提督が異世界に着任しました。   作:Arcelf

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ただいま、二次元
おかえり、二次元


提督と艦娘

―――学園中央ラウンジ

 

 

…昼。

 

 

学食もあるのだが私は基本的に弁当で済ませている。学園の中央にあるラウンジでゆっくり食事をするのが日課だが…今日は違う。

数十人の女の子に囲まれている。女の子だ。大半の子は朝方に見覚えあるが…三割ほどだろうか、見覚えの無い子も居る。

そんな空間の中でただ一人の男性、私…非常に気不味い。

この子達と関係の無さそうな一般人であろう生徒達は異様な雰囲気に怖気づいて何処かに逃げ去ってしまった。

私も何かに理由を付けてこの場から去りたいが問答無用で付いてくる事は想像に難くなく、逃げた先でも此処と同じ空間が出来上がり一般人は逃げてく繰り返しだろう。

 

同じ事を繰り返しても仕方ないので大人しくしておく。

 

その空間の中で私は4人が座れる円形の白いテーブルに着いている。

正面には普段皐月が座っているのだが…金剛が座っている。その左横には皐月と…横というか隣で、その対面には榛名が座り四席テーブルが埋まっている。

学園中央ラウンジに幾つもある内の一つだが…その周囲のテーブルは今朝方の子で全て…埋め尽くされている。

 

 

何度見ても異様な光景だ。

 

 

悩んでいても時間の無駄だと思い弁当を取り出そうとした所で離れた位置から様子を伺っていた一人が小走りで来た。

 

「司令官? あのさ、あのさ、ねえ、ねえ?」

 

銀髪ロングでアホっぽい感じの子が話しかけて来た。

 

――清霜

 

名前を確認出来る時点で同類だと分かる。

ここ、中央ラウンジに来るまでにすれ違った人、一人ひとりに意識を向けたが大半の人は名前が分からなかった。だが、黒以外の髪色をしたの子は大体名前が分かる。

その事から名前を確認出来る子は皆彼女達と同類だと判断して良いだろう。

 

そして目の前の子…清霜は提督ではなく司令官と呼んでいるが、その行動だけで目的は分かる。

 

「どうしました?」

 

一応面識は無いので他人行儀に返事をする。

 

「司令官だよね?私もっ!私もっ!」

 

飛び跳ねながら要領を得ない発言をしている事に、アホの子だと確信に変わった。

 

「此方に…」

 

たった一言、言い切る前に取り囲まれた。

皆ジッと私の顔を見ている。

別に契約しないといった自分の首を締めるような選択をする必要もない。

 

それよりこの既視感…今朝方と同じだ。

襲われる前に対処しないとまずい…非常に不味い。

 

「そこ…一列に並べ…」

 

すると物陰からこっそりと此方を伺っていた子も並び、三十人程の列が出来上がった。

並んでいる一人ひとりの顔を確認していると最後尾に見覚えのある金髪の子が並んでいる。

 

皐月だ。

 

何故並んでいる?これは契約する子の列だが?

…思えば契約と誰も発言していない。

 

会話から察して欲しいと思うが、皐月は横で話を聞いていた。

つまり内容を理解した上で並んでいると

 

…考えるだけ無駄だな。

 

 

そして、本日をもってキス魔に昇格した私を止める者は居ないだろう。

 

 

 

 

 

―――教室

 

昼休憩という名のキスもとい接吻大会が終わり教室に戻ったは良いが、中央ラウンジで契約した子を含めて皆付いて来た。

つまり教室が2つ程出来る人数が一つの教室に押し掛けている。元いた人も合わせると六十人程になるか…非常に狭く感じる、人口過多だ。

 

 

しかし社会的に大丈夫だろうか?ダメだな…最悪彼女達に全部押し付けよう…いや、押し付けるなら皐月か。

大元の原因はコイツだからな。

 

「おおう!?…なんだ?こんな集まって…何かやってるのか?」

 

異様な程に人口密度の高い教室へ教師が入って来ては、教室内の人数に驚きを見せた。

教師が入っていたことから間もなく午後の授業が始まる時間だと分かる。

 

「そろそろ時間だー、他のクラスは出た出たーっ」

 

しかし誰も教室を出ようとしない。

 

薄々気付いていたが…契約した子は私の言葉しか聞かなくなる……一体どうなっているのか。

 

「なんだ、ゲームでもしてんのか?」

 

そんな教師の発言を気にすることもなく、彼女達の間でヒソヒソと何かしらの会話して私の元に入れ替えでやってくる……あぁ、私が解散させないと誰も動かないんだった。

教師を一見しただけで全く反応を示さず自己紹介を続ける彼女達に少し頭を悩ませた。

 

「白露型駆逐艦五番艦の春雨です、はい。輸送作戦はお任せください……です」

「えーっと春雨だね?よろしく頼むよ」

「はいっ!」

 

透き通るような声で意味不明な発言をしている彼女になんと返したら良いか悩ましい。輸送作戦?駆逐艦?内容は全く理解出来ないが、彼女達に繋がるヒントと受け取って良いだろう。

 

「五月雨っていいます! よろしくお願いします。護衛任務はお任せください!」

「五月雨だね?よろしく頼むよ」

「お任せください!」

 

彼女達は一言自己紹介すると他の子と入れ替わりで下がっていく。

ただ一言、言葉を交わすだけで満足気な様子を見せている事に違和感を覚えるが、このままではキリが無い。

残りの子には申し訳ないが後にさせてもらう。

 

「はい、解散!続きは後で」

『『『はーい』』』

 

皆元気に返事をしてくれた。出来れば契約前と同じように私の言葉以外でも反応してほしいが…無理だろうか?

