感想、評価お待ちしております。今回から無線での会話を{}で表記してます。ご注意を
---気が付いたら私はベッドに寝かされていた。あれだけ痛かった体の痛みも無くなり、体が自由に動くようになっていたが---服装が最後のときに着用していたパイロットスーツでは無く、手術着のようなものを着せられていた。
「ん。目が覚めたのかい?ねぼすけさんは嫌いだよ?」
すわ、いきなり声をかけられて吃驚した。
「いやアンタ誰だよ」
いつの間にやらベッドの隣にいた女性に速攻で返す。
「ちょっとー!その言い草はさすがに無いんじゃないかな?仮にも君の命を救ったのは私だよ?
「その呼び方はやめろ...今の私はただのオリヴァー・ダウェンポートだ。それ以上その名前で呼ぶな」
「さすが傭兵さん...物事をずばずば言うね」
ヨヨヨと泣き真似をしている女性を尻目に疑問を投げつける。
「第一にここは何処だ。そしてなぜ俺の名前を知っている。答えろ」
「ここは束さんの移動式ラボさ。君がその名前であることが分かったのは---ちょっと装備品からデータを拝借しただけさ☆」
「おうちょっと待てやコラ。何を勝手に人の個人情報抜き取っているんだ」
流石に怒りをを抑えられなくなる。何の自由があって私のデータを抜いているんだ。あれには色々とマズいデータも入っているというのに...
「命を助けたんだからそれでチャラさ。安いものでしょ」
悪びれることなく言う女に対し思わずため息をついてしまった。何だこいつ...個人情報を何だと思ってるんだ。
「後一つあってね、驚かないで聞いてほしい。」
「何だよ...装備品壊してもう使えないとかだったら殺すぞ」
そこだけは譲れなかった。あの装備には戦友たちの形見だったものを流用してるのがいくつかある。そんなことをされたら本気で殺してしまうだろう。
「そんなことをする束さんじゃないよ...ただ、この世界がお前が元いた世界と違うことだけは分かっていてほしい」
「何だそのジョーク、笑えないぞ...」
「ジョークじゃない。これは本当のことだから良く聞いてほしい。」
「お前は時空を超えたんだ。何らかの要因で」
◇◇◇
要点を纏め上げる---この世界はタイタンと呼ばれる鋼鉄の巨人も、それを駆る最強の兵士であるパイロットも存在しない世界だということ。そして彼女の名前は「篠ノ之束」であるということ。世間からは天災と呼ばれお尋ねモノ扱いされているようだった。そんな彼女は自前の移動式ラボで世界から逃亡中---自由気ままに暮らしているようだ。そんな彼女が私を救出したのは本当に偶然が重なったからこそだった。その日も自分の痕跡を追跡している狼藉物に報復攻撃を仕掛けているその時、突如ラボの格納庫に超高エネルギー反応が出現。焦った博士がドローンを派遣したところ---そのエネルギー反応からずり落ちるようにして出現してきたのが手足を失った巨人だったと彼女は語った。最初こそ嬉々として巨人のことを調べようとしたが---時空を超えたことによる弊害なのか、それともあの閃光の衝撃波で破損していたのかは分からない。ともかく情報が抜き出せなかったらしい。どうにかして情報を抜き出そうと試行錯誤を繰り返しているうちに機体のハッチが開き---文字通りズタボロの状態の私が転がり出てきたとのこと。天災はこれ幸いといわんばかりに私の装備を拝借。情報を抜き取る片手間に私の治療を開始。情報から巨人の名前がタイタンであること、そして私がそれを駆る傭兵であることを知った。治療が成功してようやく目を覚ましたから、こうして話をしていると自慢げに言われた。
「いやはや君の体は凄いことになっているね。明らかに地球上に存在しない素材で出来ている人工筋肉に強化内骨格」
「さらに体中にナノマシンまで仕込んで肉体の回復能力を極限まで上昇させている」
「実に興味深い存在だよ君は。実験動物にしちゃいたいくらいにね。」
「それに、だ。お前の情報と参照して気づいたことなんだけど---」
「ずいぶんと若返ってるみたいだよ?」
いきなりぶっ飛んだことを言われて困惑する。
「何を言っているんだアンタ。人が若返ること有り得ないだろう...」
「確かに人の細胞分裂の回数には限度があるし、実質的に細胞が若返って細胞分裂の回数が増えることなんかない。」
