とある転移の学園都市   作:Natrium

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感想返しで12月投稿を宣言したにも関わらず盛大に遅れてしまって誠に申し訳ありません。
ですがまだ辛うじてですが生きてはいます(なお受験を来年に控える高三ゼロ学期勢)



そしてカイザルの口調が安定しない問題。
あの口調好きなんだけど、近くにより上位の立場の人がいると使いにくいから痛いんだよなぁ。

あと皇帝が全然喋ってくれないせいで一人称とか全然分かんねぇ……


第三十七話 鋼の放物線、その結末 the_Parabola_Deadline.

「無事に、俺達との実力差が理解できたようで何よりだ。ならさっそく降伏のチャンスをやろうか。グラ・バルカス帝国皇帝、グラルークスさんよ」

 

 その不遜なる闖入者は開幕早々にそう宣告した。

 もはや騒動の元凶が自分たちにある事を隠そうともしない姿を見て、豪勢な王座に腰かけるグラルークスとその下段で狼狽えたままのカイザルの警戒度が急激な上昇を遂げる。

 そして、軍神と呼ばれた男は己の内から湧き出る言葉をそのまま世界に出力しようとした。

 

「貴様らはっ

「学園都市統括理事長アレイスター=クロウリー直属部隊、グループ。くそ面倒くさい事に今回の戦争に関する全権限を与えられていてな。この降伏交渉においては学園都市と同義だ」

「……、っ」

 

 講和、ではない。

 自国民に対する名目上のプライドすら守らせない、()()()()()の交渉であるという事なのであろう。

 

「なるほどな」

 

 科学帝国の君主は小さく息を吐いた。

 彼らの進軍速度から考えると、これが帝国史上初の降伏通告でありながら事実上の最後通牒となっている。断ってしまえば、千幾年も続いてきた帝国の歴史の終止符が数時間以内に打たれることになるのは明白だ。

 

(いいや、そもそもこの者たちがどこから現れたのかが未だに分からぬ。大扉が開け放たれれば流石に気が付く筈だが、それを悟らせぬ程の隠密能力という事か。いざとなれば我らを暗殺して帰還するまでを容易に成し遂げる余裕もあるかもやしれん。……手前の金髪は明らかに軍人の体つきをしている。カイザルも優秀な能力を持っていたとは聞くが、奴が現役であれば敵う道理はない。だが赤髪の女は保留するとしても、杖を突いた男は直接戦闘担当ではないだろう。状況から察するに恐らくは参謀か何かか)

 

 いずれにしても、と考察に一間置きながら、思案の時間を目の前の侵入者に悟らせないように稼いでいく。

 

(単なる知謀担当要員とは思えない。杖というハンデを背負ったうえでの隠密性、たとえ戦闘になっても足枷にはなり得ない筈だ。学園都市統括理事長とやらがお気に入りの直属部隊なら捕らえる事である程度の譲歩は引き出せそうだが……、周囲に人の気配がない以上一方的に無力化されたと考えるのが自然だろう。素直に交渉した方が賢明か)

「……。ならば…………」

(しかし、奴らの能力の方向性と外が騒ぎになっていないことを考慮するに、小さい火力で敵を瞬時に屠る暗殺者タイプ。対集団戦闘は不得手と見るべきか。……ならばここは他所の衛兵が応援にくるのを待ち、相手に圧力を掛けて譲歩を引きずり出そうか。いくら弱小国とはいえ、主戦力が激減した状態で他国に攻め入られるのは些か致命的にすぎる。最低でも他国との和平交渉の仲介役くらいは担わせたいところだが……)

 

 暫定的な結論を得て、豪華絢爛な外套に身を包む皇帝は静かに顔を上げた途端、辺り一面をぬめるような重たい空気が埋め尽くした。

 グラルークスは優秀な臣下に目線でアイコンタクトを送り、交渉で優位になるよう時間稼ぎを行う事を伝える。

 奴も聡い男だ。わざわざ言わなくとも同じ結論に辿り着いているだろうが、たとえそうでなくとも目線だけでも意図する所は通じるはずだ。

 

「……仮に我らが、断ると言えばどうする」

「めンどくせェなァ、クソ野郎」

 

 代わりに答えたのは白い怪物であった。

 

「交渉ごっこなンてやってる場合かァ? こっちは()()()の実地試験の段階で、こンな辺境での役目は全部終えてンだよ。軌道兵器にしたってコスパの問題で整備が出来ねェンじゃァ耐用年数ってモンが出てきやがる。使おうが使うまいがどうせ定期的に入れ替える必要があンならよォ……。……なァ? これ以上は言わなくても理解できる程度のミソは持ってると思っていいンだよなァ皇帝陛下サマは」

