ハイスクールGEED   作:メンツコアラ

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 ・・・境ホラとベストマッチするのはディケイド、ビルド、ジオウ、ジョジョのどれなんでしょうか?
未だに悩んでいるメンツコアラです。
それではどうぞ。





エクソシスト、現る

 気が付くと、陸は見知らぬ場所に浮いていた。

 何処までも続く青い空。足下を埋め尽くす白い雲。天には輝き続ける太陽。

 初めて見る光景に、陸はただ単純に『美しい』と思った。そして、その景色を全て記憶に納めようと辺りを見渡す。

 

 

 そのときだった。

 

 

 後ろに振り向いたとき、陸は少し離れたところで対峙する二人の人影を見た。

 その二人には胸の中心と頭部の瞳に当たるところにクリスタルが輝いているという共通点があった。そして、その二人には真逆な部分があった。

 太陽を前にして浮いている者は全身が黒く、その上に赤い模様が描かれおり、まさに闇の化身というべき姿をしていた。

 一方、太陽を背にして浮いている者は白銀の体に黄金の模様が刻まれている。その姿は、まさに光の化身だった。

 

 互いを睨み合う二人。そんな光景を、陸は何故か懐かしく思った。

 

 陸がそんな疑問を持つ中、光の化身が闇の化身に問いかけた。

 

「お前は持っていないのか、守るべき者を……」

 

「何ぃ……?」

 

「何故奪うだけで、守るものを持とうとしないんだ……」

 

「何を…何を言っているんだッ!」

 

 光の化身の言葉が分からないのか、闇の化身は声を荒らげる。そんな彼に対して、光の化身は拳を握りしめていた。そして、光の化身は闇の化身に対してハッキリと言った。

 

「お前だって───

 

 

 

 

 

 

 

 

【ピピピピッピピピピッ ピピピピッピピピピッ】

 

「……ん、んん……」

 

 目覚ましのアラームが、陸を夢の世界から呼び戻す。

 モゾモゾと布団から這い出てきた陸は寝惚けながらもアラームを止めた。そして、再び布団の中に潜っていく。

 

「あらあら。もうそろそろ起きないと遅刻しますわよ?」

 

「もう、5分……」

 

「困りましたねぇ。せっかくの朝食が冷めてしまいますわ」

 

(…………んんッ!?)

 

 何時もと違うことに漸く気づいた陸はすぐさま起き上がる。そして、彼が見たものは……

 

「おはようございます」

 

「………………え?」

 

 駒王学園の制服に身を包み、その上からエプロンを着けた黒髪の女性。陸はその女性の顔に見覚えがあった。なぜなら、彼女は学園内でもトップを争うほど人気の高いのだから。その女性の名前は、

 

(……何で姫島 朱乃先輩が僕の部屋に?)

 

 学園の誰もが憧れる二大お姉様の一人が自分の住むアパートの部屋でエプロン姿。

 そんな一誠、松田、元浜の変態トリオが聞けば血の涙を流しそうな目の前の光景に、陸は数秒間だけフリーズしてしまう。そして、ある結論に達した。

 

 『ああ……これは夢なんだ』と。

 

「そういうわけで、おやすみなさい」

 

「何をどうしたら『そういうわけで』になるのか分かりませんが、起きて貰えませんか? 早く布団から出ないと───踏みたくなってきますわ」

 

「すぐにおきますッ!」

 

 

 突然背中に走る謎の悪寒。すぐさま陸は布団から起き上がり、その場で正座した。その時見た朱乃の顔が若干赤くなっているのは彼の気のせいだろう。

 

 陸が起きたのを確認した朱乃は、彼に着替えるように言い、台所の奥に消えていった。陸は言われるがままに従う。

 数分後。星雲荘の陸の部屋で、陸は朱乃と卓袱台を挟んで向かい合っていた。卓袱台の上には白米、みそ汁、だし巻き卵、ほうれん草のおひたしといった美味しそうな朝食が陸の前に並べられていた。

 

「あ、あの……何で、姫島先輩がうちに?」

 

「それに関しましては放課後説明しますわ。とりあえず、朝食をどうぞ」

 

「いや、どうぞって……」

 

 『言われても』と陸は続けようとしたが、ニコニコと笑みを浮かべる朱乃を前に何も言うことができなかった。

 

