「―――へえ・・・そんなことがあったのか」
イーリは爛々と目を光らせつつ、こちらを仰ぎ見る。
そんなに食いつきがいいと・・・なんだか続きが話しにくくなっちゃうじゃない
・・・やっぱり、この続きは話さないほうがいいかしら?
なんだか、明日にはイーリによってこの話が基地中に触れ回れている気がするわ・・・
それは、まずいわね。
なんというか、私のイメージ的に・・・
そんな風に、ここで話を打ち切ろうと考えていると、ふいにイーリが口を開いた。
「・・・で、続きはどうなったんだ?」
「ねぇ・・・イーリ、休憩も十分とったしそろそろ仕事のほうに戻りたいんだけど?」
「え~、このもやもやとした気持ちはどうしてくれるんだよ」
「仕事にぶつけたら?」
それだけ言ってまたパソコンに向き合おうとして顔を動かした瞬間、イーリがはいたセリフを聞き・・・私は自分の耳を疑った。
「チッ・・・じゃあ、“これ”どーしよっかなぁ・・・」
―――“これ”?“これ”って何のことかしら?・・・まさかッ!
あわてて、イーリのほうに顔を向きなおすと、その手には携帯よりも小さく・・・USBッよりは大きい、俗にいうICレコーダーというものが収まっていた。
「もしかして・・・録った?」
イーリはいたずらが成功した子供のように、ニヤッと笑みを浮かべて手にしたレコーダーをもてあそびつつ私の想像通りの言葉を口にしてくれた。
「ああ、もちろん!それより・・・これ、どうしようか?」
「・・・最後まで話したら、渡してくれる?」
イーリは私の顔の前に指を突き出して否定するように左右に振り
「それと―――“SAM‘s”のランチ1回で手を打つぜ」
「はあ・・・OK、それで手をうつわ」
「よっしゃ!・・・「その前にレコーダーをまずは渡しなさい!」
呆れ顔で、イーリからレコーダーを奪い取ってそのままデータを消去しつつ・・・
さっきの続きを話し出した。
◆ ◆
・・・あの騒ぎの後、涙を流す私をそっと尻目で心配しつつ彼は怯える私のそばでずっとたって待っていてくれた。恐くて、うれしくて、はずかしくって・・・そんな気持ちがごちゃまぜになっていた私は、涙が止まらず・・・泣き続けた。
そんな様子を察したのか―――彼はしきりに何か声をかけようと、口を開けては・・・何もいい言葉が浮かばなかったのか・・・また閉じる。
そんな様子が、前に友達の家で見た水中で呼吸をするためにパクパクと口を開けている魚のように見えてきて・・・涙を流しつつ思わず含み笑いをしてしまった。
私を助けてくれた彼にそんなことをするのは忍びなく、隠すように努力していたが・・・暴漢を捕まえに来た警官たちが路地に現れた時にそんな努力は、見事に水の泡になってしまったが・・・
だって―――さっきまではキリっとしてて、行動も紳士的だった彼が・・・警察の顔を見た瞬間、さっき自分が顔を青くさせた暴漢みたいにみるみる顔を青くさせて両手を上あげて・・・叫んだ。
「違う!俺は無実だ!」
周りをぐるっと確認する・・・警官の奥に頭からダストボックスに突っ込まれた男が3人、今警官が手錠をはめている私を捕まえていた男・・・そして壁際で彼のジャケットで敗れた服の前を隠している、涙で目の赤くなった私。
そして、その前で手持無沙汰に突っ立っている彼・・・
あっ・・・これじゃあ誤解されちゃう・・・
案の定、警官は両手を挙げた彼に拳銃を向けてお決まりのセリフをわめいた。
そんな様子に彼は、さっきまでの彼とは別人のように・・・顔を真っ赤にして必死に弁明している顔を見たら、もう我慢できず・・・吹き出してしまった。
「ぷっ・・・!あはあっははははははははは!!」
爆発のような私の大笑いを、彼と警官たちがぼけっと見つめている。
それが、またシュールで・・・余計にツボにはまってしまった私は、その様子を見て、冷静になったのか彼に対して話しかけるまでずっと笑いが止まらなかった。
彼の証言と、私が警官にした説明のおかげか・・・幸いにも彼は注意されただけで、おとがめなしとなった。私も、実際は未遂で済んだことと怪我もなかったこともあり住所を伝えて詳しいことはまた後日、という運びとなった。
すべての手続きが済んで、家路につく前に彼がにこやかに近寄ってきて
「怪我が無いようでよかった・・・これからは裏路地なんて使わずにメインストリートで帰ることをお勧めするよ」
・・・だめだわ、また笑いが・・・こみあげてきちゃう
さすがに今度は、彼も気づいたみたいで、ばつが悪いように視線をずらし・・・
「・・・さっきのは忘れてくれないか?」
いつまでも助けてくれた恩人に対してそんな態度をとるのはよくないわよね
そう思い、何とか表情を取り繕いつつも彼に向き合って
「わかりました、
「いえいえ、さっきも言ったけれど今度からは気を付けてね、
ここまでだったら、ただの美談として終わっただろう。か弱い少女がかっこいいヒーローに助けられる、そんな美談だ。
・・・でも、悲劇と喜劇はコインの表と裏だということを聞いたことがある。
だったら、悲劇を回避された物語はどうなるのだろう・・・?
