あと最新刊読み返したら、
あれ? そういえば戦時でもないのに学園都市はあれだけの兵器を衛星軌道に常駐させてるんだなーと、
気づかない方が良かったことに気づいてしまい、若干戦慄しました。
そして今回はそのコンビネーションアタック回です。
(Timeline_???)
『さて、グラ・バルカス帝国の征伐に関する案件だが』
『……、案件と言われましても。我々が動かなければ同盟国ムーが堕とされるから、という理由だけで参戦しただけでしょうに』
『弱いとは言え友好国であることには変わりない。見捨てると、世界で学園都市主導の力関係が築けなくなる。これは我々にとっても不都合な問題ではないかね?』
『だが扱いに困るのも事実だ。帝国は資源大国という訳でもない。となると件のパーパルディアのように、政府を乗っ取る必要性も薄くなる』
『えぇ、彼らは役に立ってくれましたよ。帝国などに比べれば断然、ね。……おかげで、余計な金を浪費せずに済みました』
『転移直後は何より資源獲得が最優先事項だったからな。懐かしいものだ』
『それで、グラ・バルカス帝国の扱いについては』
『――決まっているだろう?』
『待ってください。結論を出すには早すぎませんか? 征伐はこの際必要な物だとしても、もう少し穏便に済ませなければ、周辺国からの批判の声が――』
『奴らは全世界に宣戦布告をした。今更批判など出んよ』
『そうですね。もっとも、神聖ミリシアル帝国からは面子の問題で非難される可能性もあるでしょうが……』
『奴らは帝国の派遣艦隊に惨敗している。外面はどうあれ、正面から戦争を仕掛けたい訳ではないだろう。……秘蔵兵器は魔法帝国戦まで残しておきたいようだしな』
『馬鹿なことを。だが、我々が動いても吠えるだけで何もできんよ。そのためにもわざわざ、先進十一カ国会議に戦艦を送り込んだのだからな。多少の効果は出てもらわんと困る』
『ざっと諜報を行いましたが、世界への波紋は凄まじいものがありましたよ。あれだけ動かなかったミリシアル帝国が、自分から各国に使者を送り込み、事態の収束を図っていますからね。帝国との関係をより強力に、共に力を合わせようと。……名目はあくまで、グラ・バルカス帝国のような無法国家が出ないように、今後は各国が協調して行くべきだとしていますが、ねぇ?』
『放っておけ。自分の支配域が縮小していく際の気分は、君にも理解できるだろう? それよりもだ』
『……もう決定でいいでしょう? 理事長からは自由裁量権を頂いている。「計画」に悪影響をもたらす因子は一切ない、君たちの好きにしてくれたまえ。とね?』
『そうは言うが、わざわざ戦費が嵩む方法を選ぶ必要はないのではないか?』
『……あれは中途半端に叩いても意味がない。どう足掻いても勝てないと思わせなければ、いずれ再起してくる。ならば、答えは一つだ』
『えぇ、その通りです。どうしても受け入れられないと言うのであれば、多数決でもしてみますか? 折角の機会です。一度、お二方の意見がどれ程異端なのかをご自身の目で確認してみては如何でしょうか?』
『『……、』』
『それでは』
『以上の決議を以って、我々統括理事会はグラ・バルカス帝国の殲滅を決定する。そして本会議は事前の通告に従い、派遣軍の選定に移行する。意見のある物は挙手を―――――』
1
そして、だ。
ガカァッッッッ‼‼‼ と。
季節外れのプレゼントが一斉に、大気を引き裂きながら無慈悲に降り注いだ。
2
蜂の巣をつついたように、と表現する他なかった。
「繰り返します! 第一格納庫、応答してください‼ 第一格納庫――」
「無駄だ、もう止めろ。……少尉っ、サージ電流で基地内の有線通信が駄目になっています! 期待は薄いですが、予備の通信機を使う許可を――」
「こっちもダメだ、本部との通信が遮断されてる。これは本格的に修理しないとマズいぞ……」
「非常用電源への切り替えに失敗。落雷箇所によっては、回路そのものが焼き切れている可能性もあります。あの規模の落雷ですからね……。というか、自然にあのレベルの落雷は発生しうるのか……?」
「確かに一部に雲があるとはいえ、落雷を誘発する程天気が悪い訳ではない。一切の予兆もなかった。ならば一体何故……?」
帝国空軍基地・グラディオス。
本土で二番目に巨大な空軍の飛行場であったが、今ではその威厳も失われつつあった。
なぜならば。
「余計なことを喋っている暇があるならさっさと手を動かせ、お前たち‼ それとも外で消火活動でもしてくるか! 今じゃ過電流で電子機器の大半が発火している‼ 直撃を受けた第二格納庫は既に炎上もしている! 下手をすればこの基地自体が地図から消え失せるのだぞ! 分かっているのか⁉」
薄暗くなった部屋の中から窓を覗いてみると、職員、飛行機乗り問わずにてんやわんやと走り回っている。
大量のバケツを持ち運び、あるいは、着陸失敗で炎上した航空機を消火するための機材とホースが台車で運搬されている。
すべては、真っ赤に燃え盛る格納庫のため……という訳でもない。
どちらかと言えば、サージ電流で発生しようとしている火災を未然に防ぐために行動している者の方が多いくらいだ。
だが、不思議なことは無い。
単純に、もはや鎮火は不可能であると一目で理解できるほどに、炎が成長しているのだ。航空燃料が詰まった爆撃機や戦闘機が犇めいていたのも原因ではあるが、主には電気抵抗の熱によるものであろう。
そんな悲惨な現状を見渡し、空将のレイテスは囁くように言う。
「だがなジュレイ。手を動かせとは言うが、今は計器類が作動しないのも事実だ。ここに居ても意味がない」
「っ、それは……」