 

 

 

 

 

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 その日、学園で陸は男子生徒に追いかけ回されていた。

 理由は単純。二大お姉様の一人と一緒に登校してきたのだから。

 

『『『待てやゴラアアアアアッ!』』』

 

「いやああああッ!」

 

 全速力で校内をダッシュする陸。彼の後ろには端から見れば、何処かの宗教集団の格好をした陸のクラスの男子たちが鎌や釘バットといった凶器を片手に追いかけていた。

 

「諸君、我々は何だッ!」

 

「「「最後の審判を下す法廷を見守る者ッ!」」」

 

「異端者にはッ!」

 

「「「裁きの鉄槌をッ!!」」」

 

「男とはッ!」

 

「「「愛を捨て、哀と共に生きる者ッ!!!」」」

 

「姫島お姉様と登校してきた朝倉 陸にはッ!」

 

「「「有罪(ギルティ)ッ!!!! 即刻死刑をッ!!!!!」」」

 

「だから何でそうなるのォォォッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

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(疲れた…なんか、もうダメ……)

 

 帰りのSHRも終わり、各々が部活や帰宅の準備をするなか、陸は机の上で突っ伏していた。

 無理もない。何せ、休み時間はほとんど逃げに使い、昼食もまともにとっていないのだ。

 

(腹へったぁ……帰り、どっか寄ろうかな……。

 そう言えば、今朝黒歌を見なかったけど、何処に行ってるんだろ?)

 

 そんなことを考えていたときだった。隣に座っていた小猫が陸に話しかけた。

 

「…あの、ちょっといいですか?」

 

「塔城さん? どうかしたの?」

 

「…私と付き合ってください」

 

 小猫がそう言った瞬間、少し騒がしかった教室がシン……と静まり返った。

 その現象に疑問符を浮かべる陸と小猫。そんな所に、クラスメイトの一人が小猫に話しかける。

 

「と、塔城さん。今の言葉って……」

 

「…? どうしたんですか? 言葉通りの意味ですが───あ」

 

 そこで小猫があることに気づくのだが、時すでに遅し。教室に黄色い歓声が響き渡った。

 

「ついにッ! ついに告白したわッ!」 

 

「しかもこんな大勢の前でッ!」

 

「塔城さん、大胆~ッ♪」

 

「議長。どうやら朝倉がまた掟を破ったそうです」

 

「よし、即座に刑を執行する」

 

「「「Roger !!!」」」

 

 エトセトラ etc.……。周りが騒ぐにつれて小猫の顔も赤くなっていく。心配になった陸が声をかけるが、小猫は『早くいきますよ』と小さく言い、ツカツカと教室を出ていった。その後ろを慌てて追いかける陸。

 

 

 

 

 しばらくして、二人は校舎のすぐ隣にある旧校舎の中に入った。

 『何でこんなところに?』と陸が問い掛けるが、小猫は『着けば分かります』と返すだけ。

 旧校舎の中を歩いて三、四分。二人は『オカルト研究部』という札が掛けられた扉の前に到着した。陸が疑問符を浮かべるなか、小猫が慣れた手つきで扉を開ける。

 その奥に広がっていたのは、巨大な魔方陣が描かれた薄暗い部屋だった。ソファーや机、棚等の備品だけを見れば普通の部屋だが、床の魔方陣や部屋の薄暗さが如何程な雰囲気を醸し出している。

 だがしかし、そんなことよりも陸の視線を奪うものがあった。それは……

 

「…部長、連れてきました」

 

「ありがとう、小猫」

 

(リ、リアス・グレモリーッ!? って、その後ろにいるのってイッセーに姫島先輩にイケメン王子と名高い木場先輩ッ!?)

