Re:聖なるかな…え? 原作になんて参加しませんよ 作:ぴんころ
「どうしたんだよ、望、希美」
「いや、ユーフィーとの生活はどうなんだろうかって話になってきたんだけど……」
なんで時深さんが、という視線を向ける二人。
「学校内での俺の監視だとよ」
「じゃあ、もう一人の女の子は?」
そう言って今度はコアラに視線を向ける二人だが、コアラは一切動じずに
「私はそこの男の勧誘に来ましたの」
「勧誘? それってユーフィーと時深さんがいるからいらないんじゃ……」
「所属する組織が敵対してるんです。こいつは私たちの敵なんですよ」
今この場で殺しあおうとすればさすがに俺が出張るので、下手に悪印象を与えないためかこの場では何もしていないが、それでもいつ殺しあいが始まってもおかしくはない間柄の二人だ。
「まあ、こんなところにまで足を運んだ甲斐はすでにありましたけど」
そう言って倉橋を見るコアラだが、もしや何かこいつの弱みを握ることに成功したのだろうか?
「まさか、いい歳こいた
「あ、あなたの方が私より二周期年上でしょうが!!」
「ですから、私はこの場に合わせた格好をしているでしょう? あなたとは違って、恥というものがありますから」
ふふふと嘲笑うコアラに、俯いてふふふと笑う倉橋。直後、倉橋は『時詠』を取り出して
「殺します」
「と、時深さん!?」
ダメですよー、なんて言いながら倉橋を全力で食い止めようとする幼女の姿を面白がって見ているコアラ。何をすればいいのかわからないのかオロオロしているカップル二人。
「ほら、コアラさんも謝ってください!!」
「ちょっと待ちなさい、ユーフォリア。一体なんですか、その呼び名は」
「ほぇ?」
コアラは理解して煽っていたが、幼女に関しては自己紹介されていないという前提があっての無自覚な煽りなので特に文句を言えないコアラである。ついでにその呼び名を聞いて倉橋は爆笑していたし、もうどうなるのかわからなくてさっきよりも恐れおののいていたカップルもいる。
「私の名前は先ほど時深さんが叫んでいたでしょう!? 近所迷惑省みずに!」
「でも、まだ自己紹介されてないのに名前を呼ぶのもどうかと思いますし……」
「どう考えてもコアラの方が失礼な呼び方でしょう!?」
「えー、コアラ可愛いじゃないですかー」
「貴女の感性と一緒にしないでもらえます? 貴女、例えば……そうですね、犬と呼ばれたりして嬉しいんですの?」
「わんわん!」
「待ちなさい、一体どころからその犬耳を取り出したんですか! というかなぜそんなものが……?」
「犬」と言われた途端、どこからか犬耳を取り出して着用した幼女へのツッコミを入れるコアラだが、その犬耳をつけた幼女を神剣の力を引き出して高速で連写している倉橋については触れなくていいのだろうか。
しかも、ツッコミを入れた直後、俺がそんなものをつけさせたのではないかと、ロリコンを見るような蔑んだ視線を向けてきたので、俺は何も関係ないぞと睨み返す。
「えっとですね。さっき、夕飯の買い物に行ってた時に優しいおじさんがくれたんです。君にはこれが似合いそうだって。なんだか息を荒げてて、警察官に連れて行かれたんですけど、なんだったんでしょう?」
「それは優しいおじさんじゃなくて、やらしいおじさんだったからだろ」
「ユーフィーちゃん。そんな危険な人に話しかけられても答えちゃダメだよ」
幼女の発言を聞いて、その男を殺害しようと思ったのか飛び出そうとした倉橋を鎮圧しながら、幼女と望たちの会話を聞く。
「でも、あのおじさん。私が『お兄ちゃんともっと仲良くなりたい』って相談したら。お兄ちゃんもこれさえあればイチコロだって言ってくれたんです」
「よし、倉橋行ってこい」
その言葉を聞いた途端、取り押さえていた倉橋を離して、それを聞いた倉橋は突っ走り始めた。
「どう、お兄ちゃん。似合う?」
「似合ってるけど趣味じゃないな」
似合ってると聞いて喜んで、趣味じゃないと聞いて落ち込む幼女だが、その度につけてる犬耳が動いているのはどういうことだろうか? 聞いてもわからないだろうし、どうしても知りたいというほどでもないので別にいいのだが、よくわからないものをつけさせたままというのも……
「とりあえず、お前はそれを外せ」
「あー! なんで取るの!?」
「いや、取るに決まってるだろ……」
返してーと叫びながらぴょんぴょん跳ねる幼女を見てほっこりしているカップルを尻目に、こんな得体の知れないものをつけて何かあったらどうするつもりだと問えば、なぜか顔を赤くして照れる幼女。
とりあえず、遠くから爆発音が聞こえてきたので明日の朝刊には『一体何が!? ○○に轟く轟音! カメラが捕えたのは機動兵器”MIKO”』とかそんな感じの、倉橋がやらかしたことを示す何かが出たりするんだろうか?
