とある転移の学園都市   作:Natrium

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日本国召喚の総合評価ランキングを見て最近思ったこと。

一位 > [絶対的な壁] >二位 > [越えられない壁] > 三位 > 四位 > 五位……

これなんて学園都市?


第二十八話 捕食者は斯く墜ちる Debauched_Eagle

神聖ミリシアル帝国 港街カルトアルパス

 

港の一角で開かれている先進十一ヵ国会議——もっとも九ヵ国しか残っていないが——は紛糾していた。

 

「皆さま静粛に。これより重要な伝達事項があります」

 

黒色のスーツを着用している議長の発言で、場が静まり返る。

 

「先ほど、我が国の哨戒機がカルトアルパス南方約百五十キロ地点を北上するグラ・バルカス帝国の戦艦群を発見いたしました。グラ・バルカス帝国の船速とここから海峡までの距離を考えると、船による避難は間に合わないでしょう」

 

そこで、と言葉を区切る議長。

 

「世界連合軍を組織し、グラ・バルカス帝国海軍を迎え撃つ事を提案いたします」

 

 

歴史に名を残すことになる一戦。

フォーク海峡海戦が、ついに幕を開いた。

 

 

港町カルトアルパス

 

港湾管理者ブロンズは恐怖と期待が入り混じった感情に襲われていた。

彼が見たことも無いような巨大戦艦を操る国が、世界最強の神聖ミリシアル帝国に攻め込んでくるという。

先ほどから上空を見上げると、我が国の多目的戦闘機ベータ2が何機も編隊を組んで南の空に消えている。

おそらくは事実。

目線を港に移すと、世界の強国と言われる国々の艦隊が続々と出港している。

 

「マギカライヒ共同体、機甲戦列艦隊出港!」

 

第二文明圏の雄、マギカライヒ共同体の機甲戦列艦隊七隻が出港を開始している。

マギカライヒ共同体は、規模でこそ第二文明圏列強だった(・・・)レイフォルに劣っているが、単艦あたりの性能はレイフォルよりも上である。

ムーの機械文明と魔法文明を上手く融合させており、その機甲戦列艦隊の強さは第二文明圏の中では突出して高い。

 

「アガルタ法国、魔法船団出港‼」

「ニグラート連合、竜母艦隊出港‼」

「ムー、機動部隊出港‼」

 

以降も続々と艦隊が出撃していく。中でも目を引くのは、第二文明圏最強のムーの艦隊である。戦艦二隻、装甲巡洋艦四隻、巡洋艦八隻、空母二隻が出港する。

そして。

そして。

そして。

 

「学園都市、戦艦出港‼‼」

 

黒光りし、先進的なフォルムを誇る学園都市の戦艦。

学園都市の伝説的な強さは、パーパルディア皇国戦ですでに噂となって知れ渡っている。

港湾管理者ブロンズは、ワクワクしながら強国たちの出港を見守る。

新旧混合とは言え、総勢六十一隻にも及ぶ大艦隊だ。

敵が何であろうと負けることは無いと、各艦の担当者は考えていた。

 

しかし。

その幻想は砕かれることになった。

外からではなく、内側からの衝撃によって。

 

 

神聖ミリシアル帝国 第七制空戦闘団

 

魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの高音が空気を裂く。

団長のシルバーは、高性能機同士の戦いを前に緊張をしていた。

 

「全機高度五五○○メートルまで上昇せよ、下方の警戒を厳となせ」

「了解‼」

 

魔信機で友軍機に指示を出すシルバー。

そこに通信が入る。

 

『敵機発見‼ 左方30、下45‼』

「っ、何処だ⁉」

 

キャノピー越しの景色の中から、敵編隊を見つけ出そうとする。

部下の報告にあった場所を覗き込み、

 

「数が多いな。ムーの飛行機械を鋭くしたような形だが……」

 

低翼を採用し、機首に大きなプロペラが一つ。

その進行速度や大きさから、明らかにムーの飛行機械よりも強力な敵である事を彼は感じ取る。

 

「……先頭集団を叩くぞ‼ 全機突撃、敵編隊上方から攻撃を行え‼」

 

魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの高音が機内に響き、速度が上がるにつれて振動が激しくなる。

そして、それに()じる微かな違和感。

 

