Re:聖なるかな…え? 原作になんて参加しませんよ   作:ぴんころ

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この主人公が周囲に能力を作用させるのが上手いのは、実は前世の能力がそれ系だったという裏設定。


第七話

 「ほへ?」と間抜けな声を出した幼女だが家にコアラを引き入れることを説明したところ、「私の時は追い出そうとしたくせに、私と同じ面倒事を持ってくるエターナルは引き入れるってどういうことですか」と言わんばかりの表情でこちらを見てきたが、こちらにだって言い分はある。

 

 

「お前が俺を監視するなら、ついでにこいつが俺を変な方向に惑わそうとするのも監視して食い止めといてくれ」

 

「むぅ……」

 

「お前なら信用できるから言ってるんだ」

 

「もう……しょうがないなぁ」

 

 

 頬を膨らませているが、それでもロウの接触を食い止めてロウに行かないようにするためには尽力してくれるらしい。倉橋曰く、俺はこの幼女がいないとロウに入ってたらしいし。というか頬を膨らませているのもただのポーズにしか見えない。『頼られて嬉しいです』と顔に書いてあるようにも見える。

 

 

「ちょっと、目の前で二人だけの空間を作らないでもらえます?」

 

「え、えへへ」

 

「いや、『つい今日やってきたばかりのコアラ(見知らぬ人)』と『数日間一緒に暮らしてきた妹枠』なのに全く同じ扱いだったらそっちの方がアウトだろ」

 

「む……」

 

「ちょっと待ちなさい。今あなた、何に『見知らぬ人』のルビを振ったんですの!?」

 

「え、そりゃ……」

 

 

 『妹枠』といったところでむすっとした幼女は放置して、コアラの質問に答えようとしたところで玄関のチャイムが鳴る。多分、さっき言っていた倉橋だろう。当たり前に考えれば家の中にすでにいるわけだし、居留守を使うのはどうかと思うのだが……

 

 

(この状況を見せていいものか……)

 

【見せちゃったら殺し合い始まりそうよねー】

 

 

 そう、ここには彼女の天敵たる”法皇”テムオリン(コアラ)がいるのである。見せたら殺し合いが始まりそうなのだ。『調和』は呑気に言っているが、このまま入れてしまったら家が消し飛ぶ可能性すらありそうで。

 

 

「あ、はーい」

 

「ちょ、ま……!」

 

 

 が、俺のそんな想いなど、結局のところ他人でしかない幼女が細部まで把握できるはずもなく、俺が食い止めたことに疑問を抱きながらも扉を開いてしまい……

 

 

「こんな時間にすみませ……ん」

 

「あら、時深さん。こんな夜分遅くにやってくるとか常識がないのでは?」

 

「家まで勝手についてくる貴様も十分非常識だと思うぞコアラ」

 

 

 固まった倉橋を放置して、そわそわと「私は私は」と言った感じでこっちを見てくる幼女にはお前が一番非常識だと伝えておいて、ショックを受ける幼女を無視しながら倉橋の方に視線を戻す。

 

 

「な、な、な………なんでテムオリンがいるんですかぁぁぁぁ!!

 

「倉橋、うるさい」

 

「私がいても何か問題があるわけじゃないでしょうに」

 

「時深さん、近所迷惑になるんじゃ……」

 

 

 三人からの連続ダメ出しによってうぐっと唸りながらも声を潜める倉橋。コアラはともかく、幼女に言われたのはショックだったようだ。

 

 

「それで、どうしてテムオリンがここにいるんですか?」

 

「私は、彼について来たら入れてもらえましたの。……どこぞのカオスとは違って

 

「こいつを放置した結果どこかで悪巧みに巻き込まれるぐらいなら家に入れてこの幼女に監視してもらったほうがマシかと思った」

 

「えへへ……時深さん! 私信頼されました!!」

 

 

 幼女の無邪気な笑顔が、何か企んでいるのではないか、それともロウに降ったのかと俺に疑惑の視線を向けていた倉橋に突き刺さる。さすがにそれで疑いを向けることをやめる、なんてことにはならないが、心は痛いのだろう。少しだけ汗がにじみ出ている。

 

 

「それに、倉橋がやってきたのに、倉橋から何も聞かされていないタイミングで倉橋の仲間が来るとは思えなかったからな。下手にどこかで出会って殺し合いが始まりました、結果時間樹が滅びましたなんてことが起きたら悪夢なんだよこっちからすれば」

 

「ぬぬぬ……」

 

