ハイスクールGEED   作:メンツコアラ

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 ちょっと……いや、なんかかなりグダグダした感じにはなってしまいましたが、ハイスクールGEED 戦闘校舎のソリッドバーニング編のバトルシーン完結しました。
本当なら何回かに分けた方がいいかなぁ、と思いつつ投稿しました。
それではどうぞ。


燃やすぜ!勇気!

 リアス対ライザーのレーティングゲームから3日。

 陸は黒歌と共に地下秘密基地で、こっそり撮っていたレーティングゲームの内容を見返していた。

 

 その試合でのライザーの戦い方を一言で表すなら『残酷』。

 自身の兵士(ポーン)の子や戦力的に見て劣る子を囮にして、小猫や祐斗を撃破。眷属が巻き添えを食らおうが知らんぷり。

 一度は自身の左腕を犠牲にして禁手(バランス・ブレイカー)を発動。『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』をその身に纏って圧倒したのだが、突然、ライザーが今まで見せていなかった力を披露したのだ。

 

 

「紅の雷に赤黒い斬擊。明らかにフェニックスのちからじゃないニャね」

 

神器(セイクリッド・ギア)、とか?」

 

〔ライザー・フェニックスは純血の悪魔です。後付けしない限り、神器を使うことはあり得ません〕

 

 

 では、ライザーが使った力は一体何だったのか?

 その力を見せられたとき、陸は勿論、隣に座っていた男性も驚いていた。

 

 

 繰り広げられる残酷なワンサイドゲーム。

 退場させられず、かつ一誠が死なないギリギリの攻撃。

 リアスの目の前で赤龍帝の鎧を砕き、その下の肉体を殴り、切り裂き、焼き、顔の形が変わるまで殴り……

 だが、一誠はリアスの為、降伏しようとはせず、最後まで足掻こうとした。

 

 だからこそ、リアスがリタイアを宣告するまで時間はかからなかった。

 

 

「兵藤一誠は?」

 

「今も眠っているって。看病しているアーシアさんが言ってた」

 

「他の奴等は?」

 

「グレモリー先輩とライザーの婚約パーティーに出席してる」

 

「そっ……リクはどうするの? 一応は誘われているんでしょ?」

 

「僕はいいよ。イッセーの方が心配だし、御見舞いに行ってくる」

 

〔リク。その件について報告なのですが、つい先程、兵藤 一誠が冥界へ向かいました〕

 

「えッ!? でも、イッセーは今───」

 

〔神器が使えない状態です。今、ライザーと戦っても敗北は確定。最悪の場合、死亡する可能性があります〕

 

 

 最悪の可能性を提示され、陸の中に迷いが生まれる。

 

 ───自分がウルトラマンとして戦えば結果を変えられるかもしれない。

 

 ───だけど、ベリアルの子だと言って、イッセーや他の皆が離れていくのが怖い。

 

 

 心の中で葛藤する陸。それ故に、彼は気づくことが出来なかった。

 目の前に立ち、怒りの形相を向ける相棒に。

 

 

 ───パンッ。

 

 

「───え?」

 

 

 乾いた音が指令室に響く。

 最初、陸は何が起こったか理解できなかったが、徐々に伝わってくる頬の鈍い痛みに、自分は平手を食らったのだと理解した。その相手は、

 

 

「黒、歌……?」

 

「…………ろ」

 

「え? 今、なんt───」

 

 

 

「いい加減にしろッ!」

 

 

 

 普段、あまり大きな声を出さない黒歌の怒声がすぐ側にいた陸の耳に響く。

 

 

「さっきからウジウジとッ! いつまでそうしているつもりニャッ! そうやっていて、何か解決に繋がるのッ! 助けに行きたいなら、助けに行けばいいじゃんッ!」

 

「でもッ! 僕はベリアルn「それがどうしたッ!」───ッ」

 

「確かにクライシス・インパクトを起こしたのはウルトラマンベリアルニャ。でも、リクは関係ないッ! ただベリアルの遺伝子を持っているだけッ! それ以外、ベリアルとは何の関係もないッ!

