機動戦士ガンダムSEED cause    作:kia

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第34話  少女の翼

 

 

 

 

 

 アスランがそれに気がついたのは本当に偶然であった。

 

 ブランデルの話を聞き、自身も協力する事を決めた、その時である。

 

 目の端にどこか懐かしい、緑色の鳥が見えたのは―――

 

 「どうかしたか、アスラ―――なんだ?」

 

 入った連絡は意外なものだったのか、エドガーが珍しく驚いた顔をしていた。

 

 「……アスラン、今プラントにレティシア・ルティエンス達が来ているらしい」

 

 「え、どういう事ですか?」

 

 「実は気になる人物に監視をつけていたんだが、そこから報告があった。どうやら彼らはクライン派と接触したらしい」

 

 エドガーが命じていたギルバート・デュランダルの監視、そこから情報が来たらしい。

 

 アスランもエドガーからレティシア達に何が起こったのかすでに聞き及んでいる。

 

 そんな彼女達の立場からすれば、今のプラントに来るなど自殺行為だ。

 

 「何故プラントに?」

 

 「……おそらく目的は情報収集だろう。ザラ議長殿の言う通りなら彼女達はオーブにいる筈だ。今は戦争中だからな、情報はいくらあってもいい」

 

 ならば先ほど見えたのは―――そう思い至った瞬間、叫んでいた。

 

 「すいません、車を止めてください!」

 

 「どうした?」

 

 質問に答えず車が止まると同時に外に飛び出す。

 

 先程見えた物が想像通りだったのなら、間違いなく彼らが近くにいると言う事になる。

 

 走り出し、溢れる人の中、目的の人物を探す。

 

 「……どこだ」

 

 もしかすると奴も一緒にいるかもしれない。

 

 強く拳を握し締め、内側から湧いてきたどす黒い感情を押し殺した。

 

 結局、港近くまで辿り着き、周囲を見渡す。

 

 「どこにいる?」

 

 そうして見つけた。

 

 後ろ姿で髪を束ねているが間違いない。

 

 あの後ろ姿はレティシア・ルティエンスだ。

 

 もう3人ほど一緒にいてその内の一人は懐かしい緑色の鳥を肩に乗せていた。

 

 だがアスランが予想していた人物ではなく、髪の長い少女のようだ。

 

 それは今は良いと叫びたい衝動を堪え、レティシアに駆け寄り手を掴んだ。

 

 

 

 

 「……アスラン」

 

 手を掴まれたレティシアは驚き、固まってしまう。

 

 まさか彼に見つかるなんて思っていなかった。

 

 「やっぱり、貴方でした……生きていたのですね」

 

 どこか安心したように言う目の前に少年にレティシアは言葉を詰まらせる。

 

 心配させていたのは申し訳なく思うが今は立場が違うのだから。

 

 意を決して掴まれた手を払うと距離を取った。

 

 「レティ―――」

 

 離れたレティシアに詰め寄ろうと前に出ようとするアスランだがその前に立ちふさがった人物がいた。

 

 その姿を見た瞬間、レティシアとの再会の歓喜は消え失せ、再びどす黒い感情が胸中を支配する。

 

 「……アスト・サガミ」

 

 「……アスラン・ザラ」

 

 宿敵との3度目の邂逅。

 

 ヘリオポリス、オーブ、そしてプラント。

 

 ここでもまたアスランの、アストの目の前には―――こいつが立ちふさがった。

 

 ここまで来るともはや運命とすら言いたくなる。

 

 「……生きていたのか、意外にしぶといな」

 

 生きている事は知ってはいたがあえて皮肉を込めて言ってやる。

 

 そんな挑発的な言葉にアスランは視線を鋭くし、その瞳には殺意が宿っていた。

 

 「生憎だったな。貴様には色々と借りを返したいところだが、今は邪魔だ。そこをどけ!」

 

 「断る。何をする気か知らないが、彼女に手は出させない!」

 

 睨み合うアストとアスラン。

 

 それを無視しながら背後にいるレティシアに話しかける。

 

 「レティシア、さん。あなた達の事は聞きました。プラントから離れた理由も分かります。でも俺―――いえプラントには貴方が必要なんです。だから、戻ってきてください」

 

 「……アスラン」

 

 「あなたには絶対に手は出させません。俺が―――」

 

 「悪いが、彼女は俺達の仲間だ」

 

 再び割り込んで来た憎むべき男に感情が高ぶっていく。

 

 「貴様はどこまでも俺の邪魔を!!」

 

 アストの割り込みにアスランは怒りを隠すことなく睨みつけた。

 

 「いつも、いつも貴様と言う奴は!」

 

 感情の赴くまま懐に手を入れると銃を取り出して突き付けると、その様子に気がついた周囲の人々が騒ぎ出す。

 

 このままでは不味い。

 

 アスランに見つかった上に騒ぎが大きなっては逃げきれなくなる。

 

