帰ってきたわ、二次元
女の子に囲まれながら教室に到着した。
THE・ハーレムだが羨ましいと思うなかれ、他人から見ればの話だ。当の私は包囲されている感覚だ。そんな注目を受けながら教室に来たは良いが問題が一つ、いや沢山ある。
「君達は教室に戻ったらどうだ?」
そう、他のクラスの子がそのまま入ってきて私の席の周りに集まっているのだ。そしてもう一つ、先に来ていた子だろうか教室の出入り口から顔を覗かせている子が…大勢だ。教室を覗くのは別に気にする程では無いが…髪色がカラフルなのだ。
恐らくこの子達と同じタイプだろうと思われる。
そんな子を視界の端には入れるが、視線を必死に合わせないよう他のことに意識を向けている状態だ。視線を合わせたら最後、同じ様に襲われる気がする。
「まだ時間はあるよ?」
「ねぇねぇ!提督の事教えてよっ!」
「私も知りたいなー」
「あの、放課後お時間頂けますか…?」
一斉に返事もとい質問が返ってきた。複数人と同時に会話出来るが非常に面倒くさい。そんな事を考えていると皐月が動き出した。
「もーっ、散った、散った―っ!ラズルは僕のラズルだよ!」
まて、何が僕のだ、物になった覚えはないぞ?まぁ…様子からして散ってくれる気はしないが。
「もう皐月だけの提督じゃないんだよ?」
「独り占めはダメっぽい」
「あの…提督が困っていますぅ」
最後の子の一言で皆沈黙した。確か…潮だったか、ナイスだ。それと提督と呼ぶ?たしか青葉も同じ事を言っていたが…軍で使われる名称だったような――……まて、軍関係?この世界に来てから軍に関係する情報が恐ろしく少ない様な…情報統制を敷いているのか?…
…後で調べるか。
今は考えるだけ無駄だろう、それより周りの対処をしなければ。
辺りを見渡せば皆静かに私を見ている。見るというよりは凝視といった方が正しいだろうか……増えてないか?周りの子達に比べて身長が若干高いような、上級生だろうか、確実に数人増えているな。
「Hey、アタナが提督デスカー?」
THEハーフと言った感じの子が話しかけてきた。耳の上両側にシニヨンを組んでいる随分と手の込んだ髪型の子が話しかけてきた。
提督という単語が出てきた時点でこの子達と同類だと分かる。ただそれ以上にこの子が纏っている雰囲気が周りの子と全く違う。
周りの子が灯火であるなら眼の前の子は業火の様な圧倒的な違いだ。
まぁ良い…話しかけられたからには何かしら返しておくべきか。放って置きたいのが本音だが。
「すまないが、提督とは何の事だ?よく分からなくてね、教えてくれないかな?」
分からない事は直球で聞いてしまうのが一番だ。聞き返すと彼女は少し思案するような仕草を見せてから言った。
「自覚無いのデスカ?」
そして周りの子をゆっくりと見渡して少し思案するような仕草を見せてから続け様に言った。
「ソーデスネー…提督ハ私達かんむングッ」
後ろに控えていた眼鏡の子が口を抑えて、話を強制的に止めた。聞かれたくない内容なのか?いや聞かれたくない内容なのは確実だろう。でなければ止める必要は無い…。
抜け出そうと暴れるツインシニヨンヘアーの子に別の子も抑えにかかったが、抑えるので精一杯のようだ。
抑えにかかってコレって…とんだ怪力だな…
「お姉さま…周りは既に…私達も先に提督と…」
聞かれている事を理解しているのか判らないが断片的に伝えている。提督という単語が出てきた事に警戒を強めた、絶対何かあると。
そんな囁きと共にジタバタと暴れていたシニヨンヘア―の子は大人しくなると同時に周りで押さえつけていた子が開放した。
そして彼女はゆっくりと立ち上がりラズルシェーニエを見据えた。
獲物を狙うかの様な目をしながら。
まて、落ち着け?その目見たぞ?少し前のこの子達と同じ目だ…
