猟犬の首輪   作:ノムリ

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聖歌の歌い手

 私は歌を歌うのが好きだった。

 病気だった母も私の綺麗な声で歌を奏でた時は、笑いながら頭を撫でてくれた。

 いつだった働く事の出来ない私は、道端で歌ってお金を恵んでもらっていた。運がいい時はそれだけで、母の薬を二日分稼げることだったあった。

 

 街で有名になった私は、街の酒場で夜にだけ歌を歌う仕事を貰っている。

 お客さんが歌を気に入ってくれればチップも貰えて、お客さんが増えれば酒を頼む人も増えて、お店も繁盛する。店主とはウィン!ウィン!な関係を築けている。

 

 でも、そんな時に事件があった。

 酒場で歌を歌った帰り道に酒によって若い人たちに襲われた。

 その時、人生で初めて大声を上げた。

 

 私には、『音響』という超能力が備わっていたらしく。叫び声は音響兵器の如く周囲を破壊した。

 木材の家屋は勿論。私の手足を抑え込んでいた若い人たちは吹き飛んで行った。

 

 この事件が原因が私は街での居場所を失い。母も遂には息を引き取った。

 

 その後、私は私の噂を聞きつけたマフィアのボスに連れられて、生まれてから一度も出た事のない街を出る事になった。街の外は色んな初めてで溢れていた。

 

 捻るだけで水が出てくる金属の口。

 入れたものが冷たくなる箱。

 向こう側になにも無いのに、知らない場所が映し出される板。

 

 運の良い事はマフィアのボスは歌が好きらしく。マフィアのボスの好きな歌を歌う代わりに私に身は守られる。

 それも、もしかしたら今日までかもしれない―――だってマフィアの人たちの心臓の音が次々に消えていっているのだから。

 

 

 

@@@

 

 

 

 シャーロックから超能力を持つ少女―――シレーネ・リューナの保護を依頼された。

 こんな仕事を頼まれるのは、理子を保護して以来だ。

 

「超能力の担当はジャンヌだと思ったけど、確かにジャンヌにマフィアの殺害はキツいはな」

 ジャンヌは世界中で超能力に秀でた者を『イ・ウー』に加入させる、という仕事をシャーロックから頼まれている。ただし、それは勧誘をするだけだ。他人を殺す事をジャンヌは未だにした事がない。

 基本的に、『イ・ウー』の問題事は俺が解決する傾向にある。元からそういう(人を殺す)仕事を数えきれない程にしてきたから、良いんだけど。金を稼げるから、っとそろそろ到着か。

 

 

 

 

 少し古びた街にある外見こそホテルに見えるが、そこに住んでいるのはマフィアの一団。

 街の住人から護衛費だと言って、金品を巻き上げる。まあ、マフィアが街に居る事で街を盗賊なんかが襲わないという事もあるのだろうが、彼らはその役目を果たせてはいない。といか、街には自警団があるらしくそっちの方が仕事をしている。それでも武器を持つマフィアを潰すのは難しいそうだ。

 トボトボ、と街を進み目的の進んでいく最中に、家の中から窓越しに俺を見つめる視線をいくつも感じた。恐らく街に住人だろう。

 

 

 さて、仕事を始めようか。

 ガチャ、とホテルの巣窟の扉に手を掛け、扉を開けると入って直ぐの所に男たちが四人が椅子に座ってジャンブルをしていた。

 

「あ?なんだ、このガキは」

「クソガキ、ここはホテルじゃねえぞ」

「確かに外見はホテルだもんな」

「そんのほっといて続けようぜ」

 俺の姿を見て、それぞれが違う反応しめす。

「ここってさ、マフィアのアイデクセのアジトであってる?」

「合ってるぜクソガキ。分かったらとっとと帰りな」

「ありがと、教えてくれて。だからさもう、用済みだよ」

「は?」

 

 

 ―――スパッ!

 

 

 黒人の首がボールのように、トランプを広げていた机の上を転がる。

 

 腰に下げた左手で抜けるようにくっつけたホルスターから刃渡り20センチのトレンチナイフ―――黒爪を素早く引き抜き、黒塗の刀身は血によって赤黒く染まり。黒人の首をたやすく切り落とした。

「カルー!カルーの首が!」

「このクソガキが!」

「あぁー!首が!首がっ!」 

 カルーという名前の黒人の首を見て、残っていた三人が大声で叫んでしまい。上の階に居たマフィアたちにも俺の存在がバレてしまった。

「うじゃうじゃ、出てきたよ」

 無数の銃口が俺に照準を合わせる。

 

「撃て!撃ち殺せ!」

 リーダーらしく男が叫んだ。

 

 ダダダダダダダ!

