右手で理子を抱え、左手で脇のホルスターから抜いたマカロフを撃ち、弾が無くなれば直ぐに銃倉を入れ替えて、間髪入れずに撃ち続ける。とにかく撃ち続けているが一向に狼の数は減る様子がない。
「ブラドって奴は猛獣使いの仕事でやってるのかよ!」
前方を歩いている人たちは、俺の後ろの狼の群れを見て慌てて避けて道を開けていく。この街では、銃の撃ち合いなんて別に珍しくもないが、狼の群れは珍しいようだ。
「撃っても無駄だな。無駄弾を使うより、こっちの方が効果的か」
店先で掴み取った料理酒の入った瓶を狼たちに向かって投げつけ、大鍋を加熱していた薪を掴み取みとった。理子は俺の行動を見て、素早く頭を胸に埋めている。
「狼の丸焼きってな!」
薪をアルコールを被った狼の群れに投げつける。文字通り、狼たちは炎に包まれ。熱に暴れる狼が隣の狼に衝突して引火、それをネズミ算に繰り返していく。あっという間に群れは火だるまとなり、息絶える狼も出てきた。それでもやはり、殺しきれぬ狼も出てくる。
体に火傷を負いながら未だに、俺と理子を追うことを諦めない狼の群れ。
「倒すより、目的地を目指した方がいいな。っよ、っほっと」
再び、走り出す。
屋台を足場に家屋の屋根を上がり、後を追って来ようとウロチョロしている狼の群れを放置して目的地へと向かう。屋根を伝い、地上を移動するよりも早く移動していく
「ねぇ!ねぇってば!狼が追ってきたよ」
「あ?」
後ろを振り返ると、俺と同じように屋台を足場に無理やり壁を登ってきたようだ。
目的地は走っていける距離だが、狼の群れを引き連れていくわけにもいかない。いや、シャーロックなら何とかするだろうが、理子が危険だ。
「しゃーないが、シャーロックに任せるとするか」
無駄弾による出費と理子を守りながら戦うという危険を避けるために、シャーロックに丸投げすることを選択した。
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途中で見知らぬ人から奪い取ったバイクで郊外を独走していく。
目的地は既に見えている。問題はやはり後ろに追ってくる狼の群れだ。
此処に来るまで何度も妨害をし、量は減らしたがやはり、理子を守りながら戦うのは無謀でしかない。
「ねぇ、あの建物じゃない?」
バイクを運転する為に右腕から左腕に抱えている理子が指さした先にあったのは廃れた教会。
「到着だ!居てくれよシャーロック!」
体重を体を移動させてスライディングしながら速度を落とす。バイクは地面に擦れて火花を散らし、傷だらけになっているが俺のじゃないから問題ない。
バイクを乗り捨て。閉まっていた扉を開ける手間すら惜しみ、蹴って開ける。中に飛び込むと中には20代後半の若い見た目の男性が立っている。
「シャーロック!」
「来たようだね、シアンくん」
後ろの開けた扉から狼の群れは教会の中になだれ込み、あっという間に俺と理子、シャーロックを囲んだ。
「ブラドの手下だね。手を出さない所を見ると、ブラドが来ているようだね」
「ゲババババ!その通りだ!俺様はもう居るぜ」
妙な笑い声を上げながら天井から降ってきたのは、毛むくじゃらの化け物。
「吸血鬼ってより、狼男だろ」
そう一人でツッコミを入れていると、腕の中でプルプルと震えている理子に気が付いた。震える理子を隠すように着用していたマントを脱いて理子を包み込む。
「そんなに怖がるなよ。俺が守ってやるからさ」
「……うん…」
小さく頷いた理子。
「ゲババババ!そんな出来損ないを守るだって!四世にはな、リュパンの遺伝子なんて受け継がれていない。ただ欠陥品だ!」
大口を開けながら高笑いしているブラドに向かって、マカロフを素早く抜き口の中に銃弾を撃ち込んだ。
「ゲバッ!?クソが、何しやがる」
赤い目で睨んでくるブラドに向かって、鼻で笑いながら返した。
「っは!大口開けてたから撃ってほしいのかと思ってよ!」
「人間風情が!一滴残らず血を抜いて壁に串刺しにしてオブジェにしてやるぜ!」
「理子、降りろ。シャーロック、あいつは俺が潰す。理子を見ておいてくれ」
抱えていた理子を下ろし、シャーロックに預けると、シャーロックは了解してくれた。
「…帰ってこなきゃやだよ」
「大丈夫だよ、ちゃんと帰ってくるからさ。んじゃ野郎か、コウモリ野郎」
腰に左右に下げたケースからマチェットを抜き、左右の手に握る。
こうして、数年後に