 それを見て咄嗟に動いたのはイザークだった。

 

 「マユ、港の中に走れ!!」

 

 「え、はい!」

 

 イザークの声に反応したマユが走り出す。

 

 「アスラン!!」

 

 それに合わせアスランに向け銃を撃った。

 

 「くっ……イザークか!?」

 

 銃の発砲音にアスランは咄嗟に反応し、横に飛ぶ事で回避した。

 

 イザークからすれば元々当たるとは思っていなかったし、当てる気もなかった。

 

ただ注意が引ければそれで良かったのだ。

 

 かつての仲間というのもある。

 

撃ちたくはなかったが、ここで捕まる訳にはいかない。

 

 「2人共、走れ!」

 

 「行きますよ!」

 

 「ええ」

 

 アストはレティシアの手を引いた。

 

 すでにマユは先行している。

 

 それを追いかけるようにイザークも走り出した。

 

 「待て!! ……イザーク、くそ!!」

 

 アスランは思わず地面を殴りつけると、すぐさま立ち上がり走り出した四人を追う。

 

 「どうしてイザークまで?」

 

 疑問を振り払うように首を振ると追いかけなければと港に飛び込むが中は大混乱となっていた。

 

 先ほどの銃声で民間人から悲鳴が上がり、とにかく安全な場所に逃げようと人の波が押し寄せてくる。

 

 「これに紛れて逃げるぞ、場所は分かってるな?」

 

 「ああ。マユ、手を」

 

 「あ、はい!!」

 

 片方の手でマユの手を握る。

 

 「アスト君、私は大丈夫ですから」

 

 恥ずかしそうに言うレティシアにアストは構わず手を握る。

 

 「そんな事言ってる場合じゃないですよ。はぐれたら面倒です。イザーク、先行してくれ」

 

 「分かった」

 

 人ごみに紛れて港の奥へと進んでいく。

 

 アスランも必死に追いかけるが、この人ゴミである。

 

 発砲する訳にもいかず、彼女の姿をすぐに見失ってしまう。

 

 「レティシアさん!!!」

 

 アスランの叫びもただ虚しくロビーに響き渡った。

 

 

 

 どうにか逃げきれた四人はクライン派が用意していたシャトルにたどり着き、中に乗り込む。

 

 「ハァ、どうするんですか?」

 

 「急がないとアスランからの報告で外は囲まれるはずだ」

 

 運が無いというか、アスランに見つかるとは思ってもいなかったが、それでもアクシデントは想定済み。

 

 「仕方ありません。無事に出られたら良かったのですが、プランBで行きます」

 

 普通に脱出できないならば無理やり行くのみ。

 

 レティシアは端末を操作、暗号を発信し、そしてすぐシャトルがプラントから離脱する。

 

 だが飛び出した宇宙にはすでに何機かのジンが展開していた。

 

 《そこのシャトルに通告する。直ちに停止せよ。でなければ撃墜する》

 

 そう言って止まれる筈もなく、シャトルはジンの警告を無視し、加速する。

 

 《警告を無視したと判断し、撃墜する!》

 

 ジンがシャトルにミサイルを発射する。しかしそれ当たる事はなかった。

 

 何もない空間から突然の発砲があり、ミサイルを撃ち落としたのだ。

 

 《なんだ!?》

 

 ジンのパイロットが驚愕する。

 

 何もない空間から突然見たこともない戦艦が現れたのだ。

 

 スカンジナビア戦艦『ヘイムダル』

 

 ヘイムダルはアイラからの命令を受け、ミラージュ・コロイドを展開してプラント周辺に待機していたのである。

 

 潜入したレティシア達が普通にプラントから離脱できれば良い。

 

 しかし何らかの事態に巻き込まれ脱出が難しい場合彼らと合流する事になっていた。

 

 《戦艦だと!?》

 

 ジンのパイロットが動きを止めた瞬間、戦艦から発射されたミサイルで撃墜されてしまった。

 

 「あれって……」

 

 「スカンジナビアの戦艦か」

 

 「ええ、あれがスカンジナビア所属の特殊作戦艦『ヘイムダル』です。このまま合流します」

 

 ヘイムダルはシャトルを速度を合わせ、回収する為にハッチが開く。

 

 《みなさん大丈夫ですか?》

 

 柔和な笑顔の青年がモニターに映る。

 

 「ええ、こちらは問題ありません。えっと……」

 

 《失礼しました。スカンジナビア軍ヨハン・レフティ少佐です》

 

 「レティシア・ルティエンスです。よろしくお願いします。こちらの任務は完了しました。後は脱出するだけです」

 

 《了解です。一応格納庫にはみなさんの機体もありますからそちらで待機してください》

 

 シャトルから降りると格納庫にはアスト達の機体が運び込まれ、さらに奥には見たことのない機体が一機佇んでいた。

 

 「マユ、君は部屋で待機するんだ」

 

 「は、はい」

 

 シャトルを回収を確認したヨハンは即座に命令を出す。

 