 

 

 先に目の前の敵を片付けるほうが先決か。

 強く床を蹴りつけ、抜き身となった黒狼を素早く動かして残った三人の胴体を一閃。命を奪うような攻撃ではない、激しい行動を不可能にするような軽めの攻撃だ。

 

「三人もいれば壁として十分だな」

 先ほど斬りつけた三人の男たちの服を引っ張り、即席の壁とする。壁の影に隠れ、雨のように降り注ぐ弾丸から身を守る。ドスドス!と音と衝撃が壁を通じて伝わってくる。

 アイツら三人が死んだと思っているのか、仲間なのに躊躇ないな。

「撃つのをやめろ。おい!死んだか確かめろ」

 リーダーが階段近くにいた部下に命令を下す。部下は警戒しながらゆっくりと階段を下りてくる。

 

 んじゃ、狩りを始めようか。

 ッダ!と壁の代わりにしていた三人の死体の影から飛び出し、俺が死んだかどうかを確認する為に近づいてきた二人の男を狙いマチェットを振る。

 二人の男を切り裂くと、男たちは膝から崩れ落ちるなか、引金に指かかっていたままAKはあらぬ方向に銃口を向けながら発砲された。壁や天井、果てにはマフィアたちに銃弾を飛ばす。

 

「うぉ!?」

 あぶな!

「おい!大丈夫か」

「あの、役立たずが!」

 上の階にいた、マフィアたちは焦りながら屈み銃弾から身を守り。

 

 受けた攻撃に放心している間にマチェットは腰のホルスターにしまい、床に落ちているAKを拾い上げる。

「弾代は節約しないとな、ほいっと」

 

 ダダダダ

 

 目の前の男二人に向かって躊躇なく引金を引き、撃ち殺す。血しぶきをまき散らしながら絶命する男二人。

 仲間が殺される光景を目の当たりにしたマフィアたちは叫びながら、再び引金に指をかけた。

 

  

 

 階段を駆け上がり。目につく敵を片っ端からAKで撃っていく。勿論、全弾が当たるわけでもないし、避けられたりすることもある、けれど問題ない。今、重要な事は敵に反撃をさせないということだ。室内、という戦場の中では一対多数というのは勝率を左右する重要なものだ。

 

 弾倉が空になったAKを本体ごと敵に投げつけ、死体となったマフィアの手の中にあるAKを拾い上げて構え……撃つ。

 

 

 

@@@

「なんだ、あのガキは!」

 マフィアのリーダーは悪態をついた。

 なにせ、相手はたった一人、それもガキが一人だ。なのに、次々と仲間は殺されていく。ガキに死の物狂いで反撃をしていくが、今の所数発当たっただけで血すら流れていない。

 弾を撃ち尽くしたAKを落としホルスターからグロックを抜き取り、銃口を突進してくるガキに向ける。

 

 ガキが俺を見る目は……あれは、肉食動物が獲物を狙っている目だ。

 普通の人間が生きて死ぬ間で感じる事のない感覚―――狩られる恐怖だ。

 

「ひぃ!死ね!死ね!」

 ガチガチと歯を鳴らし。

 震える手でガキを撃った。

 

 ダン!ダン!ダン!ダン!

 

  

 ガキは器用に飛んでくる弾丸をAKを盾にして防ぎ。AKを投げ捨てると腰から素早くマチェットを抜いた。

 鈍く光るマチェットの光が死の恐怖を加速させる。

 

 グシャ

  

 皮膚を突き破り、肉を裂き、心臓をマチェットが抉った。

「か…ぁ……」

 俺は、ここで死ぬのか、その声に返事をする人はおらず。静かに鼓動とともに消えていった。

 

 

@@@

 

「これでラストっと」

 リーダーの胸からマチェットを抜き、死体となった目の前の男の服でマイェットの血を拭い。ホルシターに戻す。

「あとは、ボスだな」

 

 

 上層を目指して階段を上がっていく。やはり、先の戦いでボスを除いて敵は全員倒してしまったらしく。敵に出くわすことなくすんなりとボスの居る一室まで行くことが出来た。

 

「騒ぎの原因は貴様か、小僧」

「マフィアのボスなんて、てっきり性格の悪そうなジジイかと思っていたけど案外そうでもなさそうだな」

 革製のデスクチェアの腰を掛けている年寄りはただの老人という気配ではなく、退役した軍人という感じだ。

 

「その年で分かるとは相当な修羅場を抜けてきたようだな。ワシも年よりだ、激しい運動は控えたいが」

 老人はゆっくりとチェアを後ろに引き、机の引き出しを開け。そのから二丁の銀色の拳銃を取り出した。

「やはり、ベッドの上で死ぬよりも、死ぬならば戦場で死にたいものだ。小僧、悪いがジジイの我儘に付き合ってもらうぞ!」

「ッハ!俺に老人の気遣いなんて期待しないでもらいたいもんだ!」

 

 左手にマチェット

 右手にマカロフ

 一剣一銃を構え、老人の我儘に付き合うこととなった。命をかけてだが。

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