 破壊者の息子ッ!? じゃあ、リクは何かを破壊するのッ!? 誰かを殺すのッ!?」

 

「───そんなことするもんかッ!」

 

「じゃあ、リクは何? 何者なの?」

 

「僕は───……」

 

 

 ジードライザーを手に持ち、胸の高さまで持ち上げる。

 思い返すのは初めて戦ったあの日。

 

 戦うのが怖かった。

 怪獣が恐ろしかった。

 でも、何より……イッセーたちや街の人たちを救えたことが嬉しかった。

 

 

「───陸。朝倉 陸。それが僕だ」

 

 そして、

 

「───僕はジード。ベリアルの遺伝子を持って、自分の運命に立ち向かい、それをひっくり返す、ウルトラマンだッ!

 

 行こうッ! 黒歌ッ!」

 

「ジーっとしてても、ドーにもならないニャッ! まあ、私は行けないけどニャッ!」

 

〔兵藤一誠の現在地は把握しています。向かいますか?〕

 

「あぁッ! 頼むッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 それは突然の出来事だった。

 リアスとライザーの婚活パーティーに一誠が乗り込み、リアス取り返し宣言を言おうとした瞬間、彼の前に今まで見たことのない魔法陣が現れた。

 そこから現れた人物にすぐ側にいた一誠は勿論、リアス、朱乃、小猫、祐斗、レイヴェルの顔は驚愕に染まった。

 

 

「「「「「「リクッ!?」」」」くんッ!?」」

 

「悪魔の皆さんッ! 僕はグレモリー先輩の協力者の朝倉 陸って言いますッ! 今回はこの婚約に異議を申し立てに来ましたッ!」

 

 

 会場がざわつく中、陸は一誠が言おうとしていた宣言を声高らかに言い放った。

 

 

「貴様ッ! 悪魔でもない奴が何のようだッ!」

 

 

 会場の中央。赤いタキシードに身を包むライザーの鋭い視線が陸を捉えるが、陸は動じることなく、自身の拳をライザーに向けた。

 

 

「ライザーッ! グレモリー先輩をかけて、僕と決闘しろッ!」

 

「……ククッ、クハハハハハッ! 笑わせてくれるッ! 貴様のような悪魔でもない奴と戦って、俺に何の得g「得ならあるッ!」───なに?」

 

「僕という存在を倒せば、お前は確実に名声を手に入れられるッ! なぜなら───」

 

「り、リク……?」

 

 

 側にいた一誠は、決心を固める彼の横顔に気づく。

 長い付き合いだからか、その顔が決心したときのものだと知っていた。

 では、何を決心したのか?

 その答えはすぐに分かった。

 

 

「僕の父親はベリアルッ! ウルトラマンベリアルッ! クライシス・インパクトを起こした張本人だッ!」

 

『───ッ!!?』

 

 

 今度は会場全体が驚愕に染まる。

 

 無論、陸の言葉を嘘だと言う者もいたが、その会場に集っていた強者たちは彼の言葉に嘘偽りが無いことを見抜いていた。

 

 

「どうする? 僕のはベリアルの遺伝子を持っている。勿論、力も。そんな僕を倒せば、お前は有名人になること間違いなしだ」

 

「……下らん。出任せを言ったところで、その決闘に受ける価値なd「受けてあげなさい」───サーゼクス様。今、なんと?」

 

「受けてあげなさいと言ったのだよ」

 

 

 『サーゼクス』。そう呼ばれた紅毛の男性……あのレーティングゲームの日、陸の隣に座っていたリアスの兄であり四大魔王の一人、『サーゼクス・ルシファー』は笑顔でライザーの質問に答えた。

 

 

「ライザーくん。先日のレーティングゲームは中々面白かった。だが、ゲーム経験のない素人同然のリアスが、強者であるライザーくんと戦うのは分が悪かったかなと思ってね」

 

「……あのゲームに不満があると?」

 

「いやいや。魔王の私がとやかく言ってしまったら、旧家のお顔が立ちますまい。

ただ、私は妹の婚活パーティーをより盛大にしたいと思っていてね。朝倉 陸くんだったね? 本来なら、赤龍帝の兵藤 一誠くんと戦ってもらうつもりだったのだが、あのベリアルの息子VSフェニックス。この対戦カードには敵わないでしょう。もし、彼の言葉が嘘だとしても、それならライザーくんが負け、恥をかくこともないだろうしね」

 

 

 サーゼクスの言葉に納得したのか、反論しようとしていた悪魔たちが全員静かになる。

 

 サーゼクスはライザーから陸へ視線を移し、御膳立ては済ませたと言わんばかりに細く微笑んだ。

 

 