どうする、覚悟を決めるか、覚悟を決めて逃げるか、どっちを選んでも覚悟しかない…逃げるにしても既に囲まれている、飛び上がり天井を蹴って教室の出入り口から出るか…いや、学校の天井は落下しても怪我が無い様に脆い素材を使われている、蹴った所で足が埋まりそのまま落下するだろう。この場から跳躍して彼女達を飛び越えるか…天井との間を飛び越えて出入り口に行くのは容易いが…空中で捕まりそうだ。力ずくは…論外だな、力で勝てる気がしない。
「落ち着け…外の空気を吸って頭を冷やさないか?」
とは言ったものの聞く耳を持たず、ジリジリと摺り足で距離を縮めている。
大人しく諦めるか…いや、窓が残っているではないか。それだ、丁度換気の為か開いているし飛び降りてそのまま帰ろう。
今日は色々とあり帰ったところで問題ないだろう。それより帰って調べたい事が山程ある。調べて出てくるとは思えないが…。
周りを伺えば最初に襲ってきた子は自然体のままで襲ってくる気配は無い、恐らく目的が済んだからだろう。教室の出入り口側だけ新しくやって来た子で埋められている、ならば窓側の子を飛び越えて、窓枠に着地、そのまま飛び降りて帰る…もとい逃げる。カバンとかはこの際だから置いて行く…いや、生徒手帳が入れっぱなしだ、住所が載っていて家が特定される可能性が大だ、置いて…いや、置いていこう。生徒手帳の為にカバンを持っていったところで、彼女達が職員室に突入して住所を聞き出せば分かる。皐月は既に住所を知っているし、どちらを選んでも結果は変わらないだろう。
よし…まずこの場から離れる為に囮が必要だな…消しゴムを囮にするか、愛用の薄型消しゴム手放すのは惜しいがまた買えば良い。
決まれば行動開始だ。
机の上に置かれているグレーのシンプルな筆箱からゆっくりと自然な動作で消しゴムだけを取り出して机の上に戻す。そして消しゴムを見やすい様に高く上げて視線が集中したところで一言。
「これは、消しゴムだ…」
きっと皆思うだろう、何を言っているんだ?と。だがそれで十分、十分すぎる、皆の視線が消しゴムに移ったのだから。
そして消しゴムを親指で弾きやすいように持ち替えて廊下側に弾き飛ばす。
今だ!
皆の意識が宙を舞っている消しゴムに向いたその一瞬、靴のグリップを確かめてバク宙の要領で窓枠に飛び移り、そのまま外へ飛び出して帰る。それがラズルシェーニエの考えた逃走作戦である。
案の定皆の意識は宙を舞う消しゴムに移っており、その中で音を立てないように跳躍した。残したのは微かに服が擦れる音だけだ。そして誰も動く気配が無い事に安心した、
が。
「ぽいっ!」
何!?
静寂の中で一人だけが異常な反応速度を持ってして空中のラズルシェーニエを背後から捕まえた。
クリーム色の髪をした子だ。
腰に両腕を回し、しがみついている。
その状況下、宙に浮いていられる微かな間に捕縛から逃れようとするが驚異的な力で腰にしがみついていてビクともしない。自身一人が窓枠に到達する程度に予測して跳躍した為に途中でしがみついた彼女は予定外であり、運動エネルギーが足りず手前の床に落下するのは確実である。
落下を回避するために腕を付き出そうにも腕まで一緒にホールドされており身動ぎすることしか出来なかった。
そして対策する間もなく二人は落下した。
「ンゴッ」
「ふんぎゃっ!」
仲良く落下して鈍い音と共に木のタイルで出来た床を頭部で粉砕した。異常な力で私を捕まえていた子は頭に響いたのか流石に手を離した。
結果的に逃げ出すことは出来なかったが彼女達の輪から抜け出すことが出来た。
「夕立っ!?…提督になんて事を…」
そう言いながら黒髪を三つ編みで肩から前に垂らしている子が私の方に駆け寄って来た。確か時雨だったか?潮と同じく襲ってきた子の中で数少ない黒髪だったからよく覚えている。それと私の頭を床に叩きつけた子は名前は夕立と言うのか。
「提督っ、お怪我は!?」
「はわわわっ」
「ぼ…ぽぃ~」
床に仲良く倒れている二人に群がってくる。様子からしてどうにも私を心配しているが…放っておいて良いのか?横の子は頭抱えて蹲っているぞ?
