とある転移の学園都市   作:Natrium

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原作コピー判定が入ったので大幅修正。
というか見直してみたら、ホント酷かったですね。
まんまコピーだし文体も(事情があったとはいえ)この時は荒すぎたし……。


第二話 魔術で無知な子供たち Welcome_To_Science

    1

 

「貴国は農作物の生産に産業の重きを置いていると聞いているのだけど」

「……農業しかない、と言い換えても過言ではない程に比重が高いのは事実です。……それが何か?」

 

 異世界の国家とのファーストコンタクトの担い手は、まさしく二十にも満たない少女であった。

 

「先ほどの技術支援の話。その食料との交換で手を打とうではないか、と思った次第でね」

「っ、良いのですか⁉ あれだけの技術を、ただの食糧輸出だけで……ッ‼」

 

 名を雲川芹亜。

 統括理事会メンバー・貝積継敏のブレインを務め、学園都市第五位の超能力者・食蜂操祈に匹敵する程の人心掌握術を一切の能力を使わずに再現できる。それだけの特殊技能を持つ、裏の世界の住人であった。

 彼女は囁くように大使へ告げる。

 

「貴国の農作物は質がいい。学園都市にも生産プラントはあるが、やはり生の食品を求める声が多数出ている」

「? 食料自給率が低い訳ではないのですよね?」

「生産プラントと言っただろう? 人間が一から種を植えて、手間暇かけて育てるという訳ではない。まぁ農作物の完成度は高いためそれほど問題は無いが……肉類は違う。あの、合成肉特有の食感を苦手とする学生もそれなりに多いのだけど」

「? ???」

「……とにかく、生産分とは別に食料の輸入が必要だということさえ分かってくれればいいけど」

 

 雲川は机に置いていた書類を手に取り、大使側へと滑らせる。

元より食料の買い付け量はさほど多くない。この書類を見る限りでは、せいぜいが娯楽品にしかならない量だ。

人口はおよそ3()8()0()()()で、輸入量としては全体の五パーセント程度。

これでは貿易面での赤字が懸念されるが、結果的に得られる経済効果は絶大であるのも事実。

そのため、大使は事前の指示に従ってこの条件で受けようと考えたが、

 

「なるほど、理解しました。ですが……、何故これほどの譲歩をしていただけるのですか?

 いくらなんでもこの条件は、破格すぎではないでしょうか?」

「……いいや、それほど深く考える必要はないさ。これから良き隣人になり得る貴方たちへの、ほんの些細な心遣いだよ」

「っ……、感謝します。雲川殿……」

「改まらなくていいけど。私たちの関係性は主と従ではない。あくまでも対等な、友好国としての関係だ」

「っ⁉ で、ですが―――」

 

 これだけの国力を持つ巨大国家と対等?

 しがない貧乏国家であるクワトイネが、弱点の一つも見当たらない学園都市と対等な関係だと?

 何かの聞き間違いではないかと、大使が発言しようとするが、

 

「気後れする理由は無いぞ。なぜなら貴国は、私たちが認めた良き友人。これからも、仲良くしていこうではないか」

 

 そんな、驕ることのなく謙遜に満ち溢れた発言を聞いて。

 

 

(学園都市とは、なんと崇高な存在であるのか……。たとえ世界が貴国を反発しようと、私は一生あなた方へ付いて行きますぞ)

(何だちょろいな)

 

 

 

 

    2

 

 

ロウリア王国 王都 ジン・ハーク ハーク城 御前会議

 

 月の綺麗な夜、秋になり、少し涼しくなったこの日の夕方、城では松明が集れ、薄暗い部屋の中、王の御前でこの国の行く末を決める会議が行われていた。

 

「ロウリア王、準備はすべて整いました」

白銀の鎧に身を包み、筋肉が鎧の上からでも確認出来るほどの筋肉を持った、パタジンと呼ばれる将軍は王に跪き、そう報告した。

 

「二国を同時に敵に回して勝てるか?」

 

 威厳を持った声で、三十四代ロウリア大王、ハーク・ロウリア三十四世はその男に尋ねると、

 

「片や農民あがりの小国。もう片や、作物すら育たない不毛の土地。負ける要素など、何処にも見当たりませんよ」

 

余裕を持った表情でパタジンは嘯いた。

 

「宰相よ、一ヶ月ほど前に接触してきた学園都市なる者共の情報はあるか」

 

 学園都市は、ロウリア王国にも接触したが、事前にクワ・トイネ公国と、クイラ王国と国交を結んでいたため、敵性勢力と判断され、ロウリアに門前払いを受けていた。

 

