はい。それでは、本編どーぞッ!
・・・と、その前にこの作品のキャラ設定。
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塔城 小猫
陸と同じ、駒王学園に通う高校一年生。その高校生とは思えないほど小柄な体格から、学園内ではマスコットとして慕われている。
基本的には無口だが、陸に対しては口を開くと毒舌がとぶ。しかし、それでも親しそうにする二人の姿から『二人は付き合ってるのでは?』と噂が立つほど。
余談だが、銀河マーケットの常連客である。
兵藤 一誠
駒王学園では松田、元浜と合わせて『変態トリオ』と呼ばれているほどスケベな高校二年生。
陸とは幼稚園の頃からの付き合いで、一誠は陸のことを弟のように思っている。
四月始めに念願の彼女が出来てハイテンションになっている彼だが・・・。
駒王学園に通う、これといった外見的特徴がない、ごく普通の高校一年生。
幼い頃に両親を無くし、今は五つ年上の姉と幼稚園の妹と一緒に生活している。
家計を支えている姉を少しでも助けるため、バイトをいくつも掛け持ちしている。そのため、学校でも内職をする令人の姿が確認されている。
一誠のお祝い会から週をまたいだ月曜日の朝。
陸は欠伸を噛み締めながら登校していた。。
「眠い……」
「自業自得ニャ。遅くまでテレビ見てたリクが悪いニャ」
「それはそうだけどさぁ……」
通学路を歩くなか、脇にはさんだ鞄の僅かに開いた口から頭を出す黒歌と小声で話す陸。しかし、黒歌が周りには自身の声が聞こえないようにしているため、端から見ればブツブツと独り言を言っているように見える。
そんなときだった。
「…おはようございます」
「「うおッ!?」」
突然の背後からの声に驚く陸。黒歌も声をあげ、すぐさま鞄の奥に潜り込む。
陸が振り替えると、そこには白髪の小柄な女の子が絶っていた。
彼女の名前は『塔城 小猫』。陸と同じ、駒王学園に通っている。学年は陸と同じ一年生で、クラスも同じだ。
「お、おはよう、塔城さん」
「…どうも。朝から道中で独り言とか、キモいですよ」
「あははは……ごめんなさい」
「…謝るなら気を付けてください。早く行きますよ」
そう言って、歩き出す小猫。陸はそのあとを追う。
どうやら彼女は星雲荘の近くに住んでいるらしく、よくこうやって一緒に登校している。
「……そういえば、知っていますか? 新発売されたチョコ菓子」
「チョコ菓子? 店長が今日から新しい商品を並べるって言ってたような気がするけど」
「・・・10本ほど、置いといて貰えますか?」
「了解。言っておく」
道中、そんな会話をしながら二人は学園に向かった。
十数分。教室に入った陸は自身の席の前に座る眼鏡の少年『伊賀栗 令人』に話しかけた。
「おはよう、令人」
「おはよう、リクくん。今日も塔城さんと一緒にかい?」
「途中で会ってね。それで、令人はいつもの?」
「うん。SHRまでに五十本は作ろうと思っててね」
そう言って、令人は手に持った造花を見せる。彼の机の上には材料と、既に出来た造花が積まれていた。
「手伝おうか?」
「ありがとう。でも、大丈夫だから。
それよりも、さっき兵藤先輩が来てたよ」
「イッセーが?」
「君を探してたみたい。なんか、焦っているようにも見えたけど……」
「分かった。時間がある時に行ってみるよ」
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「し、失礼しまーす……」
暫くして、陸はSHRが終わったあと、一誠がいるであろう二年生の教室に向かった。だがしかし、やはり抵抗があるのだろうか。陸は開いた扉に隠れながら中を覗いた。
(イッセーは……いたッ! けど、なんか様子が……とりあえず、呼んでみよう)
「イ、イッセー」
「───ッ! リクッ!」
陸が来たことに気付いた一誠は、すぐさま彼の元に行き、彼の腕を掴んだ。
「へ? どうした───」
「説明は後でするから、黙って来てくれ」
「え、ちょ、イッセーッ!?」