 

「アレは…何をしてたんだ?」

 

気になった教員は何も答えない彼女達の以外の生徒に視線を送ったが、皆顔を逸らすだけで何も喋らない。

今朝のやり取りを見ていて彼女達の危険性を理解しているからだ。

空中に跳び上がった相手を床に向かって突き落とす…そんな人知を逸した者に誰が好き好んで近付きたいと思うだろうか…きっと出来るだけ関わらずやり過ごすだろう。

現に陥没した床が威力を物語っている。

 

当の無視されている教員は誰一人として喋ろうとしないことを気になりはしたが、此処は学園で周りの者は皆学生であり生徒である。この年頃は生産性の無い事や、意味不明な事でバカやって楽しんだりすることが多い。

その為クラスぐるみでくだらない事でも企んでいるだろうと思い、気にするだけ無駄だと切り上げた。

 

「まぁいい、何してるか分からんが問題だけは起こさないでくれよー」

 

その発言に彼女達を除く皆が思った。

 

先生、問題だらけです、と。

 

ここで仮に問題がありますと誰かが発言したとする、それに対して教員が何か行動を起こせば彼女達はどの様な行動をするだろうか。

 

血の海が広がる気がしてならなかった。

 

「明日から連休だからな。問題起こすなよ?俺の休みが無くなっちまうからな。マジで頼むぞ?」

 

この教師…凄く伏線を感じるセリフを吐いた。

フラグが立つじゃ無いか。

 

 

 

 

 

 

―――放課後

 

午後の教員は私を指名する事は一切なく授業を終えた。

姿が変わった村雨や夕立…皆に気付いていた様子だったが、学生がお洒落しただけだと勝手に納得していた。

 

授業を終え荷物を纏めて席から立ち上がろうとした所、彼女達に取り囲まれた。

行動が早い...対応に困る。何かと非常識と言うか...色々ありすぎて凄く帰りたい。

しかし皐月との約束がある。約束は約束だし怠いからと言ってすっぽかす訳にも行かない。

それに皐月を問い質して色々と聞き出す必要がある。

 

「……」

 

ただ、この空間の中で皐月だけ指名して連れ出して大丈夫なのかと思ってしまう。

それに何故皆無言なんだ?

 

「君達は帰らないのかい?」

 

「提督っ提督!一緒に帰ろっ」「提督?家まで護衛致します」「ねぇ、提督の家って何処なの?」「ぽいっ?ぽいぽいっ!」「司令官!しれーかんっ!泊まっていい?!」「提督、僕も、いい、かな?」「村雨、構って欲しいな〜」

 

私が話し出すのを待っていたのか、その一言から一斉に話しかけて来た。

帰るどころか…家まで押しかけて来る勢いだ。

一部何語なのかよく分からない言語で話しているが…気にしないでおこう。

 

「すまないが、この後約束がある。一緒には…」

 

囲っている子は榛名と皐月を除き目に見えて落ち込んでいる様子が分かる。皐月の様子に変化が無いのは今朝の約束だと分かるが、榛名は…まさか付いて来る気では無いだろうか?帰ってくれと伝えたらどんな反応するだろうか。

 

――否定、拒絶、不安

 

「提督っ、命令でも榛名は従えません!何でもしますから!罰も受けますから!だから…榛名は…榛名は提督の側にっ…」

 

手の平を向けて中断させた。

授業後の教室内、未だに下校していない生徒が多くいる中で、榛名の発言は危険極まりない。

更に周りで言葉を聞いた子は落ち込みの様子から一変、靄が晴れた様な顔をした。

榛名が強引に作った抜け道を皆して実行するつもりだろう。

 

しかし…何でもするから?罰も受けるから?私の側に?

 

一体何が彼女達を突き動かしているのだろうか。

今朝からの様子を見る限り、私の言葉に絶対遵守といった感じだ…今全力で否定されたが。

そしてこの状況で皐月と帰る等と言えばどんな反応を見せるのか。

 

問答無用で付いて来るだろう。

 

この場で騒ぎを起こさない為には、皐月を含めて連れて行くしか選択は無いだろうか?