「とりあえず、コアラが一匹増えたからその分の飯の用意もいるな……買い物に行くぞ、幼女」
「はーい」
「望たちはどうする? 一緒に食べてくか?」
「いや、俺たちは様子を見にきただけだし」
「今日は望ちゃんも一緒にうちでご飯食べるんだ」
「そっか。それならしょうがない」
「ちょっと待ちなさい。貴方がコアラ呼びの原因ですか!!」
背後から聞こえる声は無視して、幼女を連れて買い物に出る。それと同時に望たちも今日の目的は果たしたからと家を一緒に出たので、そのまま二人を見送ってから買い物のために市街地に向かう。
「それで、今日はどうするつもりなんだ?」
「んとー、テムオリンさんが来たわけだし、今日はお鍋でいいかなって」
「……まあ、俺ら三人ともエターナルだから飯を食べる必要はないんだけどな」
「一応、時深さんが来た時のために、四人分用意しておこっか!」
「そういや倉橋ってどこに住んでるんだろうな? 俺の監視をするらしいから近くなんだろうけど」
………………
…………
……
『あっ』
翌日、家から出て学校に向かうタイミングで倉橋に遭遇した。それも、お隣さんである。
「……おはよう、倉橋」
「……おはようございます、子岬さん」
まさかのお隣さんという事実に、どれだけ俺の日常を侵食すれば気がすむんだという視線を向けたところ、さっと視線をそらされた。一応、日常を崩していることそのものには罪悪感はあるらしい。
「で、なんでお前はお隣に引っ越して来たわけ?」
「いえ、ユーフォリアが貴方の日常を監視する、私が学校生活で貴方がロウに接触されないか監視する。それなら学校に向かう最中は私が一緒に登校するのが筋だろうという話になりまして」
実際、ユーフォリアが付いてくるよりは私と一緒の方がマシでしょうと。そう言った倉橋だが、こいつは一つ忘れている……いや、こいつはまだこっちに来たばかりだから知らないのか。まあ、いい。相手が非日常な存在ではあるが、これもうちの学校では日常なのだ。しっかりと洗礼を受けてもらうとしよう。
「まあ、いいけど。……お前も少しは苦労するといい」
「はい?」
「ところで、夕陽ーーああ、ユーフォリアはこの世界での自分の立ち位置を『子岬和也の妹の子岬夕陽』ってことにしているから外では夕陽って呼んでやってくれ。あいつとコアラを二人きりにして大丈夫なのか?」
「ええ。一応、『出雲』の方から人を呼んでありますし」
問題ないでしょうと言う倉橋のことを信じて、帰ったら幼女がコアラのような目になったりしていないことを祈るとしよう。
そんなことを考えながら学校に着くと、思っていた通りに視線が大量に集まる。倉橋は初体験だからか驚いているが、これからもっとひどいことになると知ったら逃げ出すのだろうか?
「来たか……」
「え、え、なんですかこの状況?」
教室にたどり着いた途端、俺と倉橋を取り囲む嫉妬マスクを被ったクラスメイトたちの姿に倉橋は驚いている。
「倉橋、覚えておくといい」
「な、なんですか!?」
「うちのクラスは男女で登校した場合、そいつらはカップルだと判断してこうなる」
「は、はい!?」
「そしてこうなった奴らは……」
『異端審問じゃー!!』
「こうなる」
「わ、わけがわかりませんよ!」
つまり、逃げないと拷問ということだ。