「さあ、若きウルトラマン。君の力を我々に見せてくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、特別に用意されたバトルフィールド。

 ローマのコロッセオを思わせるその場所で、ライザーと陸は対峙していた。

 

 

「貴様がどれだけの力を持っていようと、この俺の炎の前では無力であることを教えてやろうッ!」

 

 

 上着を脱ぎ捨て、両手に炎を纏わせるライザー。

 一方の陸は、まだウルトラマンに姿を変えておらず、深く深呼吸をしていた。

 

 ライザーが『先程の言葉はやはり嘘か』と嘲笑うように言うが、陸はその言葉を無視し、自分の内に秘めた思いを叫ぶ。

 

 

「イッセーッ! 皆ッ! 本当にごめんッ! 僕はずっと逃げていたッ! 自分がベリアルの息子だって分かって、それを知った皆が離れていくのが怖かったッ! 皆が敵になるのが恐ろしかったッ!

 

 ……───でもッ! 僕はもう逃げないッ! 勇気を燃やして、僕はこの運命と向かい合うッ! もう誰の涙も流させないためにッ!」

 

 

 

 

 

「融合ッ!」「シャァッ!」

 

「アイ、ゴー!」「シュアッ!」

 

 

「ヒア ウィ ゴーッ!」

  【フュージョンライズ!】

 

 

「決めるぜッ! 覚悟ッ!

 

 

 ───ジィィィィィィドォッ!」

 

【ウルトラマンジード!プリミティブ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティー会場。ウルトラマンに変身した陸の姿を見て、その場にいた者たちが一斉にざわめき出す。

 

 一方、プリミティブの姿を知る一誠たちはあまりの驚きに目を見開いていた。

 サイズは圧倒的に違うがつり上がった青い瞳や胸のクリスタル、体の模様など。その姿は間違いなく自分達を助けてくれたあの巨人のものだったのだから。

 

 

「リク……お前はずっと、俺たちを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか本当にウルトラマンだったとはな。

 ───だが、俺の炎の前では通用しないッ! 焼かれて死ねッ!」

 

 

 フェニックスの炎球が陸に……ジードに迫る。

 だが、彼は落ち着いていた。あのときの怪獣と比べると、その炎がちっぽけに見えたからだ。

 

 

「ゥラアッ!」

 

「なッ!? ───がッ!?」

 

 

 迫る焔を腕の一凪ぎで払い落とす。

 驚くライザーだが、そこで出来た隙を逃さず飛び膝蹴りをライザーの顔面に直撃させる。

 

 勿論、フェニックスの力によって物理的な傷はすぐに修復される。しかし、ライザーを怒らせるのには十分な一撃だった。

 

 

「このガキがァァァッ!」

 

 

 ライザーは地面に手を着き、全体を埋め尽くす程の規模の炎を発生させる。

 回避不可能に近い攻撃。だが、ウルトラマンであるジードはフィールド全てが領域。空中に飛ぶことで、その炎を回避する。

 

 

「レッキングリッパーッ!」

 

 

 腕を振るう事で放たれた波状光線がライザーを襲うも、さすがはフェニックス家の才児と呼ばれるだけあって簡単に回避行動を取られてしまい、少しかすった程度にダメージを抑えられたのだが、

 

 

「ぐッ、があぁぁぁぁッ!?」

 

 

 

「かすっただけなのに苦しんでいる?」

 

〔光子エネルギーによる多大なダメージを確認。不死身といえど、光に対する悪魔の特性は健在のようです〕

 

「だったら、こいつでッ!」

 

 

 ジードは前回と同じように腕を下でクロスさせ、エネルギーを貯めていく。

 

 

「レッキングバーs───」

 

 

 だがしかし、それはジードの左後方から放たれた光線が直撃し、阻まれてしまった。

 

 

「アァッ!?(くッ!? なんだッ!?)」

 

〔新たな敵を後方に()()確認。すぐに回避を〕

 

(二体ッ!? ───ッ!)

