ではお楽しみください
あの後、すぐに食事のために下に降りたが・・・
スプーからあの話を聞いた俺は夕食の間、ずっと悩んでいた。
自分に割り当てられた部屋にも出ってきてからも、ずっと
考えることは一つ
これからのこと、だ。
情報にあった“セントラルシティ”と思われる都市に向かうことは決定している
問題はそれからの話だ。
ターシャの家に厄介になってから3ケ月、・・・すでに当初の予定だったパソコンを買う資金と部屋を借りるための1カ月分の家賃は集まっている。
パソコンさえあれば、スプーの能力を借りて在宅プログラマーとして働ける。
簡単だ。新しいソフトを開発してそれをIT企業に売りつければいい・・・すぐに専属のオファーが来ることだろう。
資金集めさえできれば、あとは訓練に専念できる・・・だが、そうするとこのターシャの家で居候を続けるわけにはいけなくなってくるのだ。
俺の正体が露見するのを避けるために・・・
本来なら、正体が露見するのを避けるためになるべく
本来は、それでよかったのだが・・・ターシャと関わることになって予定が狂った。
「なあ、スプー・・・あの子、いやターシャは・・・」
【おそらく、あなたに依存しています】
「やっぱり、か・・・」
そう、ターシャが俺に恋愛感情を抱いてしまったのだ。
ターシャはかわいい、まだ15歳と若いが・・・将来は相当な美人となるとことだろう・・・
だが、そのせいで彼女は襲われた。
まだ15歳だ・・・その恐怖は言葉にいいあらわせないほどのものだったろう
そんな状況下で、彼女は俺に助けられた。
恋愛感情のようなものを抱いてしまっても仕方がないだろう
だが、今の俺は“本当の俺”じゃない・・・
そして、俺は・・・そんなことにかまけている余裕も、無い
「なあ、スプー・・・どういったらあの子を傷つけずに別れることができるかな?」
【これは私の私見になりますが・・・傷つけない、という前提状態から無理があるのでは?】
「っ!・・・だが!」
【人は誰でも傷つきながら成長していきます。いい加減彼女も夢から覚めるときでしょう】
そのとおり、だけど・・・
【・・・なにを悩んでいるのですか?】
俺にはスプーの無機質な声がどこか、呆れたように聞こえた。
【あなたはいつも向こう見ずですし、計画を立てても穴だらけ・・・なによりネーミングセンスが最低です】
「そんなに、けなさなくともいいじゃん・・・」
膝を抱えてむくれる俺に、スプーはそのまま続けて
【ですが、こんな時こそ数少ないあなたの長所が生かされるのではないのですか?】
「それってなんだ?」
【・・・あなたのどんなことにも真剣に取り組もうとする“真摯さ”です】
【あなたのお父様もおっしゃっていたでしょう・・・“動かなければ何も始まらない”と】
・・・そうだ、そうだったよな、俺は頭がいいわけでも、意志が強いわけでもない・・・
父さんやスプーが言ったように“真摯”だとは自分じゃわからない。
だけど、だからこそ、ターシャにこの話をするべきなんだ。
俺にできることはあの子の話を真剣に聞いてあげることしかできない
でも、このまま悩んでいたって、何も始まらないんだ!