「だけど君は確実に若返っている。実際に抜き取った情報の中にあった細胞の稼動データと細胞年齢を今の状態と比較してみた。事実お前の肉体は30近くのおっさんから高校生くらいの若々しい肉体に変貌している」
訳が分からん。若返る?そんな話が有り得てたまるか。
「ずいぶんと猜疑的な顔をしているねぇ。ほら、鏡渡すから自分で見てみてよ」
---そういって鏡を投げ渡してきた。受け取った鏡をのぞいてみると---自分の見知った金髪赤目の凛々しい顔ではない。金髪蒼目で---どこか温和そうな表情を浮かべる、嘗ての、傭兵ではなかったころの顔が、そこにはあった。
「....何かの機械で若返ったように錯覚させているとかないよな?」
「あたりまえじゃん。束さんは嘘つきだけどこんなときまで嘘はついたりしないよー」
「話はよく分かった。それで?アンタは一体俺に何を望む?」
最初から気になっていることを口に出す。この手のタイプのヤツが他人に話しかけるとき---大体厄介事を持ち込んでくる。その経験則は今回も例外なく当てはまっていた。
「よく分かっているじゃないか。束さんは
「そのためにも今のこの世界について軽く教えてあげよう。」
◇◇◇
インフィニット・ストラトス。通称IS、『無限の成層圏』の名を冠する篠ノ之束博士が創り出したマルチフォームスーツ。女性にしか稼動することが出来ず、ISの中枢部である「ISコア」は博士にしか作り出すことが出来ない特別なもの。現状のコア数は467個である。今までにない革新的な技術を用いて作られており、慣性の法則を無視できるパッシブイナーキャンセラー(PIC)や視界を増幅、遠距離はおろか後方まで視認可能にするハイパーセンサー。搭乗者自身の身体能力を底上げするパワーアシストシステム...これらは当初、宇宙空間での作業を想定して作られたものだったが---ISの名前を飛躍的に有名にした事件である「白騎士事件」---日本を射程圏内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、最低でも2341発のミサイルが日本へ向けて発射される。だがその半数以上を搭乗者不明のIS「白騎士」が迎撃した上、それを見て「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと各国が送り込んだ大量の戦闘機や戦闘艦などの軍事兵器の大半を無力化した事件。その事件を境に、ISは宇宙に人類を導く希望の翼ではなく---兵器として認識された。ISが発表された当初は見向きもせず、年端も行かない小娘が考えた戯言だと認識していた各国政府はすぐさま手のひらを返しはじめた。そこからだった。自分の国家の政府によって博士は軟禁状態にされ、ISの作成を強制された。それに加え各国の妨害を避けるために要人保護プログラムが発令。家族と離れ離れにされた上、その家族からは見放され、貶され、最愛の妹からは恨まれるほどになってしまった。自分はこの移動式ラボを作って世界から逃亡に成功したが...ISは最初に考えられていた使われ方とは全く違う、兵器として運用される世界になってしまった。同時に女性にしか動かせないことをいいことに女尊男卑の風潮が世界に蔓延---世界が変わってしまった。
「これが私の開発したISによって歪んだ世界の現状さ...お前には私の子供たちを悪用している施設とかをつぶしてほしいんだ」
「ISを悪用だと?具体的にどんなことを根拠に悪用と認定している?」
「そうだね、ISに適応するためだけに遺伝子を弄繰り回して試験管ベイビーを作り出したりとか、優秀なISパイロットの動きを搭乗者の精神を犠牲にしてまでも複製するシステムとか---いろいろある。」
馬鹿馬鹿しいだろう?とわざとらしく手を振る博士。
「そうだな...実に馬鹿馬鹿しい。だが...まだ手遅れじゃない。」
勤めて冷静に答える。実に胸糞悪い話だ。
「手遅れじゃない?何を言っているんだ君は。傭兵だからやっぱり頭馬鹿なのかな?今も世界はISを用いて次々に非人道的な実験を行っている---そんな状態なのに、何処が手遅れじゃないって言うんだッ!」
怒りを顕にした返事が返ってくる。博士が何を言っているか分からない。まだ
