誤字訂正。フルハベル暗月様。誠にありがとうございます。
ドイツの秘密研究所で少女を救出してから早二ヶ月。博士の依頼を遂行しつつ変態科学者やその護衛をミンチにしたり色々やっていたが、最近は警戒されてしまったのかとんと情報が入ってこない。.....暇になってからもう二週間がたつ。博士が指示を出さない限りはこちらも動けないので、本を読んだりトレーニングをしたりで何とか時間を潰していた。丁度本を読もうかと考えた矢先に自室の扉がノックされる。
「開いてますよー」
気の抜けた声で返事をする。しばらく任務に着いていないのだから気が抜けるのも無理は無い。働きづめでほぼ戦場にいたフロンティア時代とは違うのだ。
扉を開けて入ってきたのは以前ドイツの研究所で発見した---「クロエ・クロニクル」と博士が命名した少女だった。
「オリヴァー様、束様がお呼びです。格納庫のほうで待っているといっていました」
相変わらず堅苦しい娘だ。そんな呼ばれ方をすると何かむず痒くて仕方が無い。
「その呼び方はやめてくれ...博士と同じ呼び方で良いと言っただろう?」
「は、はい。おー君様」
結局堅苦しいじゃないか(困惑)オリヴァー様よりは柔らかいからいいか。それよりも呼び出しの件についてださっさと行かないと博士がすねてしまう。
「いまから行くけど、部屋の中のものには余り触らないようにねー」
そう言い残して格納庫へと向かう。久しぶりの仕事だ。隠密しか出来ないのが少々嫌だが、それでも仕事をするのは楽しいものだ。
◇◇◇
格納庫へ到着してみれば、どこか疲れた顔をしている博士と---巨大な布をかぶった何かが2つあった。大きさは七メートルほどだろうか。疲れた顔を見るに、ここ最近はこれに掛かりきりだったらしい。
「...博士、まさかとはおもうがこれは?」
「いやー実に大変だったよ!君も分かっているとは思うけど---」
「やっと出来たんだよ!タイタンが!」
同時に布が剥がされる。そこにはずんぐりむっくりとした巨大な体、どこか力士を想像させる丸みを帯びたフォルム、背中に装備された少し角ばったバックパック。フロンティアで今も猛威を振るっているであろうスコーチ級タイタンが鎮座していた。
「わぁお....」
思わず感嘆の言葉を漏らしてしまう。この世界の未発達な技術でタイタンを完成させるとは...流石に天災と呼ばれているだけある。
「こいつぁフルスペックなのか?どこか未完成の部分とかありそうなものだが...」
未完成の部分。そこである。博士を信用していないわけでは無い。むしろ全幅の信頼を置くまであるが、それとこれは話が別だ。タイタンの装甲はフロンティアで発見された鉱石などが使われていることもある。アトラス級などの第二世代タイタンならまだしも、イオン級などの第四世代タイタンの装甲はその大部分がフロンティア原産の鉱石を基に作られていたはずだ。流石に博士でもそれの再現は無理であろう。
「そうなんだよねー!装甲の大部分はオリジナルのスコーチに比べてかなり劣化しちゃってるんだー。その代わりにタイタンの表層に張られているシールドを変更したんだ!ISのシールドエネルギーをそのままもってきたのさ!」
「駆動系の出力も問題ないよ!機能中枢にISコアぶち込んで劣化したリアクターコアの出力を補わせているから問題なし!ブイブイ!」
さりげなく恐ろしいことを言っている。すでに完成されてあまり改良の余地がなくなってきているタイタンの機能中枢部にISコアをぶち込んだ?なんて恐ろしいことをやってくれたんだ。
「ISコアを使っているということは、操作方法もISのそれに近いものに変わったのか?」