「ロデニウス大陸のクワトイネ公国から北東に約一千キロメートルの所にある、新興国家です。一千キロも離れていることからも、軍事的に影響があるとは考えられません。自ら『都市』と名乗ってあるだけあって、面積も七百平方キロメートルと非常に小さい小国であるようです。また、奴らは我が部隊のワイバーンを見て、初めて見たと驚いていました。その後に、似たようなものならある、などと喚いていましたが、小国如きにそのようなものがあるとも思えないため、竜騎士の存在しない蛮族の国と思われます。情報はあまりありませんが」

 

 航空支援の有無は、戦場で目に見えるほどの差を生み出す。

空爆だけで騎士団は壊滅しないが、一方的な攻撃を受ければ精神への負担も大きい。

 士気への影響、さらに偵察などの効果も認められるのだ。

 それがない分、学園都市は弱い。少なくとも彼らはそう判断した。

 

「そうか……。しかし、この作戦が終わればロデニウス大陸が統一され、亜人どもが大陸から消滅すると考えると……、何やらこみあげてくるものがあるな」

 

王はしばらく湧き上がる愉悦に浸っていたが、これを邪魔する者が現れる。

 

「大王様。統一の暁には、あの約束もお忘れ無く……、くくくっ」

 黒衣にフードで顔を隠した不気味な男が、あからさまな嘲笑を浮かべながら王に向かって囁いたのだ。

「ちっ、解っておるわ!」

 

 その不快な声に耐えられず、怒気をはらんだ声で王は言い返す。

 

(三大文明圏外の蛮地と思ってバカにしおって。ロデニウスを統一したら、フィルアデス大陸にも攻め込んでやるわ)

「……将軍、作戦の概要を説明せよ」

 

王は歪んだ顔を隠そうともせずに、パタジンに命令した。

「説明致します。今回の作戦用総兵力は五十万人、本作戦では———」

将軍からすべての概要を聞き終える同時に、

 

「そうか……。ではこれより、クワトイネ、及びクイラへ対する侵攻作戦を開始する‼ 諸君、今宵は我が人生で一番良い日だ! 吉報を期待しているぞ‼」

 

フゥーハハハ! と笑いながら開戦の合図を告げた。

 

 

 

 

 

 3

 

学園都市 クワトイネ大使館

 

 クワトイネとロウリア国境にて、ロウリア王国の兵力が集結しており、戦闘が近いと判断したクワトイネ側は学園都市に説明に来ていた。

 

「と、言うわけでロウリア王国との戦争で我々が敗戦すれば、貴国はともかく、クイラ国に対して約束した食料を供給できないでしょう。あなた方がクイラへ食糧を輸出できるなら別でしょうけどね」

 

 暗に、産業資源の宝庫であるクイラはクワトイネが滅ぼされたら崩壊する、と告げた駐留大使であったが、

 

「よせよ、それだけならこちらが援軍を出す理由にはならないけど。食糧生産プラントを大幅に増設すればいいだけの話だ。今じゃ外周回りには大量のメガフロートなんてものもあるし、場所はあり余っているけど」

 

 統括理事会のブレインである雲川芹亜は一切動揺を見せずにそう言い返した。

 とは言うものの、実際には学園都市だけでクイラを支え切ることは不可能だ。

 数か月前の交渉では余裕があるように振舞っていたが、本当の自給率はおおよそ八十パーセントに過ぎない。 

 そのために人口を150万人ほど多く偽造して、不足分の輸入を行おうとしたのだから。

 しかし、だ。

 

 それでは底が見えてしまう。

学園都市が、何をどこまでできるか分からない状態を維持する事。

たったそれだけで相手は自縄自縛になり、この交渉における最適解を見失う。

 

 だから。

 この学園都市製兵器による支援要請についてもこちらからは何も仕掛けない。

 悠々と相手が交渉カードを切るのを待ち、それに応じてこちらもカードを切る。

 あなた方が何をしようと、我々学園都市が揺らぐことはない、と言わんばかりに。

 

 別に学園都市側に、援軍を出すことに対しての問題があるという訳ではない。既に大国と一戦交えている上に、そもそもまともな現代兵器すら持っていない国など一時間もかからず滅ぼせる。

 

 ならばなぜか。

 それは、クワトイネの大使が心を折られて限界を超えた譲歩を行い、本国に泣きつきかけた頃に交渉がまとまったと言えば、知れずとうかがい知れるだろう。

 


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