一人称視点で進める練習に軽いノリで書いています。
続くかどうかは分かりません。さっと息抜き程度にやっていければなぁ、くらいです。
よかったらご賞味ください。
俺は軍人だ。
昨今台頭してきたPMC、民間軍事企業ではなく国家に所属している、いわゆる兵隊さんだ。
それなりに長い軍歴を持ち、ほどほどに任務を遂行し、まずまずの成果を挙げ、そこそこの数の修羅場も潜っているうちに、まぁ少なくない数の部下と部隊を持つことになり、なんだかんだ悪くない日常を送っていた。とは言っても、恐らく世間一般に言われる日常とはかけ離れたものだとは思うが。
俺たちのような人間が普段相手にしているのは、テロリストだとか強盗犯だとか言う生ぬるい代物じゃあない。勿論そういう連中の制圧任務もあるにはあるが、基本的にはコーラップスの影響で大量発生した生物の出来損ない……死に損ないと言うほうが正しいか。通称E.L.I.Dと呼ばれる連中で、説得もネゴシエートも通用しない化け物どもだ。コーラップスが何かとか、どうしてそうなったとかはどうでもいい。歴史の授業をするつもりもないしな。
で、そういう連中を相手に日々ドンパチしてるわけだが、俺、というか俺の部隊はそこまで優秀ってわけじゃない。エース部隊なんかは他の連中に任せる方針だ。名誉を得るためにいちいち命をベットしてたんじゃ今頃100回は死んでる。
ウチの部隊は基本的な戦闘技術を学んだ後は、とにかく連携、退路の確保、逃げ方、引き際の見定めなんかを徹底的に教育する。人間命あってのモノダネよ。そんなわけで俺たちは戦果こそぼちぼちというレベルだが、部隊全体の損耗率は非常に低い。武器なんかまた作ればいい話だが、一端の軍人を直ぐに作るわけには行かないもので、お偉いさん方々はそこらへんをどうにも分かっちゃいない。いや、分かっててやってるのかもしれないが。どっちにしろ性質の悪い話だ。どれだけ逃げ方を教えたって、損耗率0%ってのは有り得ない話だしな。
ま、そんな冴えない中隊長をそれなりに長い期間こなしてるんだが、そんな俺は今、数あるPMCの一つであるグリフィン&クルーガー社にお邪魔しています。
んん? どうしてこうなった。
改めて横を見ると、G&Kの社長その人、ベレゾヴィッチ・クルーガーが不敵な笑みを張り付けたまま微動だにせず佇んでいる。こいつ相変わらずニヒルな表情ってやつが似合う。忌々しいことに。
どういうことかと言えば、俺はこのクルーガーに依頼されて、
戦術人形というのは、第三次世界大戦頃から実用化された、所謂アンドロイドだ。人間じゃないから、金と部品さえあればいくらでも作れるし、代替が利く。今では炭鉱や農家の労働力から戦闘時の歩兵まで幅広くカバーしている世界規模のヒット商材だな。俺も任務中に何度か目にしたことはあるが、まさか教官とかいう立場で人形と向き合うことになるとは夢にも思わなんだ。
そもそもだ。曲がりなりにも国家の軍人である俺がPMCに、しかも非常勤講師として招かれるなんざ普通では考えられない。公務員は副業しちゃダメなんです。クルーガー知ってる? いや知っててやってる顔だなこれは。
クルーガーは昔からの顔馴染みの一人だ。戦場でも何度か同じ釜のメシを食った仲でもある。ちょっと前にいきなり退役したのは風の噂で知っていたが、まさかPMCを立ち上げているとは想定外だった。
こいつは昔から顔に似合わず色々と"上手い"。今回俺が招聘されたことだって、きっと軍部の上層部では俺が中期の有休消化にでも入っている扱いになってるんだろう。そういう意味では信用すらしている。間違っても信頼出来るタイプの人間じゃないがな。
色々出来るヤツだが、こいつの一番の得手は、用意周到な正面突破。いわゆる丁寧なゴリ押しだ。ゴリ押す割に周囲に禍根や遺恨を残さないから上手い。ちなみに俺の個人的感情は加味されないようだ。ヒゲ毟るぞこの野郎。
「そろそろお前に依頼する人形たちが到着する。高望みはせんが、とりあえずはお前のところの新人に毛が生えたくらいのレベル以上には鍛え上げてくれ」
ちらりと視線を動かして、クルーガーは一方的な注文を投げつけてくる。
うーむ。その戦術人形とやらがどの程度の能力なのかが分からんので現時点では何とも言えないが、注文内容自体はそこまで突飛でもない。クルーガーだって、ウチの部隊の平均レベルは分かっているはずだ。ただ気にかかる点といえば、新人に毛が生えたレベルまで育てるということは、今からやってくる人形たちはそれ以下のレベルだということ。戦術人形というからにはてっきりバリバリのバトルマシーンみたいなのが来ると思っていた俺にとって、これは少々想定外。