 

 ちらりとリアスの後ろに視線を移すと、そこには一誠の姿もあった。さらに彼の両隣には姫島 朱乃と木場 祐斗の姿もあった。

 

「朝倉 陸。ようこそ、オカルト研究部へ。まあ、立ち話も何だし、座ったら?」

 

「は、はい…じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

 言われるがままにソファーに座る陸。そんな彼に朱乃が紅茶を差し出す。その香りから、かなり値が張る代物だと分かるが、今の陸にそれを認識する余裕などなかった。

 リアス・グレモリー、姫島 朱乃、木場 祐斗、塔城 小猫、兵藤 一誠。駒王学園の有名人たちのオンパレードに、陸は緊張していたのだ。それに、

 

「(リアス先輩と塔城さん、それとイッセー。黒歌の言う通りならこの三人は悪魔だ。てことは、「朝倉 陸?」一緒にいる姫島先輩「朝倉 陸?」や木場先輩も……「朝倉 陸くん?」)…あ、はいッ!」

 

「大丈夫? ボーとしているようだったけど」

 

「す、すいません。あまりに美味しい紅茶だったんで」

 

「……そう。ならいいけど」

 

 とりあえず誤魔化せたことに内心ホッとする陸。

 

「さて、それじゃあ朝倉 陸……どうせだからリクと呼ばせてもらうわよ。単刀直入に言わせてもらうと、私たちは

 

 ───悪魔なの」

 

 

 

 

 

 

 それから十数分間の間。陸はリアスから悪魔に関する説明を受けていた。もっとも、黒歌からある程度は聞いているため、初めて聞くふりをしていた。

 

「───とまあ、だいたい分かったかしら?」

 

「えっと、まあ……」

 

「なら良かったわ。それじゃあ、本題に入らせてもらうわね」

 

(あの長い説明、前置きだったのッ!?)

 

 驚く陸を他所に、リアスは彼の前に一枚の写真を見せる。それには一体の異形が写されていた。

 

 

「(あれ? こいつ、どっかで見たことあるような……)あの、これは……?」

 

「そいつはバイザー。主を殺し、力に溺れたはぐれ悪魔。

 ───昨晩、あなたが殺した存在よ」

 

 この時、陸は自分の耳を疑った。

 

 彼女は何と言った? 

 ───あなたが殺した。

 あなたとは誰か?

 ───リアスと話していたのは陸だ。

 誰を殺したのか?

 ───リアスが言っていたのは写真の悪魔だ。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいッ! 僕が殺したって、何の冗談ですか?」

 

「いいえ。これは事実よ。

 あなた、昨晩のことを覚えてないの?」

 

「昨晩ですか? えっと、放課後に夕食の材料を買って。それで───あれ?」

 

 陸は困惑した。何故か、昨晩の記憶がすっぽりと抜け落ちているのだ。夕食の買い物をしていたのは覚えている。しかし、そのあとが思い出せない。

 必死に思い出そうとする陸。しかし、結局思い出すことは出来なかった。

 

「……どうやら、記憶が無いみたいね」

 

「す、すいません」

 

「まあ、思い出せないものは仕方ないわ。ただ、これだけは聴かせてちょうだい。

 

 ───あなたは何なの?」

 

 リアスからの質問。その言葉の意味を、陸は理解することは出来なかった。しかし、彼ははっきりと答える。

 

「………僕は陸。朝倉 陸。何処にでもいる人間です」

 

 リアスの瞳を真っ直ぐ見つめ、堂々と言う陸。

 ほんの数秒……しかし、何時間にも感じさせるその静寂に、その場にいた数名が息を飲んだ。

 そして、

 

「……分かったわ。変な質問をしてごめんなさいね」

 

「い、いえッ! 別に気にしてませんから」

 

「そう、なら良かったわ。

 

 

 ───ところで、話が変わるのだけれど、貴方、悪魔になってみない?」

 

「───……はい?」

 

 思わず聞き返してしまう陸。リアスの後ろを見ると、一誠が陸と同じようにポカンと口を開け、他の三人は『始まった』とでも言いたげな顔をしていた。

 

「確かに怖いわよね。でも、悪魔になるって悪いことばかりじゃないの。永遠に近い寿命も得られるし、今の若さも保つことが出来るわ。それに───」

 

 突然始まったPRに唖然とする陸。このときだけは、あの学園内人気トップのリアスがただの美人セールスマン、もしくはテレビショップ番組で商品を紹介するタレントに見えた。

 それから約5分の間、リアスのPRが続いた。最後に、リアスはどうかしら? と陸に問いかける。それに陸は、

 

「せっかくなんですけど……保留、にさせてもらっていいですか? もうちょっと考えたくて」

 

