とある転移の学園都市   作:Natrium

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すいません、遅れました


第八話 次の喧嘩を始めましょう Release_Monster

 

 学園都市外交部は事態の悪化を防ぐため、情報収集を行ったところ、下記の事項が判明した。

 

 ○フェン王国及び各国武官の反応から、襲ってきた部隊は、フェン王国西側約五百キロメートルにあるフィルアデス大陸の第三文明圏に属する世界五大列強国の一つ、パーパルディア皇国で間違いないと思われる。

 ○パーパルディア皇国の皇国監査軍と呼ばれる部隊であり、文明圏外の国を対象とする第三外務局の影響により動く部隊である。

 ○フェン王国に対する懲罰的攻撃を、各国関係者の集まる軍際に合わせ、自己の権威を高め、他国を従わせるために行われた、いわゆる砲艦外交のような攻撃と思われる。

 ○学園都市の人工衛星から、フェン王国西側約二百キロメートルの位置を、速力十五ノット程度の速度で移動する二十二隻の艦隊が確認されている。

 

 事態は切迫していた。

 

 本来、本日の夕方にフェン王国側との会議が予定されていたが、外交部が予定を早めるよう求めたため、急遽場が持たれることになった。

 

 来賓室で待つ学園都市の一団だったが、

 一時して、フェン王国騎士長マグレブが現れた。

 

「学園都市のみなさま、今回フェン王国を不意打ちしてきた者たちを、真に見事な武技で退治していただいたことに、まずは謝意を申し上げます」

 

 騎士長は深々と頭を下げる。

 

「いえ、我々は、貴国への攻撃を追い払ったのではありません。我々に攻撃が及んだので、振り払っただけでありあます」

「さっそく、国交開設の事前協議を……実務者協議の準備をしたいのですが……」

 フェン王国は、もう学園都市を味方に引き入れたくて、たまらないようである。

 

「貴国は、もう戦争状態にあるのではないですか?状況が変わりましたので、我々の権限だけでは、戦争状態にある貴国と、現時点で国交開設の交渉が出来ません。事態の重みを考えるに、一度帰国し、内容を詰めてから再度ご連絡いたしたいと思います。」

 

 外交部は西から来る艦隊が到着する前に、一刻も早く、この場から引き上げたかった。

 

「解りました。良い返事を期待しています。ただ一つ、これだけは、心に留めおいて下さい。あなた方があっさりと片付けた部隊は、第三文明圏の国、しかも列強パーパルディア皇国です。我が国は、パーパルディアから土地の献上という一方的な要求をされ、それを拒否しました。それだけで襲って来たような国です」

 

 騎士長は嘆きながら続ける。

 

「過去に、我々のようにパーパルディアに懲罰的攻撃を加えられた国がありました。その国は敵のワイバーンロードに対し、不意打ちで竜騎士を狙い殺害しました。たったそれだけで、かの国はパーパルディア皇国に攻め滅ぼされ、国民は、反抗的な者はすべて処刑され、その他の全ての国民は奴隷として、各国に売られていきました。王族は、親戚縁者すべて皆殺しとなり、王城前に串刺しでさらされました。パーパルディア皇国、列強というのは、強いプライドを持った国というのを、お忘れなさらぬようお願いいたします」

 一通りの脅しを聞いた後、外交部の一団は統括理事会へ報告を行った。

 

 

 

 

 2

 

「ふむ、経過は良好のようだな」

 何処かで声が聞こえた。

「ここまで『計画』通りに事が進むのはいつ以来のことだろうか」

 そんなティーン特有のソプラノボイスが、とある一室に鳴り響く。

 

 

 

 

 

 3

 

 フェン王国、王宮直轄水軍十三隻はパーパルディア皇国との戦争の可能性があったことから王国西側約百五十キロメートル付近を警戒していた。警戒にあたる水軍は、フェン王国の中では精鋭をそろえており、比較的経験の浅い者は、今回警戒の任にはつかず、軍祭に参加している。水軍は木製の船に効率の悪そうな帆を張り進む。

