恐れを知るものは、無限の空を目指す   作:めんつゆ

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 第20話 「リング、名前を付けられる」

         ◆          ◆

 

 あの後、俺は父さんを残し丘からキャンプ場に戻った。

雪子さんは心配してずっと起きていてくれていたみたいで、帰ってきた俺をあたたく迎えてくれた。

 

そして、俺は・・・父さんがこの世から去ったことをつげた。

 

それからは、嵐のようだった。死人がでた上、昨日のことが総理大臣の口から公表されたからだ。

当然、キャンプは日程を繰り上げて中止、全員が親元に戻される運びとなった。

だが、俺にはもう家で迎えてくれるママも、話を聞いてくれる父さんも、いない。

以前父さんに聞いた話だったが、俺に親戚はいないらしい・・・つまり、俺の保護者が誰もいない、ということになってしまった。

 

俺は児童養護施設に入れられることとなった。

幸いにも、税金を払えば家も、遺産も全額受け取れるとの話だ。

そして、あれから49日・・・俺はここに立っている。

 

「今日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました」

「わざわざ、なんていうとこはないのよ?それよりも・・・あの話、受け入れてはくれないの?」

 

 養護施設に入ってすぐに二人の人から養子縁組の誘いがあった、俺の目の前にいる雪子さん・・・そして、もう一人なぜか一夏のお姉さんがそんな話を持ってきた。

まあさすがに、まだ学生だったからお話だけだったけれど・・・・なんでなんだろう?

 

「・・・すみません、やっぱり俺は、俺が両親って呼べるのは二人だけなんです。

だから・・・」

 

 だから、このままあなたのもとで、“子供”のままで、いるわけにはいかないんです。

父さんとの約束のためにも・・・それに、

俺は約束を果たすために、やるべきことや、知るべきことが山ほどある・・・時間を無駄になんてできない。

 

「そう・・・わかったわ。でも、ちょくちょく会いに行くからね」

「ああ、そうだ僕が施設にいる間、家の管理をお願いしてもいいですか?ほおっておくと、あれちゃうと思うので・・・」

「わかったわ。そんなことなら雪子さんに任せなさい!」

「ありがとうございます」

「じゃあ、そろそろ戻りましょう?おばさんおなかがすいちゃったわ」

「いえ、まだ少ししたいことがあるので・・・施設には自分で帰ります」

「わかったわ・・・じゃあ、また、ね・・・」

 

 そういって霊園の外に向かって歩き出す雪子さん・・・それの背中を見送っていると、ふと、急に振り返って

 

「あの話、いつまでも待っているからね!!」

 

と大きく澄んだ声で一括

ママの親友っていうだけあるな、やっぱりいい人だ・・・

 

「ありがとうございます!また、今度!」

 

 俺もそう大声で返した。守る気もない心を隠して・・・そうして彼女は去って行った。

その後ろ姿が完全に見えなくなったのを確認して、(二人)に背中を向けたまま、相棒を呼ぶ。

 

「なぁリング・・・ずいぶんと時間かけちまったな・・・悪い」

【問題ありません、それよりも本当によかったのですか?】

 

 右手を顔の前に持ってきて小声で聞く。

 

「何のことだ?」

【彼女の話です・・・受けてもよかったのでは?】

「前にも言っただろう?俺は自分がグリーン・ランタンにふさわしいだなんて思ってない・・・でもな、今は違う。俺がやるんだ!だから・・・」

【だから?】

「自分がこの任にふさわしい力を得るために、努力しなきゃならない」

【なるほど・・・そのために自分の平穏な時間を削る、と・・・?

あなたは前任者とはまるで違うようです】

「そんなことよりも、“これから”の話をしよう・・・聞きたいことがある」

【我々の敵について、ですね?】

 

 さすがはリングだ・・・精神リンクでつながっているとはいえ、俺の知りたい情報を的確に言い当ててくる。

そのとおり、おれはいままで“敵”にまるで知らない・・・大学の時は話さえ聞かなかったし、森ではそれどころではなかった・・・だが俺の夢が現実だったのなら、“グリーン・ランタン”と戦っていたあの“黄色の光を使う男”は何者なのだろう?

