Re:聖なるかな…え? 原作になんて参加しませんよ   作:ぴんころ

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第九話

 ここで今更な話ではあるが、今の状態に至る前……俗に原作と呼ばれる物語においてこの世界の望が辿ったのと同じルート。即ち、望の恋人が誰になるかという点で考えるとこの世界は希美ルートということになる。

 その希美ルートだが、最後にどうなったのかということを思い返すと、『みんなが一緒にいられる世界』を望んだことでこれまでに巡ってきた世界が全て混ざりに混ざった、という結末である。……ちなみに希美は豊胸を望んでいたが、そんなことにはならなかったが、そこは今は関係ない。重要なのは、『世界がごちゃ混ぜになった』ということだ。

 

 

 この世界では、ごちゃ混ぜになるタイミングが遅かった。

 

 

 言ってしまえば、今こんなことを考えているのは、このタイミングになってようやく世界が混ざっていたからだ。あいつらが帰ってきてからだいたい一月。これまで何も変化がなかったから完璧に忘れていた。

 

 

「それで、この辺りにあるものの説明を頼んでもいいか幼女?」

 

「うん、任せて!」

 

 

 そして、こんなに色々と混じった世界では、俺のいた世界よりも幼女が通ったことのある世界の方が多く、幼女の方がそこらへんに関しては詳しい。なので色々と案内を頼んでいたのだ。

 

 

「で、あれが……なんだろ?」

 

「いや、お前もわからないのかよ」

 

「だって私が行った世界にはあんなのなかったもーん」

 

 

 とは言っても、こいつが旅に加わったのは『魔法の世界』の終盤。つまりそこに至るよりも先の、『剣の世界』や『精霊の世界』の建造物はわからない。なので、今は『幼女がわかるもの』はそれで普通にどこの世界のものか聞くし、わからなければその建築材が何かでだいたい判断する。木材なら『精霊の世界』で木材でなければ『剣の世界』、という程度の雑なものだが。

 

 

 プイッとあらぬ方向を向いた幼女だが、ちょっと頭を撫でてやればすぐに機嫌が戻るので案外扱いやすい。

 

 

「ふぅ……特にめぼしいものはないですわね」

 

「コアラも、今は大人しいな」

 

「エターナルとしての時間で考えれば百年は確かに長いですが待ちきれない時間でもないですしね。それぐらいなら、貴方の気が変わるのを待つのもいいかと思っただけですわ」

 

 

 コアラは優雅に紅茶を飲みながら言っているが、外で空中浮遊しながらそんなことをしても違和感しかない。とりあえずはたき落として、地面を歩かせる。

 

 

「いきなり何をしますの」

 

「飛ぶんじゃない。目立つだろ」

 

 

 いきなり世界融合した影響で世界中がてんやわんやしているのだ。こんなところで「空を飛ぶ」なんていう異世界っぽさを出して目立つ必要はない。……のだが

 

 

「あら、すでに外に出ているから十分に目立ってますわよ。未知の代物があるにも関わらず、こんな堂々と外を出歩けるなんて、その時点で一般人から見たら異常に決まってるでしょう?」

 

「それでも、だ。わざわざさらに目立つようなことまでする必要はない」

 

「……仕方ないですわね」

 

 

 面倒だというのにとぼやきながらも徒歩に変わるコアラ。ちなみに今は倉橋はついてきていない。顔を真っ赤にして布団にこもっているらしいので風邪でも引いたのだろう。エターナルのくせに。

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 一方その頃。

 

 

「なんですか、あの未来視……」

 

 

 倉橋時深は今朝見た未来視のせいで絶不調であり、まともに応対できる自信がなかったので監視(デバガメ)は他の面々に任せていた。そして、彼女が見た未来視というのは

 

 

「どうして私が子岬さんと結婚する未来なんてものがあるんですかっ!!」

 

 

 そう、時深がこれまで一度たりとも見たことのない、全く予想外の未来を見てしまっていた。

 

 

「どうやって顔を合わせろと……」

 

 

 かつて悠人のことを見たときは、それにより時深が惚れるだけだったので、生まれる前から出会ったときのための準備をしていたので問題なかったが、今回はすでに出会っている人物と今とは違う、より深く踏み込んだ男女の関係になっていることを視てしまったために、対処するための時間がなかった。

 

 

「……というかこれ、ユーフォリアに知られたらまた面倒なことになりそうですね」

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

「むっ!」

 

「どうした夕陽」

 

「なんだか嫌な予感がした!」

 

「お前にそんな直感ないだろ」

 