食事をしながら皐月に色々と訊き出す予定だったが、彼女達にも聞くことは出来る。

その方が多くの情報を得られるだろし、身を守る者も多く安心?…だ。

 

しかし連れて行くにしても店に入れるだろうか…軽く30人以上は居る。

予約でもしなければ先ず、無理だろう。

 

どうしたものか…取り敢えずダメ元でレストランに30人以上と予約を入れてみるか…

 

 

―――*

 

 

「では、夕方6時に、はい。お願いします……」

 

電話の相手はレストランのオーナーだ。

そのオーナーに当日30人以上の団体で行けるか聞いたが……問題なく予約ができた。

 

ダメ元のつもりだったが…なんだ、レストランは暇なのか?当日で集団、しかも2時間後に入れられるって……考えても仕方ない。

皐月には悪いが、皐月が引き起こした状況だ、甘んじて受け入れろ。

 

「さて、食事に行くか」

「みんな…」

「どうした、皐月」

「みんなも…一緒なの…?」

「そうだ、何を言ったところで付いて来るだろう。それに現状を引き起こしたのは皐月だ」

「うん…」

 

――哀情、不安、鬱屈

 

金剛以下姉妹?達と契約してから汲み取れる彼女達の感情。

他の子と契約する度に精度が上がっている気がする。

 

そんな感情を受け止めていると皐月が俯向き服を掴んだ。

 

「ねぇ、今度…二人っきりで…」

 

何を言い出すか不安気に見ていると一枚の紙が何処からか飛んできて、目の前に舞い降りて、

 

空中に静止している。

 

紙は白く人の形をしている…所謂、式神と言うものだろう。

一瞬危険な物かと思ったが誰も反応を示さず気にする素ぶりそ見せない時点で、危険な物ではないだろう。

現に護衛の榛名が一見しただけで何も行動を起こさない。

危険がないなら別に良いが…眼の前で、しかも空中に静止していると…凄く気になる。

 

「これは…なんだ?」

「式神だよ」

「空母デース」

「空母っぽい!」

「これは…天城…いや、葛城さんのかな?雲龍さんなら張り付いてくるだろうし…。うん、葛城さんの式神だね」

 

よくわからない分析をしている時雨の発言にこんな物を操るのが3人は居るのかと理解した。

 

今朝からファンタジー要素の加速が止まらないのであった。

 

「そうか…その3人?の内の誰かが操っているんだね…?危険では…無いよね?」

「うん、大丈夫だよ。むしろ…守ってくれると思うよ」

 

思う…断言しないんだね?しかし誰も反応しない時点で大丈夫なのか…?

何と無く手の平を水平にして差し出してみると…手の平に乗った。

少しザラつきのある手触りは和紙そのものである。少し厚みがあり植物の繊維質がよく分かる。

この式神を飛ばしてきた、という事は確認の為…恐らく後に接触してくるだろう。

 

「…持ってくか」

 

無造作にブレザーのポケットへ入れた。

少し雑な扱いだが飛んでいて注目を浴びるよりは良いだろうし…放っておいて張り付かれても困る。

 

「さて、予約に遅れてしまう…行こうか」

『『『はーい』』』

 

元気の良い返事が帰ってきた。

 

軽く流していたが、人型の紙が張り付いて来るとか軽くホラーだな。

雲龍も接触してくる可能性もある、式神が張り付いてくる事、心に留めておかねば…。

 

 

 

―――*

 

 

 

レストランに向かう途中の道端……痴女とエンカウントした。

 

いや違う。

黒髪のロングに青い瞳…緑を基調とした和服を着ているが…殆どはだけており衣服の意味がなくなっている。

上半身には布の面積が異様に少ない肌着を着ており、その上から胸当てを当てている。

つまり言うと、足、臍、脇腹、脇が完全に露出している。

 

和服の着方ってどんなだっけ…?確か前世と変わらないはず…

 

もはやコレは衣服と呼べないような…

 

…やはり痴女か。

 

「か…変わった服装だね…?」

 

普通にスルーして進みたかったが、先頭を歩く子を何事もなく抜けて私の正面に立ちはだかった。それだけで彼女達と同じ存在だと分かる、分かるが服装がどうにも気になって仕方ない。

そんな彼女を意識していると名前や能力が頭に浮かんだ。

 

――葛城

 

榛名を超える非常に高い能力を持っている。

なんだ…範囲か?視野の広さ…いや、違う。それより先程の式神の持ち主だな。

 

「見つけたわ、あなたね!私の提督になってほしいの!」

「…突然だね…先程の式神をは君のかな?」

「そうよ!」

「そうか…今からレストランに行くから、契約は其処で良いかな?」

 

この際だから一緒に連れて行ってしまおう。人通りが多い場所で女所帯と立ちはだかる痴女っぽい子…凄く目立つ。

そんな場所で契約もとい接吻を交わす気にはなれない。

 

「うーん…分かったわ!」

 

悩む必要はあるのか?別に逃げるわけでも無かろう。

 

 

―――レストラン

 

 

「ラズルシェーニエ、御一行様ですね?ご案内致します」

 

そこはラズルシェーニエが普段からよく利用する個人経営のレストランである。元々皐月と二人で来る予定だったが彼女達は帰る気配がなく、皐月だけ連れ出すにも無理があったた。