「なら、この部活に入ってみたら? あなた、どの部活にも入ってないらしいじゃない。悪魔になるかどうかはこの部活でゆっくりと考えてもいいと思うの。もちろん、悪魔にならなくたってここの部員として除け者にすることはないから安心しなさい」

 

「えっと…じゃあ、それでお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる陸。そんな彼に彼女は笑顔で一言。

 

「ようこそ、リク。私たち、オカルト研究部はあなたを歓迎するわ」

 

 

 

 

 

 

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 陸がオカルト研究部に入ったその日の夜。

 陸は一誠が運転する自転車の荷台に座り、夜の町の中を走っていた。

 その理由は、悪魔の仕事を知るため。

 リアス曰く、悪魔の仕事はまず魔方陣を刻んだチラシを配り、それを使っての召喚に応え、自身を召喚した人と契約を結び、その者の願いを叶えること。

 ちょうど一誠に依頼が来ていたため、その仕事を見学することになったのだ。

 

「まさか、初の2人乗りがお前となんてな……巨乳美女が良かったぜ……」

 

「イッセー、聞こえてるよ。そんなんだからモテないんじゃない?」

 

「うるせぇ……」

 

「……ねぇ。イッセーは何で悪魔になったの?」

 

「……殺されたんだよ。夕麻ちゃんに。

 なんか、俺の体の中には神器(セイクリッド・ギア)っていうスゲェ物があって、それを睨まれて殺された」

 

「……なんか、ごめん」

 

「いいんだよ。悪魔になって、ハーレムを作れるかもしれない可能性が出てきたんだ。部長や朱乃さんとも御近づきに慣れたし、今は万々歳ってところだぜ?」

 

「なんだよ、それ。結局は変態思考かよ」

 

「変態とは何だッ! ハーレムは男の夢なんだぞッ!」

 

「それはイッセーの夢でしょ? 少なくとも、僕はそんなこと思ったことない」

 

「なんだとぉ……なら、お前にハーレムの良さを教えてやるッ!」

 

「結構です」「いーや、教えるねッ!」「結構ですッ!」

 

 途中の暗い雰囲気は何処へやら。

 彼らはその他愛もない会話を楽しみながら夜道を走っていった。

 

 

 

 

 

 

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 深夜、陸たちが自転車を止めたのは何処にでもある、ごく普通の一軒家だった。

 

「ここが今日のお客様がいる家だ」

 

「で? どうやって中に入るの?」

 

「玄関から」

 

「……───は?」

 

「玄関から」

 

「……ねぇ。それって悪魔要素というか、ファンタジー要素ゼロだよね?」

 

「言うな……自分でも分かってるから」

 

「いや、でも…ええぇ……」

 

「ああもうッ! さっさと行くぞッ!」

 

 陸のかわいそうな物を見る目に少し涙目になりながら、一誠は門にあるインターホンを押そうとする。しかし、それを陸が止めた。

 

「どうしたんだよ、リク」

 

「いや…ドアが、開いているんだけど」

 

「はぁ? こんな夜中にそんなわけ……本当だ」

 

 こんな夜遅くに開いたままのドア。陸たちは不審に思いながらも家の中に入っていく。

 薄暗い廊下を慎重に歩いていく陸と一誠。

 少しして、彼らは僅かに開いた扉を見つけた。その中からはほんの僅かに光が漏れている。扉を開けると、そこはリビングだった。その中では、何故か蝋燭が灯されていた。

 

「何だ、この部屋。なんで蝋燭なんかつけてるんだ?」

 

「……ねぇ、イッセー。この部屋、なんか匂わない?」

 

「そう言われてみれば…何だこの匂い? 錆びた鉄みたいな……」

 

 その時だった。部屋の中に入っていく一誠の右足がネチャリ…と水っぽい何かを踏みつけた。不快に思った一誠はそれが何なのか確認するために、右足の裏に触れてみた。そして、彼の手に付いたのは

 

 

 ────赤黒い液体だった。

 

 

「な───ッ!? これって───」

 

「イ、イッセー…あれ……ッ!?」

 

 陸が部屋の奥を指差す。

 その指が差すの先にあったものは、腹を八つ裂きにされ、壁に太い釘で縫い付けられた人の死体だった。

 

 その酷さに胃の中のものが込み上げてくるが、一誠はなんとか耐える。

 目の前の光景に『なんなんだよ、これ……ッ!?』と陸が呟いた時だった。

 