「総員で現場指揮に向かうぞ。格納庫自体は周囲の建物と切り離されているが……、万が一が無いとは言い切れない。それこそ、第一格納庫にでも延焼すれば大惨事だ」
「では、」
「私は第二格納庫で指揮を執る。十人ほどを残して、残りの全員は各所に散らばれ。いいな?」
「「「 はっ、了解しました! 」」」
レイテスの言葉で各長の下に人員が集まり、それぞれの現場へ向かう。
音頭を取った空将もまた、当然例外ではない。
「無理に鎮火させようとは考えさせるな! リソースはなるべく他方へ回し、我々は第一格納庫への延焼を防ぐことだけに終始する! 現場に到着次第、各人に伝えよ!」
部下へ命令を出しながらも、全速力で駆け抜ける。
実働部隊でないにもかかわらず動きが良いのは、やはり軍人としての誇りが奥底にあるからだろうか。
だが、それよりも。
(やはり不自然だ……。あれだけの落雷、前兆くらいは見えても良い筈なのにそれが無かった。異常気象にしても何かがおかしい。いっそのこと、因果が成立していないと言い換えてもいい)
空にはペンキを溢したかのような青が広がっている。所々に雲は見られるが、決して雷雲に属する類とは呼べない。
明らかニ、何カがオカシイ。
「なら、一体何が原因となって―――
そして、建物の隙間を通り抜けて、
―――絶句した。
「……はっ、あ?」
「っ? ???」
あまりの衝撃に、この場の全員が口を閉ざす。
滅多にあり得ないようなそれが、あり得てしまう。そんな光景。
そんな景色が、一面へ広がっていた。
つまり。
「なん、だ……? これは、血液? それも、放置されて固まったものじゃない……。鮮血、なのか……?」
何度も再確認をしようとして、レイテスはやはり目を背けた。
格納庫を取り囲むように、『赤』で彩られたコンクリートが占拠しているのだ。
見渡す限りの『赤』。
狂気の殺戮でも発生しなければ、いいや、それでも血液は足りないだろう。
大勢の人間から一滴も逃さずに搾り取らなければ、この状況は決して再現できない。
「レイテス空将! これはっ、これは、どういうことなのでしょうか」
「わ、私にも分からんよ……っ。だが見る限り、おびただしい量の血液が撒き散らされている。たとえ四肢を切り落とされても、こうはならない……」
「で、ですが、何にしてもおかしくないですか⁉」
そう。
この場には決定的に足りない物が一つある。
部下の一人が叫ぶように言う。
「
聞きたくなかったことを聞かされた最高指揮官は黙り込んだ。
この場には無駄な足掻きと分かっていながら消火に向かった職員も、一定数は存在している筈だった。
それなのに、まるで存在そのものを抹消されたかのように。
血液だけを残して、その全てが消滅。行方不明になっていたのだ。
(いいや、血液というより液体成分だけが消滅を免れた……、と言う方が正しいのか? いわゆる吸血鬼とは逆のパターンの生物か……それとも、これほど下劣な魔法がこの世界には存在しているのか。……、どちらでも結果は同じだ。今はそれよりも!)
レイテスはこの場に留まるのは危険と判断し、
「総員、速やかにこの場から退避しろ‼ 何が起きているかは不明だが、多数の死者が出ている! 気を付けろ、恐らく何かに攻撃されて
「―――ッッ‼⁉ 空将、後ろですっ‼」
レイテスが振り向こうとしたその後方。
僅かに、五メートルの距離であった。
ザザザザザザザザッッッ‼‼‼ と木の葉が擦れるような音が連続し、薄っすらと漂っていた綿のような牢獄が砕け散った。
その綿埃の正体が、目に見えない程細かい微細な金属の粒で。
それでいて電磁波に呼応して細かいアームを開閉することで、人間から細胞の一つ一つを毟り取る事を可能としたミクロな兵器であることに気づけた者は、一人でも存在していたのであろうか。
しかし。
いずれにせよ、彼らにとってそんなことは些事であった。
「巨大な、何だ……ッ⁉ いや違う、コイツらは‼」
牢獄。
先ほど確かにそう述べた。
ならば中には何が囚われていたのか。
直後に、答えが明らかになった。
「ハナカマキリ……ッ⁉ ――いいやっ、擬態ではなく本当に植物質で作られた、昆虫型の植物か⁉」
動物よりも速く動き、力強く体を動かして、そして自らの養分に変換する。
そんな、植物質の捕食者が。
すなわち。
遺伝子操作技術、その最果てに。
歪んだ科学者の執念によって生み出された、哀れな被害者が君臨していた。
【悲報】やはり生物学でも頭がおかしかった。
つーかそう言えば還元生命ってのも何だよお前……
って言うかオジギソウに迷彩効果あったなんて初耳なんだが。
【緊急アンケ】原作未読勢というか、最新刊追ってない人にはちょっと不親切な内容が今後増えそうなので、今のうちにアンケートを。あなたは禁書目録を何巻まで読了していますか? 結果によっては本文に解説描写が増えたり増えなかったり。
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アニメオンリー/原作未読
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旧約禁書は完全読破
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北欧の魔神編辺りまで
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新約禁書を完全読破
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他の鎌池作品にも手を出してますが、何か?