仕方ない逃走は失敗したがシニヨンの子から離れる事が出来た、それに窓が目の前だその気になれば直ぐに飛び降りれる。
それよりも気になった事がある。
彼女達…もとい女の子が密集していて見難いが…隙間から見える彼女…シニヨンの子が顔を青くしていた事に。恐らく頭部から落下した私を見たからだろう…しかしシニヨンの子はまだ契約していない…何故その様な顔をする…?……ただ一つ分かった事がある。彼女、いや彼女達の様子からして提督…私の存在を重要視している事だ。
…起き上がるか、いつまでも寝ていたら大ごとになってしまいそうだ。
「落ち着け…この程度で怪我はしない」
声を掛けながら普通に起き上がり乱れた髪と制服を整えて辺りを見回した。そして仲良く落下した子はどうしたものかと悩んでいると痛みが引いてきたのか頭を抑えながら起き上がった。
「ぽい…頭だいじょーぶっぽい?」
そう言いながら立ち上がった子は私と陥没した床を交互に見た。
大丈夫?と言っているが君も私と同じ様に穴を作っているからね?同じセリフを返したいよ。
「この程度問題ない」
「…提督も艦娘っぽい?」
その質問を堺に周囲の空気が凍った。艦娘…先程の子が言い欠けていた言葉と同じだろう。
「艦娘……とは何だ?」
「ぽっ……」
反射的に返してしまった言葉に問題があったのか、周りの子は皆私から視線を逸らした。気まずそうな顔をしている子が居れば俯いて震えている子が居る。艦娘と発言した子に至っては言ってしまったと言わんばかりの表情をしている。
「へ…ヘイ、テートクゥ?私達もケーヤクしたいネー」
消しゴムを手で弄りながら恐る恐ると言った様子で声を掛けてきた。
弾き飛ばした消しゴムをキャッチしていたのか…それよりもヒントが揃ったか?提督・艦娘・契約……妖精?分からないな。提督と契約なら何となく分かるが艦娘とは何だ?『提督も艦娘っぽい?』と聞いていた事からこの子達は艦娘と見て良いだろう、体が丈夫な者を艦娘と呼ぶのか?いや違うな。もっと何か別の……
「君、名前は?」
ただ一つ分かったことがある。この子達に対して引く様な行動を示せばその分接近して来る。なら有無を言わせない物言いで接した場合は…
「金剛デース…」
正面を向き堂々とするだけで彼女達は引くだろう。
「金剛か…なら金剛に聞くが提督と艦娘、それと妖精について教えてくれ」
そう、すっかり忘れていたが事の発端は皐月の連れていた妖精である。はぐらかされたら皐月に聞くとしよう。
「デス…デース…」
金剛は視線がキョロキョロとして落ち着かない様子を見せた。この様子だと聞くのは無理そうだと思い皐月に聞こうか迷ったところで口を開いた。
「聞いてもテートクはキライにならないデスカー?」
「…それは嫌いになる要素があるのか?」
知る事によって問題となる内容…分からないが言いづらそうにしている様子から普段隠しているのだろう。現に私が普通に生活していた中では全く知らなかった。
何故だ?
何故知らなかった?-隠されていたから、また情報統制。
何故隠されている?-不都合となるから。
何故不都合となる?-政治?政府が絡んでいる?
