とある転移の学園都市 作:Natrium
昼休みにランキング確認したら日刊17位だった。
な、何を言ってるかわ(ry
ありがとうございます(≧∀≦)
1
皇都エストシラント北方陸軍基地
陸軍司令室にけたたましい警報音が鳴り響く。
「緊急入電です‼‼ エストシラント南方海域にて学園都市戦力と皇国第三艦隊が交戦‼その結果、第三艦隊が壊滅。至急、包囲網を展開中の第一、第二艦隊の援護を行えとのことです」
司令室がざわめきだす。皇国軍は第三文明圏の覇者であり、そうそう負けることはないのだから当然だ。
「な、壊滅しただと‼ 皇国の艦隊が⁉」
「事実なら相当不味いですよ‼ 至急第二、第三中隊を直掩に回すべきです‼」
「あ、あぁその通りだ。第二、第三中隊は速やかに該当空域へと向かえ‼ 残りの部隊は準備を完了した者から離陸せよ‼」
「はっ、了解しました」
陸将メイガは部下に全力出撃の命令を出す。
しかし、この要請には裏があった。
竜母艦隊が壊滅したという情報は、当然海軍本部にも伝わっている。敵戦艦には強力な対空兵器が搭載されており、飛龍部隊で強襲することは不可能だと、海軍本部も同様の決断を下している。
ならば何故援軍を要請したのか。
海軍本部が下した答えはこうだ。
件の兵器は対艦攻撃にも併用可能であり、最も多くの戦列艦を海に沈めたと聞く。ならば、それを飽和させてしまえば、攻撃は届くのではないだろうか。
たとえ何百人の竜騎士が命を落そうと、奴を沈められるのなら安いものだ、と。
非人道的な考えだったが、そうでもしなければ接近することすら敵わない。
苦渋の決断だった。しかし、背に腹は代えられない。
皇都を墜とされては元も子もないのだから。
「頼んだぞ……」
メイガが窓の外を見ると、ちょうど第三中隊が離陸をしているところだった。
祖国のために捨て駒とされた竜騎士が一騎、また一騎と舞い上がる。
その行き先が死地であることなど知らずに、鷲を騙った雛鳥は南を目指して羽搏いて行く。
2
第三艦隊を撃滅したHsBBY-01は、水平線下に存在している別の敵艦隊に三式弾を撃ち込んでいた。
「三式弾装填、終わる‼」
「一番二番、副砲一番、撃ち方始め‼」
砲身からレールガン特有の発射音が響く。
着弾までおよそ一分。次弾を撃とうとしたところに、レーダー主から報告が上がった。
「敵艦隊、進路変えます。二手に分かれて……包囲網の構築でしょうか?」
「……、」
思考の海に潜った艦長は何らかの結論を得たのか、重い口を開く。
「敵艦隊中央部を突破する! ハヤブサを降ろせ‼」
「了解! コスモファルコン、発艦‼」
戦艦の右舷装甲が開き、展開された滑走路から艦載機が発艦する。
HsCF-99。
学園都市が——極めて珍しいことに——真っ当な方向に航空機を進化させた結果生まれた化物だ。その為、この戦闘機は一切の尖った性能を持たず、良くも悪くも『普通』の機体なのである。
もっとも、あくまでも他の学園都市兵器と比較した場合であるが。
具体的に言えば。
到達高度、加速性能、航続距離、ステルス性能、運用能力。
これら全ての領域で、かの超音速戦闘機を上回っている。
あくまでも、高速回転や鋭角機動などの『尖った性能』を持たないだけなのだ。
言うならばオールラウンダー。
攻撃能力では一歩劣るものの、この機体はどんな任務にも対応ができるという強みを持っている。
「しかし艦長、コスモファルコンまで出撃させるのは、些か過剰ではないでしょうか」
「敵は恐らく飛竜を使ってくる。我々の対空兵器を飽和させて接近する算段だろう」
「ですが、この船には多段階の防衛システムがあります」
「いいや、『魔導防壁』もようやく完成にこぎ着けた試作兵器に過ぎん。複合装甲にしても、魔法攻撃に対する運用データは不十分だ」
艦長は、遠い海を見つめながら嘯いた。
そして、見計らったかのようなタイミングでレーダーが敵影を感知する。