 船には、火矢を防ぐための木製盾が等間隔に整然と置かれ、敵船体を傷つけるためのバリスタが横方向へ向かい、三基ずつ設置されていた。火矢を放つための油の壺も、船上に配置されている。

 十三隻の水軍を束ねる旗艦は、他の船に比べひとまわり大きく、船首には一門だけ大砲が設置されている。

  水軍長クシラは西方向の水平線を睨んでいた。

 

「軍長、パーパルディア皇国軍は来ますかね……」

「先ほどワイバーンロードが我が国に向かい飛んでいった……必ず来る!」

 それを聞き、艦長は不安げに呟く。

「……勝てますか?」

「ふ……列強国相手とはいえ、タダではやられんよ。うちはかなりの精鋭揃いだからな。それに……」

 軍長は艦首にある大砲を見ながら、

「あれを見よ!文明圏でのみ使用されていると言われる魔道兵器だ!球形の鉄の弾を一キロメートル近くも飛ばして、船にぶつけ、その運動エネルギーをもって破壊する。これほどの兵器を船に積んだのだ!」

 

 軍長は艦長にそう言うが、彼は知っていた。列強には、砲艦と呼ばれる船ごと破壊出来る超兵器が存在することを。

 フェン王国のトップシークレットだった。おそらく砲艦は、このフェン王国最強の船、旗艦剣神のように、文明圏に存在する大砲と呼ばれる魔道兵器を船に積んだものに違いない。しかも、その最強クラスの船が、列強では普通に存在するのだろう。

 

 (どうすれば―――勝てる?)

 

 水軍長クシラの頭脳は、来るべき列強パーパルディア皇国との戦闘に備え、フル回転を始め―――

 

「艦影確認‼艦数二十二‼⁉」

 

 マストの上で見張りをしていた見張り員が大声で報告する。

 水平線に艦影が見える。望遠鏡と通して見えるその艦は、フェン王国王宮直轄水軍の船に比べ、遥かに大きく、先進的である。デザインと機能性を兼ね備えたマストに風の魔法で吹き付けられる風を受け、フェン王国式船より速い速度で船は進む。

 水平線から徐々に大きくなっていく敵艦隊は、フェン王国水軍長クシラの目を持ってしても優雅であり、美しく、力強い。各艦の乱れない動きから、錬度の高さが伺える。

 

「総員、戦闘配備‼」

 

 号令と同時に船員が慌しく動きまわる。

 しかし。

 

「思ったより接近が早いな………」

 

 彼の想定する船速よりも速く艦隊は近づいてくる。

 

「くっ……初弾だ!最初に一番威力のある攻撃を行ない、その後魔導砲を放ちながら最大船速で敵に突っ込むぞ‼」

「各自、戦の準備を‼旗艦剣神を最前列とし、縦1列で敵に突っ込め‼」

 

 (頼むぞ———)

 

 水軍長クシラは旗艦剣神の船首に一門だけ設置された魔導砲に願いを込めた。

 

 

 

 

 4

 

「艦影確認、あの旗は……フェン王国水軍です」

 

 パーパルディア皇国皇国監査軍東洋艦隊の提督、ポクトアールは部下に報告を受け、

 

「フェン王国か……。ワイバーンロード部隊の通信が途絶している。新兵器を持っているのかもしれないな……」

 

 ポクトアールは声を張り上げて命令する。

 

「相手を蛮族と侮ってはいかん! 列強艦隊を相手にする意気込みで、全力で叩き潰すぞ‼」

 

 艦隊は速力を上げ、フェン王国水軍へ向かって行く。

  

「間もなく敵との距離が二キロメートルに接近します」

 

 しばらくして、報告があがった。

 

「もうすぐ魔導砲の射程に入るか……」

 

 そして。

 

「面舵一杯‼‼」

 

 パーパルディア水軍の艦隊が一斉に横を向く。

 

「進路そのまま、宜候‼」

 

(今頃、奴らは我が艦隊の動きを怪しんでいるであろうか———)

 

 ポクトアールはそう考えながら、

 

「砲撃準備、撃ち方始めぇぇっ‼‼‼」

 

