とある転移の学園都市   作:Natrium

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記念すべき30話目!
非常にややこしいですが30話目です。


第二十九話 科学の都市の大戦艦 Escape_from……

1

 

ゴウンッッッ‼ と。

超音速機が大気を切り裂き、引き返していく。

 

『敵飛行機械、撤退していきます‼』

「くそ、小癪な……たった一機で我が国の最新鋭機をこうも簡単にあしらうとは」

『ですが、弾薬切れ……でしょうか? 何にせよ、今がチャンスです!』

「ああ、分かっている。全機、最高速度で敵艦へ突っ込め‼ 帝国魂を見せてやれ‼」

『了解‼』

 

残存部隊は百二〇機。

およそ半数近くの仲間が散っていったが、ここで引くわけにはいかない。

彼らの死を無駄には出来ない上に、これは皇帝が望まれた戦争なのだ。

必ず勝利する必要がある。

 

「総員、私に続けぇぇぇぇ‼」

『おぉぉぉぉぉぉぉ‼‼』

 

標的は既に通達している。

敵艦隊の中で最も異彩を放っている戦艦だ。

GA級にも酷似している件(くだん)の戦艦は、船速が非常に遅い。

そのため、航空機の良い的になると踏んでいたのだが……。

 

「っ? 他の船団と並走している? 艦隊運動できる程の速度は持ち得ていない筈じゃ……」

『どうしますか? 対空兵装も確認できますが……』

「続行だ。いずれにせよ、GA級より遅い。命中精度は高——っ、おいおいおい‼ 待て待て何が起きて……ッ‼‼」

 

隊長の叫び声を聞いた隊員は皆、件の戦艦の方を向いて絶句した。

 

どっっっガッッッ‼‼‼ と。

海水が大きく舞い上がり、学園都市の戦艦が異常な加速をする。

 

『ば、馬鹿野郎‼』

『隊長‼ 何が起きて、あれは一体何ですかっ‼』

『我が国の戦艦の倍は出ているぞ‼ くそ、何がどうなって……』

 

通信機からは混乱の叫びが聞こえる。

それもそのはずだ。

学園都市の戦艦、HsBBY-01の巡航速度は60ノット。

最高速度で言うならば、80ノットを超えている。

既存の艦艇の三倍近くの速度が出ているのだ。その衝撃は計り知れない。

 

「気を取り直せ‼ 全機、爆撃用意‼ いくら速かろうが、我々の総攻撃を受ければひとたまりもないだろう。奴らは所詮(しょせん)装甲を犠牲にして、速力を得ているだけだ‼」

 

隊長が声を張り上げる。

それを聞いた隊員は自信を取り戻し、

いや。

いいや‼

 

ズバチュッッッ‼⁉ と。

視界の半分が赤く染まった。機内を見渡すと、穴あきの大空が見える。

そして。

爆ぜた。何が? 絶対無敵と呼ばれた、グラ・バルカス帝国の隊長機がだ。

 

『たい、ちょう……? 隊長‼⁉ くそ、何がぁ、ぅごふ』

『逃げろ、あれは駄目だ‼ 命中率が違いすぎる‼⁉』

『バーンズ⁉ ち、く、しょうっ‼』

 

残された隊員から悲鳴が漏れる。

しかし、救いは訪れない。

この戦場にはヒーローが存在しないのだから。

 

もっとも、彼らが救う存在は『庇護対象』に限られるのだが。

 

2

 

波紋は海上にも広がっていた。

 

「これが、学園都市の実力とでも言う、のか……?」

 

赤い光線が放たれるたびに、敵の航空機が次々と墜落していく。

敵が密集していたこともあり、全滅までに一分も掛からなかった。

圧倒。

まさにその一言だった。

 

「ちょっと、流石に信じられませんね……」

「……我々は夢でも見ているのか?」

 

こんなこと、神聖ミリシアル帝国でも不可能だ。

アニュンリール大使の『魔法帝国の尖兵』という言葉もあながち間違いじゃないらしい。

そうでもなければ有り得ない。

とは言え学園都市は完全な科学文明なので、その可能性は極めて低いだろうが。

 

「……っ、……海峡に………。…………戦艦が……」

「っ? ……艦長‼」

 

部下の声掛けで正気に戻る。

危ない。完全に呑まれていた。艦長としての責務を果たさなければ。

 

「どうした? 何があった?」

「フォーク海峡にグラ・バルカス帝国の戦艦が現れました‼ 我々を閉じ込めるつもりです‼」

「何だと⁉ 砲撃戦の用意をしろ!」

「了解、砲撃戦用意‼」

 

双方の距離は三十キロメートル。

射程までは遠いが、準備をするに越したことはない。

 

「砲撃戦用意、終わ

 

どっっっガッッッ‼‼‼ と。

学園都市戦艦の主砲から、青白い光線が放たれる。

それは束を成してグラ・バルカス帝国の戦艦に、二番艦のハイパーシュプリカムの正面装甲にぶち当たり————。

 

——まっ直ぐに突き抜けた(・・・・・・・・・・)。

 

