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俺の耳に、薪が燃えるような音が響く、辺りを見回して木々に燃え移った炎とせき込みたくなるような煙が、俺をこれが、現実だと実感させた。
そして体を起こした俺の前に転がり、荒い呼吸を繰り返す・・・
ボ ロ ボ ロ ノ ト ウ サ ン
トウサンノセナカカラナニカノハヘンガツキササッテイル、セナカニハヤケドガ・・・
・・・オチツケ、心ヲ静メロ
こコで俺が冷静ニ行動デキナければ父さんの命は、無イ・・・
落ち着け、オチツケ、おちつけ・・・
俺の頭の中で“落ち着け”の一言がぐるぐるとまわっている。
俺は自分の頬を思いっきり叩くと、一回長々とした深呼吸、気持ちを入れ替えようとする。
・・・状況を整理しろ
現在この場所にいるのは俺と父さんだけ、ここからキャンプ場まで歩いて30分かかった。
行って、帰ってくる時間的猶予はない・・・かといって俺がけがをしている父さんを一人で運ぶのは不可能だ。
どうする?くそッ!このまま動かなかったら、父さんは出血多量で死ぬだろう・・・だが俺は父さんを・・・考えるなッ!どうすれば、父さんを救える?!それ以外考えるな!
俺はまとまらない思考を必死に動かして父さんを救うための方法を求め続ける・・・
だが、いくら考えても答えは出ずに時間だけがゆっくりとすぎていく・・・
そして・・・俺は、父さんが、死ぬことを実感してしまった。
目から壊れた蛇口のように涙があふれてくる。だが、そんなことは気にも留めずに俺は年甲斐もなく父さんに縋り付いて、両手に爪をくいこませ嗚咽を漏らした。
なぜ、父さんなんだ!
なんで、父さんなんだ!
ママだけじゃなく父さんまで俺から奪うのか!
俺がいるせいなのか・・・?
だからママも父さんも死んでしまうのか?!
その時俺の脳裏に、黄色と緑色の、“あの夢”がフラッシュバックした。
―――チカラ―――
――ちからだ―――
――力がほしい、父さんを救う力―――
―――俺の大切な人を―――
―――護るための力―――
そんな力が、俺にあったとしたなら、父さんもママも守れたはずだ。
今も三人で笑いあうことができたはずだ!
だから・・・その力が今、ほしい!
俺は神なんてものを信じたことはない、いると思ったこともない・・・だが、そんなことはくそくらえだッ!俺は父さんにここにいてほしいんだッ!
その祈りが気が付かないうちに口から飛び出していた。
「神様・・・お願いです、俺から父さんも奪わないでください・・・お願いッ・・・父さんッ死なないでッ!」
だが、この世に都合のいい神なんてものは、存在しない・・・俺の叫びは虚空に消える
―――はずだった・・・
【強力な意思と思考スペクトラムを検知、全ロックを解除します】
「なんだ?!誰かいるのか!?」
そういって辺りを見回して見るが、人の気配はなくただ木から木に炎が燃え移っている光景が俺に現実を突きつける。
このままここにいては父さんだけではなく俺も危険だ、と。
だが、俺にとってはそんな状況判断よりも耳に届いたカンダタの糸のほうがはるかに強く信じられた。だから、俺は・・・
「頼む!怪我人がいるんだ、手を貸してくれ!お願いだ・・・何でもする!」
【了解しました】
やった!これで父さんが助けられる!!
【手を貸すのは不可能ですが】
「えっ…?そんなことより早く出てきてくれ…このままじゃぁ、父さんが!」
【私はここです、加藤陽】
辺りを見回しては見るがやはり、誰もいない・・・心のどこかで(これは幻聴だ。こんな幻聴にかかわるくらいならさっさと、そこの男を見捨てて逃げろ)と言うリアリストの声がする。そんな言葉に従うしかないのか・・・?
そんな風に心が折れそうになったとき、俺のすぐ近くで声が響いた。
【・・・いつなったら気が付くのですか?私はあなたの右手にいます】
その声の言った通りに右手を見ると・・・
いつの間にか俺の右手に緑色の“指輪”がはまっていた。
【加藤陽にかけられていた記憶改ざんのロック解除・・・・終了】
その指輪を目にした瞬間、先ほどの声とともに俺の脳裏に一瞬雷が走ったかのような衝撃を感じた。
◆ ◆
星々が輝く宇宙に俺と彼・・・今まで忘れていた男、ハル・ジョーダンがいるのがわかる
「・・・お断りします」
「理由を・・・聞かせてもらってもいいか?」
―――そうだ、思い出した・・・俺は、ランタンの、いやハル・ジョーダンのあとをついでグリーンランタンになることを・・・断った、んだ。
「理由ですか・・・?それは俺が、恐れているから・・・ですよ」
グリーンランタンに選ばれるには条件がある。
それは“恐れを知らないもの”であること。
当然だ・・・リングで構築できる物の強度や威力は意志の強さで決まる・・・だが構造物を形成するときに高い集中力が必要で・・・痛みを受けたり、恐怖を抱くと集中が乱れ構造物はたちまち、もろくなる。
だからこそ・・・リングを扱うものは“恐れを知らぬもの”でなければならない・・・
この条件に合えばリングが男だろうが、女だろうが、数式だろうが、細菌だろうが・・・それこそ星そのものであっても、意志さえあればグリーンランタンとなることができる。
だが・・・俺は怖い・・・自分の大切な人がこれ以上傷つくかもしれないのが・・・そして、俺が宇宙最高の力を与えられて・・・間違わずに使えるのだろうか?
