とある転移の学園都市   作:Natrium

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完全に同化


第二章
第六話 運命の転換点 New_Generation


 

 1

 

 パーパルディア皇国、第三外務局

 

「あの計画はどうなっている!」

「はい……間もなく皇国監査軍東洋艦隊二十二隻がフェン王国に懲罰のため出撃します」

 そう叫んだ上司に、冷や汗をかきながらも部下が答える。

 

 パーパルディア皇国第三外務局、皇宮を離れ施設の外側に位置するこの部署は、日本でいうところの外務省であり、外交を行うが、パーパルディア皇国では第一、第二、第三の三つに分かれている。

 

 第一外務局は、皇宮の内部に位置し、第3文明圏の5大列強国のみを相手として外交を行う部署だ。対外関係に細心の注意が必要であり、高度な政治判断が求められ、勤務員はエリート中のエリートである。

 

 第二外務局は、皇宮の外側に位置し、列強国以外の文明圏に属する国家を相手にしている。国力を後ろ盾にし、無理な要求を押しつつ、国益をいかに引き出すかが求められている。また、対象には列強保護国も含んでいるため、一方的に高圧的に出るわけにもいかず、高度な判断が必要であり優秀な人材が配置される。

 

 

 第三外務局は文明圏以外の国、いわゆる蛮国相手の仕事である。いかに高圧的に出て、相手から絞りとれるかが試される部署だ。蛮国は量が多いため、外務局人員の6割がここに属する。また、他の部署と異なり、独自の皇国監査軍と呼ばれる軍に命じ、懲罰行動を行わせる権限を有する。

 

 また、三か月前には学園都市もこの第三外務局に接触を試みていたが、統括理事会で何らかの判断が下されたのか、ここしばらく大使は派遣していない。

 

 閑話休題。

 

 第三文明圏列強国、パーパルディア皇国の東側約二百十キロメートルの位置に、まが玉を逆にしたような形の島国がある。

 名をフェン王国という。

 

 また、その東側には内海を挟んですぐフェン王国を鏡写しにしたような、同じくまが玉状をしたガハラ神国があり、そこから東へ五百キロメートルほど離れた位置に学園都市がある。

 

 皇帝の国土拡大計画の一端として、第三外務局では、フェン王国の南部の森林地帯をパーパルディア皇国に献上するよう求めた。皇国外務局としては、追加で国土を得たという実績が残る。フェン王国としても、使用していない土地を献上するだけことで、対価として様々な利益を得られる絶好の機会であった。

 準文明圏国家として、技術供与が成され、さらにパーパルディア同盟国として国名に箔が付き、周囲からの侵略の可能性が激減する。国土が発展し、国も富む良晏であったはずだ。

 

 しかし、予想に反してフェンはその案を蹴った。

 

 そのうえ、第二案として準備していた、同場所の四百九十八年間の租借案を出すも、フェン王国の剣王シハンに再び断られた。

 

 

 ———列強国の顔をつぶされた。

 

 そう判断した局長カイオスの命により、監査軍東洋艦隊の派遣が決定された。

 

 

 

 

 2

 

 フェン王国、王宮騎士団訓練場

 

「アイン、ちょっと来てくれ」

 王宮騎士団の十士長アインは、剣を振っていたところを騎士長に呼び止められた。

 

「何でしょう?」

 アインの上司である騎士長マグレブは神妙な顔をしながら、

「剣王シハンがお呼びだ」

「え?私をですか?」

 

 十士長ごときが剣王に呼ばれるなんて今までにない事だった。

 

 しかし。

「いや、私もだ。全騎士団の十士長以上の者が対象だ、どうやら国の一大事らしい」

 

 

 ———フェン王国首都アマノキ王城

 

「パーパルディア皇国と紛争になるかもしれない」

「っっっ‼‼‼」

 

 剣王が放った一言により、場に衝撃が走った。

 

 フェン王国には魔法が無い。そこで問題になるのが、魔通信が使えないことである。

 情報伝達速度の差で、同量の兵力でも戦力差は変化する。

 

 パーパルディア皇国とフェン王国もその例に漏れない。

 

 兵数、所有艦数、兵器性能、航空戦力数。そのいずれでも負けているのに、情報速度でも下回るフェンに勝ち目は無い。

 戦力差は絶望的であり、さらに敵は列強だ。兵士の装備も全く違うので、数値以上の差がある。そもそも敵が文明圏というだけでも避けるべきであるにも関わらず、よりによって相手は列強……正気の判断とは思えない。

 