 

 

 咄嗟にその場を飛び退くジード。その瞬間、ジードのいた場所を妖しく光を反射する何かが二つ回転して通り過ぎた。

 それはそのままジードの右後方に飛んでいき、そこに立っていた()()の頭部にトサカとして収まった。

 

 そいつらが暗闇から姿を現す。

 黒とブロンズ色に彩られた体。胸から上を覆うダークシルバーの鎧に不気味に光るモノアイの瞳。そして、胸の中央には妖しく輝く白いクリスタル。

 

 

「胸にクリスタル……あいつら、ウルトラマンなのか?」

 

〔否定。あれはダークロプスゼロ。あるウルトラマンを模して作られたロボット兵器です〕

 

 

「クハハハハッ! どうやら本当に俺の言うことを聞くみたいだなッ!」

 

『ライザーくん。これはどういうことかな?』

 

 

 フィールドにサーゼクスの少し怒りが籠った声が響き渡る。

 

 

「見ての通りさッ! あれらは俺が使役しているッ! ()()()に保険ということで貰い受けたが、これは中々いい具合だッ!」

 

『私が望んだのはあくまでも一対一の決闘だ。こうなった以上、君は不正行為とみなして敗北n───』

 

「黙れッ! 例えウルトラマンだろうが、魔王だろうが、俺に指図は許さないッ! 俺は強大な力を手に入れたッ! この力で俺は邪魔な者を全て消し去るのさッ!」

 

 

 ライザーがズボンのポケットからあるものを取り出し、それを見た陸は驚くことになった。

 

 

「あれは……───カプセルッ!?」

 

「───ふんッ!」

 

 

 ライザーが手に持った黒いカプセル『怪獣カプセル』を自分の体に突き立てる。

 次の瞬間、ライザーの体が黒と赤。そして、背にはダークシルバーのトゲ、両腕にはトゲと同じ色の刃を備えた鎧に包まれた。その兜は凶悪な獣を模していた。

 

 

最凶獣の鋭刃鎧(ヘルベロス・クローズメイル)ッ! さあ、仕切り直しと行こうかッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティー会場は喧騒に包まれていた。

 打ち首されてもおかしくない魔王サーゼクス・ルシファーに対するライザーの言動。そして、ライザーが纏った謎の鎧に誰もが驚きを隠せないでいた。

 

 一方の一誠たちはライザーが使っていた黒いカプセルに目を疑っていた。

 

 

「あのカプセルって、レイナーレが使っていた……ッ!」

 

「でも、あのときみたいに怪獣にはなっていないし、何よりもあの姿……まるで神器みたいだね」

 

 

 『最凶獣の鋭刃鎧(ヘルベロス・クローズメイル)』。ライザー自らがそう呼んでいた鎧は僅かではあるものの神器に似た強力なオーラを放っていた。

 

 

「サーゼクス様。御報告することが……」

 

「どうしたんだい、グレイフィア? ………───なんだって?」

 

「どうしたの、お兄様?」

 

「……ライザーくんと陸くんの強制退場が出来ないらしい」

 

『───ッ!?』

 

 

 サーゼクスの言葉はリタイア不可能を意味し、例え致命傷を負ったとしてもどちらかが動かなくなるまで続けることになる。

 

 

(リク……ッ!)

 

 

 兄であり、親友でもある一誠はただ見守ることしか出来ないのかと唇を咬んだ。

 

 ……そんな中、誰もがモニターに集中していた為、気づいていなかった。

 たった一人、会場からバトルフィールドに向かう者がいたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほらッ! さっきまでの威勢はどうしたッ!」

 

「くッ……」

 

 

 迫る斬擊やトゲのミサイル、ダークロプスゼロスラッガーやモノアイ放たれる光線を紙一重で回避していくジード。

 いくら戦闘経験があったといってもたったの一回。しかも、その時は一対一でギリギリの勝利だったのだ。いきなり相手が三人は流石に無理があった。

 

 

「ウルトラマンと言えどッ! 俺の力の前では無力同然ッ! どうせだッ! お前を倒して、リアスの眷属にいる女どももいただくかッ! 性欲の捌け口にはなるだろうしな」

 

「お前……ッ、ふざけるなッ! そんなこと、絶対にさせないッ!」

 

「だったら止めてみろッ! もっとも、それは不可能だろうがなッ!」

 

 

 ライザーが腕の刃にエネルギーを貯め、また斬擊を放とうとする。

 

 ……だが、その時、横から放たれた火球が当たり、ダメージを負うことはなかったが、攻撃の手を止めた。

 

 

「……なんのつもりだ、レイヴェル?」

 

 

 ライザーが攻撃の手を止め、火球を放った人物、レイヴェルの方を向く。

 

 

「お兄様、もうお止めくださいッ! 決闘を無視し、あまつさえサーゼクス様に対するあの言動ッ! しかもリアス様の眷属をせ、性欲の捌け口になんてッ!

