運命の襲撃当日。
私はゆっくりとピットへ続く通路を歩いていた。
時間的にはそろそろなはずだが。
「さて。始めよう。この後のスタンスを決めるために」
来た。
悲鳴と混乱の声が聞こえ、隔壁が通路を分断する。
私の背後にいつの間にか現れたのは、無人機だ。
遠慮なく腕を振って私の体を上下に分断しに来る。
が、その時すでに私は無人機の背後にいる。
「ではまず一発。・ーー貴様と私はそこのアリーナ入口を下とする」
無人機が入口に滑走していく。
私は既にX-Wiを展開して空戦準備だ。
無人機はすぐに体制を整えて私にミサイルを放つ。
私は丁寧に黒鍵でミサイルを貫き、さらに指を鳴らす。
無人機がアリーナ入口を突き破って吹き飛んだ。
私はX-Wiを解除し、無人機を追って落ちる。
「さあ、次はこれだ束!」
・ーー文字は力を与える能がある。
描く文字はカタパルト。
描く場所は私の腕。
射出するのは一掴みの黒鍵達。
「黒鍵掃射!」
無人機がアリーナ内に侵入し、一夏と鈴音が慄いている中、私は全く構わずそれを撃つ。
「詩織!?」
一夏が驚愕してるが知らん。
「う、嘘、ISの反応も無いって事は……生身で圧倒……?」
「偽・火葬式典!」
発火概念を付与した黒鍵を用い、さらに追い打ち。
火柱を上げて爆散する。
こんなところか。
「さて一夏。中々苦戦してるようだね?ははは」
「こんな人外相手に追いかけっこしてたのか俺は……!」
人外とは失礼だね。
「ははは。次からは容赦せん」
「ひぃ」
全くもって失礼な。
「・ーー攻撃力は無限となる」
立ち上がった無人機を黒鍵で粉砕し、私はその場から全力逃走を行い、面倒ごとから逃げ出した。
夜。
私の電話が鳴った。
当然相手は束だ。
「やぁ束」
『やっほーしーちゃん!分かった!分かったよ!しーちゃんの謎の技術の正体!』
「ほほう。ならば答え合わせと行こうか」
『しーちゃんの技術の正体、それは法則だね!』
「その答えに至った理由は?」
『しーちゃんが技術を使うとき、必ずしーちゃんは何か言ってるよね。攻撃力が無限になったり。そしてその後、その通りになった。異常なエネルギー力場も観測したしね』
一息。
『どうやってかは知らないけど、しーちゃんは法則を操れる。そういう結論に達したよ!』
「概ね当たっているよ。流石は天災。完全な正解は、概念、だ」
『やった!』
「ふふ、私としてはこんな科学的にあり得なそうな結論をそのまま採用したのかが気になるが」
『まあ、そうとしか結論のしようが無かったからねぇ』
「そうかね。で、次はどうするつもりかね?」
『んー、どうもしないかなぁ。概念が純粋に科学技術ならISにも流用出来ただろうけど』
出来ないことはないが、おそらく現在作成中であろう箒の専用機『紅椿』に流用されても困るので黙っておく。
「ふむ。ではそろそろ私も寝るとしようかね」
『あ、はいはーい。じゃあおやすみ、しーちゃん』
「おやすみ、束」
通話を切りつつベッドに潜り込む。
ふわりと柔らかく心地よい質感が私を抱きしめるように包み込み、私は瞬く間に睡魔に負けた。