 「離脱します。機関最大!」

 

 「「了解!」」

 

 ヘイムダルは一気に加速する。

 

 その速度は通常の戦艦とは比べ物にならない程だった。

 

 《速い!》

 

 《なんだよ、あの戦艦は!?》

 

 迎撃に出たジンを置き去りにしてその場から一気に離脱した。

 

 

 

 

 

 

 港でレティシア達を見失ったアスランはエドガーの命令通りの場所に向かっていた。

 

 以前はクルーゼ隊だったためヴェサリウスが母艦だったが、今はブランデル隊である為、当然母艦も変わる。

 

 アスランがたどり着いた場所に停泊していた艦は今までのザフト艦とはまるで違っていた。

 

 「……なんだ、この艦は」

 

 色はピンクでスマートな艦体である。

 

 正直かなり面食らったが、今はそんな事は気にしてられない。

 

 艦のハッチを潜り、ブリッジに入るとそこにいたのは、今プラントで一番の有名人であった。

 

 「よう、初めましてかな。アンドリュー・バルトフェルドだ。で、あっちが副官のダコスタと操舵を担当するアイシャだ」

 

 「よろしくね」

 

 「よろしくお願いします」

 

 「は、はい」

 

 どうやら彼がこの艦を任された艦長らしい。

 

 まさか奇跡の生還のヒーローがブランデル隊に所属しているとは思わなかった。

 

 イレイズに倒されたバルトフェルドはシリルによって回収され一命を取り留めていた。

 

 コックピットを潰されなかったのも幸運だったのだろう。

 

 それにしても彼がここにいるという事は―――

 

 「貴方もブランデル隊長の?」

 

 「まあ、そういう事かな。それより追撃に入るぞ、すぐ格納庫に。そこに君の機体がある」

 

 「了解です!」

 

 アスランはパイロットスーツに着替え、格納庫に入ると資料で見た自身の機体があった。

 

 ZGMF-FX002 『ジュラメント』

 

 すぐさまコックピットに座り機体を立ち上げる。

 

 この機体で今度こそ奴を倒し、そして彼女を連れ戻すのだ。

 

 「よし、メインゲート解放! 『エターナル』発進!!」

 

 ゲートが開くとピンクの戦艦が宇宙に飛び出す。

 

 「こいつは速い! すぐに追いつくぞ!!」

 

 バルトフェルドの言うとおり、エターナルもまた先ほどの戦艦ヘイムダルに勝るとも劣らない速度で追撃を始めた。

 

 

 

 

 プラント周辺に潜んでいた敵艦の存在は即座にザフト全軍に伝えられ、もちろんクルーゼ隊の母艦ヴェサリウスにもそれは通達された。

 

 「何、敵艦の追撃をエターナルが?」

 

 しかもそれにはブランデル隊に転属となったアスランも参加しているらしい。

 

 ブリッジに召集されたパイロット達も口々に追撃を希望した。

 

 「隊長、私達も行きましょう!」

 

 「ええ、アスランだけを行かせられませんよ」

 

 「隊長!」

 

 「落ち着けディアッカ、ニコル、エリアス。ヴェサリウスでもあの速度には追いつけん」

 

 ユリウスの言うとおりそれだけ敵艦も、エターナルもその速度は通常の艦とは比較にならない。

 

 いかに高速艦と呼ばれたヴェサリウスでも追いつく事は出来ないだろう。

 

 ここは任せる他ないと締めくくろうとした所に1人黙っていたシリルが口を開く。

 

 「では、私に行かせて下さい。私の機体ならば追いつけます」

 

 「シリル、君は病み上りだが、大丈夫かね?」

 

 「はい、問題ありません」

 

 顎に手を当て考えていたラウであったが、すぐに首肯した。

 

 「いいだろう、君に任せる」

 

 「ありがとうございます!!」

 

 ブリッジを出ていくシリルを見届けると、指示を飛ばす。

 

 「まあ追いつけないにしろ、黙っている訳にもいかんな。ヴェサリウス発進だ」

 

 「了解!」

 

 「クルーゼ隊長、私達も出撃を」

 

 「ここはシリルに任せておけばいい。私やユリウスの機体も調整中だしな」

 

 特にユリウスの機体は遅れており、未だプラントの工廠で調整が続いているのだ。

 

 パイロットスーツに着替えたシリルが格納庫に入ると、そこに立つ自身の機体を見上げる。

 

 ZGMF-FX001 『コンビクト』

 

 この機体は両肩後ろの左右に二つの巨大バーニアを備え、背中、そして脚部に高出力スラスターを装備している。

 

 その反面武装はビームライフル、ビームサーベルといった基本装備に肩に大口径ビームランチャーを装着したシンプルなものとなっている。

 

 シリルは機体に乗り込み、OSを立ち上げていく。

 

 自分にこの機体が乗りこなせるか?

