Re:聖なるかな…え? 原作になんて参加しませんよ   作:ぴんころ

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第二話

「それじゃ、私ここで住んでいいんですね!」

 

 

 斑鳩の言葉を聞いてわーいと喜んでいる幼女と反比例するように俺の心は落ち込んでいく。それもこれも全てこの幼女が夜中に裸で俺の布団に潜り込んできたことが原因である。あれさえなければ朝にやってきた神剣使いの集団……『旅団』の面々に写真を撮られて脅迫されることはなかったからこいつをここに住まわせて後で俺だけどこか遠い地に引っ越せば終了したのに……

 

 

「で、ここで暮らすにせよ、着替えとか全く待ってきてないだろ、昨日の荷物とか見ると。その辺りはどうするんだ。今日買いに行くのか?」

 

「ふっふっふ。その辺りは私たちがちゃんと持ってきたわよ」

 

 

 そう言って斑鳩は持ってきた紙袋を持っていた腕を見やすいように上げる。さすがに幼女を裸のままにしておくわけにもいかないので、着替えの間は俺も含めた男性陣全員が外に出て、今は昨日の夜着ていた俺のお古をもう一度着用している。

 

 

 そうしてもらった袋の中から一着の服を取り出して……っておい!

 

 

「ここで着替えるな! ちゃんと洗面所行ってこい!!」

 

「はーい」

 

 

 トコトコ歩いていく幼女を眺めて、あんなのと一緒に暮らすことに不安を抱いていると他の旅団のメンバーが何やら微笑ましいものを見る目でこちらを見ている。

 

 

「おい、なんだその目は。言ってみろ望、希美」

 

「いや、『お兄ちゃん』やってるなと思って」

 

「うーん、どっちかっていうと……お父さん?」

 

「やめろ」

 

 

 どこからかオーラフォトンノヴァが飛んで来そうな気配がしてくるだろうが。

 

 

「っていうか、私たちと一緒にいた時よりも子供っぽくなってるような気がするんだけど」

 

「そうね。ユーフォリア、これまで『良い子』だったから。あそこまで子供っぽいのはちょっと驚いたわ」

 

「でも、別に悪いことじゃないんじゃねーか?」

 

「誰も悪いなんて言ってないでしょ、馬鹿ソル」

 

「誰が馬鹿だ、誰が!」

 

 

 背後でも何やら会話が弾んでいる。やはりあの幼女は原作時よりも少しはっちゃけているようだ。このままはっちゃけられると色々面倒なことになりそうな気配がする。

 

 

「……とりあえず、この家で暮らす上でのルールを決めておく必要はあるかなぁ」

 

 

 あと、食器とかの生活必需品。服に関してはこれである程度はどうにかなったが、それ以外はまだ何も解決していない。というか未だにあの幼女と一緒に暮らすことを認めたくない。

 

 

「着替えました!」

 

 

 どうですか似合いますかなんて言ってグイグイ迫ってくる幼女。認めるのは癪だが、彼女の母親の容姿が色濃く受け継がれているので、元がスピリット(妖精)と言われる程の容姿ーー実際には戦闘用の種族だがスピリットという種族はだいたい容姿は整っていることもあってある程度の服であれば順当に着こなすことができる。

 実際、今の服装はベージュのセーターに黒のミニスカート、それとニーソックスという至ってシンプルな服装であるにもかかわらず、ロリコンでなくても誰もが振り返りそうなほどには愛らしい少女になっていた。

 

 

 ただ、もう一度言うが認めるのは癪なので

 

 

「着ている奴がお前でさえなければなぁ……」

 

「むー!」

 

「ちょ、おま、神剣の力を引き出して蹴るんじゃない!」

 

 

『仲良いなぁ』

 

 

 止めろよ!

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 今も眼前に立つ人の脛を蹴り続ける。私の身長だとどうしてもこの辺りを蹴るのが関の山だ。ただ、私が蹴りたくなる気持ちもきっとわかってもらえると思う。

 あんなことをしておきながら、それ以降は私のことを邪険に扱っている。一度あの気持ち良さを知ってしまったらもう離れられない。その責任を取ってほしい。

 

 

【ユーフィー】

 

(どうしたの、ゆーくん?)

 

 

 そんなことを考えているとゆーくんが話しかけてくる。その声はどこか疲れているようにも思えるけど、多分このタイミングで疲れるようなことはないはずだから、多分気のせいだろう。

 

 

【今考えてたこと、絶対に口にしちゃダメだよ。そんなことしたら多分さらに嫌われるから】

 

(そうなの?)

 

【うん。今の時点で結構、厄介ごとを運んでくる相手だと思われてるみたいだし】

 

 

 やっぱり、「監視しに来ました」と真正面から堂々と言ったことがダメだったのだろうか。でも、『魔法の世界』で望さんたち旅団に拾われる前に監視していた時は後ろから追いかけたりしていたけど、警察官に補導されそうになったから、あれはダメだし。『住む場所がないから』も「望さんと知り合いならそっちに泊めてもらうか、もしくは旅団の本拠地に行けばいいだろう」と言われるかもしれない。だから真正面からぶち抜くつもりだったのに。

 

 

 でも、私はまだ諦めるつもりはない。彼を監視、そしてあわよくばカオスに引き込めるのであればいつかはまた()()をしてもらえるかもしれない。そのことを思えばこそ、今どれだけ邪険にされようと頑張れる。そう、全ては

 

 

もう一度頭を撫でてもらうために!