 バババババッッッッ‼と。

 魔導砲に煙が立ち込める。

 

 直後。

 敵艦隊周辺に水飛沫が上がる。

 

(敵艦からの発砲は確認できない、新型魔導砲は持っていないようだな。新兵器は対空兵器なのか、飛龍なのか———)

 

 提督はフェン王国海軍の新兵器の正体を考えながら、

 

「第二射用意、撃てぇぇっ‼」

 

 ゴバッッッと。

 遂にパーパルディア側の砲に命中弾が出始める。

 

 初めに、敵旗艦剣神の後方を航行していた船に、敵の魔導砲が着弾した。

 砲弾は炸裂し、船上に設置してある火矢を放つための油壺をなぎ倒し、撒き散らされた油に引火、船は炎上し始める。

 フェン王国お得意の剣術が発揮される事無く船上で焼かれ、転げまわる船員が目に入った。

 

(哀れなものだ、剣術など海戦で役に立つ時代など疾うに過ぎているというのに)

 

 次々と砲弾がフェン王国水軍に着弾してゆく。

 敵旗艦剣神が、せめてもの反撃として球形砲弾を放つも、

 次の瞬間、敵砲が着弾し、船上に大穴が開く。

 

 砲艦の数、一艦あたりの砲数の差、砲の射程距離及び威力、そして艦の船速、どれもが桁違いであり、フェン王国水軍に勝ち目はなかった。

 こんな様子じゃ、こちらが一艦だったとしても余裕を持って勝利できただろう。

 

「最後だ、愚かな王国軍に砲弾をくれてや————

 

 ポクトアールは止めを刺すために、命令を出そうとし、

 

 

 どっっっガッッッ‼‼‼と。

 青い閃光がパーパルディア艦隊に突き刺さった。

 

 直撃を受けた五隻は蒸発、煽りを受けた船も大きく傾いた。

 

 

「———ッ⁉」

 

 ポクトアールは振り返り、攻撃の正体を見極めようとして―――

 

「なん……だと、馬鹿なデカすぎる‼一体何だあれは‼‼」

 

 ―――目を見開き、発狂する。

 

 目測でも、全長三百メートルを優に超えている。しかも総鉄製であろう。何故それだけ巨大な船が浮いているのか理解が出来なかった。

 フェン王国の新兵器を気にしている場合ではなかった。目の前の、皇国でも再現できない程の力を持つ砲艦は、とても新兵器に収まる代物ではなかったのだ。

 

 ―――いや、もはや砲艦などといった矮小な船ではない。

 言うならば戦艦。戦場を支配する程の圧倒的な力を持つ戦船。

 

 しかし、一体どこの国家が持つというのであろう。少なくともフェン王国ではない。文明圏外の野蛮人にそんなモノを作れるはずがない。何処かの大国がフェン王国に手を貸したとしか考えられないが、わざわざフェン王国などに肩入れする理由などどこにもない筈だ。

 

(だが、決めつけるのは早計か。フェンへの肩入れというより、皇国監査軍、即ちパーパルディア皇国軍を狙ったものと考えるべきか……。なら先ずは———)

 

 そこまで考えてポクトアールは部下に命令する。

 

「急ぎ本国へ魔電を送信しろ‼ 内容は『我、所属不明艦ニ攻撃ヲ受ケル。所属不明艦ノ全長ハ三百メートル以上、巨大ナ砲ヲ装備シテイル。敵国ハ少ナクトモ我ガ国以上ノ力ヲ持ツモヨウ』だ! あの艦の情報を何としてでも本国へ伝えろ‼‼」

 

 通信班はショックから立ち直り、大慌てで送信を始める。

 

「追加だ! 『敵艦ハ総鉄製、列強、モシクハソレ以上ノ技術デ建造サレタモヨウ。古ノ魔法帝国ガ復活シタ可能性アリ。十分ニ警戒サレタシ!』 急げ、敵の砲撃が来るぞ‼」

 

 なんとか通信班が報告を終えた直後、 

 束になった青白い光線が、皇国監査軍を一隻も残すことなく消し飛ばした。

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