「スプー・・・あとで、反省会に付き合ってくれるか?」
俺は立ち上がりつつ
【もちろんです、あとでたくさんダメだししてあげましょう】
「サンキュ!じゃあ一丁行きますか!」
そういって俺は彼女の部屋へと向かった。
◆ ◆
「すみません・・・ここにバリー・アレンという警察官はいらっしゃいますか?」
俺は、そう受付の女性に尋ねた。
肥満体の体を揺らして怪訝そうに、顔をしかめ俺の金髪をジロジロと眺めつつ
「そんな人はいませんよ・・・それよりあなたは?」
「兄のショーン・アレンです。ここにいる、聞いていたのですが・・・」
そう言いつつ運転免許を提示すると名前を確認した彼女はしかめていた表情を和らげつ俺に提案した。
「家出人として捜索しましょうか?」
「いえ、少し自分で探してみます。もし見つからなかったらまた、来ますよ」
「そうですか・・・では、弟さん見つかるといいですね」
「ありがとうございます」
俺は一言、礼を残してセントラルシティ市警のドアを開いた。
市警の外に出てメインストリートを歩く俺に、相棒が話しかける。
【ショーン・アレンの運転免許を自作したのに無駄になりましたね。ハル】
「そういうなよ・・・スプー」
そういいつつ俺は手ごろな、人気のない路地で本来の姿に戻る・・・
“加藤陽”としての姿に
【それよりこれからどうしますか?】
「むろん、あきらめるつもりはない・・・スプー。市役所のデータベースにアクセスして探ってくれ」
【わかりました・・・ばれないように、ですね?】
「その通り。頼むぞ・・・」
【かしこまりました・・・少々お待ちください】
日も暮れてきたしこの間に、バーガーショップにでも・・・
【・・・ヒットしました】
「今日はいつもより早かったな?」
俺は少々の驚きを顔ににじませつつも、スプーに早く結果を話すように催促した。
こいつは、無機質ながらなんだかジトっとしたような口調で
【当たり前です、
そういえば今までスプーって“誰にもばれないように”ハッキングをしてきてたんだっけ・・・それもいくつも同時進行で
今度、磨いてやろうっと
「それよりも、バリーはどこにいるんだ?」
【現在、市内の高校にかよっています】
「・・・そう、か・・・・」
高、校か・・・つまり、彼は・・・
ただの人間、“バリー・アレン”という少年だ。
The・フラッシュ―――“地上最速の男”
本名 バーソロミュー“バリー”・ヘンリー・アレン
“警察の化学班で”働いていた彼はある夜、研究室で捜査を行っている最中に・・・雷に撃たれ、その衝撃で薬品の入った容器が割れさまざまな薬品を浴びてしまう。
しかし、彼はその出来事によりある力を授かる。
意志を持った運動エネルギーが住む世界、“スピードフォース”・・・そこにアクセスする能力をたまたま得たのだ。
この能力により彼はスピードフォースに存在する無尽蔵の運動エネルギーを引き出して高速で移動できるようになった。
これが、簡単な彼のオリジンだ・・・だが、今の彼はまだ警官ですら、ない
つまり必然的に・・・彼がフラッシュであることは“ありえない”
・・・俺の声に含まれた落胆の色を聞き取ったのか、スプーは
【一応・・・あってみますか?】
「いや、いい・・・それよりもスプー、当初のプランに合った通り」
【宇宙で大規模な訓練をする、のですか?】
「ああ」
今までできる範囲で訓練を続けてきたが・・・地球上じゃどうしても派手に力を使うわけにはいかない。
俺たちの頭上を、衛星の目が常に監視しているからだ。
擬態機能と違い・・・ソリッドライトで創ったものは、どうやっても目立つ
だから、俺たちはこの、セントラルシティでフラッシュが見つかっても、見つからなくても・・・宇宙に行くことを決めていた。
まぁ・・・心の持ちようがかなり違くなってしまったが、俺のやることは変わりない
“俺が、パララックスを倒す”
ただ、俺一人きりで、っていう条件が増えたっていうだけだ。
【ですが・・・】
「おいおい、お前が“ですが”なんてずいぶんと珍しいことを言うじゃないか?」
【あなたが心配なんです!・・・“最高”と言われた先代ですら奴を倒すことができなかったのですよ?】
たしかに相手は強大、自分は弱点だらけ、情報もない、味方もいない・・・それどころか敵になるかもしれない―――正直言って、状況は最悪だ・・・