 

 

【なんだか目的がしょぼい気がするなぁ】

 

 

 そんなことはないよゆーくん。私にとっては一番重要なことだよ。

 

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 旅団メンバーがとりあえず俺たちがうまくやって行けそうだから、と俺が蹴られているのを放置して帰ってからしばらくして、俺と幼女は二人して買い物に出ていた。

 一応、幼女も幼女で旅団で動いていた時のことがあってお給金のような形で貴金属をいくつかもらっていたらしい。それを知り合いに頼んで換金してきてもらって生活費として持ってきた、ということを聞いたので特別に何か俺の方から金を出す必要性はないらしい。……のだが、どう考えても幼女に自分で金を払わせているようにしか見えないので見栄えが悪い。結局俺が払うことになるのだろう。

 

 

「はぁ……」

 

「どうかしたの、お兄ちゃん?」

 

「いや、いつになったらお前は消えてくれるんだろうかと思っただけだ」

 

 

 しかも気がつけば俺のことを「お兄ちゃん」と呼んでいるし、敬語も抜けている。さっき誰かと連絡を取ってからだが、その連絡で一体何を言われたんだ。俺の発言を聞いて幼女が不満を示すように頬を膨らませたので、その頬を押し込んで萎ませる。

 

 

「ぷー。監視する理由がなくなるまでお兄ちゃんと一緒だよーっだ!」

 

「だったら、それはいつなのか教えろ」

 

「さあ?」

 

 

 殴りたい、この笑顔。

 

 

 しかし、今この場で殴るのは周囲の目があるので難しい。グッと握り込まれた拳が動くのを我慢して、気になる敬語についてを尋ねてみた。

 

 

「うん、これ? こんな外で敬語使ったり、名前で呼んだりしたらお兄ちゃんが周囲から変な目で見られるんじゃないかと思ったんだけど。これなら義理の兄妹ってことでおかしくないでしょ?」

 

「そんなことに気を使えるなら監視される俺の心境も気遣ってくれ」

 

「なのでこの世界での私の立ち位置は『子岬和也の両親が拾ってきた、義理の妹の子岬夕陽』なの。よろしくね、お兄ちゃん」

 

「話聞けよ」

 

 

 ニッコニッコしている幼女……当人の言ったことに合わせて外で名前を呼ぶ場合は夕陽でいいのだろうか? とりあえず心の中では幼女のままでいいか。あとついでに言えばこの場合は『あんな小さな女の子に”お兄ちゃん”呼びさせてるよあいつ』になるだけなので変な目では見られずとも白い目では見られることにこいつは気がついてないんだろうか。……気がついてないんだろうな。

 

 

「ま、いいか。とりあえず行くぞ」

 

「はーい!」

 

 

 さっきの服装の上からコートを羽織っている幼女と手を繋いでデパートの方に向かうのだが、やはり周囲からはロリコンを見る目で見られている。ここで周囲の目を気にしてしまったら『あいつ、あんなにこそこそしてあんな小さい子をどこに連れ込もうとしているんだ』なんて思われて通報されるかもしれない。できる限り堂々と、かつおかしくなさそうな受け答えをして、ある程度の関係性がある間柄なんだということを見せないといけないだろう。

 

 

「ほら、夕陽。迷子にならないように手でも繋ぐか?」

 

「え、いいんですか?」

 

「この世界だと『俺の妹』なんだろ、立ち位置は。それなら兄貴として最低限はちゃんとするさ。そうでないとどういう関係なのかよくわからないせいで通報されそうだからな」

 

「だったら……えいっ!」

 

「おわっ!」

 

 

 幼女は俺と手を繋ぐ……のではなく、俺の腕に抱きついてきた。人の話を聞いてなかったのだろうか。

 

 

「誰が腕に抱きつけって言った。手を繋ぐ程度までしか許した覚えはないぞ」

 

「ぶー!」

 

「ぶーたれてもダメ」

 

「仕方ないなぁ……」

 

 

 やれやれ、なんて感じの声を出して手を繋いできたが、その繋ぎ方はなぜか恋人繋ぎ。けれど手を繋ぐことを提案したのが俺なこともあり、手の繋ぎ方も特に指定していないので文句を言うに言えず、そのまま溜息を吐いてデパートへ向かうのだった。できれば、クラスメイトや知り合いには見つからないことを祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

「おや、あれは……?」

 

「どうかしましたか、マスター?」

 

「見てみろ、ナナシ。あんなことを言っておきながら和也の奴。一日も経たずに恋人繋ぎなんかしてるぞ」

 

「……本当ですね。ロリコンだったんでしょうか」

 

「さあ、どっちにせよあれを写真に撮って異世界に飛ばされた一般生徒に見せたら面白そうだとは思わないか」

 

「それは……バレたら危険な気がしますが。一応、一位の神剣と契約していると言う話ですし」

 

 

 二人が歩いているところから少し離れたところで、そんな会話があったことを二人は知らない。




あんなこと=ナデナデ
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