「っ、レーダーに感あり。ワイバーンロードです。数は、千九百、二千五百……、敵飛竜の総数およそ三千、大編隊です‼」
「慌てるな、その為のハヤブサだろう。全航空隊は正面のワイバーンを叩き、活路を開け‼」
「はっ‼」
艦載機のエンジンが唸りを上げ、後方に青白い光を撒き散らす。
敵騎を撃墜するために、圧倒的な加速力で空を駆けた。
その力強い光景を見て艦長は言い放つ。
「本艦もハヤブサに続いて突撃する。機関全開、第一戦速で敵へ突っ込め‼」
3
飛龍編隊は学園都市の戦艦を沈めるために、南方海域を目指していた。
「まさか、これだけの数のワイバーンロードが一堂に会するとは……」
「えぇ、史上でも類を見ない大編隊ですからね。ですが……海軍本部も妙な要請をするものです。折角新型竜が配備されたのに、旧式騎を引っ張り出せ、なんて」
「上が決めたことだ、末端の俺達には従う以外の選択肢はない。そこにどんな思惑が隠されていてもな」
第三中隊長のウィズダは、副官のリオに語り掛けた。
その意味深な顔を見たリオは疑問を浮かべながら呟く。
「思惑……ですか?」
「この要請、何かがおかしい。壊滅した第三艦隊には最新鋭竜母が二十隻も所属していた。だが、それが壊滅したということは、相手は対ワイバーン用の兵器を持っていることになる。そんなところに飛び込めだと? そんなものは自殺と———
唐突に。
第三中隊長の飛竜が跡形もなく爆散した。
「は? たい、ちょう………?」
リオは先程まで会話していた人間が急死したことに、戸惑いを隠せなかった。
当然の反応だが、この場においてそれは『愚鈍』としか評せない。
既に、死の化身は忍び寄っているのだから。
ズガガガッッッ‼‼‼ と。
HsCF-99に備え付けられた機関銃から『摩擦弾頭』が撃ち出された。
直撃を受けて墜落していく竜騎士。
その数はおよそ百二十。それだけの命が一度の攻撃で消滅した。
「ッッ‼⁉ て、敵襲‼ 全騎、応戦せよ、皇国の意地を見せつけてや——ご、ばぁ」
「団長⁉ 畜生、速すぎる‼」
命令を出そうとした竜騎士団長も、背後に廻り込んだ灰色の航空機に撃墜される。
速度差は数十倍。数では上回っているが、根本的な性能で負けている。
そのうえ。
「一斉射撃だ‼‼ 俺に合わせろ‼」
「無理だ、当たる訳がないだろ‼ 俺は逃げるぞ‼」
「クッソ、本部の奴らめ、絶対に許さん‼ 初めからこうなると分かっていて——クソったれ‼」
指揮系統が壊滅した今、数の優位は無いに等しい。集団行動を行えなくなれば、それらはただのカモに成り下がる。
「テメエら怖気づいてんじゃねぇ‼ 相手はたったの三十四機だ。全員で掛かれば幾らでも——ぐ、がぁ」
部隊を落ち着かせようと奮闘する竜騎士もいるが、そういった人間は優先的に排除される。結果として、部隊は更に深く恐慌状態に陥る。第二、第三の拠り所を失えば失うほど、混乱は加速するのだ。
彼我の機数差はおよそ百倍。
しかし、それすら薙ぎ払う航空機が戦場を完全に支配する。
4
「おい、ワイバーンが戻って来るぞ‼」
「随分お早いご帰還だな。一体何をしに行ったのか」
「余程敵が情けなかったのだろう。まぁ、あれだけの飛竜を相手に出来る国は無いからな。これなら神聖ミリシアル帝国をも滅ぼせるのではないか?」
数十分前に飛び去った筈の飛竜部隊が戻ってくるのを見て、住人が騒ぎ出した。
だが、何処か竜騎士の様子がおかしい。
住人がそれに気づくのに大した時間は掛からなかった。
「待て、何かおかしいぞ。あれではまるで何かから逃げているような………」
「はぁ? 皇国飛竜隊が逃げる相手なんかいる訳ないだろう? まぁ、少し急いでいるようには見えるが……気のせいだろ」
現在の時刻は午前七時。
住民が朝の世間話を始める頃、
後の世界でサッドモーニングと呼ばれることになる、一つの『災害』が発生した。
初めに皇都を襲ったのは『音』であった。
キイイィィィン‼⁉ と。
戦闘機が空気を切り裂きながら皇都上空を通り過ぎる。