それに彼女達の感情が汲み取れるという事は私の心に直接訴え掛けてる様なもので、不安や恐怖、喜び等ダイレクトに伝わってくる。

まるで自身の感情のように。ある程度流しているつもりだが非常に否定しづらい。

 

―――*

 

入店すると普段とは別で奥の部屋に案内された。

部屋は薄暗く中央には一列の長いテーブルが配置されている。白いテーブルクロスが掛けられ、人数分の食器セットが並べられている。

 

テーブルを前にして思う。

私は何処に座れば良いのかと。

そんな悩みは榛名が解消してくれた。

一人先導して中央付近の椅子を引き、声を掛けてきたからだ。

 

「提督、どうぞ」

 

q中央に座れと、別に場所も特に決めていなかったので大人しく座ることにする。

それを確認して彼女達は私を中心として皆席に着いていく。

一人づつ順番に一言も会話を交わさず席に着く様子から、彼女達の中で決まり事があると予測できる。

 

左には榛名、右には皐月、正面には金剛、正面左には葛城…葛城はまだ契約していないが其処に座れるのか…基準が謎だ。そして正面右には霧島と比叡が座っている。

 

見渡すだけで私を除いて女の子しかいない…

 

「まず…葛城の用事を済ませてからにするか」

 

言葉と聞くと同時に葛城は立ち上がり私の真横まで小走りで来て…

 

…その背後には何処から出てきたのかレストランのオーナーが並んでいる。

私が食事に来る度によく話しかけてくる顔見知りだが…いや、まさか…

 

「オーナー…?えぇっと、まさかとは思いますが…」

 

意識した直後彼女の名前が汲み取れた。

 

――大和、と。

 

まさか普段から通っている店のオーナーが艦娘だと誰が思うだろうか、誰も思わないだろう。

 

「提督、如何しましたか?」

「いや…いや、何でも無い。さっさと済ませるか」

 

既に提督呼びされていた。

精神的な疲れから色々と面倒くさくなり気にする気力が起きず、そのまま二人と契約を済ませた。

葛城は兎も角、顔見知りである店のオーナーと契約するのには若干の抵抗はあったが艦娘だと割り切った。

二人共見慣れてきた光に包まれると葛城は露出が増え痴女度が増し、大和は姿こそ変わらないものの持つ能力が著しく上がっている。

 

――それこそ此処に居る誰よりも圧倒的な強さを持っている。

 

「…まぁいいか、適当に食事を頼む」

「畏まりました」

 

ラズルシェーニエの雑な注文に聞き返すことも無く去っていく大和。

 

 

―――厨房

 

 

大和は契約の後厨房に入り両手を叩き注目させた。

作業していた者は皆手を休めず、大和へ視線を向けた。

 

「さて、皆さん。本日は特別な日となるでしょう」

 

一言話しては辺りをゆっくり見回して一息。

 

「只今…

 

――当店に

 

――提督が御見えになっております」

 

直後大きな物音が鳴り響いた。

誰かは包丁を手から滑落とし、誰かは手に持っていた鍋を滑り落とし、誰かは手に持っていた食器を握り割った。

 

「皆さんも、契約のして頂けるようお願いしますので…腕によりをかけてお作りするように。お食事はお任せするとの事です…各自全身全霊を持ってお作りするように!」

 

この時、大和は自身が契約したことをそれとなく伝えたことに誰も気づかなかった。

 

 

 

―――レストランVIPルーム

 

 

 

「さて、提督と艦娘…妖精について教えてくれるかな?」

 

ゆっくり辺りを見回した。

 

「提督は提督だよ。艦娘は提督の指揮の元で十全に力を使えるんだ」

 

「艦娘は…沈んだ艦船に魂が宿った…付喪神のようなものです。肉体を得て地上で行動出来るだけでなく、艦船時代と同等の力を持っています」

「妖精は土地神デース、私達の眷属に近いものデスヨー」

「詳しい事は僕たちにも分からないんだ」

「テートクの存在がワタシたちに力を与えてくれるデース!」

 

周りを囲っている子が真っ先に答えてくれた。

 

「では、榛名……契約する事で私にとってのデメリット…例えば寿命が減るとか…無いよな?」

 

契約したがる彼女達艦娘に直接聞くのは些かどうかと思うが、艦娘しか居ない現状は彼女達に聞くしか無い。

聞かない選択も出来るが、聞かずに後から問題が発生した場合に対応が遅れる。

その一言で皆静かに息を押し殺している様子が見て取れる。

 

「いえ…そのようなデメリットはありません。寧ろ寿命そのものが無くなったりと…メリットが…あったはずです…」

「茫然としているな」

「その…私たちも具体的なことは分かっておらず…」

「まぁ良い……寿命が無くなる…不死身と言うことか?」

「いえ、不死身では無く不老です。成長が…最初の契約時点で止まり、永遠の寿命をとなります」

 

その直後、振り向くラズルシェーニエと俯向く皐月。

髪で表情は見えないが膝の上に置いた握りこぶしが感情を物語っている。

 

「……そうか」

 