一誠は戸惑う陸を連れて、一階と二階を繋ぐ階段の踊り場まで行く。一限目が始まる前だからか、そこに人気は無かった。
一誠は陸の腕を離し、次に彼の両肩をガッシリと掴んだ。
「きゅ、急になんなんだよ、イッセー? それに顔が怖いよ」
「……陸、ものすごく奇妙な質問をさせてくれ。お前、
「あ、天野夕麻? それって、イッセーの彼女さんの名前だよね」
「───ッ! お、お前、夕麻ちゃんのこと覚えているんだなッ!? 俺の幻想とか幻覚とか妄想とかじゃなくて、夕麻ちゃんは実在していたんだよなッ!?」
「お、落ち着いてよ、イッセー。話が見えてこないんだけど、一体何があったのさ」
「……覚えてないんだ、誰も…誰も夕麻ちゃんのことを覚えてないんだよッ!」
「はい?」
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一誠の話はこうだ。
昨日、彼はデートの終わり、彼女である『天野 夕麻』に殺されるという悪夢を見た。その事を松田、元浜に話したとき、彼らは言った。
───『誰だ、それ?』と。
始めは何かの冗談かと思った。しかし、彼らは全く覚えていなかった。むしろ、一誠が寝ぼけているのでは、と言ってくるほど。そんな彼らに、一誠は天野 夕麻の写真を見せようとした。しかし、ギャラリーに納めていた彼女の写真、そして、電話番号を始めとしたアカウントなど、彼女に関する情報が全て無くなっていた。
陸は一誠の言葉が信じられず、松田や元浜に声をかけ、天野 夕麻について聞いてみた。しかし、返ってきた答えは『知らない』のみ。晴雄にも電話をかけてみるが、彼も天野 夕麻を覚えていなかった。
陸と一誠は放課後、彼女の着ていた制服を使っている学校を訪ねてみた。しかし、彼女に関する情報が手にはいることはなかった。まるで最初から彼女という存在が無かったかのよう……。
夕方。暗闇に包まれた歩道を二人は肩を落としながら歩いていた。
「結局見つからなかったね……」
「…やっぱり、夕麻ちゃんは俺の夢だったのかな?」
「それ、僕がイッセーと同じ夢を見てることになっているんだけど」
「だよなぁ……」
深いため息を吐く一誠。
そんな彼を見ながら、陸は鞄の中にいる黒歌にそっと話しかけた。
「黒歌、どう思う?」
「………………」
「……? 黒歌、聞こえてる?」
「……ん? ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事をしてたニャ」
「うん。実は────」
そのときだった。陸の隣を歩いていた一誠が、急に足を止めたのだ。
「どうしたの、一誠? 急に足を止めて」
「いや、あの人・・・」
そう言って、一誠は自分達が歩くを指す。陸も一誠の指す方向を見るが、夜の闇でうっすらと輪郭が見えるだけだった。
「よく気付いたね。目を凝らさないと見えないのに」
「そうか? 俺には十分に見えるぞ」
「いやいや。さすがにここまで暗いと誰も見えないから。……で、目の前の人がどうかしたの?」
「いやさ……なんか、雰囲気が夢に出てきた夕麻ちゃんにそっ───」
『───くりでさ』と、そう続くはずだった一誠の言葉が途切れた。普段の陸なら『どうしたの?』と問い掛けるが、それができなかった。
何故なら、今二人は動くことが出来なかったからだ。その目の前の人物が放つ異様な殺気で。
「これは数奇なものだ。都市部でもない地方の市街で貴様のような存在に出会うのだからな」
目の前の人物がゆっくりと近づいて来る。そして、陸たちから3メートルほど離れた所で止まった。
ようやく分かった、目の前の人物の姿。黒いシルクハットを深く被った、黒いコートの男。普通なら『ちょっと怪しいおっさん』で済むかもしれないが、その男が放つ気配は普通ではない。
男の気配に気圧され、二人は数歩後退った。
「逃げ腰か。主は誰だ? こんな所に拠点を構える奴だ。よほどの変わり者か、階級の低い奴だろう」
ジリジリと近づいて来る謎の男。そんなとき、僅かに開いた鞄の口から、中にいる黒歌が小さな声で話しかけた。
「……ク。……リク」
(───? 黒歌?)