「…………………………………、は?」

 

一条の閃光が戦艦を串刺しにし、通り過ぎたのだ。それも正面から、後方にかけて。

呆然とした。しかし、即座に引き戻される。

誘爆。

ただでさえ満身創痍な戦艦に、追加の一撃が与えられたのだ。

当然耐え切れず、船は十数秒で沈んでいく。あれでは中のクルーは全滅だろう。

 

「うそ、だろ……? 一撃で……?」

 

艦長の呟きに答える者はいない。

誰もが現実を受け入れられず、ただ立ち尽くしているだけだった。

 

3

 

グラ・バルカス帝国軍の混乱は、他国の比ではなかった。

 

「ッッッ‼⁉⁇ 何が、何が起きて‼⁉」

 

先程まで、その威容を見せつけながら進撃していた同型艦が、突然爆発し、轟沈したのだ。

船体には巨大な穴が開いている。そこから浸水したのは明白だ。

しかし、塞ぎようがない。一目でそう思えるほどに、巨大な穴であった。

 

「……馬鹿な、有り得ない‼⁉」

「嘘、だろ……、だって……」

 

一撃必殺。

これまで数々の敵船を沈めてきたが、文字通りのそれには出会ったことが無かった。

第一射はそう当たるものではない。

 

「なっ、え? どういう……は?」

「か、艦長‼ 指示を下さい‼‼」

「待てよおい、貫通? 有り得ないだろうがよォ‼」

 

艦橋は騒然とする。

しかし、混乱の渦に巻き込まれているのは艦長も同じだ。

しばらくは場を鎮めることは出来なかった、が。

 

「て、撤退しろぉぉぉぉ‼‼ 取舵一杯‼‼」

「りょ、了解‼‼」

 

幸いにも奴らの船速は遅い、逃げられるはずだ。

自分にそう言い聞かせ、精神を落ち着かせる艦長。

 

(あの戦艦は我が方の半分ほどの速度だった‼ だが、あの主砲を撃ち込まれたら……いや、あれだけの規模だ。再装填には時間が

否。

二条の閃光が。

艦橋の左右を通過し、レーダーだけを正確に破壊した。

 

「っ、な……ッッッ‼⁉⁇」

 

恐らく偶然ではない。遊ばれているのだ。

現に、第三射で艦後方のカタパルトを狙撃されたのだから。

 

「機関最大‼‼ 射程範囲外まで逃げろ‼‼」

「これが限界です‼ これ以上は無理ですよ‼」

 

もはや、なりふり構っていられなかった。

プライドがなんだ。名誉がなんだ。

ここを乗り越えなければ話にすらならない。

だが、気付いていなかった。通信が妨害されていなければ、伝わっていた筈の報告。

とある航空隊が命と引き換えに掴んだ情報を、彼らは知らなかったのだ。

 

ッッッドン‼‼ と。

学園都市の戦艦が荒波を切り裂き、急激に加速する。

 

「……は?」

 

空気が漏れるような声を出したのは、果たして誰だったのか。

いや、チェックメイトを決められた今では関係がないのだろう。

 

難易度はルナティック。

さて、盛り上がってまいりましたよ。

 

4

 

『理解したか? 貴艦の主砲では我が艦の装甲を貫くことは出来ない。繰り返すぞ。降伏しろ』

「撃てぇぇぇぇぇぇぇ‼‼‼ 撃ち続けろぉぉぉぉぉ‼‼」

 

帝国最大の艦砲である、四六センチ砲。遍(あまね)く敵を踏みつぶし、海の藻屑にしてきた伝説的な大砲。

それが一切通用しないのだ。

とても現実の光景には見えなかった。

 

「……なん、だ? 俺達は今、何を相手に戦っているんだ……?」

「うそ……、沈めよ‼ 沈めって‼ 頼むから沈めよォ‼‼」

 

かれこれ十分間も、至近距離から砲撃を行っている。

なのに。

なのに‼

 

敵艦の喫水部を照準する。

——弾かれる。

 

敵主砲の砲身を狙い撃つ。

——弾かれる。

 

敵の艦橋に砲身を向ける。

——弾かれる。

 

敵艦との距離は狂気の十メートル。

しかし。

弾かれ、防がれ、静止し、誤爆し、吸収し、受け止め、跳ね返り、滑り落ち、撃ち落される。

とても戦闘とは言えなかった。

 

「くそ、畜生……。傷一つ付かないのかよ……」

「艦長‼ 降伏しましょう! これ以上は無理です‼ 空母機動艦隊との通信も途絶えましたし……」

「………、」

「艦長‼‼」

「分かっている‼ くそ………、降伏の旗を掲げろ……」

「は、はい!」

「………………ちくしょう、学園都市め……」

 

こうしてフォーク海峡海戦は終結した。

意地とプライドを土台ごとへし折られた三千人の捕虜と、自失状態に陥ったシエリアを残して。




見せつけていくスタイルで。
ついでに新作開始。
https://syosetu.org/novel/185671/
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