 

 「弱気になってどうする。今度こそ俺はガンダムを倒す! 仲間の仇を討つ!」

 

 ヴェサリウスが発進したところでハッチが開く。

 

 「シリル・アルフォード、『コンビクト』行くぞ!!」

 

 両肩のバーニア、スラスターを吹かし、外に飛び出すとさらにペダルを踏み込み一気に加速した。

 

 そのGによってシリルの体がシートに押しつけられる。

 

 「ぐっ、なんて速度だ!」

 

 その速度は今までのモビルスーツとはまるで違う。

 

 シリルは歯を食いしばると操縦桿を強く握り、前を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 最初こそ順調であった逃亡劇であったが、ザフトも黙って見逃すほど甘くは無く、ヘイムダルはヤキン・ドゥーエの部隊に攻撃を受け足止めされていた。

 

 囲むように接近してくるジンやシグーが次々を砲撃を繰り出し、発射されたミサイルが迎撃され、その振動が艦を揺らす。

 

 「やはり簡単には行かせてくれないか。仕方ない、モビルスーツを発進させてくれ」

 

 ハッチが開きすでに機体で待機していたアスト達が発進する。

 

 「アスト・サガミ、イノセントガンダムいきます!!」

 

 「レティシア・ルティエンス、アイテルガンダム出ます!!」

 

 「イザーク・ジュール、スウェア出るぞ!」

 

 3機のガンダムがヘイムダルより出撃すると追撃してくるジンやシグーを次々と撃墜していく。

 

 イザークがビームガトリングでミサイルを迎撃し、レティシアがビームライフルとビーム砲でジンを撃ち落とす。

 

 そしてアストがビームサーベルでシグーを真っ二つにした。

 

 「流石ヤキンの部隊だな。錬度が高い」

 

 イザークの言う通り、そこらの部隊とは動きが違った。

 

 一対一では敵わないときちんと認識し、的確に距離を置いて砲撃を加えてくる。

 

 「『宇宙の守護者』と呼ばれたエドガー・ブランデルの率いる部隊ですからね。油断はできません」

 

 ヘイムダル目掛けて叩き込まれた砲撃をある程度捌き、撃墜した時だった。

 

 ブリッジから通信が入る。

 

 《何かが来る! 注意してくれ!》

 

 ヨハンの警告のすぐ後にこちらのレーダーでも反応があり、急速に近づいてくるものを確認した。

 

 「戦艦?」

 

 レティシアの言う通り近づいてきたのは戦艦だった。

 

 しかしあの速度で離脱し、今も足止めを受けているとはいえヘイムダルに追いついてくるなんて、敵の戦艦もかなりの速さを誇るらしい。

 

 「よし、追いつけたようだな。アスラン君、準備はいいかな」

 

 「はい!」

 

 「対艦、対モビルスーツ戦闘用意。モビルスーツ発進!」

 

 「「了解!」」

 

 エターナルのハッチが開くとアスランはPS装甲を起動させ、機体が真紅に染まる。

 

 「アスラン・ザラ、『ジュラメント』出る!」

 

 ジュラメントは発進すると一直線に近くにいたイノセントに突進する。

 

 「速い!」

 

 ジュラメントの放ったプラズマ収束ビーム砲を上昇して回避するとアストはビームライフルを放つ。

 

 しかし敵機は迫るビームを速度を上げて振り切り、ビームソードを展開してイノセントに斬りかかった。

 

 「こいつ!」

 

 「ZGMF-Xシリーズの一機か!?」

 

 ビームソードをシールドで止めたイノセントもまたビームサーベルを叩きつけ、ジュラメントもまたシールドを構え、受け止める事で完全にこう着状態になった。

 

 そこで互いに気が付く。

 

 この戦い方は知っている相手であると。

 

 何度も、何度も戦ったからこそ分かる。

 

 「アスラン・ザラか!」

 

 「くっ、アスト・サガミィィ!!」

 

 今までの憤り、すべてをぶつけるかのように叫び、右足のビームソードを展開するとイノセントに向け蹴り上げた。

 

 「チッ、イージスと同じかよ!」

 

 咄嗟の判断で操縦桿を引き、機体を下がらせるとジュラメントのビームソードを回避する。

 

 しかしアスランにとってこの程度は想定内、攻撃の手を緩める事無く、さらにビームライフルで狙い撃つ。

 

 「借りを返させてもらうぞ!!」

 

 「そう簡単に殺れると思うなよ!」

 

 放たれたビームをシールドで防ぐ負けじとアクイラ・ビームキャノンを放つ。

 

 「当たるか!」

 

 ジュラメントは後退してかわすと、再びビームライフルで応戦した。

 

 

 2機の戦いを確認したレティシアはジンにビームガンで頭部を損傷させ、シグーをビームライフルで撃墜するとそちらに機体を向かわせる。

 

 「アスト君!! イザーク君、ここを頼みます!」

 

 「了解だ!」

 

 イノセントと鍔迫合っているジュラメントにビーム砲を浴びせ、グラムを抜く。

 