 今ならまだ許されますッ! 早く皆様にあやまr「何を言っている?」───え?」

 

「何故、俺の邪魔をしてくる奴の言うことを聞かなければならない? 俺は強者だ。強者は何をしても許される。それがこの世の中だ」

 

「だからって、眷属を無下にしたり、他者を踏みにじるなんて……そんなの間違っていますわッ!」

 

「ほう……───お前も俺に口出しするか?」

 

「───ッ!?」

 

 

 

 兜越しに伝わるライザーの冷たい視線にレイヴェルは動けなくなってしまう。そんな彼女にライザーは容赦なく斬擊を飛ばし、動けなくなったレイヴェルは避ける術もなく、その身を両断される瞬間を待つしかなかった。

 

 だが、それを良しとしない者がいた。

 

 

「レイヴェルゥゥゥッ!」

 

 

 ジードが彼女に飛び付き、押し倒す形で彼女を斬擊から守った。

 

 

「リク……」

 

「大丈夫、レイヴェル?」

 

「ちッ……避けられたか」

 

「お前、レイヴェルは大切な家族じゃないのかッ!」

 

「だからどうした? 邪魔者を全て消し去ると言ったはずだ」

 

「だからって家族を傷つけていいはずがないッ! 僕に家族はいないけど、それくらいは分かるッ!」

 

「家族など下らんッ!」

 

「下らなくないッ! レイヴェルが家族の事を話すとき、その笑顔がすごく眩しく見えたッ! でも、今は違うッ! 彼女の笑顔が今のお前のせいで消えているっていうのなら、僕が絶対に止めてみせるッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(リク……───)

 

 

 少女と少年の出会いは、本当に偶然の出来事だった。

 外の世界で人気の特撮ヒーローのフィギュアを買いに行き、そこで同じものを買おうとした少年と喧嘩。はじめは小生意気な人間と思っていたが、会話してみると認識が同士(オタク)に変わった。

 

 そして、今。彼は少女や多くの者たちの為に戦っている。

 そんな彼の背中は彼女の好きなヒーロー(ドンシャイン)と重なった。

 

 故に、少女は……レイヴェルは願う。

 

 

(お願い、リク……お兄様を───)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その青年は、自分が敗北することをはじめから分かっていた。

 神器が使えない。傷も完全には癒えていない。

 

 それでも自分の恩人を助けたい。彼女を助けたい。

 

 そんな自分の思いを代弁するかのように今、弟分とも言うべき幼馴染みが戦っている。かつて、もう一人の幼馴染みと見たヒーローショーに出てきたヒーローのように。

 

 

(頼む、リクッ……部長を───)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───助けて……ッ!

 

 

 その時、不思議な事が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセー、あなた、それ……ッ!?」

 

「え……───」

 

 

 リアスに言われ、一誠は自分の胸元が輝いている事に気づいた。神器の光などではなく、純粋な光。本来なら悪魔にとって猛毒でしかないのだが、その光は寧ろ力を与えるかのように思えた。

 光はそのまま球体となって、一誠の体から出ていき、バトルフィールド……正確にはジードの元へ向かった。

 

 

 その現象はレイヴェルにも起きていた。

 

 

「これ、は……?」

 

 

 光はジードの元へ向かい、一誠の元から訪れた光と共にジードのカラータイマーに吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ジードの中……陸が立つ、多数の細胞組織のような模様が蠢く空間『インナースペース』に二つの光が現れ、陸の腰に掛けていたカプセルホルダーに納められていた二つのカプセルの中に入っていく。

 陸はそのカプセル二つを取り出し、確認すると二人の紅の戦士が描かれていた。

 

 

「これってッ……!」

 

〔『レオカプセル』、『セブンカプセル』の起動を確認。『ソリッドバーニング』に変身可能になりました。リク、カプセルの交換を〕

 

「よし……

 

「───ジーっとしてても

     ドーにもならねぇッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「融合ッ!」「シュアァァァッ!」

 

 

 インナースペースの中で、陸はレイヴェルから受け取った光で起動したカプセル『セブンカプセル』のスイッチを入れると、彼の右前方に肩や胸を白銀のプロテクターで身を包んだ紅の戦士。『真紅のファイター』と呼ばれるウルトラ兄弟の一人『ウルトラセブン』の姿が投影される。

