赤龍帝の転生譚   作:かきなぐり

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ルームメイトはFランク

「ごめん……黒鉄。俺はお前と仲良くできそうにない」

 

 寮の自室。ルームメイトのその言葉に、黒鉄一輝は目を丸くした。

 なぜこの場面でそんな言葉がでてくるのだろう、と。

 

「俺はひきわり納豆を選ぶヤツとは仲良くしないことにしているんだ」

「でも、小さいのが良いって言わなかった?」

「ああ、でも小粒とひきわりとの間には深くて広い谷が広がっている」

 

『破軍学園』は全寮制。そして、その寮の部屋は2人部屋でなんとか入試を突破した黒鉄一輝のルームメイトとなった彼の名前は兵藤一誠。

 兵藤の伐刀者としてのランクは、一輝と同じFランク。おそらく、そんな理由で同室になったのだろう。

 料理の出来ないヤツだった。掃除もあまりマメにしない。なんだかんだで面倒見の良い一輝は、ついつい甘やかしてしまって初日に決めたはずの分担を越えてやってしまっていた。

 その上、今のこれである。買い物を任せておいてのこの仕打ち。黒鉄は怒っても良い。

 だが口から出て来たのは「ごめん、次からは気を付けるよ」という言葉。

 これまでの苦労が黒鉄をこんな性格にした。幼い頃から家族からいらない者として扱われ、家を飛び出してからは武者修行に無茶な日々。それらに比べたら、ルームメイトが少々だらしないことなど別になんてこともない。

 それに、黒鉄はこのルームメイトが嫌いではなかった。むしろ、「俺の精神年齢は、たぶん20代半ばくらいのはずなんだ」などとよく分からないことを言い、黒鉄に兄貴風を吹かしてくるところが、実はそこそこ好きだったりするくらいだ。

 黒鉄としては、そんな自分の気持ちをこれまでの反動なのだろうかと思っている。

 

「味噌汁は赤だったよね?」

「合わせと交互が理想だよなー」

「贅沢すぎる」

 

 入学してから少しの間は、そんな風に穏やかな日々があった。

 

「そういえば黒鉄、あれやった?」

「あれって?」

「ほら、この前やってみろって言ったゲーム」

「ああ、一応ちょっとは進めてみたけど……。ああいうのは、僕はあんまり」

「ゲームする暇があった鍛錬鍛錬修行三昧って?」

「あー、まあ、そうなるのかな」

「なんというストイック野郎……。あ、でもちょっとやってみたんだよな?」

「うん、まあ」

「じゃあさ、あのゲームの中のヒロインだったらどの子がタイプよ?」

「え、えっと、うーん」

「照れるなよ、ただのゲームだし、適当に言ってみなって」

 

 そう言われて黒鉄が口にしたキャラクターは兵藤によると「なるほど、リアス部長系が黒鉄のタイプなワケか。お嬢様で髪が赤系で長くて、スタイルもプライドも抜群って、そういう欲望に忠実な」

 

「いや、別にそんなんじゃ、適当にって言われたから選んだだけで」

「照れない照れない。分かる。うん、分かってるから」

「じゃあ、兵藤はどの子がいいんだよ」

 

 なにやら恥ずかしい思いをさせられた黒鉄は、兵藤のタイプを訊ねることによって話題を少しずらそうと試みた。

 

「うーん、俺は実は小猫ちゃん系がタイプなんだよね……。いや、あくまで二次元の話なんだけど」

 

 言いながら、兵藤は話題となっているゲームのパッケージを持ち出し、そこに印刷された一人のキャラクターを指差して見せた。

 

「子猫? ああ、この子か……。え? 兵藤っていわゆるロリコ……」

「それ以上言うな! あくまでも、そう悪魔でも二次元の話だから」

「分かったから、分かったから。でも髪が白っぽくて、小柄で、素直になれなくてちょっと毒舌な感じがねぇ……。なんだか、誰かを思い出すかな」

「え、マジで? 知り合いにそんな子いんの?」

「知り合いって言うか、しばらく会ってないから今はどうなんだろう……」

「写真とかあるか?」

「ある……けど。これ、だいぶ前のだけど」

「おお、かわいい……。誰? この子どこの子? 紹介して!」

「僕の妹……」

「マジで!? お願いします、お義兄様!」

「え、イヤだけど?」

「いや、冗談だってホント。なんだよ、黒鉄、そんなマジな顔するなよ。こわっ」

 

 楽しい学校生活。それは本当に少しの期間だけだったが……。

 

 

 

    ◆

 

 

 

総魔力(オーラ)量が一定値以下の生徒は実戦授業に出たらダメっておかしいだろ!?」

 

 寮の部屋で怒り狂う兵藤に、黒鉄は頭を下げた。

 

「僕のせいだ……。巻き込んでごめん」

「別にお前に怒ってるわけじゃねーから。……謝んなよ」

「うん、でも……やっぱり、ごめん。僕の事情のせいだから」

 

 騎士学校で育てられる魔導騎士は、国家の戦力だ。当然のように戦闘能力を求められる。

 だから、その授業の中に実戦に臨むための内容が組み込まれているのもまた当然のことだった。

 だというのに、この学校は――入学を許しておきながら――ごく一部の生徒に対して実戦に関する授業への参加を禁止してきたのだ。

 能力値が低いため危険だから、と。

 

「だから、お前が謝ってもどうにもなんねーだろ。そもそも謝ることねーし。他の学校に行った知り合いに聞いてみたけど『実戦強化を受講する最低能力水準』なんて決まりないらしいぞ」

「うん、だから……ごめん」

 

 





木場くんポジなのかもしれない
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