「いつから、気付いていたのですか?」
アイマスクを取らずに、俺は枯れた声で問いかけた。
「っ・・・!やっぱり、晴香の話は本当なのかい?」
どこか、半信半疑のような声色で賢は言った。
「加藤晴香さんが何か残していたのですね。あなたの想像のとうり・・・ですよ。あなたは不思議に思わなかったのですか・・・?」
「いや、僕はせいぜい君がほかの子からして早熟ってことくらいしか、知らなかったよ」
そういつつ、床を少し軋ませながらこちらに寄ってくる音がする。
「ここすわるよっ、と」
ベッドがきしむ音がする、どうやら・・・隣にいるらしい。
「それで・・・責めないんですか?」
そう俺はあきらめをにじませつついった。
俺は責められるだろう、それだけのことを俺はしてしまったんだ。
「責めるって何を?」
そう、賢は柔らかな声で俺に伝えた。
この男はっ・・・!俺は胸中の怒りを抑えきれずに叫ぶ。
「俺のせいで、あんたの妻は殺されたんだぞ!!それに・・・あんたの息子を殺したのだって俺だ!”佐藤晴彦”という意識なんだ!!あんたの息子はもういない!ここにいるのは自然の摂理から外れた異物だ!そしてあんたの息子はその異物に、生まれる権利も、存在すら奪われた!あなたには・・・俺を責める権利があるんですよ!」
「僕には、そんな権利なんていらないよ」
こいつは馬鹿かっ!!
言葉に詰まる・・・だが、言わなければならないこの言葉を
「あんたは・・・あんたら夫婦は・・・なんで責めないんですか!なんで・・・こんな精神異常者のたわごとを信じるんですか!!」
そうだ・・・前世の記憶がある?・・・転生した?それを立証できるのか・・・?
声はNOだ。
前世なんてものは立証できない限り、俺の妄想にすぎないのだ。
つまり、俺はイカレタ狂人ということになるだろう。
だが、おれがそんなたわごとを言ったばかりにあの人は死んだ。
死んでしまった・・・
全ては俺がいたからだ・・・
俺が普通の子供であったなら、こんな心配を親はすることがなかっただろう・・・
だから・・・
だからっ・・・!!
「・・・もぉ・・・責めてくださいよ・・・俺に罰を与えてくださいよ・・・なんで、おれを受け入れられるんですか?なんで、おれはここにいちゃい「いちゃいけないなんて言うな!」
あぁ・・・俺の心がおびえて、震えているのがわかる・・・だが・・・
「あなたも恨んだんじゃないんですか?晴香さんを引いたやつを!
でも、俺がこんなたわごと言わなければ・・・
俺が、普通の子供だったのなら・・・
あんな事故に巻き込まれることすらなかったんですよ!!
このまま三人で普通に・・・平穏に暮らしていけたんですよ!!」
「それはifの話でしょ。それを言うなら、あの場に君がいなくても、晴香は死んだかもしれないっていうことになるよ」
なんで・・・俺なんかに優しくするんだ・・・
「誰が何と言おうが君は、僕と晴香の息子だ。それを改める気はない。
本人たる君が認めなくても・・・ね。そして・・・親は子供を守るものだ。ほかの何に変えてもね。」
そういって話を一度切った。
「だから、他の誰が何と言おうと君を助ける。“佐藤晴彦”が誰とか、“加藤陽”どうとか僕には関係ないんだ」
俺の心が揺らぐ、大きく、強く
「だって、僕の息子は“ハル”君だけなんだ。そう晴香も言ってなかったかい?」
「なんで・・・そのことを知ってるんですか?」
「だって僕の奥さんだよ。きっと悩んでいるキミにそういったはずさ」
「俺はまた、あなたに迷惑をかけるかもしれませんよ?」
「そんなことどうってことないよ」
彼は、まるで明日の天気をきくように・・・何でもないことの様に言った。
「俺は可愛げなんてありませんし、ただの子供みたいにはなりませんよ?」
「いいことじゃないか、これからは君に対して僕の講義を聞かせてあげられるよ」
彼は、目の前に好物が出てきた子供のような声で・・・答えた。
「俺はっ・・・普通じゃないっ!それに・・・晴香さんみたいにあなたを殺してしまうかもしれないんですよっ!」
「親が子供より先に死ぬのは自然の道理だ。それにね・・・“普通じゃないこと”はいけないことかい?」
彼は、それが当然の事実の様に受け入れた口調で・・・朗々と告げた。
「死ぬのが怖くないんですかっ!」
「怖くないわけじゃない・・・でもね、僕が死ぬことより君が死ぬことの方が怖いよ」
彼は、まるで、俺の親の様に・・・
・・・もう限界だ・・・そんなことを言われたら、また、あなたを、あなた達を信じたくなっちゃうじゃないか。
信じたらあなたに悪いことが降りかかるかもしれないのに・・・あなたを思ってしまうじゃないか。
この・・・人殺しの、俺が、罪とか、前世とか、因果とか、そんなものをまとめて吹っ飛ばして・・・あなたの子供でいたいと思ってしまうじゃないか・・・
「俺の罪を・・・許しますか?」
「神様が許さないって言っても、僕が赦すよ」
彼はそう俺に告げた。まるで春の木漏れ日のように穏やかな声で・・・
「俺はあなたことを信じてもいいんですか?」
「うん」
その答えに俺の体に力が戻る・・・向き合え。そう体が言っている気がした
「あなたの子供だとうぬぼれていいんですか?」
「うぬぼれなんかじゃなくて、純然とした事実だよ」
その事実に、俺の眼に光が戻る・・・見開け。
さぁ・・・準備は整った。
俺は・・・彼に、俺の、”佐藤晴彦”でも”加藤陽”でもなく、俺の意志を、思いを告げた・・・
「俺は・・・
俺はアイマスクに手をかけて、今まで俺を守っていたマスクを脱ぎ捨てる。
まぶしい・・・どうやら部屋の入り口から日が差し込んでいるようだ。
この一カ月ぶりのまぶしさが懐かしい
そして、おれは、賢さんの眼を見つめ
また、あなたのことを・・・“お父さん”って呼んでもいいですか?」
「もちろんだよ、おはよう・・・ハル
さぁ・・・朝ごはんにしよう」
そういってベッドから立ち上がった父の手を借りて
俺は再び光の中に踏み出していった。
ということでお届けしました第九話・・・いかがだったでしょうか?
これでハルは立ち直ることができました。
明日の更新ではついに・・・ついに、原作キャラを出すことができます・・・長らくおまたせしました。
それはそうと今日?正確には昨日になるのですが・・・劇場版まどマギ、見てきました~
なんだか、見滝原市が、どこか不気味で・・・でも先鋭的な感じでまるでゴッサムみたいな錯覚を受けました。
ですが、まどマギの五人集は何であんなに表情に色気があるのでしょうか・・・?
あれは・・・中学生がする表情ではない・・・そんな印象を受けました。
あとあの話を2時間にまとめた、虚淵玄の手腕はさすがですね・・・
そんな話で今日は終わります。
おやすみなさい