情報統制をする…不都合または…隠す事…
利を得るため…
情報が少ない現状で考えたところでキリがない、しかし今朝の教員は知っている様子だった…怯えて逃げていく後ろ姿…何故怯えた?…『消えてくれないかな?僕は君を殺してしまいそうだよ』…そう、黒髪の子が原因だ…あの発言は冗談ではないのか?冗談では無いとしたら…人に紛れた超人的存在…金剛が怯えている様子からして迫害される?いや、超人的な力を持つなら有利に立てるはず…何故?契約しないと力を発揮出来ない?いや既に馬鹿力だったが…より強い力を手に入れられるとしたら?……『ダメーっ!!僕が最初に気づいたんだからね!?』…契約前に言った皐月の発言…契約出来る存在が少ない?殆どいない可能性…艦娘を隠して生きていく必要がある?いや…そうか…
提督となる者が少ない又は居ない可能性、契約出来る数が限られている、更に艦娘と契約する事で命が狙われる可能性…
……あれ?狙われる可能性あるの…私?契約する事で?この子達の行動からして凄くしっくりくるが…
推測が合っているか分からないが少し見えてきた。提督と言う存在、艦娘と言う存在…妖精は…数が少ない。
つまり彼女達と契約出来るだけで狙われる可能性があると…
流石異世界…物騒だな。
随分と考え込んでしまったが金剛は未だに何も言わない。
契約出来ない事を怖れているのか、何故其処まで?分からないがこの子達が私を守る存在なら…多いに越したことはない。
金剛の元にゆっくりと歩いて行く。周りの子は一歩引いて道を開ける、目の前まで来ると恐怖からか一歩後ずさる。
「どうした?」
「っ…て…テートクはそノ…」
声が震えていて瞳には涙を溜める程ではないが潤んでいる。
やはり怯えている。何故私に対して怯える必要がある?契約出来なくなることか?それな感じがするな…だがそんなのは知った事ではない。
怯えて後退る金剛の顎に手を掛け若干上を向かせて、キスをした。
他人から見れば突然キスをする変態だな。校門付近で散々されたが私自らキスをしたのは金剛、君が初めてだ。私の…黒歴史と共に想い出の一ページが生まれたよ。
金剛は一瞬戸惑った様子を見せていたが、理解と同時に受け入れた様で背中に手を回して抱き付いた。
ラズルシェーニエより身長が低い金剛は爪先で立ち、より近く、より密接に。
「んっ」
より近付き舌を突き出して入れた、舌に絡ませるように追いかけ、時折吸い付いて。
無駄に上手いな…軽くキスするだけのつもりがディープなキスで返って来るとは大胆だね?驚きだよ。それと此処は教室内で大勢の生徒がいるわけで…公開処刑だよ?
満足した金剛は離れると恍惚とした顔を見せて光に包まれた。ほんの10秒に満たない時間だが光が収まると、やはり姿が変わっていた。
髪の色が薄く艶やかに…身長が縮んでいないか…?
言葉的にお姉さんと言えばしっくり来そうだが…やはり縮んでいるな…
金剛は閉じていた瞳を開き身体を確かめている。
十秒程確かめてから、顔を上げると。
「…テートク…テートクッ!」
離れたと思えば再度抱きついてきた。
同時に接吻の時には気づかなかったが、仄かに甘い香りがする。
金木犀の香りだろうか、自然と意識してしまう不思議な香りだ。
それよりも気になる事があった、金剛から非常に強い好意を感じる事に。
仕草的な好意では無く、精神に直接訴えかける様な今迄に感じた事が無い感覚だった。
「やっと…やっと…提督に会えましたっ、提督っ」
提督、提督と言いながら全身を預けるように寄り掛かり抱き付いていた。
その状況で態で顔は見えないが、愛おしいと言った様子が伺える。
「金剛…?」
……分からない。
何故金剛はこれ程まで…?いや違う、私が何も知らないだけか。
それよりも…泣いているのか?顔が見えずに分からない。
「とりあえず…離れてくれないか?」
「ノー、なのネー…」
顔を胸元にうずめたまま返事をした。
「あの、お姉さま…私達も…その…」
後ろで待機していた子がおずおずと話しかけた。
この子達も相手をするつもりだったが…言葉の中に一つ気になる単語が一つあった。
お姉様…姉妹なのか?