「『悪いことをする人にはお仕置きよー』ってね。聖なる御言葉を借りてみたのさ」

 

 突然、陸たちの後方から若い男の声がした。

 振り替えると、そこには神父らしい格好をした白髪の若い男が立っていた。男は陸たちを見るなり、ニンマリと笑みを浮かべる。

 

「これはこれは、悪魔くんではあーりませんかー♪ その隣の子はそうじゃないみたいだけど。もしかして、そこの悪魔くんの友達かなー♪」

 

 実に嬉しそうな男。彼は紳士ぶった態度で陸たちに名乗る。

 

「俺の名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属している少年神父でござんす♪」

 

「し、神父だとッ!? てめえ…これはお前がやったのかッ!?」

 

「Yes. Yes. Yes ! 悪魔に頼るなんて人として終わってしまっていること。ENDですよッ! E・N・Dッ! だから殺してあげたんですぅッ♪」

 

 狂気的な笑みを浮かべる神父フリード。彼は懐に手を伸ばし、そこから一丁の拳銃と刀身のない剣の柄を取り出した。

 ブィンッ、と空気を振動させる音。すると、フリードが持つ剣の柄から光の刀身が作り出されたではないか。

 

「さあさあさあッ! 今から君たちの心臓にこの刃を突き立てて、このメッチャイカす銃で君たちのアタマに必殺必中フォーリンラブしちゃいますッ!」

 

 ダッ!、と二人に向けて駆け出し、光剣を横凪ぎに払うフリード。陸たちは咄嗟に各々別方向に避けた。光剣は二人にかすることなく宙を切る。

 しかし、一誠が突然倒れ、左ふくらはぎを押さえて呻きだした。それは、まるで苦痛を堪えているようだった。

 

「イッセーッ!?(そんなッ!? あの剣は避けきったはずッ! ……まさかッ!?)」

 

 陸はフリードの持つ拳銃に視線を向ける。その拳銃は銃口から煙をあげていた。

 

「エクソシスト特製の祓魔弾ッ! 今度は君が味わいナッ☆」

 

 フリードが陸に向かって引き金を引く。

 音もなく発射された光の弾丸は真っ直ぐと陸の方に飛んでいき、陸の頭を貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

    ───はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

「───……はい?」

 

 思わず呆けた声を出してしまうフリード。

 無理もないだろう。祓魔弾は通常の弾丸と同じスピードで飛んでいた。常人では反応出来ないほどのスピードだ。

 だがしかし、陸は違った。陸は飛んでくる祓魔弾の動きをしっかりと捉え、そして避けきったのだ。

 

 目の前の出来事に自分の目を疑うフリード。

 その一瞬の内に、陸はフリードの懐に入り込み、がら空きの腹に拳を叩き込む。そして、その攻撃で怯んだフリードの右腕を掴み、貼り付けられた死体の向かいにある壁に投げつけた。

 投げ飛ばされたフリードは壁を突き破り、そのまま隣の部屋へ消えていった。

 

 その出来事を見ていた一誠はあり得ないものを見る目を陸に向ける。しかし、この場で一番驚いていたのは陸本人だった。

 

(なんだったんだ、今の……ッ!?)

 

 フリードが祓魔弾を放ったとき、不思議なことに、陸にはその速度は早くても避けれない程の物ではないように見えたのだ。

 そして、先程の動き。陸は今まで喧嘩や戦闘をしたことがない。だがしかし、反射的に体が動いたのだ。まるで普段から戦いなれているかのように、自然と体が動いたのだ。

 さらには力。人間は追い詰められたときにとんでもない力を発揮するというが、フリードを投げ飛ばした陸の力はそんなことでは説明がつかない。

 

(……とにかく、考えるのは後回しだ。今はイッセーを連れて逃げなきゃッ!)

