Re:聖なるかな…え? 原作になんて参加しませんよ   作:ぴんころ

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第一話

「間に合ってます」

 

 

 その一言と共に私は外に放り出された。つい先ほど撫でられた頭は未だにその心地良さが残っていて、こんな冷たい一言……それも感情が一切乗っていない言葉で追い出されるとは思わずに少しばかり反応が遅れてしまったが、外の冷気に頭が冷えて元の調子を取り戻し追い出された窓の方を振り向く。

 

 

 まずい。すでに窓を閉めようとしている。しかも目が絶対零度だ。さっきまでの暖かな視線はどこにも存在しない。……なんだかムカムカしてきた。あんなに気持ちのいいナデナデをしておいてそんな目を向けないでほしい。どうにかしてあのどうでもいい相手を見る目からちゃんと私個人を見る目に戻ってほしい。

 そんな気持ちを持っていても、このままではどうしようもない。なぜかゆーくんの力もちゃんと働かないのでマナによる強化はできない。このペースだと私が部屋に入り込む前に閉まってしまう。……仕方ない。

 

 

(ごめんね、ゆーくん!)

 

【え? ちょ、ちょっとユーフィー!?】

 

 

 私は、思いついた方法を試した。

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

「間に合ってます」

 

 

 その一言と共に俺は窓を閉めようとする。それを見た瞬間あの幼女はどうにかして侵入しようと走り出してきた。

 

 

(『調和』!)

 

【ごめんねユーフィーちゃん。私もまだ死にたくないの。恨むなら戦闘に巻き込みかねないことをしようとした、貴女に指示を出した人物を恨んでね?】

 

 

 『調和』の能力が発動する。その名の通り彼女の能力は『調和』すること。今の空気中のマナの状態で調和がとれているのだから、外部からの刺激を与える行動をとらせない。彼女の能力が発動している空間ではあらゆる『調和を乱す行動』は意味をなさない。例えば、神剣を使用してマナによる身体強化も、周囲に僅かながら影響を与えるから使うことはできない。……まあ、神剣を武器として呼び出すだけなら可能だが、それでもただの鉄の塊にしかならないのだ。

 

 

 だから、見た目相応の身体能力しか持たない状態のこの幼女が俺が閉めるよりも先に入り込むなど不可能。

 

 故に驚いた。

 

 

「ゆーくん!」

 

 

 『悠久』を手元に召喚したこの幼女は、槍剣という形状を活かして、俺が窓を閉める前にそこに挟み込んできた。

 

 

「なっ、おま、自分の神剣もう少し大事に扱え!」

 

「そういうんでしたらこの窓開けてください……!」

 

(『調和』)

 

【はーい】

 

 今度はこの窓……ガラス部分の状態を『調和のとれた状態』にした。この調和のとれた状態からの変化は強引に止められるので、他の連中が神剣の能力を使えない状況で『調和』によって一人だけ強化された状態の俺がこの窓を閉めようとすることで、ただの鉄クズ状態の『悠久』はこのままいけば多分砕ける……はずだ!

 

 

「あーけーてーくーだーさーいー!」

 

 

 ようやく自分の最大の懸念がなくなって自由に暮らせると思ったのに、こんなことをされては俺の優雅(笑)な生活が邪魔されてしまうではないか。以前「望相手の人質に〜〜」とか言ってやってきた『光をもたらすもの』を殺さないように撃退するのは大変だったんだ。大きくなったら「高校生の時にいい歳して中二病なエヴォリアとか呼ばれてた女とかベルバルザードとかいう女の尻に敷かれたおっさんに絡まれたんだ」と酒のネタにする予定なんだよ。これ以上変なネタを増やすな。

 

 

「どうしても開けないっていうなら……!」

 

「開けないっていうなら……?」

 

「ご近所さんにこの家から追い出されたって言いふらします!!」

 

「ふ、ふざけんなよお前! そんなことしたら俺はこれからどういう顔でこの付近を歩けばいいんだ!」

 