 「レティシア!?」

 

 「えっ」

 

 叩きつけられたグラムをシールドで受け止め、聞こえた声から相対している機体にレティシアが乗っている事に気がついたアスランは叫ぶ。

 

 「レティシアさん!!」

 

 「アスラン、君がその機体に……」

 

 グラムを弾き返すとアイテルをビームライフルで狙撃する。

 

 しかしアスト相手の時とは違い、狙うのはあくまで武装やメインカメラであり、決してコックピットは狙わない。

 

 「レティシアさん、俺と来てください!」

 

 「何を言って……何故そこまで私に拘るのですか?……仮に貴方について行ったとして同盟軍の中には私が守りたい人達がたくさんいます。その人達を捨てろと?」

 

 「そ、それは……」

 

 「はっきり言いますが、私があなたと行く事はありません」

 

 「レティシアさん、俺は……」

 

 言葉が詰まる。

 

 ここでブランデルのしようとしている事を口外はできない。

 

 かといってこんな場所で自分の気持ちをはっきり言えるような人間でもなかった。

 

 「貴方は何がしたいのです!!」

 

 ジュラメントのビームをかわしながら、逆にビーム砲を撃ち返す。

 

 アスランは歯を食いしばり、アイテルの後ろに回り込むと背後からバックパックを狙いビームソードで斬りつける。

 

 だがレティシアは機体を半回転させるとジュラメントの斬撃を回避してみせた。

 

 「なっ」

 

 見事と言わざる得ない、鋭い反応に思わず驚愕してしまう。

 

 完全に捉えたと思った一太刀だったのだ。

 

 それをああも見事に回避されるとは―――

 

 呆然としている間にも蹴りを入れられ、体勢を崩した所にグラムを叩きつけられた。

 

 アスランは操縦桿を引き、ペダルを踏み込むと機体を左に流す。

 

 だがグラムの一撃を回避するには至らず、ビームライフルを斬り裂かれてしまった。

 

 「強い!」

 

 流石『戦女神』と呼ばれたパイロット、元々手加減出来る相手ではなかった。

 

 彼女を行かせる訳にはいかない。

 

 なら―――

 

 「……貴方を連れ戻します。力づくでも!!」

 

 アスランのSEEDが弾ける。

 

 動きの変わったジュラメントはプラズマ収束ビーム砲で牽制するとスラスターを全開にし、一気にアイテルに肉薄する。

 

 「うおおおおおお!!」

 

 「速い! それに動きも変わった!?」

 

 

 レティシアは先程までとは別人のような動きに戸惑ったが、すぐに認識を切り替える。

 

 叩きつけられたビームソードをシールドで逸らしながら、機関砲を撃ち込んで距離を取る。

 

 それでも止まらないジュラメントにグラムを構え迎え撃つ。

 

 「レティシアさん!」

 

 イノセントが割って入ろうとするが、今度は別の方向から放たれたビームが襲いかかってくる。

 

 「増援か!?」

 

 アストは下方に機体を加速させると、今までイノセントがいた場所を閃光が薙ぐ。

 

 「なんだ?」

 

 ビームが放たれた方向から、凄まじいスピードで見たこともないモビルスーツが突っ込んでくるのが見える。

 

 「また新型か!」

 

 かなりの速度が出ていたにも関わらず、正確な射撃でイノセントを狙ってくる敵パイロットの技量に舌を巻く。

 

 「避けられたか」

 

 あの距離からの射撃で倒せるほど甘い相手ではなかったらしい。

 

 だが―――

 

 コンビクトの最大出力で戦場まで辿り着いたシリルもアスランと同じく白い機体のパイロットに気がついた。

 

 「乗っているのは『消滅の魔神』、ならばここで決着をつける!!」

 

 腰からビームサーベルを引き抜くと、バーニアを全開にしてイノセントに迫った。

 

 アストはコンビクトの速度に驚くものの、退くことなくビームサーベル抜き、互いの光刃をシールドで受け止めると同時に弾け合う。

 

 「これってまさか、あのシグーのパイロットか」

 

 よりによってあいつとは。

 

 キラも仕留めきれたかは分からないと言っていたが、やっぱり生きていたらしい。

 

 今まで戦ってきた敵の中でも危険な相手の1人であるが、自分もあの頃に比べて成長はしている。

 

 「前みたいにはいかない!」

 

 スピードを生かした戦法で一撃離脱を図ってくる敵の攻撃をやり過ごしながら、ビームライフルとアクイラ・ビームキャノンを同時に放つ。

 

 「チィ、一筋縄ではいかないか」

 

 コンビクトに襲いかかる三つの閃光をシリルは機体を上昇させて回避するとビームライフルでイノセントの動きを牽制し、ビームランチャーで狙いをつけた。

 

 「落ちろ!!」

 

 再び放たれた凄まじいビームの光をアストは旋回して回避すると、背中のワイバーンを展開して斬り払った。

 