 

 陸は考えるのを止め、一誠の元に向かう。

 

「リク…今の、は……ッ」

 

「俺も分からない。けど、今は逃げよう」

 

 そう言って、陸が一誠を担ぎ上げようとしたときだった。

 

「フリード神父さま? 物音がしましたが、何か───って、イッセーさんッ!? なんでこんなところに───ッ! き、きゃあああああッ!?」

 

 突如部屋に響き渡る悲鳴。見ると、扉の所にシスターの姿をした金髪の少女が立っていた。少女の視線の先にはは壁に縫い付けられた死体。

 その少女を見た瞬間、一誠の顔が驚愕に染まった。

 

「アー、シア…なんで……」

 

 金髪の少女、アーシア・アルジェントの登場に一誠は困惑する。そんな一誠に、陸は『知り合い?』と問いかけようとした時だった。

 

「あ、あなたが……あなたが殺したんですか? 何故こんな事をッ!」

 

「え……僕……? ちょっと待って。なんか誤解しているよ。あの人を殺したのは僕じゃない。殺したのは「俺ちゃんですよッ!」───ッ!」

 

 フリードの声に振り返る陸。しかし、後ろからの奇襲に反応が遅れてしまい、胸を切られてしまった。幸いにも傷は浅いが、それでも痛いものは痛い。

 

「ざまあぁッ! 油断しすぎなんだよ、バーカッ!」

 

「フ、フリード神父さまッ! 一体何をッ!? それに、今の言葉の意味は……」

 

「おやおや? 誰かと思えば、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。意味も何も、あの壁の奴をヤったのは俺ちゃんでーす☆ そういや、アーシアちゃんはこの類いは初めてでしたかねぇ? ならならぁ、よーく見ておきなYO♪ あれが悪魔に魂を売った人間の末路ってやつっすよ」

 

「そ、そんな……じゃあ、この人たちは……」

 

 アーシアの視線が陸たちを捉える。そんな彼女に、フリードは呆れた。

 

「人? 違う違う。今切った奴はともかく、そこの奴は悪魔だよ~ん」

 

「───ッ。イッセーさんが……悪魔……?」

 

「なになに? 君ら、知り合いなわけ? だとしたら残念ッ! 悪魔と人間がッ! ましてや、教会関係者が悪魔と相成れることはないッ! それに、俺もアーシアたんも堕天使さまからの御加護がないと生きていけないハンパ者でっせ~?」

 

 『堕天使』。その言葉をフリードが口にした瞬間、一誠の表情が険しくなる。無理もない。何せ、彼が死んだのも堕天使のせいなのだから。

 

「さーてと……それじゃあ、パッパと終わらせますかぁ? 覚悟はOK?」

 

 フリードが笑みを浮かべながら、その銃口を陸たちに向ける。さすがの陸たちも死を覚悟した。

 

 ───そのときである。

 

 アーシアが陸たちとフリードの間に立ち、陸たちを庇うように両手を広げたではないか。それを見たフリードの顔が険しくなる。

 

「フリード神父さまッ! お願いです……どうか、この方たちを見逃してあげてくださいッ! どうか御許しを……ッ!」

 

「君ぃ……自分が何をしているのか分かってるのかな?」

 

「分かっていますッ! でも、例え悪魔だとしてもイッセーさんはいい人ですッ! それにこんなこと、主が御許しになる筈がありま───」

 

 それから先をアーシアが続けることはなかった。

 バキッ!、と硬い何かで殴打する音。それはフリードがアーシアの顔を拳銃で殴った音だった。

 床に倒れるアーシア。彼女の頬には殴られて出来た痣がくっきりと残っている。

 フリードはその顔に怒りを浮かべながらアーシアの顔を掴んだ。

 

「……堕天使の姉御から君を殺すなって言われてるけどさぁ。さすがの俺ちゃんもアングリーフルスロットルよ。君みたいな奴はねぇ、虫酸が走んのよッ! だからさぁー、R18指定のことしていいよね? いいよねッ! まあ、君の意見は聞かないけど~」

 

 光剣をアーシアに向け、彼女の纏う衣類を切り裂こうとするフリード。だがしかし、フリードはその手を止めた。何故なら、

 

「……おやおやぁ? どうやらすぐに死にたい見たいですねぇ~ッ♪」

 

 そういう彼の後ろでは、足の痛みをなんとか堪えて立ち上がり、自身の神器の籠手を構える一誠。そして、胸の傷を押さえながらも鋭い目付きで睨み付ける陸の姿があった。

 

(自分の神器の使い方も分からねぇし、俺は最弱の兵士(ポーン)。勝てる確率なんかねぇ。でも───)

 