まあ、細かいことは追々考えていこう。とりあえず教育スケジュールのゴールは決まった。後は教育対象の現状を把握してから細部の詰めだな。デキるタイプだったら教育も早めに修了出来るかもしれない。そうなれば久々の休みを謳歌でもしてやろう。
とか考えていると、正面ゲートが機械的な音とともに左右に開いた。わーお近未来的。新興の会社はいいな、設備や装備が整っていて何だかんだでテンションが上がる。うちの兵舎に自動ドアなんて便利なものはない。
「AR小隊、M4A1以下4名。到着致しました!」
いや少女じゃん。
15歳くらい? いやよくわかんないけど少女じゃん! 大丈夫かよこれ。
滅茶苦茶緊張しているのか、明らかに上ずった声で先頭に立っている少女が名乗りをあげる。その後ろからぞろぞろと何人かついてきているが、どれもこれも見目麗しい女の子。俺は独身だが、今の俺に娘が居たら大体これくらいの年齢なのかなぁとぼんやり思ってしまう程度には、それはもう少女だった。
でも俺はポーカーフェイスを崩さない。想定外に焦るのは軍人やってりゃいつものことだが、その度に顔にまで出していては色々ともたない。ここは当初の予定通り、オトナの兵隊さんっぽさを出しておこう。
「よく来た。本日から君たちには訓練に入ってもらうが、隣の彼が戦術教官を務める。以降彼の指示に従うように」
「り、了解しました!」
同じく不敵な笑みからポーカーフェイスにその様相を変化させたクルーガーが彼女らに任務を通達する。ということはやっぱりこの女の子たちが戦術人形というわけか。うーむ、戦場で見かけたことのある戦術人形といえば、もっとこう、メカメカしい感じだったんだが、時代とともにトレンドも変わったのか。
改めて4人の少女を軽く見回して見ると、先程喋っていた気の弱そうな子、隣に気の強そうな子、逆隣にクールっぽい子、その横に明るそうな子。
修学旅行かな?
ま、唯一違うところといえば、それぞれが自身の武器であろうアサルトライフルを携えていることだろう。年端も行かない少女には余りにも似つかわしくない、無骨な殺人武器。それらがセットで視界に入るからこそ、どうにかこうにか戦術人形の体を成している、くらいにしか見えない。
うーむ。クルーガーの指示で会話が止まってしまった。非常に気まずい。しかしまぁ、教官として紹介を受けた以上は何か喋っておかないとな。というのも、戦場でもそうだが、上の立場に居る者は如何なる理由があったとしても"ナメられる"のが一番まずい。過去にも、仲良しを履き違えたおままごと部隊が指揮命令が混乱したまま壊滅したのを何度も目にしている。別に彼女らとは所詮一期一会の関係だろうが、俺の個人的沽券にも関わる。びしっと決めておかなければならない。
とりあえず、クルーガーは当然彼女らを知っているが、俺は何も知らない。自己紹介でもしてもらおう。
「は、はい。AR小隊隊長、M4A1です。よ、よろしくお願いします……」
「M16A1だ。よろしくな、教官」
「コルトAR-15です。よろしく」
「M4 SOPMODⅡゥ~! だよ! よろしくー!」
……遠足かな?
うーむ。流石にちょっと頭が痛くなってきたぞ。これはまず
ついでに、いくつか気になる点を聞いておく。それぞれが各々の武器を名乗っているのは非常に戦術人形らしいのだが、それ以外の武器……サイドアームや近接武器なんかは扱えるんだろうか。それによって教育内容がかなり変わるしな。抑えておきたい。
「使えないことはない、が、やっぱり手に馴染まないし、個人的にもあまり使いたくはないな。どうしてもってんなら使うし、それで命が拾えるなら安いモンだとは思うが」
俺の質問に答えてくれたのは気の強そうな子と評したM16A1だった。見た目どおり気が強そうだな、ついでに酒にも強そう。いやこれは勝手な憶測だけど。
となると、使えないわけではないのか。まぁ、自分の武器以外はお手手が拒否して握れないんですぅ~なんて言われたら張り手の一発でも食らわせてやろうかなと思っていたから全然大丈夫。とりあえず教育課程の一つにサイドアームの訓練も盛り込んでおこう。
で、一番気になるところ。ぶっちゃけ君らどれくらい強いの? ってところだ。スタート地点が分からないと教育も何もあったもんじゃない。ということで遠慮なく聞いちゃおう。
「強い……というのは分かりかねるけど。負ける気はしない、とだけ」
冷静沈着な口調でいきなり強い言葉を使うなよ。びっくりするだろ。
大きく出たのはピンク髪のクールビューティさん。これはまた自信満々である。ま、そこまで言うなら一周回って話は早い。早速その力ってのを見せてもらおう。ってことで早速実習に入るけどいいよね?
