外で激しい雨が窓をたたく音が聞こえる
私は、夜を前にすでに準備を済ませ現地で待機していた。
今回の目標はとある研究所、一番警戒が緩む・・・深夜、襲撃をかける。
それに備えるべく、仮眠をとるために目をつむる。
外で雨が降る音が聞こえる。あの子の話によれば襲撃の予定時刻の前にはやむらしい
もう相当な昔のことになるが・・・
こんな日は・・・あの時のことを思い起こしてしまう
“私が死んだ、あの日のことを”
◆ ◆
暗い―――廃墟となったビルに私と彼がたたずむ
眼下にすでにこの世にないとも友の亡骸を悔やむように見続け・・・
「・・・この街には、真のヒーローが必要だ」
全身の傷が与える痛みを堪えながら私は、そういった。
「
「―――生き延びて悪に染まった自分を見るか」
「俺は・・・彼のようになれない―――」
「―――なぜなら俺はヒーローではないからだ」
「・・・俺のせいにしろ」
「違う!“君”じゃない!!」
目の前の彼が否定するだが・・・私はそのまま話を続けた。
「
「手を抜くな」
「俺を糾弾し―――」
「―――犬を放て!」
「・・・そうしなければならない」
真実がいつも―――
―――最善とはとは限らない
もっと大事なものも、ある
信じたことが報われる
時にはそれが真実よりも優先される
遠くからたくさんの足音が砂利を踏みしめこちらに迫ってくる、そして犬が私を追い立てる声も・・・
それだけ言い残すと、私は朦朧とした思考のまま“ポッド”にまたがり・・・走り出した。
◆ ◆
どうやら監視の目をまけたようだ
・・・どれくらい走っただろう?今まで何度も駆けまわってきた町のはずなのに・・・まるで違う場所のように感じる。
目がかすんできた・・・だが捕まるわけにいかない
彼らに捕まってしまっては私の決意も、すべての犠牲も無駄になってしまう
しかし、私の腹部の出血はひどく・・・早く屋敷につくことができなければ見つかってしまうだろう・・・
だが、そんな思いもむなしく・・・次の瞬間、私はハンドル操作を誤り壁に激突してしまった。
あたりに金属が固いものにこすりつけられたような嫌な音が響く
当然私はポッドから投げ出されて、地面に強く叩き付けられる。
「ぐっ・・・がぁ!!」
全身を貫く痛みから、思わず声が漏れた。
はやく―――立ち上がって、逃げなければ・・・
そんな気持ちとは裏腹に、まったくと言っていいほど体は動かない・・・
朦朧としていた意識が、さらにひどくなってきている。
もはや限界だ、意識を保つことができない・・・
そんなとき、こえがきこえた。
「・・・ジャーヴィス、誰か倒れているわ」
「いけません、お嬢様!危険です!」
ヒールの音が―――聞こえる。誰かがこっちに駆け寄ってくるのがわかった
「あなた、大丈夫?・・・まあ!ジャーヴィス手を貸して!」
「お嬢様・・・この老体を少しはいたわっていただけませんか?・・・彼は!」
私が意識を落と瞬間、かすむ視線で最後に見たものは
「大丈夫、きっと助かるわ」
澄み渡る青空のような彼女の青い目に宿る自信の光だった。
◆ ◆
「・・・マスター!目を覚ましてください、マスター!」
あの子の声で目が覚めるどうやら時間を確認するともう襲撃の1時間前、どうやら危なく寝過ごすところだったらしい。
こんな時は基地で待機している・・・執事のことを考えてしまう。
まだ若いが、能力的にはとても優れている。完璧といっても過言ではないだろう
だが、彼の後任としては・・・いやこれは私の感傷か。
「マスター、目が覚めましたか?」
そう言いつつあの子は手に持ったマグカップを私に突き出してくる。
「ああ・・・起こしてくれてありがとう、クロエ」
クロエから受け取ったマグカップを傾けまずはコーヒーの香りを楽しむ・・・そのあとぐいっと一気に飲みきる。私好みの飲みやすい少しぬるめのコーヒーなのでやけどの心配もない・・・それを飲みきると、私はマスクをかぶる様に“普段の顔”から“仕事の時の顔”へと変わる。
「クロエ、“ロビン”のスタンバイは整ったか?」
「はい、マスターすでに準備は完了しています。つなぎますか?」
クロエはすでに自分の指定席である多面ディスプレイの前に座って、すでに“バッツ”を使った有線ハッキングで支配したカメラを使って施設を監視している。
―――相変わらずしごとが早いな・・・そんなことを思いながら
「ああ、頼む」
「はい・・・つなげました」
私の目の前に空間投影で一人の男に顔が映し出される。
「やあ、ナイト」
「遅いぞロビン・・・本来ならお前も合流してここでブリーフィングを―――」
「時間に間に合ったんだからいいだろう」
ディスプレイの奥であいつは笑ってそういった。
私は彼の顔をにらみつつ
「あとで話を聞かせてもらうぞ・・・それよりも、ブリーフィングを始めよう」
「はいはい、さすがは
「からかうな・・・クロエ、頼む」
クロエは私の前にロビンの顔とは別にもう一つディスプレイを出現させ、説明を始めた。
「はい、マスター。今回の作戦目標はここ、ドイツ国内の拠点№43です。今回の主戦闘目的はこの施設のデータ回収と破壊となっております」
ディスプレイに表示されていた情報が、施設概要から施設内部の見取り図に切り替わる。
「まずは現在ここ、ポイントAにいる“ナイト”が単体で侵入、施設内のデータ回収と破壊工作をお願いします。ルートはこちらで適宜指示します」
「任せろ」
「“ロビン”はいつもどおり、現在待機しているポイントBで奴らが持っているかもしれないISや戦闘兵器に関する警戒を行ってください」
「了解っと・・・というかまたこれか?」
“ロビン”はおどけたように肩をすくめてクロエに聞く。
「はい、奴らが攻性兵器を持ち出した場合の対処はお願いします」
「了解だ。このプランっていうことは・・・」
「はい、破壊工作後の研究員、逮捕までがあなたの仕事です」
「ハイヨーシルバーってか・・・そんな顔でにらむなよ・・・“ナイト”」
「・・・続けますね。“ナイト”の作業が終了し次第、各所で火災を発生させ・・・研究員を脱出させます」
「そのあとは俺と、近場に待機している
「はい、これでブリーフィングは終了です」
私は後部ハッチに移動し、もはやもう一人の自分ともいうべき鎧を“呼び出す”
口元の空いた黒いマスク
全身を覆う西洋鎧状の装甲アーマー
中には黒いマント
そして、胸には蝙蝠をモチーフとした
「システムチェック・・・いけるかナイト?」
『Yes, sir、コンディションオールグリーン―――いけます
「では、行ってくる」
「お気をつけて・・・マスター」
クロエの控えめな激励を背に、“ダークナイト”を纏った私は、夜の闇に飛び出した。
いかがだったでしょう今回のお話は?
さて、ついにここまで来ました。
彼を登場させるのが長かったですよ~
今回のネタ
ジャーヴィス
近年のマーベル映画人気の火付け役、”アイアンマン”に出てくる執事さんの名前です。執事としてだれかいい名前無いかな~と軽い気持ちで登場させたので、トニーの執事ではなく同名の別人として考えてください。
虚は短めですがこの辺で失礼します。
おやすみなさい