 

 幼女が馬鹿げたことを言い出した。

 

 

「女の勘ってやつだよ!」

 

「あーそれならあるかもな」

 

 

 まだ女と呼んでいい年頃か知らないし、実際にあるとは思えないが、それを口にしたらまた面倒くさいことになりそうなので今はとりあえず同調しておく。コアラはどうやらそんな俺の内心を見抜いているようで、ため息をつきながらも何も言わない。

 

 

「あれ、なんだろう?」

 

「うちの学園の嫉妬マスクだな。男女で歩いてたらそいつを取り囲んで尋問するんだ。まさか異世界の住人だろうと一切躊躇せずに取り囲みにいくなんて……あ、吹っ飛ばされてる」

 

「大丈夫かな?」

 

「大丈夫だろ。あいつらだけギャグ時空に生きてるし」

 

「あら、でしたらミューギィと戦っても生き残れるかもしれませんね」

 

「……真面目に生き残りかねないから反応に困るなぁ。寿命以外で死ぬ状況を想定できない。確実に死ぬはずなんだけど……」

 

 

 そんな中、稀によく出てくる嫉妬マスクたちが異世界人に吹き飛ばされたり、人外の様相をしているせいで精霊が男女同士なのかわからないけどとりあえず囲んで吊るし上げてルプトナにぶっ飛ばされたりする光景が見られるたびに、幼女に説明していく。旅団内部で『元の世界』と呼ばれる世界の代物は俺が説明し、それ以外は幼女が説明する。コアラはそれを聞いて悪巧みらしきことをしている。

 

 

「なんか目立ってるな」

 

「まあ、こんな色物集団ですしね」

 

「テムオリンさん……色物って自覚あったんですね」

 

「どう見ても兄妹には見えないし、全くこの状況にも驚いてないし。そりゃ『あいつら何者だ?』ってことにもなるか……」

 

 

 とりあえず、早めにこの場から離れたい。目立つと言っても、今はまだ嫉妬マスク(馬鹿たち)の方が目立っているので、俺たちに注意はそこまで向いてはいない。それなら今のうちに離れてしまった方がいいだろう。

 

 

「っていうわけで離れるぞ二人とも」

 

「はーい」

 

「仕方ないですわね」

 

「って、コアラは浮かぼうとするんじゃない!」

 

 

 また飛ぼうとしたコアラを飛ぶより先にはたき落として、それが誰かに見られたかどうかを気にしている余裕もないので幼女とコアラを米俵のように担いで走り出す。そんなことをすれば目立つのはわかっているが、さすがにコアラが飛ぼうとした瞬間を誰かに見られるよりもマシだろうと思い、エターナルとしての持てる技法と前世で師匠から習った技術を組み合わせてその場から脱出。あの世界で今も生きているであろう師匠には心の底から謝罪しておく。

 

 

 そうしてしばらくの間走っていて、ふと気がついた。

 

 

「……ここ、どこだ?」

 

「どこだろ?」

 

「さあ、私はあなたに抱えられてましたから?」

 

 

 迷子、ということになるのだろうか? 倉橋の神剣の反応を探れば普通に帰宅することは可能なので迷子と呼んでもいいのかわからないが。とりあえず、色々な世界が混ざっている影響で、これまで普通に暮らしていた空間も、これまでとは全く違う様相になっていることがある。それを考えると、慣れない道を歩くのは危険だ、ということは理解した。……明日は普通に学校はあるみたいだが、迷ったりしないだろうか?

 

 

「……とりあえず帰るか」

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 そして翌日。学校にたどり着くと、人はそこまでいなかった。倉橋とともに学校に向かったのに、たどり着いても襲いかかって来る嫉妬マスクの団員が一人もいない程度には。

 

 

「じゃ、今から文化祭の準備の話をしますねー。え? いない生徒? どうせあの変な建造物に気を取られて、そっちに突撃してるだけでしょ? 学校に連絡も入ってるし。そいつらに関してはきつい仕事任せていいから」

 

 

 そして、クラスの約七割がやってきたところで授業……とは言っても今の時期は文化祭のための準備期間に入る頃合いなので、一日かけてその辺りの話をすることになる。

 

 

「ま、このクラスで何をするのか知らないし興味もないけど責任だけは私がかぶることになるので節度だけは持ってねー」

 

『よっしゃ、発禁ものの出し物しようぜー!!』

 

「だから『節度持て』ってっ言ってんだろうが、このクソジャリども!!」

 

 

 ……話し合いになるんだろうか?

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