別に皐月を責める必要は無い。

目を付けられていたのは確実で皐月が契約しなかったところで他の子と契約していたであろう。

 

「……?」

「…どうした?」

「…怒らないの…?」

 

何かしら言われると思った皐月は何も言われない事に疑問を持ち顔を上げた。

 

別に怒る必要はない。

転生する前だとしたら少しは気にしていたと思うが此処は異世界だ。

この程度で一々気にしていたら精神が持たない。気にせず受け流す事が必要になってくる。

それに今回皐月のした事は?私と契約しただけだ。その契約に含まれる意味を含めたとしても結局は他の子との契約は免れないだろう。

 

「その程度の事で怒りはしない…それより艦娘にとってのメリットはなんだ?」

「提督と…ご一緒出来る事が…何よりも…」

「…? それだけなのか?」

「はい!」

 

分からない。

彼女達が私に嘘を付くとも思えないが、言わないとも限らない。

 

――そう思いたい。

 

「…デメリットはなんだ?」

 

その言葉に一瞬躊躇いを見せた榛名。

皐月は契約の事を気にしている様子で罪悪感からか気落ちしている。

 

…恐らく私に説明してから契約するつもりだったのだろう。しかし私が提督と判明してご機嫌になり妖精の存在を忘れ周りに露見、その後危機感を感じた皐月は強引な契約に出たと。

 

 

「提督と命を共にする事です…提督が…その…」

 

そして榛名も俯いてしまった。

断片的な一言だけで言いたいことは十分に分かる。

彼女達が私を守ろうとする行動を理解した。

しかし、私との契約で道ずれを選ぶ理由になるのか?そこまでする程に提督との契約は重要なのか。

彼女達は先程、提督の指揮の元で十全に力が使えると言った。

つまり彼女達は提督との契約で何かしら得るものがあると。

得るもの…今以上…魔法?妖精がいる時点で凄くありそうだが…ふむ、分からない。

 

それより直ちに聞く必要のある事が一つ。

 

「聞きたいのだが、反対に…君達が「いえ、ありません!!」…言い掛けが…まぁ、理解した」

 

…提督の責任重過ぎないか?契約した子の命を物理的に預かっているものだよね?

 

「提督と艦娘については大体理解した。他…妖精について教えてくれ」

 

思えば皐月の肩に乗っていた妖精も原因だ。今も肩に座り込んで…

 

…皐月を慰めている。

 

妖精には一定以上の知能また感情があるのか。

大福に胴体ブッ刺した二頭身の不思議な見た目だが…知能が発達したから必然的に頭脳が大きくなる…?

いつの時代の迷信だ。

THEファンタジーの妖精に当てはまらないと思いたい。

 

「妖精は艦娘が長く存在する土地に自然と生まれます。提督と私達艦娘の関係と近く、私達に力を与えてくれます。妖精も個々によって様々な能力があり、物質や質量、エネルギー等未知の力を扱えます。言ってしまえば不思議な存在です」

 

榛名は博学だな…問いに直ぐ答えてくれる。

私から言ってしまえば艦娘も不思議存在だからね?

それに『妖精も』という事は艦娘も個々に様々な能力を持つのか?

力…筋力では無い別の何かを…

ともあれ、彼女達は私に対して敵対は無いと言うことか…つまり私が死ぬと彼女達は死ぬ、妖精も死ぬ、と?殺伐とし過ぎじゃないか…

 

色々ぶっ飛んでいるな…流石、異世界。

 

「…重苦しい話になってしまったな…では最後に…私は今日…艦娘という種、族?…いや、

艦娘を初めて知ったのだが、世間、一般的には認知されていないのか?」

 

「私達は隠す事はしておりません。恐らく政府が私達の事を隠しているかと……混乱を避ける為と思いますが…心意は分かりません…」

 

「…そうか」

 

混乱を避ける為?違うな…混乱を避けるなら隠さず、大々的に存在を示唆した方が良いだろう。なら、艦娘の力が目的か…?艦娘が艦船と同等の力を扱える……

 

…艦船時代の力…艦船って何だ?

まず人を超えた身体能力は確実だろう、夕立とか言ったか?その子に至っては反射速度が尋常ではない。

恐らく他の子も私の行動を警戒していたのなら私を簡単に捕らえられるだろう。

 

そんな考え事をしていると葛城が何か言いたげな様子を見せた。

 

「提督、発言宜しいでしょうか!」

「どうした?」

「はい!情報でしたら大淀が詳しいと思います!」

「大淀?」

「はい!偵察とか情報収集でよく空母を集めてます!だから色々詳しいと思います!」

「…大淀も艦娘なのか?」

「はい!」

 

貴重な情報だ。

艦娘の中で情報収集している子が居るなら当てにさせてもらおう。

 

「そうだ、忘れる前に返しておくよ」

 

葛城が話しかけるまですっかり忘れていた式神をポケットから取り出して差し出す。

 

「いえ、大丈夫です!提督がお持ち下さいっ!」

「大事な物では?」

「大丈夫です!壊れても直せますし、六九機まで同時に操れますから!一枚提督がお持ち下さいっ!」

妙にキラキラした目を向けられても困ので受け取っておく。

 