直後、付近の窓ガラスが全て割れ、建物が不気味に振動する。
しかし、異変はそこに留まらない。
ボトボトと、最強の皇都防衛軍のワイバーンが降ってくる。
首、胴体、足、羽。
頭蓋、手首、肋骨、太腿。
飛竜の残骸が、人間の残骸が。真っ赤に染まった雨のように。
「いやぁぁぁぁぁ‼⁉⁇」
皇都エストシラントの様々な場所から、その凄惨な光景に耐え切れなくなった女性の悲鳴が上がる。
住民はざわつき、様々な建物の扉や窓が開く。
彼らが見上げた時には、矢のような形の何かが二十機、見た事も無い高速で上空を再び通過した。
再度の轟音。
先は割れなかった窓ガラスが粉々になる。
もはや我慢の限界だった。訳の分からない攻撃に、飛竜隊の潰走。
恐怖。
住民の心は完全に一致していた。
「な、何だ‼ 何が起こっているんだ‼‼」
「どこの国だ⁉ 戦争中の学園都市か‼⁉」
「馬鹿か‼ 文明圏外の蛮国がいくら背伸びをしたところで、第三文明圏最強のパーパルディア皇国の皇都に攻撃など出来ないに決まっているだろう‼」
「なら一体何処が⁉」
「他の列強か……、まさか、古の魔法帝国か⁉」
「そんな馬鹿な事が……」
しかし、そんな住民の騒めきは一時中断されることになる。
皇都に三度目の轟音が鳴り響いたのだ。
同時に、数十匹のワイバーンロードが墜落していく。
決して皇都飛竜隊が弱いのではない。彼らは第三文明圏最強の名前を正しく冠していた。
ただ、それを学園都市が軽く上回ってきただけの話である。
一斉射撃を試みた竜騎士たちの背後に回り込み、機関砲の餌食にする。
戦場から離れようとする竜騎士には、短距離ミサイルを撃ち込む。
高度の優位を取ろうとした竜騎士を上から見下ろし、導力火炎弾の雨の中を真っ直ぐに突っ切り、包囲網を易々と切り抜ける。
「畜生、ち、くしょう‼‼」
また一人、竜騎士が墜ちていく。
残存部隊は五十騎を下回っていて、『全滅』扱いとなっている。
しかし、災厄は終わらない。
人工知能に『遠慮』の二文字が無いことは、歴史が証明しているのだから。
5
「飛竜部隊………全滅しました」
「……、」
「戦列艦リベール轟沈。同じくベルチュール、ヘカトケイン、サルバーノ轟沈。第二艦隊旗艦ブリオーリョ大破……いえ、沈んでいきます」
第一艦隊旗艦の艦橋に、戦況報告が寂しく反響する。
誰も目の前の非現実的な光景に、声を出すことができなかったからだ。
「ふ、ふふ」
突然、旗艦に乗船していた提督が笑い声をあげた。
「っ⁉ 提督、お気を確かに‼」
「ふははははは、ククク、あはっ☆」
「提督‼」
壊れたレコーダーのように笑い声を漏らし続ける提督を見て、クルーの一人が駆け寄る。
「はは、馬鹿げている。こんなのが現実であるはずがない、そうか夢か夢なら仕方がないよねだって夢なんだもんあはははふふふふ☆」
「っ⁉ てい、とく……」
余りにも、痛々しかった。
人間が壊れるとこうなるのか。なってしまうのか。
なまじ頭が回る人間だったから壊れてしまったのかも知れない。
敵は明らかに人智を越えた兵器を使用している。神聖ミリシアル帝国ですら到達していない、神域へとたどり着いているのだから。
「っ、陸軍基地、及び海軍本部、敵飛行機械から空爆を受けて被害甚大。滑走路も使用不能です」
「そうか、もう良い。降伏の合図を送れ。我々の行動を考えると、許してくれるかは微妙なところだが……」
艦長は皇都が後方にあるにも関わらず、降伏の指示を出した。
それに反対する人間はいない。誰もがこの地獄から逃げ出したいと考えていたからだ。
しかし、現実は非情だった。
ギィィィィンン‼‼‼ と。
陸軍基地の攻撃を終えた戦闘機が、艦隊の後方から順に襲い掛かる。
「馬鹿な、いくら何でも速す——
摂氏二千五百度。
空気摩擦によって加熱された弾丸が、旗艦レーヴァレンへ突き刺さった。
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