(さっきの動きがどうして出来たかも分からないし、リアス先輩が言っていたはぐれ悪魔をどうやって倒したかも分からない。それでも───)

 

「「庇ってくれた女の子を放って、逃げられるわけないだろッ!!」」

 

「オーケーオーケーッ! それじゃあ、お前ら細切れにして、世界記録にでも挑戦しますかあッ!」

 

 フリードが陸たちに切りかかる。そのスピードは始めよりも早い。万全な状態でなら避けれたかもしれないが、今の陸たちには出来ない。改めて、陸たちは死を覚悟する。

 

 ───その時だった。突然、彼らの間に魔方陣が浮かび上がったのは。そこから出てきたのは、騎士(ナイト)である木場 祐斗だった。

 

「待たせたね、二人ともッ!」

 

「「木場ッ!」先輩ッ!」

 

 木場が持つ剣とフリードが持つ光剣が火花を散らす。フリードは鍔迫り合いはせず、すぐさま後ろに跳んだ。

 魔方陣から出てきたのは木場だけではなかった。

 

「あらあら。これは大変ですわね」

 ───女王(クイーン) 姫島 朱乃。

 

「……エクソシスト」

 ───戦車(ルーク) 塔城 小猫。

 

 そして、

 

「イッセー、リク、大丈夫?」

 ───(キング) リアス・グレモリー。

 

 今ここにオカルト研究部全員が揃う。

 彼女たちの登場にフリードは興奮する。

 

「マジですかッ! 団体さまの御登場ですかッ! いいねいいねッ! 最高だねッ! 皆仲良く、俺にチョンパさせてくれるんだねえッ!」

 

 自分の体を抱きしめ、うっとりとした表情を浮かべるフリード。そんな彼を余所に、リアスは傷付いた陸たちを見ていた。

 

「……ねぇ、あなた。私の可愛い下僕たちを傷つけたのはあなたなのかしら?」

 

「EXACTLYッ! そうですがなにか───ってうおぉッ!?」

 

 フリードの言葉を全部聞く前に、リアスが魔力の弾を飛ばして攻撃する。

 フリードはそれを咄嗟に避ける。

 避けられた魔力の弾はそのまま机を消し飛ばし、床に穴を開けた。

 

「私は私の下僕や仲間を傷つける輩を決して許さないことにしているの。後は言わなくても分かるわよね?」

 

 リアスが魔力を発しながら、鋭い目付きで睨み付ける。それだけで彼女がどれ程怒っているのかが分かる。しかし、

 

「───ッ! 部長、堕天使らしき反応が複数近づいていますわッ! このままでは、こちらが不利になりますッ!」

 

 朱乃の言葉に、リアスは驚愕の表情を浮かべ、すぐさまフリードを睨み付ける。

 彼を始末することは簡単だ。しかし、彼は堕天使たちが来るまで抵抗するだろう。

 リアスはフリード始末を諦め、朱乃に転移の準備をするよう指示した。

 

「部長ッ! あの子もッ!」

 

 一誠はアーシアも連れて逃げようとするが、

 

「……それは出来ないわ。魔方陣を移動できるのは悪魔だけなの」

 

「そんな……ッ!? て、待ってください……悪魔だけってことは、リクは……ッ!?」

 

「…………残念だけど」

 

 一誠が陸を見る。彼は負傷しているため、長距離を移動することは難しい。

 身近な人が死んでしまう。

 そんな未来に絶望したときだった。

 

「じっとしていてください」

 

 突然、アーシアが陸に近づき、彼の傷口に手をかざした。その行為が何か分かったフリードは二人に斬りかかった。しかし、

 

「……させません」

 

 自身の小柄な体格を利用し、フリードの懐に入り込んだ小猫が彼の腹に強烈な右ストレートをぶちかました。

 『戦車(ルーク)』の特性で強化された拳はフリードの体をいとも容易くぶっ飛ばし、壁を突き破って部屋の外まで飛んでいった。

 

 その間に、アーシアは自分の中にある力を使った。

 アーシアの両手に優しいライトグリーンの光が宿った。すると、その光が陸の胸の傷を完全に治したではないか。

 次にアーシアは一誠に近づき、陸と同じように傷を癒す。

 一誠の傷を治したアーシアは彼に笑顔を向ける。

 