「…あの…提督ぅ、妹達も契約して頂けませんか…?」
抱きついた姿勢から上目遣いで突然流暢に話し出した。
片言はどうした?演技なのか?やはり姉妹なのか…似てないな。
姉妹達であろう背後の3人を見たが身長に瞳の色、髪型といい似た特徴が全く無い。
「…其処に並べ」
とりあえずと目の前の床に指を差せば既に整列していたかのような早さで並んだ。
よし…既に覚悟もクソも無い覚悟を決めて私の黒歴史を増やす…
そして一人一人と接吻もといキスをしていったが金剛の様にディープなキスを迫ってくる子は居なかったが、新たに一つ妹達との契約後に新たに新たに分かった事がある。
一般人との区別がハッキリと付くようになった事だ。金剛とキス…いや、契約した後から名前や、感情を汲み取れる事に気付いた。
囲っている彼女達から感じる好意がより一層増えた感覚だ。
その中でも顔を知らないのに名前が分かることに凄く違和感を感じる。
中でも榛名の時には力の差が分かるようになった。
彼女達が持つ能力だろうか、この子は足が速そう、この子は力が強そうといった大雑把な感覚だが捉えられるようになった。
そして最後の子、榛名だが…彼女は光に包まれた後、誰よりも強い力を感じる。
…やはり少し縮んでないか?この姉妹達は契約すると少し背が低くなるようだ。
流石異世界。
「君、名前は?」
「はい、榛名です!」
感覚的に名前は判っていたが正しいのかと思い質問したが合っていた。聞かれた榛名はハキハキと答え目を輝かせている。
一番後ろに並んでいて控えめな印象を受けたが違ったらしい。
「榛名か…君には私の護衛を任せようかな」
そう、守るなら最も強い子を近くに起きたい。予測の範疇でしか無いが狙われる可能性がある現状だ。それに同様の存在が居ないとも限らない、ならば現状最も力を持っている子を近くに置くべきだろう。
「へ…?は、榛名、全力でお守りいたします!」
「Hey!テートクゥ!ドーシテ榛名デスカー!?」
護衛という言葉に違和感を持たずして返事をする榛名に、命が狙われる可能性が現実味を帯びてくる。
横の金剛は不服な様子だが。
「中で…榛名が最も強いからだ」
「What?!知りませんでした…」
時折流暢に話す金剛。妹たちと言っていたが知らなかったのか?それに榛名は妙にキラキラしてないか?目の錯覚でなければ若干輝いて…いないか?気の所為にしておこう。
「ダメーっ!僕が守るんだからね!」
「Hey榛名ーッ!こっちに来るネー」
「榛名は、大丈夫です!」
「ワタシが大丈夫じゃ無いネー!」
「お姉様、何をっ!?」
皐月が割り込んでくると同時に不服な様子の金剛は榛名の制服を掴み廊下へ連れて行った。榛名は抵抗せずそのまま連れていかれてしまった。超人的な力を持つ彼女達だ抵抗すれば服が裂けるだろう事は想像に難くない。
それと皐月?君は普段から一日中私の側に居るだけでなく、私が何処にいようが何故か真っ直ぐに私の元に向かってくるストーカー的立ち位置だからね?護衛とか程遠いよ?
「皐月、能力を顧みて選んだ結「見つけたぞ!ズラルシェーニエッ!!」…」
そんな騒がしい空間に面倒な奴が教室に入ってきた。
追いかけてきた割には遅かったが、何をしていたのだろうか。先程の会話?からするに大方別の女の子と戯れていたに違いない。衣替えの如く別の女の子に言寄るだろう。
身勝手な思い込みでコイツの事を測るのは良く無いが、コイツの行動から察するにあながち外れてないかもしれないな。
それより今の状況でコイツは凄く邪魔だ、どこかに行ってくれないかな?