「…そうか、貰っておくよ」

 

しかしラズルシェーニエは知らなかった。

式神がGPS 付きドローンとレベルである事を。

手足の様に動かせるだけでなく周囲を直接見聞きする程の精度で把握出来る事を。

 

そして他の艦娘は皆気付いていながら、あえて言わなかった事を。

 

「まぁ…式神はいいか…それで大淀は今何処に?」

 

ブレザーのポケットに戻した。

 

「分かりません!最後に見たのは…樹海でキャンプをしていました!」

 

樹海…?樹海ってあの樹海か?情報に精通しているからには人が多く行き交う都心を想像したが、人の気配どころか動物の気配すら怪しい場所ときた。

 

「そうか…他に誰か居場所を知っているか?」

 

皆の顔を伺いながら声を掛けたが誰も知らないらしい。

 

「大淀の居場所なら存じておりますよ」

 

いつの間にか現れたのか背後から声を掛けてきた店のオーナー。

 

「オーナー…」

「大和とお呼びください」

振り向くと背後には大和と共に数人のコックコートに身を包んだ艦娘が並んでる。

 

そう、艦娘だ。全員の名前が分かる。

その艦娘達はラズルシェーニエに対して軽い会釈をすると銀色のワゴンを手にテーブルへ料理を運んで行った。

それと普段はオーナーと呼んでいるが今は駄目らしい。

「…大和」

「はい」

名を呼ばれるのが嬉しいのか微笑みを見せた。

 

そんな短いやり取りの間にテーブルには洋食系の料理がいっぱいに並べられていた。

無駄がなく非常に洗礼された手付きだ。

そんな会話とは関係ない事に意識を奪われていると大和が喋り出した。

 

「大淀でしたら今朝方、大火山麓の樹海基地にいらっしゃいました」

 

そして色々と良く分からない単語が飛び出した。

大火山は分かる…前世では富士と呼ばれていた山の事だろうが。

…樹海に基地?そんな話聞いたことも無い。話からするに大和は大淀と繋がりがあると伺える。

 

「樹海基地…まぁ良い。大淀の居場所…いや、連絡を取れないかな?会いたいのだけど、何処に居るのかさっぱりでね」

「只今でしたら会議可能ですが」

「会議?…連絡取れるなら、お願いできるかな?」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

返事をして一礼するとセーターの首元を引っ張り胸元からスマートフォンを取り出して壁に向けた。

どうしてその様な場所に収めていたのか若干の興味が湧いてしまった。

それから数秒すると前後左右から機械的な音と響かせながら白いスクリーンが降りてきた。

 

大和の会議という言葉を理解した。

この部屋はVIP ルームではなく会議室だったらしい。

降りてきたスクリーンには大淀と書かれた円形のアイコンと電話のコールマークだけが写し出されている。

 

凄く見覚えのある画面だった。

 

数コール。

鳴り響くと画面が一瞬暗転して眼鏡を掛け漆黒にも見える濡羽色の黒髪の女性が映し出された。

 

そして恐ろしく画質が良い。

 

「珍しいですね?大和さんから連絡なんて…何か面倒事ですか?」

 

そんな彼女の問いを無視してスマートフォンを横向きに構えて此方に向けた。

恐らく映像を送っているのだろう。

 

「あら…其方の方々は?」

 

スクリーンに映る彼女は画面越しだが一人ひとり確認しているのが見て取れる。

 

「…皆さんがお揃いなんて…珍しいですね?やっぱり面倒事ですか?」

「君は…大淀で合っているかな?」

 

ラズルシェーニエも彼女の疑問を無視して話しかけた。

その声に大淀は眼を見開き画面に近づく。相手側のカメラは画面の上部に設置されているのかスクリーンには頭部がドアップしている。

 

凝視しているようだ。

 

「大和さん!もっと近づけて!!」

 

そんな彼女の問いに大和は視線で許可を求めた。

 

否定する理由はないので許可すると、大和は距離にして1メートル程まで近付いた。

その距離ともなれば凝視せずともハッキリと見えるだろう。

彼女は画面から離れると良く見える位置に戻り恐る恐るとした様子で口を開いた。

 

「あ、の…あのッあ…提督!」

「…叫ばなくても聞こえる」

「はひィっ!?」

「君は大淀で合っているかな?」

「はいっ!!」

 

大淀は勢いよく立ち上がった為にスクリーンには下半身が映し出されている。勢いでスカートが一瞬捲れて見えたのは突っ込まないでおく。

 

「では…少し聞きたい事があるのだが……」

 

しかしラズルシェーニエの問いは虚しくスクリーンに映る大淀は仰向けに倒れ、視界から消えた。

数秒…数十秒と待ったが一向に起き上がらない。

 

気絶しているようだ。

 

「…また別の機会に聞くとして…食事、頂こうか」

 

倒れる直前の姿からして暫く起きないだろう。

それに大淀は艦娘だ。私…提督の存在を知ったからには直接的な接触を図ってくるだろう。

 

それに目の前に並べられたフルコースと呼べそうな料理を放置するのもよくない。

…頂く前に祝杯的な何かを上げるべきだろうか?