・・・間違いなく、敵だろう。それもとても強い、と頭につくタイプの。

 

【ハル、あなたは前世でハル・ジョーダンの戦いを知っているのでしょう?】

「ああ・・・でも、大分記憶があいまいになっちまってて、覚えてるのはほとんどないぞ?」

【ではそのあたりから情報を整理していきましょう?】

「わかった、じゃあ質問していってくれ。わからなかったら捕捉、頼む」

 

【はい、ではグリーン・ランタンはどれくらいいるでしょう?】

 

 たしか宇宙を3600の地区に分けたっていう話だったから・・・

 

「3600人!【違います。一つのセクターに正隊員、その予備で計二人いるので約7200人・・・さらにセクターに縛られない、自由行動権をもつ名誉ランタンも含めるとそれ以上に増えます】

・・・」

 

【では、地球にいるスーパーヒーローを知っているだけあげてください】

「DCだけじゃなくって、マーベルのスーパーヒーローもか?」

【DC?マーベル?それは一体なんのことですか?】

「俺の世界にあったヒーローコミックを出版している会社のことだ。マーベルはこっちの世界にもあるみたいだぞ」

【・・・私が来た平行世界群のものだけで結構です】

 

 フフフフ・・・これなら、楽勝だ!なんてったって、俺はアメコミを集めてたんだからな!その主役のスーパーヒーローの名前くらい山ほどあげられるさ!

 

「まずは、俺と同じ“恐れを知らぬ者”グリーンランタン。そして、“超人”スーパーマン、“闇の騎士”バットマンに“アマゾンの女王”ワンダー・ウーマン、“地上最速の男”ザ・フラッシュ、“最後の火星人”マーシャン・マンハンターあとは・・・

【あとは?】

・・・あとは?・・・あれ、なんでこれしか出てこないんだ?もっとたくさんいろんなヒーローがいるはずなのに?」

【もういいです・・・どうやら、あなたの前世の記憶とやらも劣化しているようですね・・・】

「そうみたい、だな・・・」

 

 たしかに、もう5年も前のことでさらに最近はほとんど思い出しもしなかったから・・・しょうがないと言っちゃしょうがないんだが、それでもちょっとショックだな・・・

 

【実は、わたしもあなたと同じように記憶データの欠損がみられるのです】

「なんだって!・・・大丈夫か?!」

 

 パワーリングの力は戦闘力だけじゃない・・・むしろ、俺みたいなパンピーにとっては戦闘能力以外のリングの機能が必要な場面が必然的に多くなるだろう。

 思い出せ・・・リングの機能は?・・・まず戦闘能力としてソリッドライトでありとあらゆるものを創りだせること、前に使った光速で飛行できる飛行能力、わかっているありとあらゆる言語の翻訳、ワームホールの形成・・・宇宙創世からの生きている不死の種族、ガーディアンズの情報・・・これがないのが一番痛い・・・これがないと俺は戦う上で一番重要な、情報をうばわれることになる・・・

 

だが、帰ってきたのは自分からしたら予想外な返答で思わず肩透かしになってしまった。

 

【いえ、基本機能には、問題ありませんが・・・先代の最後にあなたのために戦闘データや人格データなどのコピーを取ったのですが・・・それが、この世界への転移時に変質してしまって・・・】

「なんだ、問題ないじゃ・・・【問題あります。これからあなたが戦うことになる“パララックス”に関しての情報は、私の中にあるデータベースに存在しないのです】

・・・だから、実際に戦ったハルさんの記憶をコピーしたのか・・・」

【はい。奴に関して残っている情報は、最高のグリーンランタンと呼ばれた男が相打ちになって、ようやく自らのパワーバッテリーに封印できた・・・ですが、そのパワーバッテリーの所在がつかめないのです】

「つまり、俺たちが奴と戦うためにはそのパワーバッテリーを見つけることから始めなきゃいけないのか・・・」

【はい・・・ですが、これにはタイムリミットがあります。バッテリー内部のパワーがなくなる前にあれを見つけることができなければ・・・】

「ハルさんが弱らせて封印してくれたパラックスが回復する上に、被害が多く出る場所で戦わなきゃならない、っていうことか・・・」

【その通りです・・・ですが、今のあなたでは弱っている奴ですら・・・戦うことさえできずに無残に殺されてしまうでしょう】

「んなこと・・・いわれるまでもなくわかってるよ・・・俺は、俺たちはもっと強くならなきゃならない」

【結構・・・それと・・・】

 

ん?たしか奴を封印するのに使ったバッテリーはハルさんの使っていったものだっていったよな・・・じゃあ俺がバッテリーをチャージするのに使っているものは・・・?

 

「ちょっと、いいか?次の話に行く前に聞きたいことがあるんだ」

【はい。なんでしょう?】

「俺が使っているパワーバッテリーは誰のものなんだ?」

【私の前所有者、ハル・ジョーダンと同じ地球人にして、名誉ランタン“カイル・レイナー”のものです】

 

カイル・レイナー、か・・・ダメだ。俺の記憶には彼のことが残っていない・・・

ほかにも、頼れそうな人っていなかったのかな?