「……、」

「お前らだってホントは理解はしてンだろ? ここを逃せば、一国が滅びるまで停戦条約は結べねェってコトをよォ」

 

 一方通行は右腕から伸びる伸縮式の杖で地面を小突きながら、

 

「言っておくが、上層部は戦争が続く限りは止まらねェぞ。今回の戦争はこの惑星での衛星兵器の試射も兼ねてンだ。弱国相手にコスト度外視で高価な兵器を使ってンだとでも言えば分かりやすいかァ? まぁ試射っつってもシミュレーションじゃ完璧な精度を誇っているらしいがァ、要はこいつに関しても実地試験が必要ってこった」

「……それは、他国民の命を新兵器の実験のためだけに使い潰し、弄んだということを公言したものと受け取ってもよいのだな? 結果が分かり切っていて、なおかつ多数の死傷者が出る事もすべて承知した上で……!」

「命だァ? 言っておくがな、俺ァカタギに対しちゃ博愛を気取っちゃァいるが国家戦争で兵士に死人が出るのを許容できねェほど狭量じゃねェぞ。学園都市の兵器の精度は良くも悪くも精密だ。民間地区への流れ弾はまずあり得ねェよ」

「それに、それをあなた達が言うのもどうなのかしらね?」

 

 横から割り込むように口を挟んだのは、胸を包帯で覆い上から黒の学ランを羽織ったショタコン痴女こと結標淡希であった。

 彼女は帝国東方艦隊の全てを統括するカイザルの方へ目線をやり、武骨なデザインの軍用懐中電灯を手の中で軽く回転させる。

 

「旧列強国第五席レイフォル。かつての戦争では問答無用で首都を撃滅させられて、国家元首含む前代未聞の死傷者を出したことはこの世界じゃ有名でしょうに。作戦そのものが失敗に終わったとは言え、今回の戦争でもムー国西部アルーでの略奪計画が練られていたという情報まで入っているわ」

「なんの話だそれは……。我が軍は捕虜に対する拷問すら禁じる方針を取っている。戦争時の人権侵害問題にはこの世界の列強とやらよりも遥かに配慮しているのだ。言いがかりをつけるのは止めてもらおうか!」

「あら、末端部隊のコントロールがままならない事に悩んでいるくせによくもまぁ。具体名を挙げるなら、帝国陸軍第8旅団長の……確か、ガオグゲルとか言ったかしらね? とは言っても、本国には秘密裏に計画を進めていたという話だから、知らなかったのも無理はないけど」

「……っ」

 

 カイザルは答えなかった。

 この一件に関しては、安易に返答することは出来ないと思えたからだ。

 

 ガオグゲル。回数は少ないとは言え、面識はある。

 陸と海で所属こそ違うが、侵攻作戦計画の部隊編成にはカイザル自身も大きく関わっていたためである。

 

 素行に難があると問題にはなっていたが、その指揮能力の高さから最前線基地バルクルスの総司令官の任を与えられていた筈だ。

 多少の問題行動を起こしてしまうのは薄々感づいてはいたのだが……まさかこれほど大々的に、軍規違反を犯すとは想像も付かなかった。

 

「ま、これ以上起きなかったことの話をしても仕方が無いわ。そろそろ交渉に移ってもいいかしら?」

「待て……一つだけ、聞かせろ」

「答えられるものに限るなら」

 

 周囲に人の気配が戻った様子が無いのを見て、帝国の栄華の礎を創った軍神は口を開いた。

 

「奴は、まだ生きているのだな?」

「どうしてまた?」

「古い友人だ。性格に難がある奴ではあったが、優秀な奴でな。……軍規違反者とはいえ安否を気にするのは当然の事だろう?」

「……さあ、どうかしらね?」

 

 大能力者のテレポーターは衛星通信で送られた情報を手繰り寄せようと思いを馳せて、

 

「別にこの情報は当人を尋問して入手した訳じゃないからね。バルクルスで捕らえたのは尋問もできないほど憔悴した一般兵だけだったと聞くし。救援作戦前日の情報収集で偶然拾ったんじゃないかしら?」

「っ、それでは―――」

「ご友人だったのなら残念ながら。まぁ、運よく襲撃時に基地の外に出ていたのなら生存の可能性もゼロじゃないでしょうけど。はっきり言って望み薄でしょうね」

「……っ」

 

 直前に軍事基地が攻撃されたとは思えないほどの静寂の中、旧友の死で頭を項垂れさせたように見せかけるカイザル。会話で時間さえ稼げれば、外の異常を報告しに来た衛士か内部の異常を発見した侍女が駆けつけてくれるはずだ。この状況さえ外部に伝えられれば、少なくともこちらが一方的な譲歩を迫られる展開にはならないであろう。