 

私の様子をジッと伺う彼女達。恐らく私が手を付けるか、何かしらの言葉を掛けないと動かないだろう。

そんな迷いを察したのか大和がグラスにシャンパンを注いだ。

淡く透き通るレッドゴールドに、きめ細かな泡立ち、仄かに甘みを含んだ香り。

 

 

酒だが…非常に唆られる。

 

 

学生が酒を呑むのは如何かと思うが別に気にしまい。

しかし、頼んでないだけでなく一応この世界では未成年の私に出してくるとは…飲めという事だろうか。他の子には大和ではなくコックコートを着込んだ艦娘達がグラスに注いでいる。

 

 

 

 

黒い液体を。

 

 

 

 

一瞬見間違いかと思い他を見てみるが、同じく黒い液体、真っ黒と言って良い程の黒さの液体を注いでいる。

更には流れ落ちる速度から高い粘度を持っている事が伺える。

その異様な物を次々に注いで行くコックコートの彼女達。

 

罰ゲームか何かか…?

疑問思ったがそれと言った素ぶりを見せない時点で彼女達には普通の飲み物なのだろうか。

 

「黒い…随分と変わった…飲み物だね?」

「提督もお飲みになられますか?」

「……」

「冗談ですよ、ふふふっ」

 

右隣、皐月のグラスに黒い液体を注いでいる彼女…祥鳳は微笑み冗談だと言った。

微かなヒントから艦娘の飲み物だと予測出来る。でなければ私に対して冗談との発言は必要ない。

 

「そうか…なら、少し頂こうか」

「えっ…」

 

私の返事が予想外にだったのか、一瞬呆けた表情を見せた。

 

「あの…申し訳ありません!その…冗談で…その…軽率な発言をっ…」

「いや…気になってね、少し見せて欲しいだけだよ」

 

契約前の子は皆、私の反応にかなり過敏な反応を見せる。

只の冗談であっても、やってしまったと言わんばかりにオロオロと挙動付番な行動に恐怖の表情を貼り付けている。

 

…彼女達ではなく私が軽率な発言をしたら不味い気がするのは何故だろうか。

 

そんな祥鳳を余所に大和は背後からグラスを差し出して、黒い液体を注いだ。

眼の前で注がれるソレはかなりの粘度があり、グラスにゆっくりと溜まっていくのが分かる。

 

グラスに注がれた液体を間近で見たところで変わらず光を通さない程の黒さだ。

円を描くようにグラスを振り中の液体を回転させようとしたが、高い粘度から液体は回転することはなかった。

高い粘度を持ったタール状だと分かる。

そして、鼻元までグラスを近ずけて香り、匂いを確かめると微かに石油の匂いがする。

 

 

灯油…石油か?

見た目と匂いからして納得できる。

彼女達は石油を飲むのか…石油を?いや、似ているだけで全く違う飲み物の可能性は…無さそうだ。

匂いが化石燃料特有のものだ。

そんな匂いで食欲が失せるかと思ったが…

 

 

 

…美味しそうだ。

 

 

 

無意識に手に持ったグラスへ口をつけていた。

 

粘性の黒い液体、非常に飲みづらい物かと思ったがすんなりと違和感も無くグラス一杯に注がれていたソレを一気に嚥下した。

 

「っ!?」

 

驚いた。

 

ここまで美味しいと思った飲み物は初めてだった。

 

自然と力が湧き…世界が今迄色褪せていたのではと思う程に。

 

今迄に無いほど体の調子が良くなったと感じる。

 

 

 

「提督!」「ラズルっ!?吐いてッ!今すぐ吐いて!」「提督!提督っ!!?」

 

様子を見ていた子は呆けていたが理解が追いつくと同時に飲み込んだソレを吐けと叫んでいる。

恐らく提督が…いや、人が飲むと良くない物なのだろうか。席に着いていた子は椅子を倒す勢いで立ち上がり寄ってくる。

 

――不安

 

――焦燥

 

――恐怖

 

私の身を案じてなのか様々な感情が入り乱れている。

一部の子に至っては床に崩れ落ちて泣いている。

取り敢えず落ち着かせなければ事態が更に悪化しそうである。

 

「落ち着け…私は大丈夫だ」

「提督!?」「ラズル、吐いてっ、吐くのーっ」

 

大丈夫という確証は無いがこの液体を飲んだ直後から頭が冴え渡り非常に快調だ…非常に…非常に…良くない薬の可能性も無きにしも非ず。

だが目の前に注がれた石油を当たり前といった様子と今の反応からして艦娘専用の飲み物の可能性は高い。

私がこの液体を飲んだ事に対して慌てている様子、その事から人…人間はこの液体を摂取するのは良くないと予測出来る。

 

 

しかし艦娘と出会ってから薄々感じている事、

 

 

