猟犬の首輪   作:ノムリ

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曾孫救出

 片手にペラペラのメモを持ちながら、スラム街を歩く少年が一人。

「何が、君なら直ぐに見つけられるだろうだ。いくら俺がスラム出身だからって、こんな広い街から少女一人を見つけるなんて簡単な訳がないだろ」

 足元に転がっていた空き缶に八つ当たりして蹴飛ばすが、気分は晴れない。

 自分の上司に、報酬こそでるが、ある少女の確保を頼まれた。少女の名前は峰・理子・リュパン。世界的のも有名な怪盗リュパンの曾孫で、数日前まで監禁されていたらしい。

 俺の上司、教授とも呼ばれているが、本名はシャーロック・ホームズ本人である。そのシャーロックは異常な推理力によって未来予知とすら言える推理『条理予知(コグニス)』によって算出されて未来によれば、このスラム街に息を潜めているそうだ。

 

「それを俺に頼むかよ」

 メモにはリュパンの曾孫の特徴がいくつか書かれている。

 金髪、青い装飾のついた十字架を持っている、痩せている。

「十字架以外はマトモな情報じゃないな」

 メモをグシャグシャにしながら上着のポケットにしまい。手当たり次第に道を進んでいく。 

 

 道に散乱する食べかけや泥のついたボロ布。

 これらは街の出したゴミであり、同時にスラムに住む子供や老人にとっては無くてはならないものでもある。

 路地を進む度にボロ布を纏って地べたに座り込んでいる子供が無数におり、その目には生気はなく。ただゴミを漁っている生きているだけ。いや、生きているといより、ただ死んでいないだけ、と表現するべきかもしれない。

 

「足掻かない限りは此処から抜け出すこともできないって言うのによ」

 それは過去の自分。スラムで生まれ育ち、拾ったナイフと己の拳一つで世界に名を連ねる人外ランキングに名を記するほどに実力をつけた。

 

「んな、ことより、リュパンの曾孫を探さないとな。スラムに来て数日しか経ってなくて、雨露しのげる場所…ならら、あそこか」

  

 

 

 

 

 スラムでゴミを集めて自分の家を作らずに雨露をしのげる場所は街の構造にもよるが、そう多くはない。その一つは、トンネルだ。本来は車が通るのが普通の場所だが車が通ることは滅多になく、スラムに生きる者たちのたまり場になっている。

「居るなら此処と、あとは~っと。お!金髪発見!」

 視線の先には、頭からボロ布を被っているが、泥のついた金髪が僅かながらにフードから覗けた少女。

「なあ、君」

「…なに」

「君ってさ。峰・理子・リュパンって名前じゃないかな?」

 そう口にした瞬間、少女はいきなり立ち上がると、走り出そうとした。俺が歩いて追いつけるような速さで左右に揺れながら必死に走り、そしてドシャッと前のめりにこけた。

 シャーロックは監禁されていた、と言っていたからもしかしたら思っていたけど、やっぱりまもとな食事はしてないみたいだな。体力が無さすぎる

 

「ぅ……ぅぐ…に、逃げ」

 近くまで行くと、起き上ろうとしているようだが、体は上がっておらず起き上がることすらできないようだ。

「取って食おうって訳でもないんだから話しぐらい聞けよ」

 地面に倒れいるリュパンの曾孫を持ち上げ、子供を抱くように胸に抱え込む。

「よっと。まずは、飯だな。御粥なら出している店があったし、そこで話をしよう」

 リュパンの曾孫を抱えたまま裏路地を抜け、表通りで営業していた御粥を一杯購入し、リュパンの曾孫に手渡した。

「食いながらでいいから話は聞けよ」

 リュパンの曾孫は首を縦に振ると、御粥をゆっくりと口に運んだ。

「俺は上司の依頼でお前の確保を頼まれた。別に危ない事なんて特になし、大丈夫だと思うんだけどって、聞いてる?」

 器を傾けて、ゴクゴクと御粥を飲み干していくリュパンの曾孫。

 うん、聞いてないね。

 

「このまま連れていった方が早いか」

 ポケットからスマホを取り出し、シャーロックに電話をかけようと思っていると画面が変わり。電話が来た―――シャーロックからだ。

 

 電話に出ると第一声が、

『無事に見つけられて見たいだね』

「一言目がそれですか、この野郎」

『ご苦労だったね、では、早速だが連れて帰ってきてくれと言いたい所なのだが。峰くんを監禁していた犯人がその街に向かっているようでね。その人物に僕は会いたいと思っているんだ。今からメールする座標まで上手く誘導してくれ』

 プチ、と言いたいことだけ言って電話は切られ、メールが届いた。メールを開くと衛星から撮影した写真と、北緯と経度も乗っている。

 随分と近いな。これなら数十分もかからないな。

 

「あの迷惑探偵は何時になったら死んでくれるのだろう」

 スマホの電源を切り、ポケットにしまう。向かい側の席に座るリュパンの曾孫に視線を移すとリュパンの曾孫は俺の後ろの”何か”を指さしていた。

 俺もそれにつられて、後ろを振り返ろとそこに居たのは狼だ。しかも一匹ではない、まるで狩りをする狼のように数十匹の群れを成してそこに居たのだ。

 

「曾孫!掴まれ!」

 リュパンの曾孫と口にする時間する惜しい。

 机を倒し、曾孫を抱えて走り出すと、後ろの狼の群れも同時に走り出した。

「ガゥ!」

「…理子を追ってきたんだ…ブラドが来てるんだ」

 俺の上着を強く握りしめながらそう口にする曾孫。

 

「リュパって長いな。おい、理子。そのブラド?って奴の事を教えろ。俺の上司がこっちに向かってるから時間稼ぐぞ」

 

「わ、わかった!ブラドは吸血鬼なの」

「吸血鬼!?んな、漫画じゃあるまし」

「本物の吸血鬼なの!見れば一目でわかるよ」

 100年は生きた名探偵の次は、吸血鬼とかありですか。

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