とある転移の学園都市   作:Natrium

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今更ながら禁書三期のフィアンマ戦の足場問題について考察

一方通行戦などを見たお前ら様「あぁ^~上条がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」
お前ら様の反応を見たスタッフ「ああ゛? なら跳ぶしかない状況にしてやんよゴラ‼」

↑これだと思うの


……ただし、当然ギルティ。


第三十二話 無慈悲なる科学の尖兵 Over_the_Checkmate.

 1

 

 

「総員、戦闘用意‼ 急げ、奴らが降りてくる前に出撃しろ‼」

 

 半壊した戦車格納庫内に怒声が飛び交う。

 奇跡的に無事だった戦車を幾つか引っ張り出し、敵の襲撃に備える。

 数は十にも満たないが、いずれも最新式の戦車であった。あらゆる敵を葬り、荒野を平らに均した最強の相棒であったはずだ。

 なのに。

 

 今は心なしか頼りなく見えた。長年連れ添った相棒のことを信用できなくなっていたのだ。

 原因ならわかっている。先ほどの大規模爆撃によるものだ。

 一体どれほどの密度で爆弾を投下すれば、破壊痕が線状になるのだろうか。

 こんなものは人間技ではない。ならば我々は、何と戦っているというのだ……?

 各々が絶望に浸る中、一つの叫び声が格納庫に反響した。

 

「敵は恐らく学園都市だ‼ 見たところ、爆撃機に関しては帝国以上の性能を誇るようだが……それがどうした‼‼ 我々は百戦錬磨の帝国陸軍だぞ! 性能差など気合で埋めろ、貴様らにはそれだけの潜在能力がある‼」

 

 どうやら、この場で最高位の軍人が士気を高めるために演説をしていたようだ。

だが、根性論(そんなもの)で士気を回復させられると本気で思っているのだろうか。

 だとしたら滑稽だとしか言いようがない。

 敵は人知を超えた化け物だ。いまさら抵抗しても敵うはずが——

 

「そして何よりも! 敵の戦車らしきものは、空から降下してきている‼ つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()‼‼ そのうえ、着陸時の衝撃に耐えるために、()()()()()()()()()()()()()()()()‼」

 

 全員が全員、ピクリと表情を動かした。

 突然、訳も分かれないような爆撃を受け、士気が壊滅した戦車部隊。

 その中には、地面に(うずくま)って震えている者もいたのだが……。

 

「すなわち‼ 敵戦車の正面装甲は、我が軍のそれよりも薄い‼‼ 空爆に関してもそうだ‼ あれはただ単に無数の爆弾を撒いているだけで、爆弾そのものの質はそう変わらないはずだ‼」

 

 宿る。

 暗く色褪せた彼らの瞳の中に、正気が再び宿る。

 

「奴らは所詮、足りないものを数で補っているに過ぎない‼‼ 爆弾の威力も! 戦車の火力も! 単体では有象無象にしかならないのだ‼」

 

 ここぞとばかりに指揮官が追い打ちを仕掛けた。

 ただ諦めて死を待つだけの人間は、この場にはもういない。

 旧世界で栄華を極めたグラ・バルカス帝国軍。その、再始動の時が来た。

 

「そもそも、なぜ奴らがここまで周到的に爆撃を仕掛けたか分かるか? ……恐れていたからだ! 我が軍の戦車の攻撃力を恐れていたからこそ、高価な爆弾を大量に使用し、破壊したのだ‼」

 

「……そうか、その通りだ」

 

「そうだ! 普通に考えれば採算が合わない……。が、奴らはそれを実行した! そうでもしないと勝てないからだ‼ 奴らの貧弱な戦車だけでは、勝つことができないからだ‼‼」

 

「……勝てるのか? 俺たちは、学園都市に……ッ‼」

 

「幸いにも、精鋭の第一戦車隊は近場で演習を行っており、空爆には巻き込まれていない‼ ならば、我々がすべきことは簡単だ。第一戦車隊の到着まで敵軍の注意を惹き、足止めをするだけでいい! 敵戦車は三十両も降下してきている! しかし、援軍が到着すれば、数の優位はこちらに移る‼」

 

 場の空気が明白に動き、一転する。

 恐れるな、決して勝てない相手ではない。相手は神などという化け物ではないのだから。

 そして、死地へと(いざな)う煽動者は告げた。

 