 ざわめきを無視して、剣王は続ける。

「現在、ガハラ神国にも援軍をもらえないか、要請している。各方面に対策を実施中だ」

 

 剣王はガハラ神国の首都、タカマガハラの神宮に住まう神王ミナカヌシに親書を送っていた。かの国の風竜の力を借りれば、幾らかマシにはなるだろう。

 

「とにかく、各人戦の準備をしておいてくれ」

 

 その言葉で、張り詰めた空気が少し流れた。

 

 

 

「剣王、学園都市なる国からの使者が、国交を開くために交渉したいと参っております。いかがいたしましょうか?」

 会議が終わり通常の執務に戻った際、王の側近である剣豪モトムが話しかける。

「学園都市?ああ、ガハラ神国の大使から情報のあった、ガハラの東側にある新興国家か。あの辺は、小さな群島で、海流も乱れていたな……。各島の集落が集まって国でも作ったのか?」

 剣王は小さな島国であろうと推測した。

「えぇ、ちなみに、人口は二百三十万人程らしいです」

「ふむ、まあ妥当なところか……、だがこの状況下で何故そのような小国の話を?」

 モトムは資料を捲りながら、

「それが……ガハラ神国経由の情報に少し気になるものがありまして……。両国とも、すでに国交を結んでいるのですが、ガハラが学園都市は列強をも超える超文明を実現していると……。」

「ほう……列強を超えるというのは過剰であろうが、ガハラ神国がそこまで褒めるのであれば、それなりの国家なのだろうな……。」

 

 剣王、他の側近は学園都市の使者に会うことにした。

 

 

 

 

 3

 

 国中が厳しく、厳格な雰囲気が漂っている。武士の治める国……これが、学園都市の使者が抱いた印象だった。生活レベルとしては、低く、国民は貧しい。しかし、精神レベルは高く、誰もが礼儀正しい。日本が忘れた真の武士道のようなものがそこにはあった。

 

「剣王が入られます」

 声があがる。派遣された外交官は立ち上がって礼をする。

 

「そなた達が、学園都市の使者か」

 相手は達人の域を大きく超えている。『暗部』としての顔も持つ島田は、剣王の動きを見て感じ取る。

「はい……貴国と国交を開設したく思い、参りました。ご挨拶として、我が国の品をご覧下さい」

 剣王の前には、学園都市からの様々な献上品が並ぶ。

 

 日本刀、着物、真珠のネックレス、扇、運動靴……。

 剣王は日本刀を手に取り、引き抜く。

「ほう……これは良い剣だ」

 気を良くした剣王が呟いた。

 

 そして、事前に聞いた、学園都市からの提示条件と、書類に間違い無いか確認する。

 

「失礼ながら、私はあなた方、学園都市を良く知らない」

 話が続く。

「学園都市からの提案、これはあなた方の言う事が本当ならば、すさまじい国力を持つ国と対等な関係が築けるし、夢としか思えない技術も手に入る。我が国としては、申し分ない」

「それでは……」

 

 外務省の人間の顔が明るくなる。

 それを遮って剣王は続ける。

 

「しかし、異世界からの転移や、海に浮かぶ鉄船等、とても信じられない気分だ」

「なら、我が国に使者を派遣していただければ……」

「いや、我が目で見て確かめたい」

「と…言いますと?」

「貴国は、新たに水軍を創設したと言ったな?」

「えぇ、そうですね。主戦力ではないため、あくまで『形』だけですが」

 

 転移後、この世界の文明レベルが低いことに気が付いた学園都市は、砲艦外交が行われることを見越して戦艦を建造していた。現代戦では空母機動部隊が主力で、戦艦など時代遅れとなっているが、そもそも航空機が異常に発達している学園都市に『航空母艦』など必要ない。薄っぺらい空母よりも圧力を掛けられる、という考えもあり、結果的に戦艦が導入されることとなった。

 

「構わん。その内の一つをここに派遣してくれぬか?今年、我が国の水軍船から廃船が四隻出る。それを敵に見立てて攻撃してほしい。要は、力が見たいのだ」

 使者達は面食らった。

 

 通常、他国の軍が国交も無いのに来るというのは、威嚇であり、細心の注意を払う。

 非常に嫌がるのが普通であるのに、この国は「力を見せろ」という。しかも首都アマノキの沖に持ってこいという。異世界で、しかも武の国だから、そんな事もあるのかと考え、理事会に報告した。

 近日中に訓練も兼ねて、戦艦——HsBBY-01を派遣する事が決定された。




お分かりいただけただろうか......
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