「お前は分かっていないな。私がどんな世界から紛れ込んだと思っているんだ。」
「それとこれに何の関係がある!」
「俺が乗っていたタイタンがそうだ。あれも最初は宇宙空間での作業やフロンティアの開拓作業に使われるべくして開発された」
「だからなんだって言うんだよ!」
こいつ短気すぎないか?人の話を耳に入れようともしていない。埒が明かないので過去の胸糞悪い事例を説明してやることにした。
「いつからだったかな....タイタンのパイロットにパーツとして人を押し込み始めたのは」
「...嘘でしょ...?」
「これは紛れも無い事実だ...良く聞けよ小娘。タイタンにパーツとして押し込められた人の多くは民間人の捕虜だった」
言葉を続ける。博士の顔から表情が一切抜けているが構わず進める。
「日々拡大を続け泥沼化していく戦場...そこで敵軍の家族だの何だので民間人の捕虜が多数捕らえられ---扱いに困ってしまったんだ」
「捕虜の扱いに困った上層部の目に入ったのはタイタンだった。日々何百何千と製造されているタイタンは自身のイメージでその四肢を動かす。そこでプログラムを調整して...逃亡しようとすれば神経に激痛が走るようにした」
「だからといって何もしなければこれまた激痛が走るように調整を加える。そうして出来た改造タイタンに民間人を押し込め戦線に投入した。挙句の果てに戦うという意思を示してしまったら最後、タイタンが勝手にで戦闘を始める」
「おまけに被弾の痛みやなにやらのフィードバックを残したままね。被弾するだけで激痛が走るけどタイタンは戦うのをやめない。機械ベースだからか隠れようともせずに敵に突っ込んでいく」
これは私が戦場で体験した事実だ。だからこそ、伝えなくてはならない。取り返しが付かなくなる前に。
「そして戦闘が終了したが最後---負けたらタイタンもろともフロンティアの藻屑と化すし、勝利したところで中の人間はフィードバックに耐え切れずショック死さ」
「なんて...惨いことをするんだ...」
「腐りきった上層部から見たらタイタンはただの機械だ。壊れたら作り直せばいいし、訓練されたパイロットを育成するよりもよほど低コストで生産が出来る。
「だからこそ非人道的な行為が加速していった。世の中ローコストハイリターンが求められていたからね、止めようが無かったし、止めたところでなにも変わらなかったさ」
「そんなことがフロンティア、宇宙の各地で行われた。正規のパイロットも数多くいたけど---戦場に投入される大規模部隊の前衛の多くは民間人を押し込めたタイタンだった」
「まさに作業という言葉が似合うよ、あれは。機械だから何も考えずに突っ込んでくるんだ。何体も何体も何体も!---痛みを感じないように、素早く撃破してあげることしか...私たち傭兵には出来なかった」
思わず拳を握り締めていた。本当に胸糞悪いことをやってくれたものだ...
「だからこそ...私はあんなことをこの世界でも繰り返したくない」
「事実私は---金のために戦争に参加し、人々を殺してきた薄汚い人間だ」
「傭兵業を通じて世の中の汚い部分を見てきたからこそ断言しよう」
「ISはまだ手遅れじゃない。やり直せるんだ!貴女が夢見た姿にも戻せるんだ!」
「信じてくれ博士。そのために私は協力を惜しまないつもりでいる」
そういいながら頭を下げる。我ながららしくないことをしているものだ。
「わかった...信じるよ。君のことを」
「そして君の事を今日からおー君って呼ぶね!」
「何だその名前...」
あきれた。さっきまで重苦しい雰囲気だったのにもう吹き飛ばしてしまった。この短時間だけでも分かる。面白い女性だ。本当に。
◇◇◇
かくして私は篠ノ之束博士と契約を結んだ。こちらに求めるものはISを非人道的に扱っている施設の破壊及び証拠の隠滅、または博士を執拗に追跡してくる組織への対処。見返りとして当面の衣食住の提供、作戦時における技術提供と戦術支援...それと、敬語の使用禁止を言い渡された。こちらも立場があるといったのだが---聞き入れてもらえなかった。どころか敬語を使ったら契約を打ち切るとまで宣言された。契約を打ち切られて外界に放り出されたらどうなるか分かったものではないので否応なしに承諾。ついでといわんばかりに受けさせられたISの適性検査---なぜか動かせてしまったことは別の機会に。結果として---タイタンが存在する世界の悪魔とISの生みの親である天災が手を組んだ。