「というかこのまま騒いでると普通にご近所さんにバレそうな気がするんだけど」

 

「そうだよね、望ちゃん」

 

「おいこらそこぉ! なに人の家でくつろいでんだ!? お前ら連れてきたんだからどうにかしろ!!」

 

 

 のほほんとしている二人。確かに久しぶりの元の世界だからそんなことをしたくなる気持ちもわからないでもないが、真横で上位神剣の力をこんなことに使ってるんだからもう少し違う反応をしてほしい。

 

 

「ぐぬぬぬぬ………!」

 

 

 このままご近所さんを歩けなくなっても困るので、断腸の思いで窓を閉めることをやめる。すると全力で窓を開けようと「ぐぬぬぬ」して顔が真っ赤になっていた幼女も、今度は笑顔になって部屋に入ってくる。

 

 

「はぁ……とりあえずシャワー……の前に希美。この幼女の着替えを何か持ってないか?」

 

「あー、ごめんね。今はなにも持ってきてないの」

 

 

 地面に落としたので土が……しかもさっきから雨が降り始めていたようで泥になってついている。このままだと家の中が汚れてしまうので、一旦シャワー浴びてこいと言おうと思ったがうちには幼女用の着替えなんてない。だからわざわざ連れてきたこいつらならその辺り持ってるんじゃないかと思って尋ねてみたが、やっぱりこいつらも持ってないらしい。今日の夜のパジャマはどうするつもりだったんだろうか?

 

 

「俺のお古貸してやるからシャワー浴びてこい」

 

「はーい」

 

 

 ニッコニッコしながらシャワーを浴びに行こうとリビングから出て行ったのを確認してから望たちに向き合う。少し落ち着いたのか、何か聞きたそうな顔をしている。……うん、さっきまでのはどう考えてもギャグ描写だったから聞けるようなタイミングではなかったよな。

 

 

「それで、何が聞きたいんだ?」

 

「それじゃ、まず……」

 

「お兄さーん!」

 

 望が何か口にしようとしたところで幼女が戻ってきた。シャワーを浴びてくるには早すぎると思って振り向いたが、まだ泥だらけ。こいつ何しに行ったんだと思ったところで

 

 

「お風呂どこですか?」

 

「……望、少し待ってろ」

 

「……おう」

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 Q.いつから神剣を持ってたんだ?

 A.中学生の時に契約を持ちかけられた。

 

 Q.俺たちが神剣使いだって気づいてたのか?

 A.ノー。

 

 Q.じゃあなんで頭がいいはずのお前だけ物部に落ちたんだ? 俺たちから離れようとしたからじゃないのか?

 A.さすがにこんな大きな力持ってたらこれを狙ってくる奴がいるかもしれない。そんな時に人質にされたらと思うとな。

 

 

 最初の一個以外の質問の答えは全て嘘である。それでもまあ納得はしてもらえたようで。そしてそんなタイミングでちょうどよく幼女も戻ってきた。

 

 

「むふー!」

 

「おい、この幼女なんだかすごくご満悦って感じの表情しててムカつくんだが。とっとと連れ帰ってくんね?」

 

「やですー。私はここに監視に来たんですー!」

 

 

 この幼女って確か「良い子」の具現化したような存在だった覚えがあるんだが。なんだかすごく我儘ではなかろうか?

 

 

「うん、とりあえず、このことを沙月先輩は聞いてたはずだから明日そっちに相談してからまた来てみるよ」

 

「頼んだぞ、望、希美……! お前たちが俺の最後の希望だ……!」

 

「うわ……期待が重い」

 

「そ、そんなに期待しないでね?」

 

 

 そんな会話をしながらも二人は帰っていく。残されたのは未だにご満悦な幼女と俺の二人。

 

 

「とりあえず、俺の部屋のベッド貸してやるからそこで今日は寝とけ。明日には引き取ってもらえるそうだから今日だけは俺ので我慢しろ。俺はリビングで寝てるから何かあったらそん時は聞きにこい。良いな、下手に何かに触るんじゃないぞ」