善悪というのは視点によってまるで異なる・・・俺が、俺に人を裁き、宇宙最高の力を振るう資格はあるのだろうか?
・・・俺にはそんな資格は、無い・・・ママが死んだ時ですら答えを出すのに時間がかかった・・・それどころか、父さんの助けがなかったら自責の念に押しつぶされてしまったかもしれない、この俺が強い意志を必要とするグリーンランタンになって失敗してしまったら・・・そんな仮定の話にでも恐怖を抱いてしまう弱い男なんだ。
そんな俺の内心を知っていたかのように彼は少し悲しげに眼を細め
「わかった・・・だが頼みを聞いてもらってもいいか?」
「あなたの跡を継ぐこと以外で俺にできることなら・・・協力します」
「実はこの空間に人が来れるのは一度きりなんだ・・・」
「えっ!じゃあこの後どうするんですか?!」
「だから君にこのリングを一度受け取ってもらって外に出てもらう・・・そしてそこからリングが新しい候補者を探す、っていう感じだ」
なるほど、つまり俺はこの状況を羽に種をくっつけて飛ぶ鳥だと仮定してそのうち鳥のほう、ってことか。
「じゃあ、俺がこの空間からリングを持ち出してお役御免!ですか?」
「いや新しい候補者が発見されるまでは君に預かってもらいたいんだ」
「まぁ・・・それぐらいなら」
ランタンが使わない限りリングはただのちょっと変な緑色の指輪だ。そう思って了承の意志を告げる俺。
そんな俺の顔を見てニヤリとしてやったりと、いう風な笑みを一瞬浮かべたランタンが、俺に向けて腕を突き出す。
「これがパワーリングだ。指につければこの空間から出られる・・・それと、この空間でのことは忘れてもらうぞ」
俺はリングを受け取りつつ彼に問う。
「忘れてもらうってどういうことですか?」
「リングをはめた瞬間、ランタンに関する記憶にロックがかかるように仕掛けをした。因みに・・・解除するには「もういいでしょ・・・お世話になりました!いいランタンが見つかるといいですね!」
そういいつつ彼の話を最後まで聞かずに俺はリングを右手の中指に通した。
その瞬間意識が安らいで、まるで眠りに落ちるような錯覚に襲われる。
最後にもう一度、彼の顔を見ようとして俺は彼の最後の言葉を聞いてしまった。
「いや・・・もう見つかったさ・・・それより解除の方法は“強い意志で力を求めること”だ!あと、勧誘はまだしているからな!気が変わったら言ってくれよ!・・・」
その時の俺は襲い掛かる睡魔に負けその言葉の意味を問いかける気も失せてしまっていた。
だが、今のおれは違う・・・最後に彼は
「・・・後は頼んだぞ、後輩」
そう嬉しそうに一言残し空間と一緒に緑の光に包まれ・・・光に溶けるように消えた。
◆ ◆
思い出した・・・じゃあ、この手にあるのは本物の・・・
「おい・・・リング、父さんを救えるか?」
【イエス・・・但し、あなたの意志次第ですが】
この無機質な声が俺に父さんを救うための意志を奮い立たせた。
集中するために目をつむる
イメージしろ、父さんの体には重度の火傷、そして何かの破片が刺さっている・・・破片を抜いたらさらに出血がひどくなって、父さんの命が危なくなるだろう・・・じゃあ・・・包帯だ、ただこの包帯は傷をいやす効果がある・・・そういうものだと思え、思い、願い・・・信じろ!
・・・いけるっ!・・・
「今ッ!」
自分を、リングを信じて目を開く・・・
父さんの体に緑色の包帯が巻かれ、明らかに血色がよくなり呼吸も穏やかになっているのを見た瞬間、
「やったぁあああああッ!!」
俺の口から歓声が飛び出していた。
さていかがだったでしょうか?おそスト第17話・・・
あまり、感想で盛り上がると先の展開が言いたくなってしまうので今回はこれだけで失礼します・・・ではおやすみなさい