「構わん。お前に任せる」
クルーガーはそれだけ言うと、人形たちへの挨拶もそこそこに踵を返してどっか行ってしまった。最後に見せた表情が何とも言えない感じだったのは何だったのか。ま、気にしてもしゃーない。
ということで、まずは銃を中心に扱うのであれば基本中の基本、射撃能力から見せてもらうことにする。射撃訓練場へいざ行かん。クルーガーに社内見取り図貰っといてよかった。ここ無駄に入り組んでる上に広いから初見だとまず迷う。いやPMCって会社柄襲撃を気にしてとか色々理由はあるんだろうけど、ここで働く人も大変だろうなあ。
さて、クルーガーが先程フクザツな表情を見せていた理由が分かった。
場所は変わってここはG&Kの屋内射撃訓練場。戦術人形たちは自分たちの武器を扱えるのが嬉しいのか、上機嫌で準備を整え、俺の号令で一斉に的当てを始めたわけだが。
この子たち、あれだな。一言で言えば、自分が持ってる銃の構造的知識と性能的知識だけをゴリゴリに押し込まれた女子高生だ。いわゆる頭でっかち。ちゃんとマガジン機構やセーフティも分かってるし、射撃体勢もまぁ見た目はしっかりしてる。間違っても変てこってわけではない。でもそれだけ。「狙いを付けるための姿勢」は知っていても「狙いの付け方」を分かっていない感じ。
こ、これは教育のし甲斐がありますねえクルーガー君。とりあえずSOPMODⅡだっけ、君。ピカティニーレールにドットサイトやらPSO-1やら赤外線センサーやらその上にガイドスコープやらゴッテゴテに盛ってるけどこれ銃だからね? クリスマスツリーじゃないからね?
さっき自信満々のドヤ顔で負ける気がしない、などと吹いていたAR-15に到ってはリコイル制御がまったくおっついておらず、フルオートで天井付近に蜂の巣を作っていた。うんうん分かるよ、初めて銃を撃った時ってそうなるよね。ちょっと涙目なのは多分、反動で跳ね上がったスコープで瞼上を強打したからだろう。
比較的マトモだったのはM4A1とM16A1の二人。精度はともかくとしてとりあえず弾は真っ直ぐ飛んでいるし、上出来上出来。銃の反動はね、単発ならまだしもフルオートの衝撃を手首だけで抑えようとしても絶対に無理だから。そのためのタクティカルストックなんだから衝撃を肩で吸収して腕で抑えなさい。こんな感じに。
タタタン、タタタン、と、軽くお手本を見せつけてみると、おぉ、と感嘆の声。一応これで教官としての面子は保てたかな。
しばらくはそうやって射撃の基本をレクチャーしていたのだが、ここら辺はやはり人間と戦術人形の違いなのか、飲み込みがムチャクチャ早い。大体1度か、2度教えれば概ねその通りに動けてしまうのは電脳のスゴイところ。最初はどうしたもんかと頭を抱えたものだが、これはこれで成長が直ぐに見えて楽しいかもしれない。
とりあえず基本の射撃訓練をちょこちょこと繰り返して、一通り扱いに慣れたらキルハウスでの実戦形式でも組み込んでみるか。本当はもうちょっとじっくり組むべきだと最初は思っていたんだが、予想以上に成長が早いのでどんどん詰め込んでいくことにした。勿論、本当に弾が当たってしまったら人形はともかく俺は三途の川が見えるのでペイント弾でやるけど。
いやーしかし、優秀な新人というのはいつ見ても気分がいい。手がかからないし、余計なストレスもかからないし、俺が育てた、みたいな優越感にも浸れるしいいこと尽くめだ。最初の誰だこいつ、みたいな視線も先程の射撃訓練ですっかり無くなり、いい感じに尊敬を集められている気がする。
それに、人形とは言え見た目は可愛い少女たちだ。職業軍人である以上、そんな場には間違っても縁が無かったんだが、これはこれで役得と捉えられんこともない。クルーガーのヒゲを毟るのは勘弁してあげてもいいだろう。
とりあえず今日は顔合わせってのもあったし、基本の射撃訓練を反復して終わりにすることにした。
うーむ、明日からちょっと楽しみになってきたぞ。ここまで飲み込みが早ければ、やりようによっては新人に毛が生えたレベルで納まらない可能性が高い。これは教官としての腕の見せ所である。俄然テンションが上がってきた。
しかし教育スケジュールを考えるのは非常に楽しいが、俺は人間だから休める時に休んでおかないと身も心も持たない。戦場とは違い、身体的負担は非常に少ないが、モノを教えるというのはそれはそれで非常に負荷が掛かる。一応請け負っちゃった以上は最低限の責任もあるしね。
ということで今日はちと早いがもう寝ることにする。ああ、本当に明日からが楽しみだ。ついでだ、今日はいい夢が見れると尚良し。眠りの女神が微笑むことをお祈りしておこう。
この小説にPKPは出ないし、うちのG&KにもPKPはきません(キレ
すっかり過去作になりましたが
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最近新しく読み始めたぜ!
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定期的に読み返してるぜ!
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AR小隊はいいぞ