それではどうぞ。
ジードとスカルゴモラの戦闘があった日の翌日。
駒王学園は一週間ほど休校することになった。もっとも、休校となったのは駒王学園だけではない。昨日、あんなことがあったのだから無理もないだろう。
しかし、そんな日でもリアスはオカ研メンバーを召集した。
もちろん、リクもその召集に応じた。
「こんにちわ~」
陸がオカルト研究部の扉を開く。挨拶をすると部室に居たものが返してくる。だがしかし、陸はその時に何時もとは違う声を聞いた。
陸は部屋にいたメンバーを確認してみる。
まず目に入ったのは羊羮を食べているクラスメイトの小猫。
次に一人用のソファーで本を読んでいる木場。
その隣の二人用のソファーに座っている一誠。そして、
「アーシア、さん……ッ!?」
「お久しぶりです、リクさん」
駒王学園の制服に身を包み、そう答えながら陸に笑顔を向けるアーシア。悪魔の天敵であるシスターのアーシアがなんで此処に、と陸は混乱してしまう。
「えっ、ちょっ、なんで此処にッ!?」
「実は…………」
アーシアが陸に背を向ける。そこにはコウモリのような羽根が生えていた。
「あ、なるほど……部長の眷属になったんだ」
「はい。これからよろしくお願いします」
ペコリと御辞儀をするアーシア。その姿に何故か和まされていた陸に、一誠が詰め寄ってきた。
「それよりもリク。昨日、店長から『リクがアパートにいねぇ』って連絡来たぞ。何処に行ってたんだよ?」
「い、いや~……ちょっとTSU○AYAに行っててさ」
「TSUT○YAって……なら、せめて連絡ぐらいしろよな。店長心配してたぞ?」
「ごめんごめん……以後気を付けます」
「本当だろうな~?」
手を合わせて謝る陸と、その彼をジト目で見つめる一誠。
そんな二人を見て、アーシアはクスクスと笑いだした。
「イッセーさんたちって、本当に仲がいいんですね」
「まぁな。今じゃ、互いに秘密にしていることなんてほとんどないし」
「あー……イッセー。実はちょっと話が────」
『あるんだけど』、と陸が続けようとしたときだった。
部室の出入り口の扉が開き、そこから朱乃を連れたリアスが入ってくる。陸たちは彼女に挨拶するが、そのときのリアスの顔は少し険しく見えた。
「おはよう、皆。昨日はお疲れ様。今日は新しく
そう言って、リアスは机の上に数枚の写真を置いた。そこに映っていたのは、昨日現れた───陸からすれば、自分が変身した姿。つまりはウルトラマンジードだった。
「これ、昨日俺たちの前に現れたあの巨人っすよね?」
「そうよ。次はこれを見て」
そう言ってリアスが取り出したのは炎に包まれた崩壊した町。その写真に、陸は何処かで見た覚えがあった。
「あれ? これって……」
「……クライシス・インパクト時の写真」
「そうよ。小猫の言う通り、これはクライシス・インパクトの時の写真よ。
当時の記録はテレビに出ていたこれ以外残ってないと思われてるけど、それは記録のほとんどを私たち三大勢力が隠蔽しているからよ」
「隠蔽って……なんでそんなことを?」
「それほどまで、この存在が驚異だからよ」
リアスは机の上に魔方陣を作り出し、3Dホログラムのような物を投影した。
それは、ジードに似た黒い体を持った人形の何か。その体には赤黒い模様が刻まれており、瞳のオレンジ色のクリスタルは睨み付けるようにつり上がっている。
一誠たちよりも悪魔を思わせるその姿に陸は覚えがあった。
(こいつって…あの夢の中に出てきた……)
「その写真に写っている物がこいつよ」
「こ、怖いです……」
「確か、ウルトラマン…ベリアル……でしたっけ?」
「ええ。テレビに出ていたあの学者の言う通り、クライシス・インパクトはこいつ、ウルトラマンベリアルによって引き起こされたものなの。その驚異は冥界や天界にも及んだわ。もちろん迎え撃とうとしたけど、手も足も出なかったそうよ」
「……あの、そのベリアルという存在がどれ程危険かは分かりました。ですが、なんで今その事を?」
小猫の質問に、リアスではなく朱乃が答えた。
「昨晩、あの巨人が立っていた場所に行って、その場に残っていた僅かな魔力を採取して鑑識に回したんです。そしたら────」
「───一致したのよ。クライシス・インパクト時に採取したウルトラマンベリアルの魔力とね」
「───ッ!?」
その場に居た者の誰もが驚いた。
しかし、その誰よりも驚いていたのは陸だった。
そして、陸はレムが言っていたことを思い出す。
『なぜなら貴方は、
────ク……───ク…───リク…
「───リクッ! おい、リクってばッ!」
「───え、あ……」
「大丈夫か? 顔色がすげえ悪いけど」
気がつけば、周りの者が心配そうに陸に視線を向けていた。そんな彼らに『大丈夫です……』と小さく答える陸。
「すいません、部長……ちょっと気分が悪いんで、今日は失礼します……」
そう言って、陸は飛び出すように部屋を去っていった。リアスたちの呼ぶ声が聞こえていたが、陸は脇目も振らずに走り続ける。
そして、人気のない新校舎の裏に回り、ナックルに触れてレムに通信を入れた。
『どうかしましたか、リク?』
「……レム、教えてくれ。僕の親は誰なんだ……ッ!」
『……答える前に、先程のオカルト研究部部室内の話はナックルを通じて聞いていました。なので、リクがどんな答えを求めているかも分かります。
ですが……ごめんなさい。DNA鑑定の結果、九八パーセントの確率で一致しました』
「───嘘だ……嘘だ…嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だウソだウソだッ!」
『嘘ではありません』
レムは先の質問に答えた。陸がその時に最も聞きたくなかった答えで。
『貴方の父親の名は────ベリアル。ウルトラマンベリアルです』
次章『戦闘校舎のソリッドバーニング』
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