答えは単純、物語は喜劇へと姿を変えるのだ。
劇場のベルが鳴る様に彼のおなかから「ぐう」っと気持ちがよくなるような音が響き・・・笑いをこらえていたこととあそこまで、芝居がかって格好つけていた彼の姿があまりにもおかしくて・・・また、吹き出したしまった。
「ぷっ・・・あはははははは!!」
彼はさっきと同じように顔を真っ赤にして羞恥に震えていたが、そんなことはお構いなしにまた笑いが止まらなくなってしまった。
心の中でしまらないひとだなぁ・・・などと考えつつ、彼に提案する。
「ジェントルメン、お名前をうかがってもよろしいかしら?」
「・・・ヵ、カトウ・ハ、ハ・・・ハロルドです・・」
「ねぇ、Mr.カトー・・・うちでお食事はいかが?」
「・・・ぃ、いただこぅ・・・レディ・・・」
そんな風に顔を真っ赤にしながら、か細い声を絞り出した私のヒーローの手を取って私は家路についた。
はい!こんばんわ~
書き溜め作業がつらくなってきて外伝一斉投下は無理かな~と思っているめんつゆです
いかがだったでしょう?ターシャちゃん・・・いえ、もうここまで来たら気づいている方も多いと思いますので言ってしまいます。
ナターシャ・ファイルスさんのオリジンは?
本編でアメリカに行くという構想を立てた時に、出せるキャラないかな~と探して出てきたのが彼女でした。
カット前のプロットでは、既にIS操縦者としてISの起動実験中に高空で墜落、墜落して意識を失っていたところを・・・アメリカ縦断DCヒーローホームタウンめぐりの旅をしているハルに助けられるっていう話でした。
ちなみに場所は違和感を掻き立てるために”砂漠”をイメージしていたので、ネバダ州のお隣、ユタ州のグレートソルトレーク砂漠っていう感じでイメージしていました。
それで、ナターシャは軍事機密だから帰るに帰れないし・・・ハルは、ランタンとしての力を使うわけにはいかないし・・・ていう感じでヒロインそっちのけでラヴラヴ(死語)サバイバルをする予定でした。
まあ、アメリカ編カットされたんでもう書けませんけどね。
これから、感想の米返しをする予定なんですが・・・そちらのほうでこれから投下する予定の外伝のタイトルだけは後悔しておこうと思います。
ネタバレが気になる方はご注意ください
それはそうと・・・もうすぐUA10000ですよ!一万、ミ リ オ ン
頑張って毎日投稿を続けてきただけあってとてもうれしいです!!
こんなさとい作品を読んでいただきありがとうございます!
完結目指して頑張ります!!
感想、ご指摘、質問等はいつでもお待ちしております。
ではおやすみなさい
追記 12/23
そういえばせっかくわからないようなネタ入れたのにネタ紹介忘れてたw
ということで追記です。
“SAM‘s”
new52版 アクアマン1話で出てきたシーフードレストラン。アクアマンことアーサー・カリーが地上で生活していた時に父親ときた思い出の店
ハロルド
ハルが使った偽名。元ネタは2代目グリーンランタンことハル・ジョーダンの本名ハロルド・ジョーダンから