 「何!?」

 

 その攻撃に意表をつかれたシリルはシールドで防御の構えを取った。

 

 ただ正面から受け止めるだけでは盾ごと斬り裂かれてしまうため、ビームの進行方向にシールドごと機体も流し、光刃を受け流した。

 

 「流された!?」

 

 「今のは驚かされたぞ、流石『消滅の魔神』だ。しかしもう通用すると思うな!!」

 

 シリルは無防備とも思える背中を狙い連続でビームライフルを撃ち込んだ。

 

 しかしイノセントはビームを数発をかわし、残りのビームは機体を回転させワイバーンで弾き飛ばすという離れ業で防いでみせる。

 

 「あんな事まで、できるのか」

 

 敵の技量に思わず歯噛みすると再びビームサーベルを構え、イノセントに斬り込んでいった。

 

 

 

 

 モビルスーツからの攻撃、そして同時にヘイムダルはエターナルの攻撃にも晒された事で完全に動きを鈍らされてしまった。

 

 今なお撃ち込まれたミサイルを防衛についているスウェアが撃ち落とす。

 

 「しつこい!」

 

 迫ってきたシグーをビームサーベルで斬り飛ばし、後ろを抜いたジンにタスラム散弾砲で撃破する。しかしジンを撃墜したのも束の間、別方向から次の敵が攻撃を仕掛けてくる。

 

 「くそ、俺でだけでは捌ききれんぞ!」

 

 シグーのビームライフルを防御しビームガトリングで狙い撃ちにする。

 

 そして重斬刀を振り下ろそうとしたジンにイーゲルシュテルンを撃ち込んで怯ませた隙にサーベルを横薙ぎに一閃した。

 

 奮戦するスウェアに助けられ、ミサイルの攻撃で揺れるヘイムダルのブリッジでもヨハンが指示を飛ばす。

 

 「対空防御! 主砲発射、目標敵戦艦!」

 

 ヘイムダルより発射されたビームがエターナルに襲いかかった。

 

 「回避! 主砲撃てぇー!!」

 

 バルトフェルドの指示通りにアイシャの操舵でビームを回避すると同時に撃ち返す。

 

 ヘイムダルが艦体を傾けるとビームが通り過ぎ、そして発射したリニアカノンがエターナルの右舷を掠めた。

 

 「やるな!!」

 

 「相手の指揮官も大したものだな!」

 

 バルトフェルドとヨハンは互いの指揮を称賛する。

 

 しかしヨハンの方には余裕はなくなりつつあった。

 

 この包囲網を破り、突破するには一手足りない。

 

 迫ってくる敵モビルスーツはスウェアが防いでいるが、放たれるミサイルの迎撃は難しくなっているが、他の機体の援護は期待できない。

 

 イノセント、アイテルは敵の新型を抑えている為こちらに手が回らないからだ。このままでは敵に包囲殲滅されてしまう。

 

 徐々に追い詰められていく状況にヨハンは焦りを募らせていった。

 

 

 

 そんな戦闘の状況をマユはモニターで見ていた。

 

 敵の砲撃によって震動が起こるたびに焦燥が募っていく。

 

 「……アストさん」

 

 アストの乗るイノセントが敵と戦っている。

 

 これでいいのか、私は?

 

 肩のトリィを見る。

 

 アストは自分を何度も助けてくれた。

 

 キラは元気づける為にトリィを渡してくれた。

 

 兄を救うためにラクスは上の人間に掛け合ってくれた。

 

 レティシアはマユの我儘に嫌な顔一つせずに付き合ってくれた。

 

 みんなが命がけでここまで自分を連れてきてくれたのだ。

 

 何時も誰かが助けてくれたというのに本当にこのままでいいのか?

 

 「……違う、私もみんなを助けたい」

 

 訓練を受けたのもアスト達の足手まといになりたくなかったからだ。

 

 だから今度は―――

 

 「……私も、みんなの為に!」

 

 そう思い立つとマユは待機していた部屋から飛び出す。

 

 震動が起きるたびに何かに掴まりながら、格納庫に飛び込むと視線の先にあったのはメタリックグレーの巨人。

 

 静かに佇むモビルスーツが自身を動かすパイロットを今か今かと待っていた。

 

 それを見つめ、意を決して床を蹴るとコックピットを開いて乗り込んだ。

 

 「君、何をしているんだ!」

 

 整備の人間が止めに入ろうとするが、今のマユには届かない。

 

 コックピットハッチを閉じ、機体を起動させる。

 

 キーボードを叩くマユの操作に淀みはない。

 

 「……調整はこれで良し。機体名は―――『ターニング』」

 

 SOA-X02『ターニング』

 

 スウェアと同じく次期主力機開発計画の試作機である。

 

 可変機構を備え、Nジャマーキャンセラーを搭載し、武装も基本装備に加え腕にグレネードランチャー、背中に改良したアグニ改を装備している。

 

