そして運命の翌日。
ピットでユグドラシルを装備した私は、さらに右腕にアンクレットを装着していた。
アンクレットの名は、悪臭。
今回の戦闘の目的は概念がどの程度ISに通用するか、だ。
私にとってはISは当初の開発目標に近く、空を征く為のもの、だ。
束に聞かれた時にそう返したらものすごく喜ばれたのは、記憶に新しい。
「故に、過剰な武装は必要ない、と」
そもそも私自身が武装のようなものだ。
「さて、行くか」
ユグドラシルのブースターを着火させ、勢い良く出た後にスラスターを用いて上手く高度を制御する。
「ふむ。やはり癖になりそうだよ、空を征く、とはね」
「アンタの手の内はセシリアから聞いて把握してる。私の敵じゃないわ!」
次の瞬間、私は鈴音の背後に回っていた。
時間遡行反撃。
久しぶりだな、この感覚。
鈴音は片手に銃を持っており、アレで撃たれたのか、私。
「出現位置は必ず背後!勝ったーー!」
さらに打撃を加えようと私に殴りかかるが、私はさらに時間遡行反撃能力が発動して背後に回る。
なるほど、一度やられたら二度はないと思ったのか。
「なるほど、アンタのそれは回数制限無い訳ね!」
ついでにエネルギー消費もないが。
「ふむ。さて、どう料理しようか」
「でも、これなら!」
何かが通り過ぎたような気配がして、背後が爆発した。
衝撃砲かね。
「不可視の砲撃、か」
「見えないなら避けようがないんじゃない?」
しかし、私は鈴音の背後に居る。
残念だね。これは自動なんだ。
「うそ、なんで」
「少しばかり収束が足りないが。スターライトブレイカー!」
客席から悲鳴があがった。
おそらくセシリアだろう。
いい加減克服したらどうだろうか。
「おっと、手が」
悲鳴の方に滑った。
事故なので私は悪くない。
「ちょっと!?」
悲鳴が多重奏に変わった。
みんなで叫べば怖くない。
そんな事はないか。
「すまない、手が滑った」
「嘘付けェ!」
鈴音が殴りかかってくる。
おぉ、収束不足だったがスターライトブレイカーを耐え切るか。
「普通に殴るより、その肩でタックルした方が痛いような気がするがどうだろうか」
「うっさい!」
背後に回る。
「あぁ!もう!ちょこまかちょこまか!」
鈴音がイライラし始めたので笑かけてみる。
「キィイイイ!」
奇声をあげ出した。
「女の子として如何かね」
「あああ!」
衝撃砲を放ったらしく、背後に回った私に打撃が入った。
ーーバックステップかね!
なるほど、必ず背後に回るのなら背後に攻撃すれば当たるのは当然か!
「よし、一発!アンタもそんな顔出来んのね。いつも無表情だから新鮮よ」
「ふ、ふふ、いや、素直に感動していたところだ。私のアレを潜り抜けてダメージを負わせる、などね」
鈴音は知らないだろうが、背後に回るのはどんな動作途中でも、なので回った直後は状況が把握し辛いのだ。
「では、次だ」
「ゲームの魔王かアンタ!」
こんな可憐な少女に魔王などと、なかなか酷いことを言うね?
私は右手の指を鳴らした。
金属音が発生し、鈴音を叩く。
「敵意には、打撃を」
「な、ぐ……!?」
鈴音なら、攻撃の予兆が金属音である事、攻撃が必ず上から来る事を理解するのは時間の問題だろう。
「ならば、理解しようが関係ないほど叩けば良い」
連続で指を鳴らす。
回数分金属音が発生し、鈴音を地面に減り込ませるほど叩き伏せる。
そろそろかね。
「そら、鈴音。そんなところでぼさっと埋まっていると、負けるがどうするかね」
今度は十分に収束。
「・ーーエネルギーは無限となる」
概念の効果により、収束がさらに進む。
しばらくすると、無印劇場版レベルの巨大スフィアが完成する。
ようやく地面から鈴音が現れた。
が、私はすでに発射準備を整え終えている。
「スターライトォ……」
「あー、これは、トラウマに」
「ブレイカー!」
なるわぁ、という諦めに似たような声色が聞こえた気がした。