「…そのまま聞いて。ここは私がどうにかするから、リクは私の合図でこの鞄を目の前の奴に投げつけて、すぐに逃げて。大丈夫。私がこんな奴に負けるわけないニャ」
「……分かった」
陸は本当にすべきか悩んだが、黒歌とは互いを相棒と認め会うほどの仲だ。だからこそ、彼女を信じた。
「今だニャッ!」
「イッセー、走ってッ!!」
鞄を投げつけ、すぐさま後ろに走り出す陸。一誠も始めは戸惑ったが、すぐさま陸の後ろを追いかけた。男は突然のことで避けることが出来ず、陸の鞄を顔面で受けてしまった。
だがしかし、陸たちはそれを確認すること無く、一目散に走り続けた。
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「チッ……あのガキが…ッ!」
陸の鞄を顔面で受け止めた男、『ドーナシーク』は顔を押さえながら、陸に対して悪態をつき、鞄を塀に投げつけた。口のファスナーが壊れていた鞄は、塀にぶつかると中身をぶちまけながら地面に落ちた。
本来、ドーナシークは彼を殺すつもりなど無かった。しかし、陸がしたことはドーナシークを怒らせた。
「殺してやる…隣にいた悪魔共々、殺して───」
「そうは問屋が許さないニャ」
「───ッ!?」
突然の第三者の声に、ドーナシークは身構え、声の聞こえた方を向く。そこには月明かりに照らされた、塀の上に立つ黒歌の姿があった。
「まったく……お前が鞄を塀に投げつけるから、チャックを壊して出ないといけなくなったじゃない。後でリクに謝らなきゃ」
「……貴様、いつからこの場にいた?」
「始めッからニャ。もっとも気配を消してたから見つけられなかったみたいだけど………で? あんた、リクを殺すって言ってたわね」
「それがどうした? あのガキはこの俺に対してそれだけのことを───」
「───させるかよ」
次の瞬間、黒歌の爪がドーナシークの右腕を切り飛ばした。
ドーナシークは右腕が繋がっていた場所を抑え、声にならない叫びを上げる。黒歌は手についた血を払い、地面に膝をつくドーナシークを問い掛けた。
「さてと……殺される前に答えな。何でテメェみたいな奴がここにいる? 目的はなんだ?」
「クッ……誰が貴様のような───」
「はい、さいニャら」
黒歌は右手を一閃し、ドーナシークの首を切り裂いた。
血を流し、コンクリートの地面に倒れ込むドーナシークの死体。黒歌はため息を吐きながら、自分の手についた血を拭った。
「……はぁ、やっちゃったニャ。この死体、どうしよう? 仙術で処分したら、あの子に気付かれちゃうからニャ~……早く、リクのところ行きたいのに……」
黒歌はとりあえず、人目のつかないところに運ぼうと死体を掴み、移動を開始した。
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一方その頃、陸たちは町外れにある小さな公園で休憩をとっていた。
「はぁッ、はぁッ…もう、追ってきて、ないよな?」
「うん……そう、みたい……」
「だあぁぁッ…つっかれた……」
ドーナシークが追ってきてないことを確認したイッセーはその場にしゃがみこんだ。
「なんだったんだよ、あのおっさん……殺されるかと思った……」
(追ってこないところをみると、黒歌が勝ったのかな……?)