「っ……な、上から⁉ 敵襲! 後方上空、太陽から来るぞ‼」

 

 

ッッッドン‼ と。

空を駆け抜ける衝撃が一つ。

 

 

『くそ、回り込まれた‼ 振り切れぴぎゅ』

『っ、旋回速度が⁉ ごば、馬鹿な……』

 

通信機から断末魔が流れ、その(たび)に味方の航空機が墜ちていく。

シルバーは唇を強く噛み、

 

「な、何故だ……。何故勝てない、奴らは蛮族であろう⁉ 我が国の航空機より性能が高いはずが——っ⁉」

 

敵機の狙いがこちらを向いた。

二十ミリの銃身が、寸分(たが)わず照準を合わせる。

 

「ち、くしょっ、畜生‼」

 

振り払おうとするが、敵機の性能の方が高い。

もはや、パイロットの技量次第でどうにかなるレベルではない。

死期を悟ったシルバー。

せめて一機だけでも落とすと、相打ち覚悟の特攻を始め——

いや。

いいや‼

 

轟ッッッ‼‼‼ と。

一機の航空機がシルバーの隣を通り過ぎた。

 

彼の機体も大きく揺さぶられ、危うく墜落しそうになる。

 

「ッッッ‼⁉⁇ なに、が……」

 

件の航空機は速すぎて見失ってしまった。

捜索のために周囲に視線を走らせると、多数の航空機が墜ちていくのが見える。

そして、その中央に存在しているのが———

否。

顕現。

そう表現する方が適切だろう。

音速を涼しい顔で超越し、戦場を縦横無尽に駆け巡る理不尽。

 

HsCZ-52。

全領域制空戦闘機とも呼ばれるそれは、他の追随を許さない速度を誇っている。

 

高機動ユニットを接続した際の最高速度は、マッハ十一。

今回の戦闘では接続されていないが、この場に存在している戦闘機の中では群を抜いて速い。

そんな怪物がグラ・バルカス帝国軍に襲い掛かったのだ。

 

『ふ、ふざけんなよ、何だよこれ‼』

『待て、追尾式のロケット弾だと⁉ 話に聞いていなごぶぁ』

『ジアン‼ くそ、馬鹿げていやがる……ありえんぞ、こんなことっ‼』

 

グラ・バルカス帝国軍の編隊は数十秒で瓦解した。

前提として速度が段違いなのだ。攻撃を掠らせることすら出来ない。

キルレシオは測定不能。当然だ。帝国軍は学園都市の航空機を、一機たりとも墜とせていないのだから。

 

『っ、速すぎる‼ 音速なんてもんじゃねぇぞ、コイツは‼⁉』

 

直面するのは二十倍の速度差。

それは絶対的な壁となって、帝国軍に襲い掛かった。

 

 

戦艦HsBBY-01 第一艦橋

 

『こちらアルファ1。敵戦闘機の全滅を確認した。続けて、爆撃機の掃討に移る』

 

通信機から男の声が響く。

レーダーを見てみると、ゆっくりと近づいてくる集団の中を、なめるように高速移動する光点が確認できた。

 

「あと六分で対空砲の射程に入ります」

「……射程に入り次第、帰投命令を出せ。残りはこちらで片付ける」

「了解しました」

 

今回の目的は、世界に学園都市の強さを示すことだ。

そのため、戦闘機の性能を見せつけるだけで終わってしまうのは少し不味い。

この世界では未だ、航空機では戦艦を沈めることが出来ない、という考えが主流だからだ。

いくら航空戦力が優れていることをアピールしても、戦艦には敵わないと一蹴されるのがオチだ。国益を得るには、戦艦の力も見せつける必要がある。

 

「敵編隊の損耗率、七十%を切りました。撤退の気配は見えません」

「射程まで残り何分だ?」

「……二分です。帰投命令を出しましょうか?」

「いいや、百機ほど残っていれば構わない。力を誇示するには十分だ」

 

レーダーの画面から着々と光点が減っていく。

それが最初の半分ほどになる頃に、レーダー主が叫んだ。

 

「対空砲、射程に入ります‼」

 

それを聞いて艦長は、ふぅと一息ついた。

既に方針は固まっている。

後は命令を下すだけだ。

 

「撃ち方始め!」

「てぇー‼」

 

 

直後。

異世界の大空に、赤い火花が飛散した。

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