 

 陸はセブンカプセルをナックルに装填し、次のカプセルをホルダーから取り出す。

 

 

「アイッ、ゴーッ!」「イヤァァッ!」

 

 

 一誠から受け取った光で起動したカプセル『レオカプセル』のスイッチを入れると、獅子を模した特徴的な頭部と腹部に『レオ』を意味するシルバーのシークレットサインを持った紅蓮の戦士。宇宙拳法の達人にして、獅子座L77星の戦士『ウルトラマンレオ』の姿が投影される。

 

 陸はレオカプセルをナックルに装填し、ジードライザーを掲げた。

 

 

「ヒア ウィ ゴーッ!」

 

 

【フュージョンライズ!】

 

「燃やすぜッ! 勇気ッ!」

 

 

 陸はジードライザーを胸元に掲げ、そのトリガーを押した。

 

 

「───ジィィドォォォッ!」

 

 

【 ウルトラセブン!

 ウルトラマンレオ!】

 

 

 ジードライザーのシリンダーに宿る青と赤の光が混ざり合い、琥珀色の光となって陸の体を包んでいく。そして、光と焔と共に現れた戦士はプリミティブではなかった。

 

 

 【ウルトラマンジード!

  ソリッドバーニング!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起こった……ッ!?」

 

 

 ライザーの目の前で、突然ジードが焔に包まれた。さすがのライザーも驚きを隠せず、自決したのかと思ったが、次の瞬間、その焔が爆散し、そこにはジードではなく、別の戦士が立っていた。

 ……いや。目の形やカラータイマーの形などからジードであることに間違いはないだろう。

 しかし、その姿は大きく変わっていた。

 

 肩や胸を覆うシルバーのアーマーや全身の赤いアーマーが複雑に可動し、背中や腕など、節々にあるブースターから蒸気を吹き出している。

 

 

 この姿こそ、レオとセブンの師弟コンビの力でフュージョンライズしたパワー特化の形態。

 

 その名も『ウルトラマンジード

        ソリッドバーニング』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 プリミティブからソリッドバーニングに変身したジード。

 もちろん、ジード自身も己の変化に驚いていた。

 

 

「なんだこれ? 胸の奥がすっごく熱くなってくるッ!」

 

〔ウルトラマンジード ソリッドバーニング。近接戦闘に特化した、勇気を燃やす紅蓮の形態です〕

 

「なるほど……───よしッ!」

 

 

 ジードはファイティングポーズを取り、ライザーやダークロプスゼロたちと向かい合う。

 

 

「ふんッ! 姿が変わったところで、俺には勝てんッ!」

 

 

 ライザーが飛び掛かり、ジードの顔に拳を叩きつけようとするが、ジードはその拳を易々と片手で受け止め、

 

 

「───デュアァッ!」

 

「ごふぁッ!!?」

 

 

 腕のブースターで加速させ、威力が上がったジードの拳がライザーの纏う鎧の兜を砕き、ライザーの顔面を捉えた。その衝撃はライザーの体をいとも簡単に吹き飛ばし、バトルフィールドの壁に激突させる。

 一方のジードは兜を砕いたというのに、その拳にダメージは一切無かった。

 

 

「全然痛くないッ! 鎧を着ているみたいd「リクッ!」───ッ!」

 

 

 レイヴェルの声でハッとなるジード。見ると、ダークロプスゼロの一体の胸部パーツが展開され、胸のクリスタルがキャノン砲に入れ替わっていた。

 キャノン砲から紫色の強力な光線が放たれるが、

 

 

「ソーラーブーストォォォッ!」

 

 

 ジードは胸部のプロテクターから高出力の光線技『ソーラーブースト』を放ち、ダークロプスゼロの光線と真っ向勝負にでる。

 僅かな均衡の末、ジードの光線はダークロプスゼロの光線に押し勝ち、その機械の体を貫いた。

 

 

 

 

 休む暇もなく、残るダークロプスゼロが頭部から雌雄一対の刃『ダークロプスゼロスラッガー』を取り出し、ジードに斬りかかってくるのに対し、ジードも頭部から宇宙ブーメラン『ジードスラッガー』を取り外し、迎え撃つ。

 

 手数では二刀流のダークロプスゼロが上。しかし、ジードはその差を物ともせず、スラッガーを弾き、ダークロプスゼロの体を切りつけた。

 ダメージに怯むダークロプスゼロ。ジードは畳み掛けるべく、足のスロットにジードスラッガーを装着した。

 