「まぁ、逃げ切れたから良かったじゃん」
「そうだなぁって、ここは……」
何かに気付いたのか、一誠はある場所を見つめた。
「どうしたの?」
「いや、今さら気付いたんだけどさ……あそこの噴水、夢の中で夕麻ちゃんに殺された場所なんだ……」
「えッ………?」
一誠は目の前にある噴水のすぐ側を暗い顔で見つめる。そんな彼に、陸は『ごめん』と辛いことを思い出させたことに謝ろうとした。
───しかし、
「ほう? それはそれは……あなたがここに来たのも、運命かも知れませんねぇ」
「「───ッ!?」」
突然背後からかけられた声に驚く陸と一誠。あの男……つまり、ドーナシークが来たのかと振り替えったが、そこに立っていたのは人間ではなかった。
悪魔を思わせる頭部に光る赤い眼。ずんぐりとした黒い体には、青い模様が描かれたシルバーの鎧を纏った異形。
「なっ、なんなんだよ、お前ッ!? あ、あの男の仲間なのかッ!?」
「フム……あの堕天使のことなら、一時的な協力関係でしかない、としか言えませんねぇ。ああ、それと私は貴方に用はありません。あるのは……朝倉 陸。貴方です」
名前を言われた陸は少し戸惑ったが、すぐに逃げる体勢を整えた。隣にいる一誠も、いつでも逃げられるように身構える。
「ぼ、僕になんのようだッ!?」
「なに…単純なことですよ。───貴方を試させて貰います」
「へ? それって、どういう───」
次の瞬間だった。
「リクッ、危ねえッ!」
一誠が陸を突き飛ばした。突然のことで驚きを隠せない陸だったが、その驚きはすぐに消え去った。
なにせ、転ぶなかで彼が見たものは、一誠の左足が光の弾丸に貫かれる瞬間だったのだから。
「ぐ……ああああああッ!?」
「イ、イッセーッ!?」
陸はすぐさま一誠に駆け寄る。
一誠は撃ち抜かれた右足を抑えて、地面に踞っていた。
「愚かな者がいたものですね。無関係にも等しいのに、態々関わってくるのだから」
「……よくも……よくもイッセーをッ!」
陸は黒い異形を睨み付ける。しかし、当の異形はそれを見て小さく息を吐いた。まるで『期待外れだ』とでも言いたげに。
「あの御方の遺伝子を持っている貴方を試すつもりでしたが、まだ覚醒には至ってないようですね。怒りでは覚醒しないのか……または単純に怒りが足りないのか……いやはや、どうすればいいのやら───おや?」
突然、黒い異形が言葉を止めた。陸は『何故?』と思ったが、その理由はすぐに分かった。
「あなた、私の領地で何をやっているのかしら?」
後ろから聞こえた女性の声に振り返る陸。
そこに立っていたのは、駒王学園の制服に身を包んだ紅髪の女性だった。紅髪の女性はゆっくりと陸たちの前に出る。
その女性が持つ妖艶な魅力に、陸は思わず見とれてしまった。
黒い異形はその女性に対して、軽く御辞儀をした。
「これはこれは。まさか、あなた様がここの領主でしたか」
「……彼、傷を負っているようだけど、あなたがやったのかしら? だとしたら、これ以上は許さないわよ」
紅髪の女性が黒い異形を睨み付ける。すると、彼女の体から紅のオーラのようなものが溢れ出し始めた。
「フム……流石の私も無事では済まないでしょうね。仕方ありません、ここで失礼させてもらいましょう」
そう言った異形はパチンッと指を鳴らした。すると、彼の後ろに夜の闇とは別の闇が生まれた。異形はその闇の中に入っていく。
「おっと忘れていました。私の名は『魔導のスライ』。いずれ、また会いましょう……」
異形の体が完全に闇に包まれ、そして、闇と共に消えていった。
(た、助かった…のか……?)
陸はその場にへたり込む。そんな彼に、紅髪の女性が話し掛けた。
「あなた、大丈夫かしら?」
「あ、はい。あの…助けてくれて、ありがとうございます。ぇ、えっと……リアス・グレモリー先輩ですよね?」
「あら? 私のことを知って───って、あなた、駒王学園の生徒ね」
そう言った紅髪の女性、リアス・グレモリーは納得したような顔をする。
なにせ、彼女『リアス・グレモリー』は陸が通う駒王学園の誰もが憧れる『学園二大お姉さま』の一人。学園内で知らないものは誰もいないほど有名な人物なのだ。
「さて……とにかく、まずはその子ね」
リアス・グレモリーが陸の隣で踞っている一誠を見る。今の彼は血を流しすぎたせいか、顔色が青くなっていた。
「そ、そうだッ! きゅ、救急車を呼ばなくちゃ「その必要は無いわ」───え? ど、どういうことですか?」
「言葉通りの意味よ。その子は私が助ける。救急車を呼ぶ必要は皆無だわ」
「で、でも───」
「大丈夫。私を信じなさい」
陸は戸惑う。しかし、リアス・グレモリーの真っ直ぐな瞳に見つめられ、ただ頷くしか出来なかった。
「ありがとう。彼はリアス・グレモリーの名に置いて、絶対に助けるわ。
───だけど、ごめんなさいね」
「へ───」
リアス・グレモリーの人差し指が陸の額に触れる。次の瞬間、陸の意識は深い闇に沈んでいった。
魔導のスライ
陸たちに突然襲い掛かった謎の存在。悪魔のような顔が特徴。
陸のことを何か知っているようだが……
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はい。
それでは今回はここまで。
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