 大使を脅して妥協案を引き出すのは政治後進国がやるような事であるため気は進まないが、亡国の危機の目の前ではそんな不平は言っていられない。

 

 使えるのであれば何であっても武器にしろ。さもなくば、祖国と共に滅ぶがいい。

 

「では、我も一つ後学のために聞かせてもらおうか」

 

 カイザルの言葉が完全に止まったのを確認したためか、皇帝グラルークスはワイングラスを持ちあげながら、

 

「先の情報は捕虜からの尋問ではないと申したな。だが、それほど秘匿されるような情報を、単なる通信傍受で入手したとはとても思えない。手に入れる機会があるとすれば、密談の現場に直接居合わせ

「いいやそこまでだ。これ以上無意味な時間稼ぎに付き合う暇はこちらにも無いからな」

「……、なんだと?」

 

 皇帝の発言を遮った無礼者の正体は土御門元春であった。

 

「時間稼ぎ以外に考えられないだろう? さっきからの言動はあんたら本来の性格とはかけ離れているように見えるが。少なくとも皇帝、あんたは降って湧いた幸運を無視してわざわざ回り道をするような奴じゃあない」

「ふん、随分と愉快な観察眼を持っているのだなお主は。ほんの数分間で他人の性格をそれ程までに把握できるとでも?」

「うちのメンバーにはなかなかハイスペックなストーカーもいてね。断片的な情報だけでも一日以上の行動記録があれば完全にその人物のトレースをすることも可能だ。……もっとも、そういう類の忌まわしいバケモンが別にいやがるのも事実ではあるがな」

「ほぉ、ストーカーか。如何なる方法で付け回したと言うかは知らぬが、24時間もこの城を自由に闊歩できたとはとても思えぬな。よもや、お得意の科学技術で透明人間にでも化けていたと言うつもりではあるまいな?」

「なにもこの現代においてストーキングに使えるのは肉体労働だけとは限らないさ」

 

 そう言いながら彼は学生服の内側から中型の金属筒を取り出した。

 大きさは500mlのペットボトルを一回り大きくした物を想像してくれれば良い。物理的電子的問わず見るからに厳重な封がなされたその筒は、たとえ大気を構成する分子の一粒たりとも通さないほどの密閉力を持っているようにも思えた。

 

「〝この世界は我々に何を求める? ―――全く……おもしろき世界よ〟……さて、誰の言葉だったか」

 

 初めの数秒間。皇帝の顔にわずかに映ったのは困惑の表情だった。

 ただし、己の記憶を辿って内に含まれる真なる意味を理解すれば、それはたちどころに戦慄へと変貌を遂げる。

 

滞空回線(アンダーライン)。空気中を漂うように移動し、その対流を利用した自家発電で半永久的に情報を収集する超小型のナノデバイスだ。お宅の庭では半年ほど前から稼働を始めていた訳だが……気づかなかったか?」

 

 起動された投影式のキーボードから暗証番号を入力し、陰陽博士は相も変わらない気楽そうな表情でその不可視の猛威の錠前を解除した。

 使われている技術への理解は追いつかないものの、今から何が行われるのかには見当がついた様子のカイザルが制止しようと叫ぶも、

 

「コイツは警告だ」

 

 言葉と共に内蔵ファンが作動して、指定された数量だけの極細機器が木綿の如く吹き散らされていく。

 ただでさえ逃げ場の無かった空間へ無慈悲に追撃が与えられたことを悟り、カイザルの顔から血色が失われる。

 

 

「今後、宇宙や空から素敵なプレゼントを受け取りたいと思ったときは、学園都市や世界に対して反抗的な政略を練ってみる事だな。なにも軍事的な物に限らなくても構わないぞ? 俺たちは寛容だからな。政治的プロパガンダでも、世界総植民地化惑星支配計画でも、なんならこの場で知った学園都市の裏の顔を世界に発信しようとしてもいい。思いついたものは何でも試してみるといいさ」

 

 

 あぁ、と。

 グラバルカス帝国機関上層部の両名は同時に悟った。

 

 これは首輪だ。真に世界の広さを知らなかった愚者の手足を封じ込めるための楔なのだ。

 これでは二度と侵略戦争など起こせないし、降伏条約の裏で反撃の準備を密かに執り行おうと()()()()()()()許されない。大気に溶け込む微細で非情な支配から脱却する方法は検討も付かないし、証拠もなければその惨状を世界に訴えることもできない。仮にその存在が証明できたとしても、その前に国家を灰燼に帰されてしまえば本末転倒以外の何物でもないのだ。

 

 