「その場合は俺からすればお前らは全員敵になるわけだけど……」

 

 

 わざわざ印象最悪にしたいの? と問いかける。幼女の第一印象が最悪だったことは言うまでもないが、倉橋に関しては今の所は『常識人』なイメージを持っている、と倉橋は考えているはず。そうなればわざわざ印象を悪くするようなことはしないだろうし、コアラの方に関しても味方に引き入れるならより少ない労力の方がいいと考えているから自発的に協力できるように悪いイメージを抱かせないようにしてきた。そうでもなければこの幼女のように無理矢理に入り込めばいいだけだ。……俺が気付いたのでそれも不可能に終わったわけだが、そこの準備をしていたことだけは評価できる。

 

 

「とりあえず、こいつもこの幼女に監視させるぞ」

 

「え、ですが……」

 

「任せてください、時深さん!」

 

「こいつもやる気だし。お前ら二人にして殺し合い始められても面倒だし」

 

「………………仕方ありません。ですが、何かありそうならすぐに私の携帯に連絡を」

 

 

 そう言って携帯……と言うかスマホを取り出す倉橋だが

 

 

「倉橋」

 

「どうかしましたか?」

 

「この世界ではまだその通信端末はない」

 

「……え?」

 

「ガラパゴスケータイだけだ」

 

「…………え?」

 

「私も持ってますよー」

 

 

 見てくださーいと俺と同じ型式の色違いの携帯を取り出す。もしもの時のためと持たせたものだが、それについての倉橋の反応がない。これまでなら「よかったですね」くらいの反応はありそうなものだが、固まっている。

 

 

「やはり年寄りはダメですね。その辺りの簡単なところすら予想できていないとは」

 

 

 やれやれと首を横に振るコアラを見て、倉橋は顔を一瞬で真っ赤にして詰め寄っていく。

 

 

「あ、あなたの方が私より二周期年上でしょうに! そう言うあなたはどうなんですか!?」

 

「私はそもそも『家族を殺されて心が傷ついた少女が殺人犯から助けてくれた男性のもとで心を癒す』と言うストーリーでここに潜り込むつもりだったので。そんなケータイを常に持っている幼女とか嫌すぎるでしょうに。……ってどうしたんですか、時深さん。そんな床にうずくまるなんて。いくら掃除されているからって迷惑だとは思わないんですの?」

 

 

 幼女のように振る舞うコアラを想像して笑いを堪えきれないのか、口を押さえて床にうずくまる倉橋。それをコアラを冷たい目で見つめているが、人の家に、良心につけこんで潜り込むつもりだった奴が言っていいセリフではないと思う。

 

 

「お前ら全員、我が家にやってきたことで俺に迷惑かけてるから五十歩百歩だ」

 

 

 エターナルになると常識がなくなるのだろうかと思い恐ろしくなり、よくよく考えればこいつら全員人間の倍以上は生きているわけだから、こいつらの生きていた世界や時代ではこれが普通だったのかと思ってまた恐ろしくなる。

 

 

「……って言ってもまだ倉橋はマシなんだが」

 

 

 ちゃんと引越しの挨拶をしたり、そもそも我が家に住み着いて座敷わらしになろうとしていないのでそこに関しては一番まともだ。今ですら「青髪の座敷わらし」とか言う噂が我が家に出ているし。確かに家事はこいつがしているし、結構幸せな感じもするが、それでも家にやってきた時点でマイナスだ。ようやくゼロに戻ったあたりだろうか?

 

 

「お?」

 

 

 

 そして、そんな話をしているタイミングでまた玄関のチャイムが鳴る。今度は一体誰だろうと玄関にまで向かう……ことをやめて、幼女にお出迎えを頼むと視線で伝えて

 

 

「ん? 今、何取り出してた? 俺には永遠神剣のように見えたんだけどなぁ?」

 

 

 俺の視界から外れた瞬間にマナの気配を感じさせないように神剣を取り出した二名を正座させる。『調和』が教えてくれなければきっと気づけなかった。二人に対して厳しい視線を向けていると、先ほどのチャイムの主がやってきたようだ。

 

 

「望さんたちでしたー」

 

「遊びに来た……ぞ。……え、何これ?」

 

「なんで時深さんがこんなところに……?」

 

 

 どうやらやって来たのは望カップルのようだ。そして、やってきた二人は倉橋を見て驚いている。そう言えばこいつら、『写しの世界(ハイ・ペリア)』で世話になってたって話だもんな。知ってて当然か。

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