「今は取り込んでいる、後にしてくれないかな?」
教室に来た時は私だけを見ていたが、私を囲っている子に気付いたのか一人ひとりじっくり見ては目を閉じて言い放った。
「ズラルシェーニエ、君は女の子を何だと思っているんだ?」
何を…だと?コイツこそ何を言っている?この子達にそのセリフを言ってあげるべきだと思うが、違うのかね?それとコイツは名前を覚えられないようだ。
「所構わず襲ってくる子だと思うが…なぁ?」
そう言い同意を求める視線を周りに向ければ、皆一斉に視線を逸らす。ただ一人視線を逸らさなかった子がいる、空中から床に私の頭部を叩きつけた子だが…頭をかしげている時点で意味を理解していないだろう。
「君は呼んでないよ、邪魔だから引っ込んでいてよ。後もまだ残っているんだから」
皐月は廊下側に視線を向けながらにして言った。極力廊下を見ないようにしていたが、気になり恐る恐る見てみれば…ドア越しに数人の子が顔を覗かせている。
それだけなら良かったが…青に、赤、緑とカラフルな髪色をしていた。
「き…君は皐月さんだったね?ズラルの何が良いんだい?」
「全てだよ。人には満たせない全てがあるんだ…だから君は引っ込んでいてよ」
何だそれは…人には満たせない全て?他の人とは違う点…髪色か?そんな事言ってしまえばコイツも金髪…いや根元が黒いな、染めたのか。やはり髪色か?、考えるだけ無駄かと思うが気になってしまう。
それよりも…私は人ではないのか。
前世の記憶を持って生まれ変わっている時点で、周りの人とは違う事を理解していたが、今日ハッキリした。
…生物的に人とは違うと。
「そうか、僕にその全てとやらを教えてくれないか?そこの女みたいな奴より僕の方が良いだろ?」
私を見ながら髪を掻き上げた。
それは話している相手の目に視線を合わせながらやりなさい?私は何かやり返すべきか?此処まで舐められていると流石に不快だな……よしやり返そう。
俯いて髪を前に流してから、手櫛の要領で髪をかきあげ、若干顎を突き出して相手を見下した視線を向ける。
そして喉を少し広げ普段より少し低く響く声を出す様に意識して…
適当なセリフを放つ。
「長髪も案外良いものだぞ?まぁ君は…似合わないだろうけどね」
低く透き通る様な声が辺りに響いた。
IQの低そうな奴にはIQの低いセリフで返すのが一番効果的だ。それと途中カシャっとカメラの撮影音らしき音が聞こえたが…
デジカメを持った青葉が教室の出入り口でデジカメを構えている。
「キャー!テートクゥッ、メチャイケデース!!」
青葉からカメラを如何にして取り上げようか考えていると、いつのまにか戻っていた金剛が抱きついてきた。奴と私の間に居た皐月は鼻血を垂らして放心している。
「ぽいっ!」
背後からは私を頭部から突き落とした子が謎の掛け声と共に抱きついて来た。続いて無言でもう一人、君は時雨だったかな?意外と大胆だね。
そして空いていた右手を榛名が握ってきた。握り返すか…指と指を重ね合わせる、所謂恋人繋ぎと言ったところか。
色々とよく分からない状況だが都合が良い。
うすら笑みを作り、必殺適当なセリフを吐く。
「ああ、残念なことに君よりも魅力的なようだ」
思ったが流石にコレは引くレベルか…目の前に同じ様な奴が居たら成金や野郎か?と引いてしまいそうだ。それは良い、奴の反応は…
歯を食いしばって仇を見るかの様な目をしていた。
非常に効果的だったようだ。
「君は「お前らそろそろ席に戻れーっ」」
発言中に教室へ入ってきた担任が途中で遮った。そろそろ始業の金が鳴るようだ。
そして教卓に着いた担任はこっちを見て変なものを見るような目を向けた。
私であっても同じような光景を見たら同様の反応をしそうだ。
「何をしているんだ?」
「…さぁ?」
いかん。大勢の子に囲まれ抱きつかれていて、あまりよろしくない状況で言い訳もクソもない返事をしてしまった。
「何をどうしたらそうなる…?」
「どうやら本日、私の魅力が天元突破したらしい」
必殺、要領を得ない返事。
「……確かに男にしては珍しい髪色だが…う〜ん…まぁ良い。そろそろ時間だし、別のクラスの奴は出た出たー!」
容量を全く得ない返事だったが問題無かったようだ。
良いのかソレで…
「覚えていろよ…」
そして奴は置き台詞と共に教室から出て行った。
きっと事あるごとに絡んでくるだろう。ダル絡みではなく、ウザ絡みだが。
それより君達も席に戻らないのかい?周りからの視線が更に増えたよ?