――私自身、艦娘と同類の可能性

 

 

可能性では無く確実と言っても良い程だ。

彼女達が私に向ける様相、雰囲気は……まるで私の母が父に向けていた姿に何処と無く似ている。

つまり、父は提督で母は艦娘。

思えば母は艦娘にそっくりだ…妙に低い身長は置いても、人形の様に整った顔、人外レベルの力、十年以上経っても変わらない容姿。

 

 

 

それに…6…7年前程だったか、家のリビングで黒い液体を見た事がある。

テーブルにドラム缶の形をした容器が積まれていた事を、蓋を開けると黒い液体が入っていた事を、手に持って見ていたら危険なものだからと取り上げられた事を。

『あぁ…仕舞い忘れてたね、それは危険な物だ。口に入れてないかい?』

普段から何事にも落ち着いて対応する母があの時だけ妙に慌てて片付けていた事を。

 

…やはり人には非常に危険なものなのか……それと、家の何処かにある可能性が…

 

探し出して勝手に飲んだらマズイだろうか。

 

……殴られる気がするな。

 

冷静に思えば得体の知れない液体をよく飲んだな。

手に取ってみるだけのつもりだったが、実際には匂いに釣られて液体を口にした。

 

…グラス一杯分とはいえ飲んでしまった…やはり大丈夫なのか?

 

大丈夫、大丈夫だ。

 

大丈夫だと思いたい。

 

私は艦娘と同じ…同じなんだ…

 

 

 

今すぐ知らねば、仏。

 

 

 

「コレは…石油…で合っているかな?」

 

たった一言。

混乱して慌てふためいていた艦娘達はピタリと静止して私の顔を注視した。

 

「えっ…いえっ、あの……提督は何も知らずにお飲みになられたと…」

「そうだな」

「あの…お身体の方は…」

「コレは体に悪いのか?」

「いえ…私達には必要な物ですが…人には…その…毒性の高いものでして…」

 

大和の説明で慌てふためき様を理解した。

そんな危険な物を食事の間に出すなと思う反面、発言から艦娘には必要…また必須な物だと納得した。

 

つまり艦娘にとっての食事に相当する物だと。

それを今迄知らずに、飲まずにいた。

しかしグラス一杯とは言え摂取してから非常の身体の調子が良い…彼女たち艦娘に必要な物であるなら、同様の体である私にも必要な物と。

 

「そうか」

 

別に気にする必要は…ない。

艦娘と同じだと言われても転生を果たしている時点で今更感が大きい。それにミジンコやエイリアンなど良くわからない生物に転生するより遥かにマシだと言える体だ。

 

両親には感謝している。

 

それより、もう少し飲みたい…喉が渇いて不快な感覚…身体が求めて止まないといった感じか。

 

「もう少し頂けないかな?」

「えっ…あの…」

大和は黙り込んでしまった。

「コレを飲んでから身体の調子が良くてね」

空になったグラスを振って底に溜まっている液体を揺らす。

「燃料…を…ですか…」

「燃料?見たところ石油に見えるが…それに毒性が高いならグラス一杯分も飲めば何かしらの症状が出るのではないかな?現にコレ…燃料を飲んで、なんとも無いどころか非常に快調だよ。今迄に無いほどね」

「ねぇねぇ、提督さんも艦娘っぽい?ぽいぽい??」

私の頭を床に叩きつけた子が、あの時と同じようなセリフを言った。

さり気なく抱き着いているのは気にしないでおこう。

「…そうだな…艦娘と同じ可能性はある。気になったのだけど、夕立は燃料を飲まないと餓死するのか?」

「怠くなるっぽい!死なないっぽい!」

「そうかそうか」

やはり私と一緒か。

生まれてから今日初めて燃料を飲んだ事。今まで燃料を飲まずにいた事。

 

 

今の体調の良さは、この身体本来の状態。

つまり、今迄不調の状態で過ごしていたと。

 

「しかし…クックックッ…素晴らしいな…凄く素晴らしい」

 

身体本来の感覚なのか溢れ出る力…全能感…非常に素晴らしい。

グラス一杯の燃料だけでここまでとは…渇きが潤うまで飲めばどうなるのか。

 

グラスを差し出して大和に注ぐよう身振りすると、恐る恐るとしたぎこちない動作で燃料をグラスに注いだ。

そして続けて飲もうとした所でふと思う。

私の様子を伺っているのか食事に一切手を付けない艦娘達。

何かしら声を掛けなければ一切動かないだろうか、別の気もしなくは無いが…取り敢えず一言掛けておこう。

 

「さて…食事を頂こうか。冷めてしまう前に」

 

そして黒い液体が注がれたグラスを右手に掲げ。

 

 

「新たなる出会い(燃料と艦娘)に…

 

ーー乾杯」

 

「「「「「乾杯!」」」」」

 

 

折角のシャンパンは…気合で飲むとしよう。

 




スマホで書いてスマホで投稿。
この長さスマホで書くべきでは無いですね。
コンパクトなキーボードでもあれば楽かな?
誤字あったら修正されます。
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