 この機体がヘイムダルに運びこまれていたのは、最終調整がようやく終わったから。

 

 今回の任務が終了した後でレティシアがテストパイロットを務める形で稼働テストを行う予定だったのだ。

 

 《ターニングに乗っているいのは誰だ?》

 

 「私です!」

 

 《君は!? 早く降りなさい、それは―――》

 

 「行かせてください。訓練は受けています」

 

 《しかし!!》

 

 「今は一機でもモビルスーツがあった方が良い筈です! 私もみんなを助けたい!!」

 

 マユの言葉にヨハンは言葉を詰まらせる。

 

 彼女の言う事は正論であった。

 

 このままではこの場を突破する事は難しい。

 

 しかしこんな子供を戦場に送り出すなど―――人としての良心と軍人としての判断がせめぎ合う。

 

 悩んだ末にヨハンは決断した。

 

 《……決して無理はしない事、それが条件だよ》

 

 ヨハンの言葉にマユは顔を綻ばせ頷いた。

 

 「はい!」

 

 PS装甲が展開され、カタパルトに移動する。

 

 汗で滲んだ手で操縦桿を握り直すと閉じていた目を見開いた。

 

 大丈夫、今度は私が―――

 

 《進路、オールグリーン。ターニングどうぞ!》

 

 「マユ・アスカ、ターニングガンダム、行きます!」

 

 マユの体が射出された際のGでシートに押しつけられる。

 

 それでも歯を食いしばり戦場に飛び出した。

 

 「まずは!」

 

 取りつこうとしているジンにビームライフルを向け、敵をロックしトリガーを引く。

 

 ビームライフルから放たれた閃光が真っ直ぐ進み、ジンの胴体を撃ち抜いた。

 

 「やった?」

 

 敵機を落した事で動きを止めたターニングに側面から回り込んだジンが重斬刀で斬りつけ、斬撃の直撃で機体を大きく揺らす。

 

 「きゃぁぁぁぁ!!」

 

 思わず悲鳴を上げるマユ。

 

 しかしPS装甲に実体剣は通用しない為、損傷は無かった。

 

 「しっかりしなきゃ!」

 

 頭を振り視界をはっきりさせると追撃してきたジンの攻撃をシールドで止め、同時にビームサーベルを抜くと逆袈裟に振るって斬り裂いた。

 

 「ハァ、ハァ、動きを止めたら駄目」

 

 落ち着くために息を吐くと操縦桿を握りなおす。

 

 撃ち込まれたミサイルをビームライフルとイーゲルシュテルンで迎撃し、同時にシグーを撃墜した。

 

 「次は!」

 

 そこにミサイルを撃ち落としたスウェアが近づいてくる。

 

 「誰が乗っている?」

 

 「イザークさん!」

 

 「……まさか、マユか!?」

 

 「はい!」

 

 まさか新型に乗っているのがマユとは思わなかったのかイザークは酷く動揺する。

 

 「何故そんなものに!?」

 

 「話は後です」

 

 確かにその通り。

 

 今も敵は手を緩める事無く、攻撃を仕掛けてくる。

 

 「チッ、マユ、俺の傍から離れるなよ!」

 

 「はい!」

 

 マユのフォローを行いながら、敵機を近づけまいとスウェアは砲口を構える。

 

 ターニングが出た事でヘイムダルに余裕が出来た事で、ヨハンは脱出の為の一手を打つ。

 

 「マユちゃん、こちらが指示したらアグニ改で敵艦を狙うんだ。座標を転送する」

 

 ターニングのコックピットに座標が転送され、同時にヘイムダルからミサイルとリニアカノンを一斉に発射されるとエターナルに襲いかかる。

 

 敵艦が迎撃に集中した隙にマユは座標に向けアグニ改を構えた。

 

 援護の為にスウェアがビームガトリングで敵機を牽制し、ヘイムダルも敵機にミサイルを発射する。

 

 「今だ!」

 

 「はい!」

 

 マユは指示通り背中に装備されているアグニ改をせり出すとターゲットをロックし、発射した。

 

 アグニ改の砲口から凄まじいビームが発射され、エターナルに襲いかかる。

 

 それに気がついたバルトフェルドは即座に声を上げた。

 

 「回避!!」

 

 強力な砲撃がエターナルの左舷を掠めるように通り過ぎた。

 

 「外れた!?」

 

 「いや、そうでもない」

 

 ターニングのアグニの閃光はエターナルの左舷をわずかながらに損傷させていた。

 

 「損傷は!?」

 

 「軽微ですが、エンジンに若干の影響が出ます!」

 

 「やられたな」

 

 これでは推力を上げられず、敵艦に追いつけずに逃げられてしまうだろう。

 

 状況を的確に読んでいたヨハンは即座に指示を飛ばした。

 

 「モビルスーツに撤退信号! 同時に全砲門開け! モビルスーツの撤退を援護せよ!」

 

 「「了解!!」」

 