 

「はーい!」

 

 

 ニコニコしながらも俺の部屋の場所を聞いてそちらに向かう幼女。その姿を見て明日からの生活がどんな地獄みたいなことになるのか不安だ。さっきの「世間様の目を利用する」ということをこれから先もやってくるであろうことを考えるとそれだけで憂鬱だが、今の俺にはどうしようもない。……今日すぐにするのは難しいけど、一週間以内にあいつを油断させて夜逃げすることを目標にしておくか。

 

 

 そんな誓いを立ててリビングに敷いた布団に入ると、さっきの攻防で疲れていたのかすぐに眠りについた。

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

「うにゅ……監視〜」

 

「いた〜」

 

「おやすみ……」

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 なんだか寒い。なんでこんなに寒いんだろう。冬に近くなったら、起きる時間のだいたい1時間から30分前ぐらいに暖房がつくようにタイマーつけてるんだけど。……あ、でもなんかお腹のあたりすごく暖かい。なんだろこれ? 抱き枕? でも家にそんなものあったっけ? というか普段のベッドとは少し違うような……

 

 

 そこで、何かが落ちる音を聞いた。多分、ビニール袋か何かだと思う。そういえば今日は望たちが来るんだっけと思って、合鍵渡してあるし入って来るのはおかしなことではないと寝ぼけ眼を無理矢理に開けて、その音が聞こえた方向を向く。するとそこには望たちの他にも、ちょっと知り合い程度でしかない物部学園の生徒会長を始めとした原作メンバーらしき人物たちがいた。全員驚愕と侮蔑の目で俺のことを見ている。……いや、正確には俺の上、だろうか?

 

 

「な、な、な……!」

 

「うにゅう……」

 

 

 するとそこには真っ裸になった幼女が俺に抱きついて眠っていた。しかも、俺がさっきまで抱き枕と思っていたのもこの幼女だったようで、俺が裸の幼女を抱きしめている絵面。うん、俺が彼らの側でも同じ視線を向けると思うわ。って、ええい斑鳩。なぜ写真を撮る!?

 

 

「貴方がユーフォリアちゃんの監視を受け入れないなら、これをユーフォリアちゃんだとわからないように加工して世間様に『子岬和也(実名)くんはロリコンである』という情報とともにばら撒くわ」

 

「て、テメェ……! なんて恐ろしいことを……」

 

 

 ちなみに『子岬和也』は俺の名前である。

 

 

「ぐ、ぐぬぬぬ……」

 

「お兄さんあったかーい……」

 

 

 まだ半分以上寝ながら幼女は俺に抱きついている。この状況ではあいつがネットに公開するよりも先に奪うことは不可能。仕方、ないのか……

 

 

「……わかった。こいつを我が家に置けば良いんだな……?」

 

「ええ、よろしくね」

 

「ふにゅ……?」

 

 

 どうやら当人は寝惚けて聞いていなかったようだ。




まさかの前作では決まっていなかった主人公の名前がこんな形で公表された事実。


・永遠神剣第一位『調和』

 形状は太刀。属性は赤と黒。あとはちょっとオーラフォトンが使えるので白属性も一応。能力としては神剣の名称の通り”調和”。わかりやすい効果としては一定空間内部で自分以外の人物のマナの使用を禁止したり、物の状態が劣化したりしないようにする。ちなみにこの神剣が死……砕かれることを恐れる理由には、この神剣は当人すら理解できないほどの深層に「元の一本だった頃の神剣が砕かれた記憶」がこびりついているから。この小説内部でその事実が発覚することはないのでここで発表された。

・叢雨の太刀

 主人公最強技。多分使用される機会はやってこない。ゲーム的に言うならカットイン有り。シルヴァリオシリーズに出てくる「絶刀・叢雨」の劣化版。この主人公は心技体のうち技と体はともかく圧倒的に心が足りてない。ので劣化版。
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