 大きく見積もってもほんの三十センチほどの金属製の円柱形。

 実態を見れば辺りに漂う綿埃以下の小さな微粒子。

 

 

 見かけの軍事力などもはや関係が無い。

 たったこれだけで、学園都市は栄華を極めたグラ・バルカス帝国へ未来永劫に続くチェックメイトを決めてしまったのだ。

 

「あぁそれと、これだけの量があれば島国の一つや二つを覆い尽くすのに訳は無いぞ? 学園都市内であっても特殊なツールか施設を使わない限り逃げられない代物だ。この地にはもはや安息の地はないと考えたほうが賢明かもな」

 

 完全に見誤った。心の中で悲鳴を上げている思考はそれだけだった。

 だから、だ。

 

「……条件はなんだ。言っておくが、我を信奉する帝国国民の数は想像を絶するほどに多いぞ。植民地化するのであれば―――」

「いやいやいや。このくらいで音を上げられるのはちょっと不味いんだよなぁ」

 

 なのに。

 金髪グラサンアロハシャツの極めて世俗的な大悪魔はかすかに笑って嘯いた。

 

「第一、この不自然な静寂の種明かしすら済んでいないだろう? まぁ魔術師ってのは普通は魔術のタネが割れないように行動するのが一般的なんだが……」

 

 そこまで言葉を傾聴したところで、数多き勲章の帝国軍人は眉をひそめた。

 訳語がブレている。

 不可解ではあるがどんな些細な事象でも前世界と同じ言語で会話をこなせるこの世界において翻訳にミスが生じるとは到底思えない。

 

 魔術。

 従来の技術系統とは根源的に異なる非科学的技法を基調とする新世界固有の『何か』。

 しかし。

 俗衆に広まる言葉で言えば『魔法』ではなかったか?

 

「存分に気圧されているところ誠に申し訳ないが本国からの命令だ。……お前たちには、我々学園都市のため徹底的に従属してもらうぞ?」

 

 圧倒的な科学力の前に自尊心の塊が音を立てて崩れ果てるなかで、であった。

 情け容赦なく、第二ラウンドの開始を宣告する鐘が鳴り響いた。




未読者向けの解説

【科学サイド】MNW中継器(オリジナル)
「こっちは中継器の実地試験の段階で、こンな辺境での役目は全部終えてンだよ」

一方通行が能力演算を依存するミサカネットワークへの接続範囲を拡大するための小型ドローン。
原作では全世界あらゆる国家の研究施設に妹達が送られ世界規模での巨大ネットワークを築いていたが、この世界では国交の開設すら済んでいない『論外な国家』が多いためネットワークが届かない地域が偏在してしまう。
そのため自己防衛能力を持つ複数の高速ドローン群で電極とMNWを結び、新世界のどこでも第一位の能力を使用できるようにするために作成された。

なおMNW接続機構は電極と同様の技術を用い接続し、それを脳に送るのではなく 明滅するレーザー波として他の機体に照射して情報をやり取りしている。


【科学サイド】滞空回線
「単なる通信傍受で入手したとはとても思えない」
「……さて、誰の言葉だったか」

かつて第二位の超能力者・垣根提督が率いるスクールがピンセットなる名前の機材で回収しようとした、統括理事長アレイスターが持つ独自情報網を形作る超小型機械。
仕様上、学園都市が誇る情報技術が結集する『書庫-バンク-』よりも高度な情報が収集されている。
学園都市にも5000万機ほど散布されているが、大きさにして70ナノメートルのシリコン塊でしかないため誰も気づかない。

なんやかんや言って正直これが一番えげつない技術のような気も……


【科学サイド?】ショタコン痴女
『ランドセルって……日本の職人が生んだ最高のバックパックだと思わない?』

痴女。犯罪者予備軍。というよりもはや犯罪者。
禁書三期では疑惑に留まったが、少なくとも一件の事案が漫画超電磁砲読者の中で立件されている。というか下手すれば電磁三期で全国波放送される。
風紀委員出動案件その三。


【魔術サイド?】ストーカー
『いつでも、どこでも都合の良いヒーローみたいに駆けつけて。彼女を守ると約束してくれますか?』

風紀委員出動案件その四。
たぶん風邪でも引いてたんじゃないですかね(すっとぼけ)

【緊急アンケ】原作未読勢というか、最新刊追ってない人にはちょっと不親切な内容が今後増えそうなので、今のうちにアンケートを。あなたは禁書目録を何巻まで読了していますか? 結果によっては本文に解説描写が増えたり増えなかったり。

  • アニメオンリー/原作未読
  • 旧約禁書は完全読破
  • 北欧の魔神編辺りまで
  • 新約禁書を完全読破
  • 他の鎌池作品にも手を出してますが、何か?
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