とある転移の学園都市 作:Natrium
第一話 交錯せし二つの世界 Inadvertent_Contact_With…
1
◇中央暦1639年1月24日午前8時 クワトイネ公国
その日は快晴な空が広がっていた。
ワイバーンと呼ばれる飛竜を操り、竜騎士であるマールパティマは公国北東方向の警戒任務についていた。
公国北東方向には、国は何もない。
東に行っても海が広がるばかりであり、幾多の冒険者が東方向へ新天地を求めて進行していったが、今まで帰ってきた者はいない。
哨戒勤務の必要性、それは最近ロウリア王国と緊張状態が続いているため、軍船による迂回、奇襲が行われた場合に早期に探知、対策をとるため、彼は相棒を公国北東の空へ飛ばしていた。
それは突然の出来事であった。
「………?」
彼の眼が遥か遠くの空に飛翔する黒い何かを捉えた瞬間———
どっっっガッッッ‼‼‼ と。
彼とその相棒である飛龍は真横からの謎の衝撃により吹き飛ばされた。
あの黒い飛行物体は何だったのか、どこから攻撃を受けたのか。愛騎から投げ出された竜騎士にそんなことを考える余裕はなかった。
未確認騎とは距離があったことが幸いして、直接的なダメージこそ無かったものの、現在進行形で高度四千メートルからパラシュートなしのスカイダイビングを行っている彼にとって、それはなんの慰めにもならない。
時間にして数十秒、高度を半分にまで下げ、死を覚悟したマールパティマであったが、
そんな彼に救いの手が差し伸べられた。
いいや、違う。そのような生易しいものではない。彼が知りうる限り、それは『手』などというモノではなかった。
では何だというのか。
———それは『鉤爪』であった。
ならば、自身の相棒が救ってくれたのか、と竜騎士は考えたが、実際にはそうではない。
実際に、彼を掴んでいたものは『黒金の鉤爪』であった。
正確には。前面が真っ黒に塗りつぶされた正体不明のナニカから伸びる、機械仕掛けのアームであった。
自分は助かったのだろうか? などと楽観的に考えることは、彼にはできなかった。
当然のことだ。窮地を救われたからといって、この黒いナニカが完全な善意だけで助けてくれたと考えるほど彼は盲目ではない。
そもそも、コレは何なのか。彼が知る限り近隣諸国の飛龍にこんなモノはなかったし、噂に聞くとある文明圏国の飛行機械も、こんな文明圏外まで航続距離が続くとは考えにくい。
どこかの国の秘密兵器ならば、と仮定するも、ここまでの速度を誇る兵器があるならとうに世界征服など果たしているだろうし、何よりこんな辺境に用があるとは思えない。
ならば———、と思考が迷走し始めたマールパティマであったが、ふと首を傾げながら、
(おかしい。この飛龍の速度で振り回されたら人間などとうに死んでいるはずだ。しかし、何故減速を——)
などと、疑問を浮かべると同時に、
ストッ‼︎ という軽快な音と共に竜騎士はその解を得ることになる。
気づけば。
自らの体を掴んでいたアームが離れていた。だからといって再び自由落下を始めたわけではなく、まるで何かに跨っているようで——。
———そこまで考えて、
「ッ——‼⁉⁇」
声が。
声が出なかった。
跨っていたものがSAN値を脅かすようなクトゥルフ的生命体だったから。生物としての本能が絶対に勝てないと警鐘を鳴らすような危険生物だったから、というわけではない。
その感触自体は慣れ親しんだものであった。戦場で苦楽を共にしてきた相棒のそれであった。
しかし。
彼は自分の体の震えを止めることができなかった。どうやって、という素朴な疑問すら浮かべることができなかった。
既存の数倍の速度を誇る飛行物体という存在だけなら、まだ受け入れられた。操作性や安全性を度外視すれば三大文明圏の大国ならば可能性はあると考えることもできた。
それでも。
一切揺れることなく飛龍の五十倍もの最高速度で天を駆け抜け、
僅かな接触だけでも大惨事になる空中で、物品のやり取りをも可能とする飛行機械。
そんな化物を一体どこの国が造れるというのだろうか。少なくとも三大文明圏の国々では到底力不足だ。
速度や強度。
安定性や操作性。
どこを取っても明らかに異常。異質でしかない。
ならば。
どこの国がこの化け物を創り出したのかと、国籍の確認を行おうとするも。
ゴッッッ‼‼‼ と。
爆音を伴い、圧縮された空気が生み出した白いもやを引き連れながら、正体不明の飛行物体はマイハーク方面へ姿を消した。
2
———わずかに。
ほんのわずかに。竜騎士が確認作業に入るのが早ければ機体に描かれた文字列が見えたかもしれない。それを理解できるかはさておき、その正体に一歩近づけたかもしれない。
その手掛かりとは何か。それは機体後部の翼に刻まれている。
HsCDA-13
すなわち。
行間1
本来、このような事件は起きなかったかもしれない。
本来、召喚されるのは『日本国』だったのかもしれない。
けれども、この世界線においては。
世界をfrgay滅ibgsの運命から逃すためのtyhs喚kdbwを行おうとしたwghfd神klretは、『gyu神ikp浄dgt』の機能を持つ右腕の所有者の魂の輝きに惹かれ、その英雄とそれが所属している国家をgvs呼mkrvpとした。
しかし。
想定外の現象により、力の大半が消滅したために、召喚できたのはとある一都市のみであった。
それでも、かの世界において、
その都市は、世界最大の国土面積を持つ大国と
故に、この世界線では本来の歴史とは大きくズレが生じるだろう。
それは正か負か。どちらに転がるかは未だ誰にもわからない。
故に、ここから先は未知の世界線。
誰も観測したことがない、何もかもが未確定の世界線。
これは、そんな世界線で巻き起こる、『変革』の物語。
3
『しっ、司令部‼‼ 我、未確認騎を発見、及び確認しようとするも、速度が違いすぎる‼‼ 最低でも、本騎の数十倍の速度が出ている‼‼ 未確認騎は本土マイハーク方向へ進行、繰り返す。マイハーク方向へ進行した‼‼』
報告を受けた司令部では、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
眉唾物ではあるが、本当にワイバーンの数十倍の速度の未確認騎が存在しているなら、クワトイネ公国の経済の中枢都市マイハークは壊滅的な打撃を受けるだろう。
攻撃を受けたら、軍の威信に関わる。
だが、敵騎は速度からしておそらく既にマイハークへかなり近づいているはず。
もしくは既に侵入しているかもしれない。
それでも、何もしないよりかはましと、
司令官は通信魔法で、第六飛龍隊へ全力出撃の命令を出そうとするも、
『司令部へ報告‼‼ 第六航空基地の二番滑走路に国籍不明の航空機が‼‼‼』
ついに。
運命の歯車が噛み合い、本来の仕様とは異なる形で動き出した。
4
こうして、史実とは違う形で二つの世界のファーストコンタクトは成った。
これから始まるのは、本来の歴史とは異なる、圧倒的な不条理による一方的な蹂躙劇である。
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