これが一番恐ろしいことである。もし操作方法がIS準拠になってしまっていたらそれはめんどくさいことになってしまう。
「まっさかー!ちゃんとタイタン特有の操縦方法になってるよ!君たちの世界の開発者は実に面白い操縦方法を考えたね!慣れるまでは大変だろうけど慣れたら物凄い機動とかも出来ちゃうんじゃないかな?」
束さんのISにはかなわないけどねー!とハイテンションになっている博士を尻目に武装データを参照していく。一つおかしいところをみつける。
無い。メインウェポンのランチャーが無いのだ。
「博士....ランチャーが無いのは何故だ....」
ちょっとだけ落胆する。あれを飛び回るパイロットに直撃させるのはなかなかの爽快感があった。少しだけ残念だ。
「ちょ、ちょーっと開発が追いつかなかったというか、ランチャーの排莢機能の油圧バイパスが複雑すぎて再現できなかったというか...」
しどろもどろになってしまった。
「そこはご愛嬌ってとこにしとこう」
「そりゃ助かるね!」
「それで、だ。タイタンなんか何に使うんだ?今までの任務は全部隠密だっただろう?」
かねてからの疑問である。研究所に潜入して内部から静かに壊滅させるのが今までの任務だっただけに解せない。
「んー、単純に研究者として造りたかったってのもあるけどね---」
言葉が途切れる。もったいぶらないでさっさと言って欲しい。
「君の全力を見てみたいんだよ。タイタンに乗った君のね」
「そりゃまたなんでだ....?今までの任務でも全力は出していたぞ?」
これは紛れも無い事実だ。傭兵として任務に手を抜くなどということは有り得ない。
「違う違う。君が今までの任務で全力を尽くしてくれてるのは分かってるんだけど、その様子がデータに残されていた戦闘記録と大分違っていたからさ、やっぱドンパチさせて君の能力を余すところ無く使った姿を見てみたいんだよ」
「えぇ....」
ちょっと引いてしまう。人の全力を尽くしてハイになった姿を見たいとかどんな思考回路しているのだろうか。
「まぁいい、問題はこいつを使う場所があるのかどうか、だ」
タイタンを指しながら問う。
「そこも問題無しだよ、ちょーっとお灸を据えてやらなきゃいけないヤツラを見つけたんだ」
そう言いながら端末を投げ渡してくる。
「任務の場所はアフガニスタン、内戦により国内情勢が荒れていて情報が外に出ていかないことをいいことにアメリカがVTシステムの模擬戦闘試験を行うと情報が入った」
ヴァルキリー・トレースシステム....ISの国際大会、「モンド・グロッソ」における
「そこで君にはタイタンで試験に乱入、VTシステム機に関しては破壊、通常のISは活動不能にして欲しい」
....VTシステム、か。タイタンでもそんなシステムは搭載されていなかったというのに。何処までこの世界は腐っているのだろうか。向こうも大差は無いが。
「話はよく分かった、が通常兵力はどのくらいいる?その量によっては厳しいかもしれない」
「戦車部隊が一個小隊、歩兵部隊一個中隊が駐屯しているけど、タイタンなら余裕さ」
成る程。そこまで量が多いわけではないか、そう危惧するほどでもなかった。それよりも問題は---
「そもそもこのタイタンをどうやって運ぶんだ?軌道上に送ってフォールでもさせるか?いや、無理か」
冗談めかして言う。大体タイタンを軌道上から降下させるのにはタイタン用の輸送船なりなんなり必要になる。この狭い研究所じゃ作れそうにも無い。
「え?軌道上から降下させるけど?」
ホワッツ?今こいつなんていった?