この世界にいるようだったら接触して・・・いや、リングが一つしかない以上、彼を危険にさらすわけにはいけないな。

 

 にしても・・・“パララックス”ね・・・

今わかっていることはランタン(ハルさん)が相打ちになってでも、対処をするしかできないぐらい強いっていうこと、そして俺たち(グリーンランタン)と同じソリッドライトを使うこと・・・それも、恐怖をつかさどる黄色のソリッドライトを・・・あれ?俺、なんでこんなこと知っているんだ?

ソリッドライトは、ただのリングの力のはず、だろう・・・?

何か頭の端っこのところに引っかかってるんだが・・・だめだ!やっぱり、思い出せない。

思い出せないものはしょうがない、か

 

【それ以外にも変質したデータが私のAIにも影響を与えているようです】

「なるほど!だからなんだか、まるで意志があるみたいに話せたのか!」

【私はあなたのサポート行うための装置です・・・それが意志を持つなど・・・「意志を持つのはいけないことなのか?」

【いえ、そういうわけではない思いますが・・・】

「あっていいと思うぜ!だって俺たちは意志の力で戦うんだろう?だっらお前の意志の力も貸してもらえるじゃん!」

 

リングはあきれたような口調で

 

【そんな、非論理的な・・・】

「いや、戦っている時や一人の時に誰かに応援してもらったり、話し相手になってもらうのってけっこう、ありがたいんだぜ?」

【ですが・・・「だ~めっ!俺がいいって言ってんだから素直に受け入れろよ!」

・・・わかりました。あなたがそういうなら・・・】

 

 よし!じゃあ名前、付けてやらないとな・・・リングじゃかわいそうだし・・・

うーん、何かこいつに縁があるものでよさそうなものってないかな?・・・ひらめいた!

 

「なぁ・・・お前の名前を考えたんだ」

【はい?・・・名前ですか?】

「ああ、いつまでも“リング”じゃあ味気ないし、何よりも俺が嫌だ!」

【そうですか・・・それで?なんと名乗ればいいのですか?】

「今度はやけに素直だな?」

【あなたに抵抗するだけ無駄だと知っただけです】

 

 なんだ、てっきりさんざん拒否られて説得するのに時間がかかると思っていたぜ・・・

 

「じゃあ、発表するな!」

【はい、どーぞ】

 

 そんな風に×××の声はさっきにましてどうでもいいかのように無機質だ・・・

だが、そんなことは関係ないね!こいつの名前は!

 

「先輩や俺の名前のハルっていうのな・・・日本語じゃいろんな読み方があるんだ」

【たしか彼のハルはニックネームでしたよね?あなたのは陽、太陽のことのはずです】

 

 そのとおり!まるで運命みたいだろ!だから・・・

 

「だから、それにかけて、お前のハルは春!季節の春だ!」

【・・・それだと分かりづらくはありませんか?】

「いや、日本語の春じゃなくて英語で春、つまりspringその頭文字に文字を伸ばして・・・

【伸ばして?・・・】

お前の名前は“スプー”だ!」

 

 内心、会心の出来!と自画自賛をしていると指から

 

【ずいぶんとあほっぽい名前をありがとうございます・・・あなたはネーミングセンスゼロですね】

 

 ぐぬぬ・・・会心の出来だと思ったのに・・・

くそっ!意地でも定着するまで言い続けてやる!

 

【それより、これからどう行動しますか?】

「お前の知ってる敵の情報って名前だけか!?」

【だから、言ったでしょう?記憶データが変質した、と】

 

 ・・・自信満々に聞こえるがぶっちゃけると情報はゼロってことじゃねーか!

まあスプーにあたってもしょうがない・・・父さんも言っていただろう?

こういう時は、まずは行動だ!それが、世界を動かすって!

なら!

 

「・・・きめた!俺たちはアメリカに向かうぞ!」

 

 




 いかがだったでしょうか?おそスト第20話・・・

今回はスーパーヒーローとしてタイツを被ることを決意したハルへの情報説明回ですね・・・

そして、彼はグリーンランタンとしてはおそらく初めて、自分のリングにニックネームを付けました・・・この選択はいずれ、来るべき敵との戦いの中でどんな結果を生み出すのでしょう?

 今日はこの辺で・・・その前に、UA6425件ありがとうございます!これからもがんばります!!

ではおやすみなさい
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