「私が出来るのはこれまでです。今までありがとうございました」

 

「そんな、アーシアッ!?」

 

「イッセー、行くわよッ! リク、絶対に逃げ切るのよッ!」

 

「───ッ! リクッ! アーシア───」

 

 一誠が陸とアーシアの名を呼ぶ。その間に、一誠たちは光に包まれ、最後には光と共に姿を消した。

 

 残された陸はアーシアを見る。彼女の瞳からは一筋の涙が流れていた。

 

「……さあ。あなたも早く逃げてください」

 

「でも……それじゃあ君が……ッ」

 

「私は大丈夫です。

 ……もし逃げ切れたら、イッセーさんに伝えてくれますか? 『また何処かで会いましょう』と」

 

「ッ………分かった」

 

 陸は唇を噛み締め、その場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

(クソッ……クソクソクソ……ッ!)

 

 自分の無力を呪いながら夜道を走る陸。

 ここまで自分の力の無さを呪ったことは無いだろう。

 

(……あの時誓ったのに……誰かの笑顔を守れる人になるって誓ったのに……ッ!)

 

 唇を噛み締めながら走り続ける陸。だがしかし、その足は止められてしまった。

 ドガンッ!、と彼の背後で爆発が起き、その爆風で前方に転んでしまう陸。

 打ち付けた肘や膝からの痛みを堪えながら、自分の後ろを振り返る。そこには黒い翼を広げて空中で浮かぶ二人の人影があった。

 

「あちゃー。外したみたいっすね」

 

「ちゃんと狙いなさいよ、ミッテルト」

 

「分かってるっすよ、カラワーナ」

 

 体のラインがハッキリと分かるスーツを来た堕天使『カラワーナ』。

 ゴズロリ姿のツインテールの堕天使『ミッテルト』。

 

 彼女らは空中で陸を見下ろしながら問いかける。

 

「おい人間。お前、ドーナシークを何処にやった?」

 

「キリキリ吐かないと、酷い目にあうっすよ」

 

 明らかに陸を見下しての物言い。

 しかし、陸は答えない。すぐさま起き上がり、駆け出した。

 それを見た堕天使たちはすぐさま追いかける。

 いつも以上に長く感じる夜道。時折聞こえてくる罵声と嘲笑。そして、襲いかかる光の矢。

 それが五分も続くと、陸も体力の限界が訪れる。

 このままじゃ追い付かれてしまう。

 そう思った時だった。

 十字路に差し掛かった時、突然陸の腕を誰かが引っ張り、強制的に右の道路に入らせた。まさか遂に捕まったか?、と思ったが、陸の腕を掴んでいたのは、彼の相棒である黒歌だった。

 黒歌は驚く陸を抱きしめ、口に人差し指を当てて『静かにするように』と合図を送る。すぐにミッテルト、カラワーナの姿が見えたが、

 

「あれッ!? あの人間、消えたっすよッ!?」

 

「そんなバカな……近くにいるはずだ。よく探せッ!」

 

 黒歌の力によって、陸たちが見えていないミッテルト、カラワーナは何処か別の場所に飛んでいった。

 

「……よし。もう大丈夫みたいだニャ」

 

「……ありがとう、黒歌」

 

「まったく……心配したわよ。昨日は悪魔に担がれて帰ってくるわ、今日は堕天使に追われてるわ。一体何があったの───って、リクッ!? 急に泣いてどうしたのッ!?」

 

「え? 僕が、泣いて……」

 

 陸は自分の目元に触れてみる。すると、指先が滴のようなものに触れたのが分かった。

 

「大丈夫ッ!? 何処か痛いところでもあるのッ!?」

 

「大、丈夫……大丈夫、だから……」

 

 陸は理解した。今、自分が流しているのは悔し涙なんだと。無力な自分に対する悔し涙なんだと。

 

「ごめん……急に泣いたりして……ごめん……ッ」

 

「………帰ろ。私たちの家に。話はそこで聞いてあげるニャ」

 

「うん………」

 

 涙を流す陸の肩をそっと抱く黒歌。

 二人は並んで、この暗い夜道を歩いていった。

 

 

 




 初めて10000文字を越えた。
 かーなーりしんどかったです。
 まあ、これで一巻の中間は終わり。
 次はいよいよあれですよッ!



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