ダン!ダン!ダン!ダン!
右二発。左二発。交互に撃たれる拳銃。
このジジイ、避ける先を予測して次弾を撃ってきやがる!
走り回るには狭すぎ、近接戦闘をするには微妙に広いこの部屋。その中を右に、左に、的にならないように避けるが、避けた先で当たるように微妙にタイミングをずらして次弾が発射される。
「逃げ回れ!ネズミの如くな!」
チェアに座っていた時とは違い。若返ったと思えるほどに元気に拳銃をブっ放している老人。若い時は、常時このテンションだったのか?しかもあのジジイ、立ってから一歩も元いた場所から動いてねえぞ。どんな腕してんだよ。
椅子や机を巧みに壁や足場としながら銃弾を嵐を避ける。
デカイ机が邪魔でマチェットが届かない。弾倉の交換の隙を突くにしてもリスクが高すぎる、けどしないと攻撃に移れないか。
いっちょ、賭けに出るか。
「老人はさっさと土の下に帰れよ」
脚で椅子を器用にサッカーブールのように老人に蹴飛ばし、その後ろをついてく。
「ネズミの考える事はどいつも一緒だな」
椅子の影から飛び出してきたのは、両手に拳銃を構えた老人の姿だ。
カチャ、と二つの銃口が俺に向けられた。
「うおぉ!」
驚きの声を上げながら右手をジジイの方に向けマカロフを発砲しようとするが、老人は動じる気配もない。変わらずに二丁の拳銃を俺に向けたまま―――発砲してきた。
ダンダンダンダン
急所にあたる部分に飛んできた弾丸を狙い引金を引く
ダンダン
数こそ少ないが胸や脇腹に弾丸を当たる。
「っつ!」
走る痛みに歯を噛みしめて耐えジジイに目を向けると、
「弾丸を弾丸で弾くとはな、やってくれるじゃないか!」
弾を使い切った弾倉を床に捨て、不適に笑いながら新しい弾倉をポケットから取り出し拳銃に入れていた。
弾丸の当たった箇所をさする。
「老人の癖に動きが軽やか過ぎるだろ!」
「歳よりは人生経験からの予測が出来ると知らんのかね」
腹立つなこの老人!最初は立ったままだったのは、動けないと思わせる為か。確かに人生経験からの手段だわな。
「けど、手が届く範囲に来てくれたのはありがたい。斬り殺してやるよ!」
「やれるものならやってみろ小僧!」
大声の宣言。
付かず離れずの状態で間髪を入れず連続で発砲してくる。
飛んでくる弾丸をマカロフとマチェットで弾き、近づこうとするもバックステップで離れられてしまい近接にまで持ち込むことが出来ない。
……やりずらい、弾も切れそうだ。一つ試しにやってみるか。
「どうしたネズミよ、っうぉ!」
老人は顔面目掛けて飛んできたマチェットを素早く躱す―――それが囮だとも知らずに。
思わず後ろに飛んでいくマチェットを目で追ってしまった。一分、一秒が生存を左右する実践の中で敵から視線を外すのは自殺行為だ。だが、これはスポーツや手品にも応用される”ミスディレクション”という技術だ。
バスケやサッカーなどボールを扱う競技では、意識をしない限り選手ではなくボールを目で追ってしまう。実践なら銃やナイフを目で追う。俺がやったのは意識を集中させて、マチェットを当たるか当たらないかの所を狙って投げ、老人は避けた。そしてその後を目で追ってしまった。
つまり、俺という敵から視線を外した。
マカロフを宙に投げ、両手をフリーに。
脚を広げて構えた。
「これでも、くらえ!」
右足を軸とし左回りに体を回転させながら上への後ろ回し蹴り。
「がぁ!」
マチェットに視線を向けていた老人は、避けるどころか防御することもできずにまともに受け、体は僅か浮き上がり、踏ん張ることすらも出来ず一発目の蹴りに続く二発目も蹴りも受ける事となる。
左に回転する体を素早く止め。左足を軸に変え、右脚による蹴りで、浮いている老人の蹴り飛ばす。
「どりゃ!」
老人の体はボールのように蹴飛ばされ、壁に激突してズルズルと床に落ちた。
壁に刺さったマチェットを引き抜き、立ち上がりもしない老人に近づく。首に手を当て、脈を図ると既に鼓動を感じることは出来なかった。
老人にあの衝撃は強すぎたか。
「さて、目的の人物に会いに行くか」
マカロフとマチェットをホルスターにしまう。
部屋を移動……する前に老人の持ち物を物色しておくか。
@@@
豪華な掘り込みをされた扉を開けて部屋に中には入ると、中にはベッドと机にソファがあり。生活に必要な最低限なものがあるだけの部屋だ。
「本すら無いって、暇すぎるだろ。この部屋」
「知っていますよ。そんなこと」
俺を警戒する様子もなく、当たり前のようにベッドに腰を掛けているマシュマロブラウンの髪の少女。恐らく彼女がシャーロックの連れてきて欲しいと言っていたシレーネ・リューナだろう。
「知っていると思いますが、私はシレーネ・リューナと言います」
ベッドから腰を上げ、ワンピースの先をつまみ上げて挨拶をするシレーネ。
「てっきり、マフィアを殺した俺に罵詈雑言でもあるかと思ってたけどないんだな」
「特には。マフィアたちはあくまで私のクライアントのようなものです」
なんつーか、ドライなやつだな。表情は無表情に近いけど、どっちかというとジト目に下がった眉毛がどこかゲームキャラなどがする困った表情に見えなくもない。それに性格も暗そうだし。
「あっそ、んじゃ。俺がお前を連れていくことには抵抗しなのか」
「はい。私には生きる目的も、理由も既にありませんので」
静かにそう口にした。
ま、イ・ウーに居れば嫌でも揉まれることになるから大丈夫だろ。
寄り道することなくボストーク号に帰り。直行でシャーロックの所へ案内して、俺はさっさと部屋を出る。
「どーん!」
背中にムニュ!というやわらかい感触と馴染み深い重さが体に乗っかる。
「理子」
「流石、未来の旦那様だね!胸の感触で理子って分かるなんて」
俺の腰に足を絡ませて背中に乗っかり、耳元に顔を近づけてくる。
「フゥー……シアン、いまビクッ!ってしたでしょ!ってこんな事してる場合じゃなかった。シアン、また新しい子拾ってきたでしょ」
耳が早いな。
理子の背に乗せたまま、自室に着替えに向かう。
部屋に入り。ベッドに理子を下ろし、躊躇なく着替え始める。
理子に裸を見られるのは初めてなわけじゃないし、てか、デートした日にホテルまで行ってやってしまったから今更恥ずかしがる理由もない。
「いつ見ても良い肉体美だね、シ・ア・ン♡」
再び、理子が裸のままの俺に抱き着く理子。
「久々にイチャイチャターイムだよ!」
確かに、最近は仕事やらでなかなかゆっくりする時間が無かったから丁度いいか。
抱き着いてきた理子を抱きしめ返す。
腕の中にある温もり、人の温かさ。
「暖かいな、理子」