・・・あれから大変だった、二人とも恨めしそうな視線で俺を責めるし・・・お、おれだって失敗ぐらいするさ!父さんのとこで余っているごはんもらわなかったら・・・す、すんだことでくよくよ悩むのはイクナイ・・・うん、OK
そんなことを考えていると、先を進んでいた父さんが、足を止め
「ハル、ついたよ!」
「ここが父さんの言っていた、場所かぁ・・・これはすごいな」
今俺は、父さんに連れられて、星を見に来ている。一夏と箒ちゃんは、疲れたのかすでに夢の国に旅立っているので、ここには俺と、父さんしかいない。
なんでも、昔ママと一緒に見に来た思い出の場所らしい・・・
たしかに森が開けた、丘の上にいる感じで・・・ロマンチックだ。これは女性が喜びそうだな・・・何も言わず、満天の星空を眺めていると、唐突に父さんが口を開いた。
「ねぇ・・・ハル、半ば無理やりにつれてきたようなものだけど、今日はどうだった?」
「・・・正直最初は、来たくなかったさ・・・でも、今は来てよかったと思っている」
「それは、箒ちゃんと一夏君のおかげかい?」
「そうかもしれない・・・父さんがキャンプに誘った理由ってあの二人と会わせたかったから?」
「そのとおり!といいたいところだけど、実は渡りが付いていたのは、箒ちゃんだけなんだ。一夏君は完全に予想外だったんだよ。」
そういって父さんは苦笑した。なるほど・・・そういうことだったのか・・・
「じゃあ、雪子さんの差し金?」
「あたり。ハルは知らないだろうけど、雪子さんは晴香の親友でね・・・僕にとってもいい友人だったんだ」
「へー、そうだったんだ。に、しても一夏も、箒ちゃんも、二人ともいい子だな。俺“なんか”とやっていけるぐらい、素直だし」
俺が父の方へ振り向くと父は悲しそうにほほえみをうかべて、俺に説いた。
「ハル・・・なんでいつも君は、自分のことを卑下するんだい?」
「えっ・・・?」
自分のことを卑下しているだって・・・俺が、か・・・?これまでの俺の言動を思い起こすと・・・確かにそんな節があったことに気付いた。しかも俺自身は今日父さんに指摘されるまで、まるで気が付いていなかった。
「わからない・・・それどころか父さんに指摘されるまで気づきもしなかった。
でも、いくら俺が“普通じゃない”からって所詮人間なんだぜ?自分にできることと、できないことの判断ぐらいつくさ。それが卑下しているように見えた原因じゃない?」
「でもね・・・ハル、君は自分を偽っている気がしてならないんだ」
「・・・どういうこと?・・・なんか、変な音がするな?」
俺は遠くから聞こえてきた風切り音を聞き不思議に思いつつも父に対して質問を投げかようとした・・・だが、その“何でもない問いかけ”は俺の口から出ることができなかった。
次の瞬間、父さんが焦ったように目を見開き俺に向かってタックル、
父さんの薄い胸板に押しつぶされたことに文句を言う暇さえなく・・・
耳をつんざくような轟音と、父さんの背中ごしでも感じるほどの強烈な熱波が俺たち親子に叩き付けられた。
一瞬の暗転
目を開けると熱波が過ぎ去ったあと周りの木々に、炎が燃え移っているのが見える。
それだけであたりが平穏とは程遠い状況になってしまったのが、わかる・・・だが、それ以上に俺の心は目の前の光景を現実として認められずに、思考停止を起こしていた。
父サンノ背中二ナニカ、刺サッテイル
それに気を取られて俺がかすかに、緑色に光を纏っていることにも気が付かなかった。
□ □
今日、7月31日は歴史に残る日だろう・・・但し、日本以外ではという言葉が頭に付くが・・・そんなことを考えつつ目の前のモニターに表示された光点をただ祈るような気持ちで、見つめることしかできない私はこの事件の始まりを思い起こしていた。
事の始まりは20分前、まさしく嵐のようなことだった。
今日の政務を終わらせて、公邸で明日のスピーチの練習をしているとき、我らが友好国の筆頭、世界の警察のトップから唐突にホットラインで連絡が入ったのだ。
我が国が現在ハッキングを受けていて、弾道ミサイルが発射されそうな状態にあること。
そして、おそらく・・・目標は日本だということが、沈痛な表情を浮かべたアメリカ合衆国、大統領の口から告げられた。
一瞬、彼の正気を疑ったが、その表情からこれが現実の問題だと直感的に理解した私はホットラインも切らずに、防衛大臣へ回線を開き緊急事態を告げたのち、閣僚を公邸に集め緊急に閣議を開くことを秘書に連絡させた。