「君達もそろそろ教室に戻ると良い」
そう言うと別のクラスの子は渋々といった様子で戻っていき、同じクラスの子は余裕の表情で未だに私を囲っている。
…榛名は別のクラスのはずなのだが?
「提督、どうかされました?」
ジッと見ていた事を疑問に思ったのか首を傾げて声を掛けてきた。
まさか護衛を任せると言ったが…四六時中一緒に居るつもりでは…?
「そうだな…榛名も戻ってくれ、授業…いや時間が合わない場合はさつ…」
一瞬皐月と言い掛けて別の子をと考えたが、この子達は見た目と性格が裏腹な可能性が高く下手な人?選を選ぶと何があるか分からない。なら普段からベッタリしてくる皐月を置いた方が安心だろう。
それに皐月も無駄に強くなっている様だし…
「…皐月に任せるよ」
「うん!任せてよっ!」
「へ…?あっ……は、榛名…了解しました…」
しょぼくれてしまった榛名。
やめてよ、断りづらいじゃないの。まだ初対面って程度だからまだ普通に断れるがコレが普段仲良くしている子だとしたらすごく気まずいよ?
「ああ、頼むよ」
そして始業の金が鳴った。
授業風景はいつも通り他愛の無い内容でしかなく、普通の高校で行われる授業風景と一緒だ。ゆっくりとした時間が流れ、これといって特質も無いものだ。
本当に此処は異世界なのかと疑うレベルで前世と変わり映えしなかったが…今日。色々なことがあった。
提督呼ばれて契約をさせられた。
あらためて思えばこの契約だが私に不利な点は無いのか?あったとするならそれは何だ?提督とは海軍における名称だった筈だ。その提督と呼ぶ彼女達は自身を艦娘と呼んでいた。艦娘とは何だ…周りの反応も異様な光景を見たかのような反応を示したことから世間にはあまり認知はされていないだろう。
今朝の教員は何かを知っていたようだが、あの様子では当てにならない。現状では考えるだけ無駄だが…っと、いかんな。考え事で授業内容が頭に全く入ってこない。まぁ何時もの内容なら勉強すら必要ないだろう。
「ラズル、聞いているのかー?」
「聞いていません」
「そんな事ハッキリと答えるなよ…よし、内田ぁー、ここを解いてくれ」
「えっ、なんで俺が!?流れ的にラズルだろ」
「どうせコイツは何出題したところでサラサラと解きやがる…つまらねぇんだよ!」
そう、歴史以外前世と殆ど変わりのない世界だ。既に常識や知識を身に付けている私は大した勉強もせず高得点を取れる。勉強した暁には成績トップだ、と言うか既に成績トップだが。
「そんな訳でーだ、それに落書きする程暇があるんだろ?そろそろ教科書のマスコット達が可哀想だぞ?てな訳でコレこれ解けや」
「そんなぁ〜」
そんな日常と代わり映えのしない時間がゆっくりと流れていた。
次回投稿日未定
書溜めなんて無いよ
※誤字あったら修正されます。