きっと……ワタシより素敵な人見つけてるだろうし……ワタシはあくまで初恋っぽいし……」
拗ねた顔をしながらそんな事を言われてしまえば、「どう考えても初恋どころか現在進行形で恋してるのでありますが」と言いたくなったがここはグッと堪えた。
「何が笑顔の素敵な女の子なの……忘れてたクセに……」
「と、とにかくマコ! 普通にそれとなく好きだというのをアピールしましょう! 例えば恋人繋ぎしてみたりとか、そういう感じで!」
──このままでは危険だ。惚気られる。
眼前の危険を前に、レナは回避行動を取った。……正直、興味は尽きないところではあるが。
ただ唯一、気になったことがあるとすれば。
「……マコはカオルのどんなところを好きになったのですか?」
「へ? そうですね……どんなところと言えるほど具体的ではないのですが」
「──カッコいいところも悪いところも、バカなところもダメなところも、全部含めてどうしようもなく──」
「愚かしいほどに大好きなんです。正直、殺されたっていいくらいに。子供の頃から、ずっと」
あぁ、これは最強だと。
理由がどうでもいいくらいに愛しているのだと。
聞いたこっちが後悔するほどに、レナは砂糖を食わされた。
そして双方共に死ぬほど面倒くさい事実に、自分が人を好きになったらこうはならないようにしようと、固く誓うのであった……