その後に、大統領から聞かされた話によれば弾道ミサイルを保有している国のほとんどが、まったく同時のタイミングでハッキングを受けておりアメリカでも必死の抵抗はしているが、そう長くはもたないらしい・・・
「総理!」
大統領の話に割り込んできた秘書が、事が動いたことを教えてくれた。
「イギリス、フランス、スペインからミサイルが発射されました!詳しい目標はわかりませんが・・・「少なくとも東南アジアのいずれかの国、ということか?」
「っ!・・・は、い」
「防衛大臣に迎撃ミサイルの用意を急がせろ!それと、プレジデント・・・米軍の協力を要請します!」
画面の中で金髪の益荒男はこちらをしっかりと見つめ
「任せてください!すでに我が、在日米軍にはスクランブルを発令しています!」
「ありがとうございます・・・
そこで私はいったん話を切って、これが人生最後の会話になるかもしれない彼に一言、残した。
もしものときは、復興への協力をお願いしてもよろしいでしょうか・・・?」
そういうと彼は微笑をたたえつつ
「・・・お断りします、それよりも今とりかかっていることに、ケリがついたら日本でのバカンスに付き合ってはいただきませんか?」
そう言う彼の微笑に、私も笑顔で返して
「もちろんです。最高のOMOTENASIを、約束しますよ・・・では」
そういって、ホットラインを切り首相官邸に集まっていた閣僚を部屋に入れるよう指示を出した・・・そう、ここからが、正念場だ。
しかし、私の決意は防衛大臣から告げられた、その後の報告によって発覚した、“日本が目標である”という情報と“各国から発射されたミサイルは全部で二千発以上になる”という事実の前にもろくも崩れ去ってしまった。
そして現在の状況に至る、というわけだ。今、自衛隊に存在しているミサイル防衛システムの精度は約70%・・・それも1発の訓練用ミサイルに対しての話だ。
2000発以上のミサイルが発射されることなど想定もしていない。
米軍も最善は尽くすだろうだが、おそらく・・・日本は壊滅的な被害を受けるはずだ・・・
幸いなことにも、一発も核弾頭は発射されていないとの報告だがそれでもミサイルは大量の生産設備、建物そして国民の命と財産を灰にするだろう・・・
私以外の閣僚は既に永田町の駅に避難した。果たすべき責務を投げ捨てて・・・自分たちだけ!
腰抜けのクズどもめ!
内心、他の閣僚に対して毒づくがここに残ったところで、私にできることは自衛隊
と米軍の迎撃ミサイルが大都市への直撃だけは回避してくれるように、神に祈りをささげることぐらいだ。
そんな絶望的な表情でモニターを眺めるしかない、私は慌てた様子でドアを開けた秘書の顔でまた現実を直視しなければならないことに苦々しさを覚えた。
「総理!緊急事態です!」
「・・・なんだ?要点だけ簡潔に頼む」
私を呼んだ秘書を恨むような視線で見つめると彼は、今の私とは対極の表情を浮かべ、信じられない事実を告げた。
「太平洋上に出現した未確認機を発見しました!
「それで・・・?」
それだけだったらこの秘書の顔面をブン殴ってやる・・・そう思いつつ先を促す。
その未確認機が、ミサイルの迎撃を行っています!それも異常な速度で、です!」
「なん・・・だと?!」
こんばんわ!いかがだったでしょうか?
ほのぼのシーンな15話がおわって、16話。
ハルに試練が訪れます・・・
”傍観者”から”スーパーヒーロー”に変わるための試練・・・個人的にオリジンでもっとも描きたかったシーンです。
私の印象に残っている言葉に、アラン・ムーアのトップ10の中の一言があります。
俺たちは実は凄い力を持っているんだが、ソファに座ってビール片手に
テレビを見ているだけだ。
スーパーパワーがあったって、やっぱりソファに座ってビール片手にテレビを見てるだけだろう。
馬鹿がコスチュームを着たところで、変な格好のおかしな奴が1人増えるだけだ。
ヒーローってのはスーパーパワーがあるとか、コスチュームを着てるって事じゃない。
自らの意思でもって世界を良くしようと戦う人々の事を言うんだ。
ハルは単なる人間です。以前も描写しましたが、前世を覚えていることが妄想ではない根拠なんてどこにもない・・・賢も両親というフィルター越しに見なかったら黄色い病院に行くことを進めたでしょう。
だけど、自分が普通と違う、ということにハルは悩み続けます。
この悩みは自分が普通でないことを受け入れない限り、続くと個人的に思います。
普通の人間が、スーパーヒーローとして大成をめざす、そのための試練
自分がやる、動き出すことが何よりも重要なことなのだと、僕は思います。
今日はあとがきが長くなりましたが、この辺で失礼します。
では