「すまないがもう一度言ってくれ。耳が腐ったかもしれん」
「だーかーらー軌道上から降下させるって言ってんじゃん」
良かった。私の耳は腐っていなかった。だが心配するところはそこじゃない。
「まてまてまて、軌道上から降下させるといってもどうやってタイタンを軌道上に移動させるんだ。無茶しかないだろう」
「ゴーレム君に運んでもらう気でいるけどどうかした?」
「降下時の出力が足りないじゃないか、そこはどうするんだ」
「ゴーレム君にぶん投げてもらうから十分でしょ?」
「パイロットである私の負担は?」
「君その程度じゃ死なない体でしょ」
説得を試みたが駄目だった。やってられるかこんちくしょう、泣きたくなってきた。
「......任務....了解。」
渋々答える。確かに体は闘争を欲してはいる、だがこんな無茶な任務になると誰が想像しただろうか。
「軌道上に上げるときにはまた連絡するから、しばらくゆっくりしていていいよー」
「いや、タイタンの調整をする。道具を貸してくれ」
「おっけい。壊さないでね」
そういって去っていくは博士。それを見送った後、素早くコンソールを起動、内部データを確認していく。
(表面のシールドエネルギーの数値が大幅に上昇している...それに加えて動力の出力が信じられないほどにアップしている。ISコアの出力は化け物か)
続いて武装データの確認、及び戦闘機動の感度変更をしていく。
(ランチャーが無いのが少々痛いところではあるが、それを補うためにヒートシールドの出力と稼働時間が大幅に伸びている...なんだこれ、実質無限に使えるようなものではないか。ファイアウォールの射程も伸びているしかなり性能が向上されているな)
戦闘機動に関しては特に弄る必要が無かった。この世界に放り込まれたときに乗っていた嘗ての愛機---イオンの感度がそのまま反映されていた。此処だけはデータが抽出できたのだろうか。
(....イオン、か。懐かしいな。今まで散々無茶な扱いをしておいて、最後は博士に丸投げしたからなぁ。いらないからどうにかしてくれって)
今思えば申し訳ないことをした気がする。なんだかんだ言っても一番乗り心地が良かったタイタンでもあるし、一番長く乗っていた愛機でもある。あれを入手したときの波乱も忘れていないし、あれで参加した数々の任務も機能のように思い出せる。すべてが懐かしい。戦友たちの顔も、鬼のように不味いフロンティアの酒の味も、ぶつくさ文句を言いつつもしっかりと整備をしてくれたおやっさんの小言も。端末を閉じる。嘗てのことを羨ましく思おうがここはあちらの世界ではない。
「精々...頑張るとするか」
そう一人ごちて格納庫を出る。
◇◇◇
3日後...俺はタイタンのコックピット内で地球を見下ろしていた。
{星を宇宙から見るなんてのぁ、向こうじゃ何度でもやったがこの星は特別に綺麗だな...}
海があるのが大きいのだろうか、地球はとても青く見える。
{ホントはISを使ってこんなこともしてみたかったんだけどねー。誰かと一緒に星を見たりとか}
今じゃとてもかなわぬ夢である。その夢を叶えるために協力しているとはいえ、結局ISを兵器として運用しているのは少しばかり心苦しい。そんな感情を押し殺して精神を統一する。
{そろそろアフガニスタン上空に到達する....準備は良い?}
やっとか....ずいぶんと長かった。
{いつでも出来ている}
短く返答する。覚悟は決めた。遺書も書いておいた。隙は無い。
{一度言ってみたかったんがだよねぇ!この台詞ぅ!}
『タイタンフォールスタンバイ!!』
ハイテンションな博士の声が聞こえた瞬間、凄まじいGが体を襲う。この体じゃなければぺちゃんこにでもなってしまいそうだ。そして地獄のような高温。大気圏突入時の摩擦でコックピット内が地獄のような暑さに変わる。システム系統が焼きつかないためにほとんどのシステムの電源を切っている今、コックピット内は地獄へと変貌した。
(やっぱ無茶があったよこの降下方法!暑い体重い暑い!)
こんなことを考えている間に地上はみるみると近づいていく。パイロットスーツの機能で意識が飛ばないのがまた厳しい。身体を改造しているとはいえ耐えられない気がしてきた。とうとう独特な音と共にタイタンの身体から大気圏突入用パーツがパージされる。
{まもなく地表に到着。衝撃層まで3...2...1...0}
今まで味わってきたGとは比べ物にならないほどの負荷が身体を襲う。だがそんなことで悶えていていたらISが離脱してしまう。素早く機内のコンソールを弄り、システムを全起動させる。
[システム起動を確認....機内が高温です。冷房を稼動させます]
ダンディな男性のAIボイスが耳に入る。まさかこの世界でもタイタンに乗ることになるとは夢にも思っていなかった。
「さぁ!始めようかッッ!」
この世界に本来存在してはいけない禁忌の存在...鋼鉄の巨人とそれを駆る悪魔が、この世界に始めて降臨した。
スコーチ(兎印)
ウサギさんが頑張ったよ!
ISコアも動力部にぶち込んだせいでスラスターの出力とか武装のパワーとか凄いことになってしまった上、おまけにIS準拠のシールドエネルギー付き。
その代わりランチャー無いし装甲の大部分劣化したけど大丈夫だよね?な仕様
フォールさせるときにはゴーレム4機で大気圏まで運んでそこからブン投げなきゃいけない。これ大事。