恐れを知るものは、無限の空を目指す   作:めんつゆ

10 / 70
 第9話  「ハル、赦される」

「いつから、気付いていたのですか?」

 

 アイマスクを取らずに、俺は枯れた声で問いかけた。

 

「っ・・・!やっぱり、晴香の話は本当なのかい?」

 

 どこか、半信半疑のような声色で賢は言った。

 

 

「加藤晴香さんが何か残していたのですね。あなたの想像のとうり・・・ですよ。あなたは不思議に思わなかったのですか・・・?」

「いや、僕はせいぜい君がほかの子からして早熟ってことくらいしか、知らなかったよ」

 

 そういつつ、床を少し軋ませながらこちらに寄ってくる音がする。

 

「ここすわるよっ、と」

 

 ベッドがきしむ音がする、どうやら・・・隣にいるらしい。

 

「それで・・・責めないんですか?」

 

 そう俺はあきらめをにじませつついった。

俺は責められるだろう、それだけのことを俺はしてしまったんだ。

 

「責めるって何を?」

 

 そう、賢は柔らかな声で俺に伝えた。

 

 この男はっ・・・!俺は胸中の怒りを抑えきれずに叫ぶ。

 

「俺のせいで、あんたの妻は殺されたんだぞ!!それに・・・あんたの息子を殺したのだって俺だ!”佐藤晴彦”という意識なんだ!!あんたの息子はもういない!ここにいるのは自然の摂理から外れた異物だ!そしてあんたの息子はその異物に、生まれる権利も、存在すら奪われた!あなたには・・・俺を責める権利があるんですよ!」

 

「僕には、そんな権利なんていらないよ」

 

こいつは馬鹿かっ!!

言葉に詰まる・・・だが、言わなければならないこの言葉を

 

「あんたは・・・あんたら夫婦は・・・なんで責めないんですか!なんで・・・こんな精神異常者のたわごとを信じるんですか!!」

 

そうだ・・・前世の記憶がある?・・・転生した?それを立証できるのか・・・?

声はNOだ。

前世なんてものは立証できない限り、俺の妄想にすぎないのだ。

つまり、俺はイカレタ狂人ということになるだろう。

だが、おれがそんなたわごとを言ったばかりにあの人は死んだ。

 

死んでしまった・・・

 

全ては俺がいたからだ・・・

 

俺が普通の子供であったなら、こんな心配を親はすることがなかっただろう・・・

 

だから・・・

 

だからっ・・・!!

 

「・・・もぉ・・・責めてくださいよ・・・俺に罰を与えてくださいよ・・・なんで、おれを受け入れられるんですか?なんで、おれはここにいちゃい「いちゃいけないなんて言うな!」

 

あぁ・・・俺の心がおびえて、震えているのがわかる・・・だが・・・

 

「あなたも恨んだんじゃないんですか?晴香さんを引いたやつを!

でも、俺がこんなたわごと言わなければ・・・

俺が、普通の子供だったのなら・・・

あんな事故に巻き込まれることすらなかったんですよ!!

 

このまま三人で普通に・・・平穏に暮らしていけたんですよ!!」

 

「それはifの話でしょ。それを言うなら、あの場に君がいなくても、晴香は死んだかもしれないっていうことになるよ」

 

なんで・・・俺なんかに優しくするんだ・・・

 

「誰が何と言おうが君は、僕と晴香の息子だ。それを改める気はない。

本人たる君が認めなくても・・・ね。そして・・・親は子供を守るものだ。ほかの何に変えてもね。」

 

そういって話を一度切った。

 

「だから、他の誰が何と言おうと君を助ける。“佐藤晴彦”が誰とか、“加藤陽”どうとか僕には関係ないんだ」

 

俺の心が揺らぐ、大きく、強く

 

「だって、僕の息子は“ハル”君だけなんだ。そう晴香も言ってなかったかい?」

「なんで・・・そのことを知ってるんですか?」

「だって僕の奥さんだよ。きっと悩んでいるキミにそういったはずさ」

 

 

「俺はまた、あなたに迷惑をかけるかもしれませんよ?」

 

「そんなことどうってことないよ」

 

彼は、まるで明日の天気をきくように・・・何でもないことの様に言った。

 

「俺は可愛げなんてありませんし、ただの子供みたいにはなりませんよ?」

 

「いいことじゃないか、これからは君に対して僕の講義を聞かせてあげられるよ」

 

彼は、目の前に好物が出てきた子供のような声で・・・答えた。

 

「俺はっ・・・普通じゃないっ!それに・・・晴香さんみたいにあなたを殺してしまうかもしれないんですよっ!」

 

「親が子供より先に死ぬのは自然の道理だ。それにね・・・“普通じゃないこと”はいけないことかい?」

 

彼は、それが当然の事実の様に受け入れた口調で・・・朗々と告げた。

 

「死ぬのが怖くないんですかっ!」

 

「怖くないわけじゃない・・・でもね、僕が死ぬことより君が死ぬことの方が怖いよ」

 

彼は、まるで、俺の親の様に・・・

 

・・・もう限界だ・・・そんなことを言われたら、また、あなたを、あなた達を信じたくなっちゃうじゃないか。

信じたらあなたに悪いことが降りかかるかもしれないのに・・・あなたを思ってしまうじゃないか。

この・・・人殺しの、俺が、罪とか、前世とか、因果とか、そんなものをまとめて吹っ飛ばして・・・あなたの子供でいたいと思ってしまうじゃないか・・・

 

「俺の罪を・・・許しますか?」

「神様が許さないって言っても、僕が赦すよ」

 

彼はそう俺に告げた。まるで春の木漏れ日のように穏やかな声で・・・

 

「俺はあなたことを信じてもいいんですか?」

 

「うん」

 

その答えに俺の体に力が戻る・・・向き合え。そう体が言っている気がした

 

「あなたの子供だとうぬぼれていいんですか?」

 

「うぬぼれなんかじゃなくて、純然とした事実だよ」

 

その事実に、俺の眼に光が戻る・・・見開け。

 

さぁ・・・準備は整った。

俺は・・・彼に、俺の、”佐藤晴彦”でも”加藤陽”でもなく、俺の意志を、思いを告げた・・・

 

「俺は・・・

 

俺はアイマスクに手をかけて、今まで俺を守っていたマスクを脱ぎ捨てる。

まぶしい・・・どうやら部屋の入り口から日が差し込んでいるようだ。

この一カ月ぶりのまぶしさが懐かしい

そして、おれは、賢さんの眼を見つめ

 

また、あなたのことを・・・“お父さん”って呼んでもいいですか?」

 

「もちろんだよ、おはよう・・・ハル

さぁ・・・朝ごはんにしよう」

 

そういってベッドから立ち上がった父の手を借りて

俺は再び光の中に踏み出していった。

 

 




 ということでお届けしました第九話・・・いかがだったでしょうか?
これでハルは立ち直ることができました。
明日の更新ではついに・・・ついに、原作キャラを出すことができます・・・長らくおまたせしました。

 それはそうと今日?正確には昨日になるのですが・・・劇場版まどマギ、見てきました~
なんだか、見滝原市が、どこか不気味で・・・でも先鋭的な感じでまるでゴッサムみたいな錯覚を受けました。
ですが、まどマギの五人集は何であんなに表情に色気があるのでしょうか・・・?
あれは・・・中学生がする表情ではない・・・そんな印象を受けました。
あとあの話を2時間にまとめた、虚淵玄の手腕はさすがですね・・・

そんな話で今日は終わります。
おやすみなさい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。