目が覚めた。
なんというか、簡素で真っ暗な部屋だ。
真夜中だろうか。
自分はベッドの中で眠っていたようだ。
「ふむ。転生、というより召喚に近いのではないだろうか、コレは」
自分の手を見る。
贔屓目に見ても細くて白くそれなりに綺麗な手だ。
大きさは前世の彼女と同じくらい。
そこから逆算で十代半ばと判断する。
「ふむ。声もきちんと女だな。胸は……まぁ、それなり、か」
別に大きさにこだわりはない。
が、女になったからか負けた、とか悔しさがこみ上げてくる。
ひとしきり寄せて揉んで、を繰り返し、虚しくなってからベッドから降りる。
近くに姿見があったので容姿の確認をするために見ると、そこには、
「篠ノ之、束……?」
いや、違う。
彼女の瞳は金に近い色ではなかったはずだ。
「うん? あの神、どんな余計な事をして……」
近くに手紙が落ちてきた。
なるほど、こんなところまでテンプレ通りか。
「何々。ふむ。ほお、なるほど」
速読して要点だけまとめた。
・両親は殺され、私は実験動物。
・今の身体能力なら型月の鉄甲作用が乗った投擲だって可能。
・転生した後の事は知らない。私はちゃんと女から生まれて五歳くらいまで幸せだった。
・容姿は完全に偶然。
・束には及ばないものの、頭は良いよ!
・ごめんなさい。
「つまりあれだね。スターライトブレイカーでお話すれば良いんだね」
などと呟いてた時、部屋の扉が開け放たれた。
「あれ? 私?」
「おや。噂に名高い篠ノ之束さんではないか。こんなジメジメした場所に何の用かね?」
「うん、別人。でもこんなに似てると面白くなってきたよ」
素敵田村ゆかりボイスで勝手にテンションが上昇していく。
「ねぇ、君、私と来る?」
大方実験動物としてだろうか。
だが全く問題ない。
何を隠そう、私は束ファンだからだ。
「あぁ、ここでの暮らしは飽きていてね。攫ってくれるとありがたい」
「うんうん。じゃあ攫ってあげる。えーと、名前は?」
「無い。つけて貰えるかね?」
「んー、じゃあ七海詩織ちゃん。しーちゃん、って呼ぶね」
絶対適当に思いついた名字と名前つなげただけだと断言できた。
「じゃあしーちゃん。悪いけど一人暮らしお願いね」
おっと、言ってることが二転三転してる人が居るよ此処に。
「構わないが、私に生活能力はおそらくないぞ」
「大丈夫大丈夫。お手伝い君を三機ぐらいあげるからさ」
つまりあれだ、連れてこうとしたけど途中でデメリットメリットの天秤がデメリットに傾いて、大して気にもかけるつもりはないし、まぁいっか、くらいの感覚か。
犬猫拾うのと大差ないのだな、私。
「なら大丈夫か。ではよろしく頼むよ、束博士」
「束。博士号取ってないしね」
なら遠慮なく次から呼び捨てにさせていただこう。
「あ、やっぱ一人暮らしじゃなくてIS学園に入って貰うかな。ちょうどいっくんとかと同じくらいだし」
二転三転しすぎて困る。
「構わないが、その代わり専用機を所望するよ?」
「それくらいなら構わないよ。ついでに実地で実験してもらうためにいくつか武装とか送るからね」
「ギブアンドテイクというやつだね。今日からかね?」
「ううん。入試が明日からだから明日、入試行ってね。願書とか推薦とかその他は適当に偽造しとくから。えっと、な、なー、あぁ、七海詩織ちゃん」
絶対興味ないだろ私に。
会話が成立してるだけいいとしよう。
「じゃあ、今から一夜漬けしよっか!」
笑顔で束が量子化を解いたのは、分厚い参考書だった。
束が教えるなら、そこらの授業受けずに済むかなぁ……。
現状、束は詩織の事を駒としか見ていません。