◇◇◇
---今私はドイツ国内の秘密裏に立てられた研究所に潜入しようとしている。仕事の内容がこれまた胸糞悪いものだった...肉体の遺伝子情報を操作、ISにより適性のある人間「
{こちらマーセナリー...キーカードを発見。そちらの首尾はどうだ。}
{はいはーい!こちらカニーンヒェン!カメラのハッキングはしてあるからもう進入しても大丈夫だよ!}
元気だがどこか気の抜けた声で帰ってくる。
{了解...これより進入する。}
キーカードでゲートを開放、クロークを起動したままお邪魔する。エレベータを使うと進入がばれてしまうので階段を使い静かに下りていく。目的の階層の扉を発見...開くと同時に衝撃の光景が広がっていた。
薄緑色の培養液に満たされたカプセル...その中にはヒトの胎児が納められていた。一つや二つではない。それが何百と所狭しに並べてある。
{博士...これは...本当に構わないんだな...}
震える声で博士に声をかける。
{...うん。彼らもきっと救われるはず。これは私のエゴだけど---ごめんね}
消え去りそうなか細い声で返事が返ってくる...これは私の使命だ...やらなくてはならない。
カプセルのアクセスターミナルをクラッキングし、すべてを処理するよう選択させていく。最終判断が出てくる...私は迷うことなく、イエスを押した。
瞬間、花が咲いた。カプセルが爆ぜ、ヒトだったものと培養液がぐちゃぐちゃに混ざり合った物体が飛び散り、混ざり合い、地に落ちて散らばっていく。それを私は無表情で眺めていた。
{ごめんなさい....本当にごめんなさい...おーくんにはいつもつらい決断ばかりさせちゃってるよね...}
{構わない。あれだけの大口を叩いたんだ...私が、私がやらなくては}
何とか声を振り絞る。博士はまだ若い。本来はこんな光景を見せるべきではないのだろうが...これは彼女の罪でもある。だからこそ、私は---
{待っておーくん!生体反応がまだ残っている!}
突然あせりをはらんだ声が聞こえてきた。
{馬鹿な!此処の披検体は今爆破したものだけじゃないのか!?}
{どうやらそうみたい。此処の更に奥地、最深部に反応がある}
{お願いおーくん。確かめてきてくれない..?}
{了解した。科学者たちはまだ足止めできてるか?}
{ばっちりさ。束さん特性ガスでまだぐーすか寝ているよ}
{了解...}
スマートピストルを構えながら慎重に奥へ奥へと下っていく。
最深部には...銀。という言葉が似合う少女がいた。。カプセルの中に銀色の美しい髪---絹のように美しい肌をしている双眸を閉ざした少女が漬かっていた。先ほど楽にした胎児ではなく、しっかりと成長した少女...このことが示すものは、彼女が間違いなく成功例ということなのだろう。
{博士...こいつはどうするんだ}
{楽に---いや、ゴーレム君を派遣するからそのまま待っててくれないか?}
{まさか、持ち帰るつもりじゃあるまいな?らしくないぞ}
{それでも放っておけないよ!彼女は成長している!生まれた形は違えど彼女は意識を持っているかもしれないんだ!見捨てられないよ!}
{なぜそこまで躍起になる...同情したとでも言うまいな}
あきれたように答える。いつもは冷酷なんだがなぁ...こんなときだけとたんに甘くなる...
{そのとおりだよ。この子は私の目に留まった。私の心にその存在を認識させた。だから救いたいんだ}
{はぁ...分かった。ゴーレムが到着するまで待機するからさっさとゴーレムを出せ}
{ごめんね。いつも苦労ばかりかけちゃって...}
{そういう風に思っているならやめて頂きたいんだが?}
{残念ながら束さんは誰かに手綱を握られるのが嫌いなのさ!}
◇◇◇
カプセルを抱えたゴーレムと共に回収艇に乗り込む。カプセルの中に使っている少女を見て---私はさらなる波乱の予感を感じ取っていた。
分からない単語があったら感想で教えてください。出来る限りの範囲で教えます。
今回は束さんとの邂逅、くーちゃん(予定)を奪取しました。次回はなにやるか未定です。