「選べ‼ ここで何もせぬまま、ただ殺されるか! それとも敵戦車を足止めし、勝利のための礎になるか‼‼」

 

 地に伏せていた人間が皆、ゆらりと立ち上がる。

 

「っ、俺は……」

「やるぞ、お前ら。うじうじせずに力を貸せ!」

「……はぁ。一応言っておくけど、僕は整備課なんだけどね?」

「何でもいい、こいつを動かせるのならな。大半の連中は先の空爆でやられちまった。少しでも人手が必要だ」

「まったく、仕方がないな。……僕は何をすればいい?」

「助かるぜ、相棒。ならアンタには——」

 

 誰もが思った。

 あの悪魔に打ち勝つことができるのだと。

 私たちが死ぬ必要はどこにもないのだと。

 

「全部隊、発進準備を完了しました! いつでも行けます‼」

 

「総員! 出撃ィィィぃぃぃぃいいいいい‼‼‼」

 

 そう、誰もが思っていた。

 

 

 

 

 地上までの距離、規定値に達しました。

 これより背部移動補助装置を起動し、減速を開始します。

 ……起動完了。安全降下速度まで残り八秒です。

 

 8、………5、4、3、2、1。

 

 ……安全降下速度までの減速を確認。続いて、標的の走査へ移ります。

 赤外線レーダー起動……完了。地表の走査を開始します。

 

 スキャン開始……。……中断。

 

 同型機、シリアルナンバー七八〇四より、標的の情報を取得。

 脅威度判定に移ります。

 

 エリアW南西部、五十両の中戦車部隊を確認。……脅威度極低。

 エリアU3地点、八両の軽戦車を確認。……脅威度ゼロ。

 

 ……電子演算の結果、勝率は共に九九%と推測されました。

 

 続いて、装填装置、電磁加速機構部、冷却システムを起動します。

 …………?

 ……。

 

(警告。冷却システムに軽度のエラーを確認しました。稼働データの詳細はこちら)

 

 ……主兵装、Gatling_Railgunの起動が完了しました。

 作戦続行に支障なし。任務を遂行します。

 

 

 3

 

 

 排気ガスの臭いが薄く充満する車内に、上官からの指令の声が響いていた。

 

『砲撃用意! 合図と同時に撃て‼ 一斉にだ‼』

『『「 了解‼ 」』』

 

 すでに、大砲の照準は予想降下地点に合わせている。

 第一射で致命傷を与えて、撃破するのが最善だろうが……そう簡単には進まないだろう。

 敵も馬鹿ではないのだ。何らかの対策を施してあってもおかしくない。

 搭乗員のネイトは、震える指先を押さえつけながら念じた。

 

(大丈夫だ……敵の装甲は紙よりも薄い。そう、僕たちはただ当てるだけでいい)

 

 衝撃軽減のための軽量化などで、敵の戦車の装甲はかなり薄くなっている筈だ。

 それこそ、軽戦車の砲撃で突破できてしまうほどに。

 数の優位は向こうにあるが、性能では決して負けていない。さらに、こちらには援軍も付いているのだ。負ける要素が見当たらない。

 勝利の兆しを感じ取ったネイトは自然に表情を緩めてしまったが、再びそれを引き締める羽目になった。

 

『来るぞ‼ あと七秒……』

「っ⁉」

 

 味方からの通信が入ったのだ。

 

(……絶対に、僕だったら勝てる。いいや、僕たちなら勝てる……ッ‼)

 

 あと数秒で戦闘が開始される。余計なことを考えていれば確実に死ぬ。

 ネイトは思考を中断し、意識を目の前の操縦桿に移した。

 

『三秒、二秒……』

 

 カウントダウンも終盤に差し掛かった。

 今までの人生でもっとも長い五秒が、もうすぐ終わる。

 

『……一秒ッ‼』

 

 反撃の時は————

 

『総員、一斉射

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ‼ と。

 

 横殴りの雨では済まされない、正真正銘の地獄が一つ。

 




あれ? あのタイミングで出撃して間に合うの? とか野暮なことは聞かないように。
何故かと聞かれても、

「……ファイブオーバーの降下速度が結構遅かったんやー(適当)」

という答えしか返ってこないのでご注意を。





……流石に空洞山脈戦車の出番なく退場ってのはアレだったんで(ボソッ

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