 撤退信号が上がると同時にイノセントもアイテルも撤退を開始する。

 

 アストはコンビクトの懐に飛び込むと体当たりして、突き飛ばし、さらに蹴りを入れて距離を取った。

 

 「ガンダムゥゥ!!」

 

 シリルは叫びを無視し、アストは即座に機体を反転させた。

 

 レティシアも撤退したいがアスランの苛烈な攻撃に晒され、撤退できない。

 

 「逃がしませんよ!!」

 

 ビームソードを受け止め、グラムで斬り返す。

 

 アスランは左足のビームソードでアイテルを蹴りあげ、さらに右手のビームソードを袈裟懸けに振るう。

 

 繰り出される攻撃を回避しながら、レティシアも斬り返す。

 

 「くっ、隙がない」

 

 レティシアに焦りが募るが、それに構う事無く再び斬りかかってきたジュラメント。

 

 その時、数発のビームが襲いかかる。

 

 「何!?」

 

 「下がれ、レティシアさん!!」

 

 イノセントがビームライフルでジュラメントを牽制する。

 

 「アスト君!」

 

 「退くぞ!」

 

 「はい!」

 

 アイテルを逃がすように立ちふさがるイノセントの姿にアスランは激しい怒りを抱く。

 

 「アスト・サガミィィィィ、貴様は、本当にいつも、いつも!!」

 

 怒りに任せプラズマ収束ビーム砲を放つ。

 

 「アスラン・ザラァァァ!!」

 

 アストのSEEDが弾けた。

 

 プラズマ収束ビーム砲を潜り抜け、ビームサーベルを振るう。

 

 アスランはシールドで防御するが同時にナーゲルリングでジュラメントを弾き飛ばした。

 

 「ぐぁぁぁ! くそぉぉ!!」

 

 衝撃に耐えるアスランだが、次の瞬間アイテルがグラムを投げつけてきた。

 

 態勢を崩した状態でシールドを構えるが、レティシアはジュラメントに直撃する前にグラムをビーム砲で撃ち抜いた。

 

 グラムが破壊され、引き起こされた爆発を目くらましに2機が反転する。

 

 その姿にアスランはそれを見て叫んだ。

 

 「レティシアァァ!!!!」

 

 全機の帰還を確認したヘイムダルは全ミサイルとリニアカノンを前方と背後に撃ちこむ。

 

 それに怯んだ敵編隊の穴を狙い、一気に艦を加速させた。

 

 「機関最大!! 急速離脱!!」

 

 ヘイムダルは宙域から全速で離脱した。

 

 

 

 

 それを見ていたアスランは思わずコンソールを殴りつけた。

 

 「くそォォ! またか、またお前は俺から奪うのか!!」

 

 友を奪い、仲間を奪い、そして今度はレティシアまで―――

 

 「……今度こそは、奴を」

 

 アスランは闇を睨みつけ、暗い声で静かに呟いた。

 

 

 

 

 ヘイムダルが戦闘宙域から離脱して格納庫に降り立ったアストは座り込んでいるマユに駆け寄った。

 

 彼女はさっきの戦闘でターニングで出撃したという。

 

 危惧した事が現実になってしまった。

 

 彼女を戦いには絶対に巻き込みたくなかったのに。

 

 「マユ、大丈夫か!?」

 

 「ハァ、ハァ、は、はい」

 

 どうやら怪我はないようだが―――

 

 「彼女は大丈夫だ」

 

 イザークの言う通り、息が荒いが無事らしい。

 

 多分初戦闘の緊張と疲労によるものだろう。

 

 アストもキラも最初はこんな風に座り込んで動けなかったから分かる。

 

 「マユ、どうして出撃なんてしたんだ!」

 

 「ハァ、私もみんなを守りたかったからです。助けて貰ってばかりだから、だから今度はって」

 

 それは奇しくもアスト自身の戦う理由と同じである。

 

 自分もかつてそう考えた。今度は自分がと―――

 

 「そう、出撃した事は素直に喜べないですが……ありがとう、マユ」

 

 「レティシアさん」

 

 「そうだな、マユに助けられた」

 

 レティシアもイザークもどこかホッとした様子でマユを見つめる。

 

 アストもため息をつきながらも膝をつくとマユの肩に手を置いた。

 

 「……色々言いたい事はあるけど、今は一つだけ言わせてもらう。よく生き延びた、上出来だ」

 

 それはかつてムウがアルテミスに向かう際の戦闘後にアストとキラにかけた言葉だった。

 

 「アストさん……」

 

 マユは涙を滲ませると静かに泣き始めた。

 

 それをレティシアが抱きしめる。

 

 なんであれ生き延びて本当に良かった。

 

 アストは立ち上がると、いつも通り不機嫌そうな顔のイザークに笑みを零す。

 

 そして互いに拳を差し出して軽くぶつけ合った。




キャラクタ―紹介、機体紹介2を更新しました。

機体紹介3投稿しました。
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