だが、
だからといって・・・
「それが俺のあきらめる理由には、ならないな」
敵が強ければ、自分が強くなる
俺が弱点だらけなら、弱点を無くしていく
情報がないなら、調べる
そして、味方がいないなら・・・味方ができるのを待つ
「やることは、もう決まっているだろう?俺が頑張る、それだけさ」
【・・・わかりました】
リンクでつながっているスプーには言わずともわかっていると思うが・・・
“味方を作る”ではなく、“味方ができるのをまつ”といったのには理由がある。
あるスーパーヒーローのうけうりだが・・・
スーパーヒーローはみんな狂人らしい
犯罪を見かけたら“正常な人間は”警察を呼ぶ
だが
そして、スーパーヒーローには常に責任が問われる
どんな結果を出しても、な・・・
もしかしたら、誰にも称賛されることがないかもしれない
それどころか、石もち追われることになるかもしれない
だが、目の前に助けるべき人がいるなら助けずにはいられない
これが“スーパー・ヒーローになる”ということだと、俺は思う。
過程はどうあれ・・・俺はこの道を選んだ、この選択に後悔もしないし・・・
“もう”だれに何と言われようとひるがえすつもりはない
・・・だが、可能であればこんな選択をするのは俺一人でいい
そう思う
「なんだか・・・まだまだ、ひよっこのはずなのにすっかりスーパーヒーロー気分だな」
【・・・では宇宙ではデータに従って死ぬほどしごいてあげましょう
そんな風に励ましてくれる相棒の声にほほを緩ませ
俺はユニフォームへと姿を変える
「お手柔らかに頼むぜ
【いえ、あなたには地獄を見てもらいます】
そんな風に軽口をたたきつつ、俺たちは星の海へと飛び立った
遥かに
遠く
◆ ◆
そして、10年の月日が流れた
いかがだったでしょうか。オリジン編最終話・・・宇宙へと飛び立つは・・・楽しんでいただけたなら幸いです。
それはそうと、おい!ターシャちゃんやっぱりチョイ役じゃねーか!!と思っていらっしゃる方もおられると思いますが・・・すみません、なんだか、ターシャちゃんの急な恋愛要素入れると・・・どうしても長くなってしまいまして・・・
ですが!なんと! 現在外伝を作成しております!
2部に入る前にこちらの投稿を済ませてから2部、に行こうと思っていますのでもう少しだけお待ちください。
へタレ、ハルに満足いかなかったそこのあなた!かる~く流されて不満だったあなた!このの外伝で補完しますのでお楽しみに!
外伝は当初、4人の人物にスポットを当てて書いていたのですが・・・すでにその初めの一人だけで、上・中・下の三話に分かれてしまいました。
更に!めんつゆがヒロインってなんだっけ?となってしまったので彼女の分も追加して5人分の外伝を作成中です。
・・・どうしてこうなった?
まあ、それは置いておくとして、現在頑張って書き溜めを進めていっているんですが・・・まだ、2部開始までは時間がかかりそうです。申し訳ありません。
ですが、めんつゆのノルマである・・外伝すべてと2部の3話分の書き溜めが終わり次第、外伝の一斉投下を行います!
頑張りますのでもうすこし、お待ちください!
最後にちょっとネタ紹介を・・・
セントラルシティで使った、ハルの偽名の元ネタ
昔の映画に フラッシュの実写があるのですが・・・そこで出てきたお兄さんの名前です。ちなみにそのお兄さんは警官として仕事をしている最中に殉職し、バリーがフラッシュになるきっかけとなります。
キロヴォクってなに?
原作のグリーンランタンでは宇宙が舞台なだけあってさまざまな宇宙人が出てきます。その中で新人のグリーンランタンを訓練する教官が、キロヴォクです。
ネットで画像検索していただければわかると思いますが・・・ごついです。
そしてブーザーというのは彼の星の言葉で、”新兵”を意味する言葉です。まさに教官ですね・・・
それ以外にもグリーンランタンは胸にランタンのシンボルマークがあるのですが、新人はそこの部分が何も書かれておらず、真っ白なので白丸、とも呼ばれますね・・・
それはそうと昨日言うべきでしたが・・・お気に入り登録者100人越えありがとうございます!!これからもがんばります!!
では、おやすみなさい・・・