 

「ブーストスラッガーキックッ!」

 

 

 ブースターの推進力で回転力を高めた回し蹴りがダークロプスゼロを両断し、ダークロプスゼロは爆発と共に消滅した。

 

 

 

 

「残りはライザー……お前だけだッ!」

 

 

 ジードは壁に手をついて立ち上がるライザーと向かい合い、構えを取ろうとする。

 ……が、それをライザーが掌で制した。

 

 

「ま、待てッ! もう終わりにしようッ! 俺の敗けだッ! リアスの事は諦めるッ!」

 

「……本当だな?」

 

「ほ、本当だッ! 信じてくれッ!」

 

「…………」

 

 

 必死になるライザーを見たジードは少し考え、終わったと言わんばかりに背を向けてバトルフィールドを去ろうとする。

 

 ……一方、そんなジードの背中を見て、ライザーはニヤリと口角を上げた。

 

 

「バカめッ! 死ねぇぇぇッ!」

 

 

 ライザーが隙だらけのジードの背中に渾身の斬擊を放つ。それはジードの装甲を切り裂き、鮮血をライザーに見せる。

 

 

 

 

 ───そう、ライザーは思っていた。

 

 

 

「リクッ! 後ろッ!」

 

「───ディアッ!」

 

「な───ッ!?」

 

 

 ジードの裏拳が斬擊を弾き飛ばす。

 

 

「レ、レイヴェルッ! 貴様ァァァァッ!」

 

 

 ライザーがレイヴェルに向かってトゲのミサイルを放つが、ジードが額のクリスタルからレーザーを放ち、全て打ち落とした。

 

 

「ありがとう、レイヴェル」

 

「御礼は結構ですわ、リク……兄を御願いします」

 

「───分かった」

 

 

 ジードは正面をライザーに向け、右手首の装甲を展開してエネルギーを充填していく。

 流石にライザーもあれはヤバイと判断したのか、必死になってジードを止めようとする。

 

 

「ま、待てッ! 悪魔でもない貴様が何故リアスの為に戦うッ!? 富かッ!? 女かッ!? なら、俺はそれ以上のモノをお前に与えr「そんなんじゃないッ!」───ひぃッ!?」

 

「大切な友達が泣いていた。大切な仲間が泣いていた。

 ───それだけで十分だッ!」

 

 

 充填が完了し、右腕に目映い光が宿る。

 

 

「や、やm───」

 

 

 逃げようとするライザーに対して、ジードは正拳突きの姿勢でエネルギーを解放した。

 

 

 

「ストライクブーストォォォォォッ!」

 

 

 72万度。焔を纏った爆熱光線がライザーに直撃。断末魔と共に爆炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様ッ!」

 

 

 爆炎が収まると、そこには鎧が解除され、倒れ伏すライザーが一人。

 レイヴェルが駆け寄り、ジードも彼女に続いて、ライザーの安否を確認する。

 

 

「レム、ライザーの容態は?」

 

〔フェニックスの力によって外傷は治っています。ダメージの大きさに気絶しているだけのようです〕

 

「良かった……レイヴェル。ライザーの命に別状はないよ」

 

「リク、本当にありがとうございますわッ! なんとお礼を言えば良いのか……」

 

「別に御礼なんて……ん? これって───」

 

 

 ジードはライザーの手から転がり落ちた()()()()()()を拾い上げる。見ると、そこには凶悪な見た目をした異形が描かれていた。

 

 

〔確認。先程、ライザーが使用していたカプセルで間違いありません。データと照合……照合完了。どうやら『最凶獣 ヘルベロス』の力が籠められているようです。恐らく、ライザーはこのカプセルに精神を犯されていたのでしょう〕

 

 

(これがライザーを……一体、誰が渡したんだ?)

 

 

 疑問が浮かび上がるが、ジードはそれを一旦後回し。立ち上がり、この試合を観ている全ての悪魔に向かって叫んだ。

 

 

「この勝負は僕の勝ちだッ! もし、この結果に文句があるなら直接僕の所に来いッ! 僕は逃げも隠れもしないッ! いつでも相手になってやるッ!」

 

 

 その後、ジードはレイヴェルの代わりにライザーを抱え、皆が待っているであろう会場に戻っていった。




次回はエピローグ。
それでは、本日はこれにて。

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