とある転移の学園都市   作:Natrium

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何故か筆が進むようになった、何故だ?


第十七話 命刈り取る無慈悲な歯車 Mechanical_Slaughter

「さて、この場合コストが最小限に抑えられる編成は、っと……」

アルタラス王国を撮影した衛星写真を見ながら、担当者は分析する。

現在アルタラス王国内のパーパルディア皇国軍は、首都ル・ブリエスから少し離れた場所にワイバーンロード用の滑走路を置き、基地を建設している。

学園都市が攻撃目標としているのは四点だ。

まず、先に述べた航空基地。

次に、首都ル・ブリエスの港に停泊している二十隻の戦列艦。

そして、首都から北方約四十キロメートルの位置にある陸軍基地。

最後に、アルタラス周辺海域で確認された最新型の竜母。

アルタラス王国内でのパーパルディア皇国軍はこの四箇所に集中しており、幸運な事に人口密集地に基地は無い。

市街地にも若干数兵員が確認されたが、駆動鎧部隊を投入すれば直ぐに無力化できるであろう。

「駆動鎧は確定として、『地殻破断』と——いや、『緻密爆破』で十分かな」

戦争の準備は着々と進んでいた。

二日後、超音速爆撃機、HsFB-18機内にて

「……レーザー命中、敵哨戒騎、撃墜しました」

「ご苦労、引き続き頼んだぞ」

「了解しました」

射撃管制を担当しているクルーがのぞき込んでいる画面を見てみると、確かに焼け焦げた肉片が落下しているのが見て取れる。

敵は死が迫る恐怖を味わうことなく、命を落としたのだろう。

超々遠距離からの狙撃を警戒している人間など、この世界に存在している筈がないのだから。まぁ、ある意味では幸せなのだろうが。

「次の目標は十時の方向、戦列艦五隻です。接敵までおよそ三分。各員、準備をお願いします」

戦場の支配者は、ただ冷酷に獲物を刈り取るだけである。

パーパルディア皇国 アルタラス王国派遣部隊

アルタラス王国を攻めていた皇軍の大半は、王国を占領後、東を攻めるために転進した。

現在は、反乱を鎮圧、統治するために小規模な軍が残されているだけだ。

首都ル・ブリアスの軍港には戦列艦二十隻。そして少し離れた所に陸軍の基地に、人員二千名とワイバーンロード二十騎。そして首都から北へ約四十キロの位置に人員二千名の陸軍基地がある。

陸軍大将リージャックは首都ル・ブリアスを基地から眺めつつ、傍らに立つ幹部と話をする。

「東の国、フェン王国に派遣していた我が軍は、全滅に近い被害を出したらしいな。いったい何があったのだ?」

「解りませぬ。皇軍が敗れたなど、今でも信じられません。敵は何千隻もの『数』で攻撃してきたのではないでしょうか」

「いや、たとえ文明圏の国が何千隻で今回全滅した派遣軍に挑んだとしても、多少の被害と作戦の遅延は予想されるが全滅はしない。今回の戦いは何かがおかしい」

「……、」

大将リージャックの顔が悲壮感に包まれる。

「まさか、ムーか?」

「な、そんな‼」

最悪の状況が脳裏に浮かび、大将と幹部は戦慄する。

「いや、まさかな。いずれにせよアルタラスとフェン王国にはかなりの距離がある。敵がここに来る可能性は低かろう」

二人は基地に設置された建物の上から港を見る。

見る者に威圧感を与える皇国の百門級戦列艦が誇らしげに停泊している。

それが実に二十隻、周辺国と比べ比類なき強さを誇る艦。

「それにしても、美しいな」

「えぇ、全くです」

陸軍大将リージャックは、艦に対して素直な感想を述べる。

しかし。

美しく穏やかな風景。その景色が突如一変した。

ゴウンッッッ‼ と。

爆音を伴って超音速爆撃機が大気を切り裂き、上空を通り過ぎる。

次の瞬間、百門級戦列艦スパールが大きな火柱に飲み込まれ、爆発した。

いや、スパールだけではない。アスーラ、ピニック、レウスーラ、港に停泊していた二十隻の戦列艦が全て、一撃で焼き切られたのだ。

「なっ⁉ 何が起きて‼⁉ っつ、て、敵襲‼‼」

慌てて陸軍に指示を出したが、もはや手遅れだ。港には一隻の船も残っていない。

「何という事だ‼」

上官から末端まで含め、全員が唖然とする。何が起こっているのか分からない。

しかし、悲劇は彼らだけを見逃してはくれなかった。

ふと、空を見上げた隊員が叫ぶ。

「おい、あれは何だ⁉」

視線の先にある飛行機械の本質を彼が理解できたのかは分からないが、発生した事象は一つだけだ。

爆撃機に並走している超音速輸送機のハッチが花開いた。

ただし、そこから舞うのは桜の花弁などではない。

HsAFH-11

六枚羽とも呼ばれる無人攻撃ヘリが、アルタラスの戦場へと解き放たれる。

一機であっても並大抵の戦力では――それこそ列強国が本腰を入れない限りは――撃墜出来ない戦闘ヘリが、一度に五機。

まともな対空兵器を持っていない派遣部隊には荷が重過ぎる。もっとも、対空砲があったとしても、撃墜出来るとは思えないが。

五機のヘリコプターは、音の三倍のもの速さで陸軍基地に向かってくる。

「通信兵‼ クソ、恐らく学園都市だ、急ぎ本国に連絡しろ!」

「はっ!」

通信兵が魔信器に向かうのを見て、リージャックは嫌な予感が的中したことを嘆く。

(ちっ、飛行機械だと⁉ やはりムーが関与していたか、クソったれ‼ 見たところ新型機のようだが、何故我らの邪魔をする‼‼)

飛行機械を完成させているのは、この世界ではムーと神聖ミリシアル帝国だけだと認識されている。

もちろん、学園都市も第八帝国も航空機を完成させているが、転移国家であるため、あまり知られていない。少なくとも、パーパルディア皇国には。

ただ、彼が学園都市の力を正しく把握していようがいまいが、後の歴史には何の変化も与えなかったのだろう。

なぜなら。

「っ、大将‼ 奴が戻ってき——

ゴッッッばっっっ‼‼‼ と。

飛び去った超音速爆撃機が機首を翻して舞い戻り、破壊の雨を振り撒いた。

兵舎が、砲台が、司令室が、すべて焼き払われて灰燼と成り果てる。

幸いにもリージャックは直撃を受けなかったが、余波による建物の倒壊に巻き込まれてしまった。

「が、ごほ、何が、何が起き、て」

血みどろになりながらも、瓦礫から這い出すリージャック。

そこに。

そこに、舞い降りたのは。

三対六門の銃口を持つ漆黒の———

プツン。

Facts

◆アルタラス王国の首都ル・ブリアスの港に停泊していたパーパルディア皇国の戦列艦隊は、『緻密爆破』による爆撃によって全て撃沈された。

◆首都ル・ブリアスの近郊の基地及び、首都から北に四十キロメートル地点にあったパーパルディア皇国の基地も、『緻密爆破』及び『六枚羽』により無力化された。

◆近海で試験航行を行っていた新型竜母も、ついでのように爆撃を受けた。

◆アルタラス王国内のパーパルディア皇国軍は、文字通り全滅した。戦闘開始から十分も経たない内に。

◆陸軍大将のリージャックは、六枚羽の攻撃を受けて死亡した。

◆通信兵も空爆に巻き込まれ、軒並み全滅している。よって、この戦いでの学園都市の脅威が本国に伝わることはない。

◆アルタラス王国は、パーパルディアの支配から解放された。




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