外道注意
次の日。
さすが転生者、動きが早い。
早速うちのクラスに転入してきた。
「大神透だ。よろしく頼む」
なんというアルビノ。
ただ、美形補正はかけなかったらしく平凡な顔をしている。
彼は第二の男性操縦者として来たらしいが、女子の反応は大して大きくはない。
一夏はイケメンだし、シャルは男装だったが可愛い系男子っぽかったからか。
大神と名乗った彼は一度私をジロリと睨むと指定された席にどっかりと座った。
ーーとりあえず、観察といこうか。
どこまで迷惑なやつか。
それ次第だ。
とはいえ、先程の睨みといい、私に対して好意的とは言えないね。
いじめでも始まったら流石の私も【うっかり】我を忘れて【つい】個人情報を生年月日からスリーサイズ、初潮の日時、初恋の行方、最近の悩みまで調べ上げて【たまたま】それを間違えて掲示してしまうかもしれない。
悪意には、殺意を。
ただし社会的な、な。
などと考えていると、SHRが終わり、大神が接近してきた。
「おい貴様。何者だ」
「何かね藪からスティックに」
「なめてんのか?」
ふむ。会話が成立しない、と。
「俺が聞いてるんだから早く答えろ」
性格も落第、まるで何処ぞの金ピカ英雄王のような尊大さだね?
「おい、てめぇ聞いてーー」
「・ーー惑星は南を下とする。範囲指定、大神透」
誰にも聞こえない程度に呟くと、大神がすごい勢いでドアに向かって滑走していく。
正確には南に向かって、だが。
物は下に向かって落ちるのだから当然だね?
「何をーー!」
傍目から見れば猛烈に上手いパントマイムを唐突にやり出したようにしか見えないね。
どうやら特典の存在も頭に血が上り過ぎて忘れているようだし。
突発的な事象に対面した際の冷静さ及び自身の把握並びに状況の把握能力、落第。
ここまで来ると人間失格なのではないだろうか。
「私の名は七海詩織。何処にでもいる普通人だ。私程の常識人は滅多に居ないとも」
教室の至る所から多種多様な否定の声が聞こえる。
主に常識人という辺りに。
「これは遺憾だね。諸君らには後ほどゆっくりと私が如何に普通で常識的か言い聞かせるとしよう」
織斑先生が現れたので概念を解除。
大神はようやく普通に歩けるようになった。
……完全にドア側が南というわけでは無いのだから思い切り屈めば普通に歩けたのだが、言わないでおく。
地球が球体であることを忘れているようだ。
中々古代的だね?
しかしながら、いつもながらに座学の時間はそんなに楽しくない。
大体覚えているからだが。
「七海。珍しく起きてるな。では教科書十三ページを読め」
「先生、教科書忘れましたー」
あ、山田先生が泣きそうになった。
いじめたくなるねなるね?
「そうか。なら座れ。そして喰らえ」
出席簿アタック。
私はあえて受けた。
大神になるべく特典については知られたくないのだから当然だ。
出席簿と私の頭が接触、凄まじい轟音を立てて一瞬頭が砕けたかと錯覚する程の痛みが私を襲う。
結果、私は保健室に放り込まれることとなった。
概念や魔法、その他異能などを使っているとしか思えない程の打撃力だった。
「ぐ、まだ痛みが引かないか」
一時間寝たがまだ痛い。
気絶寸前だったのだから仕方ない。
保健室から出て、誰もいない屋上に出る。
「さて。大神透。そこにいるのだろう?」
「……なんだ。気づいていたのかてめぇ」
「無論だとも。推定敵が弱り、一人になる瞬間を見逃す訳がない。私だったら見逃さない」
「ち、なら、死ね」
一瞬時間が止まったのを感じた。
すると、眼前には大量の剣剣剣。
「無限の剣製。それとその腕につけてる盾はまどかマギカのほむほむシールドだね?」
「ご名答。死ね!」
「・ーー人に馴染む。範囲指定、大神透」
剣が消えた。
同時に何回盾を回しても時が止まらない。
「さて、君には人に馴染んでもらったよ。人に馴染むのならばまず、秀でた部分を削ったりしないとならないからね。君はそのせいで無限の剣製もほむほむシールドも使えない訳だ。しかし、私は使いたい放題だ。悔しいかねははは」
「く、なんだ、この……!」
必死に盾を回していて私が近付いている事すら分からないらしい。
中々豆腐メンタルだね。
「・ーー攻撃力は無限となる」
ある程度近寄ってから黒鍵を投げる。
「爆ぜろ」
黒鍵が刺さる前に爆ぜた。
軽い爆発音がすると、その前にいた大神に破片が突き刺さる。
「な、なんでだよ!俺が一番強くて最強なんだろ!?」
なんか言ってるが、まぁ、辞世の句としては下の下だね。
「では、御機嫌よう」
スターライトブレイカーの縮小版を打ち込んだ。
あっさりと大神は地に伏せ、動かなくなる。
しばらくすると、粒子になって消えて行った。
「一件落着かね」