遠くで轟音のように響く歓声・・・出番を待つ私の耳にもそれは届いた。
違う―――私は歓声を受けてこんな場に立っている“べき”人間ではないのだ
―――自分の中でもう一人の自分がそう叫んでいる気がする・・・
・・・センチメンタリズム、だな
情けない・・・いつまでも過去に固執するなど、時間の無駄だ。
今度は“後悔”しないために、
できることを全力でやるしかないことはわかっているはずなのに、な・・・
それでも、私は・・・彼の、彼らのことが忘れられない
始まりは、束から急に呼び出されたことから始まった。
あの夜のことを思いかえす。
◆ ◆
中学生だった私は、“とあること”が突然、告げられた。
それと同時に今まであった援助を断ち切られ・・・“もしもの時”に備えて、前々から援助の一部を貯金していたが・・・私たち二人が生きていくにはあまりにも少なく、一夏を育てるために、私はがむしゃらにお金を稼ぐ羽目になった。
幸いにもそのころから私はかなり大人びて見えていたらしく、ある程度年齢を偽装しても怪しまれることはなかった。
だが・・・
ためていた貯金はその残高をみるみると少なくしていった。
そんな時だ・・・
そんなときに昔からの親友だった束からとある“仕事”を紹介された。
「私が作った、“新発明”のテストパイロットになってよ~?」・・・と
私は、以前から束が“私と同じ”であることを知っていた。
だからこそ・・・あいつとは対等でありたかった。
友達として、
同じ立場でありたかった・・・
だからこそ、あいつには・・・あいつだけには自分の生活が困窮していることを知られたくなかった。
私は断った。
束と対等でいるために
だが、あいつは・・・すべてお見通しだとでも言わんばかりに笑って
「大丈夫!ちーちゃんの口座に“もう”お金振り込んじゃったから!」
と言った。
そんな束に怒りも感じた。
自分の体たらくを情けなく思うこともあった。
だが、結局は・・・
内心、自己嫌悪にまみれつつも
私は―――その話を受けた。
◆ ◆
私がテストを行っていたパワードスーツ“IS”は、技術関係に関してはまるで素人の私が見ても素晴らしいものだった。
白い優美な・・・どこか芸術作品のような形状、装着すれば家より大きな瓦礫であっても持ち上げるほどのパワー、量子転送技術によって様々な物を収納できる利便性その中でも
特に・・・重力を振り切って空を自由自在に飛ぶあの、“全能感”とも言ってもいい感覚は言い様に表せないほど素晴らしいものだった。
自分が今で感じていた・・・“怒り”や“自己嫌悪”を吹き飛ばすほど
テスト項目を次々とクリアしていって・・・最後の一つとなった時のことだった。
ある夜、師匠のお姉さん・・・雪子さんの誘いで一夏をキャンプに送り出し私は珍しく一人でくつろいでいた。
そんなとき、ふいに束から呼び出された。
今から、最後のテストを行うといわれたのだ。
その時は特におかしいとは思わなかった・・・今までのテストも、可能な限り人目を避けるために深夜・・・人が寝静まった頃を見計らって行っていたし、悩みの種である一夏もたまたま、師匠のお姉さん、雪子さんからの誘いでキャンプに行っていたこともあり急な呼び出しではあったが、すぐに家を出ることができた。
しかし、束の
いつも、身にまとってから空に上がったはずの“IS”が無かったのだ。
そのことを束に聞くと・・・あいつは今回のテストは“遠距離操作”のテストだからあらかじめここからは遠く離れた場所に配置してある、と何かコンソールを叩きつつ説明してくれた。
この時なぜ私にはIS”を見せないのか?と問い詰めなかったのか?
そうしておけば・・・あんなことには、いや・・・すべては過ぎ去ったことだ。
もう、後悔したところで遅い・・・遅すぎる。
◆ ◆
私はラボの中でいつもつけていた試作操縦用スーツに着替え、情報投影用バイザーを頭に着け・・・まるでISを模したかのような遠隔操作用デバイスに体を固定した。
バイザーのスイッチを入れる。
そしていつもと同じように“IS”を起動させ、私は星が降るような夏の夜空へと翼を広げ飛び立った。
遠隔操縦のテストと言っていたが・・・普通に動かすのと変わらんな
むしろいつもより、加速がきくような気がする・・・
そんなことより
「束、次はどうするんだ?」
「ちーちゃんちょっと待っててね~“今”手が離せないから・・・今のうちに機体動作の確認として自由に動かしていていいよ」
「わかった」
いつもとは違い、遠隔操縦のために
バイザーの調子も最高だ。いつも通りISを身にまとって空を飛んでいる感覚とまるで変わらない、ハイパーセンサーもタイムラグなしにこちらに情報を流し続けている。
そんな風に夜の遊覧飛行を楽しんでいると・・・束が急に
「ちーちゃん!なんだか日本に向かって弾道ミサイルが発射されたみたいだよ」
・・・こいつは何を言っているんだ?
「束・・・冗談はいい、手が離せられるようになったのなら指示をくれ」
「ちーちゃんってばひっど~い!!もう、束さんってばぷんぷんなのです!でも“本当だから”」
そういって私のバイザー内に映像を投影し、あいつが言った。
「世界中の弾道ミサイルを保有していた国から合計2341発のミサイルが発射されたんだってば!!あっ・・・ちなみに、今ちーちゃんの前にあるのがミサイルの予想進路ね!」
「2341発、だと!?」
あわてて画面を注視し、確認してみる。そこにはミサイルの弾道を示す赤い線で汚された世界地図が・・・その中心は日本だった。
一瞬、思考が停止しかける―――ダメだ!!
頭を振ってそんな気持ちを振り払う!
このままでは日本は大変なことになるだろう―――だが、今・・・私の手には
“IS”がある!!
「束・・・私に何とかできるのか?」
友にそう問いかける
あいつは自信に満ちた表情で笑みを浮かべ一言、
「もちろんだよ!!」
そう返し、さっきの映像とは別の映像を表示した。
「これは、束さんが“こんなこともあろうかと”と作っておいた“試製工作用プラズマブレード”と
「・・・工作用の装備―――大丈夫か?」
「大丈夫だよ!“きちんと”作ったから!でもレーザーのほうはあんまり撃つと冷却が必要になってくるからなるべくブレードでバッサリやってね♪」
そうこうしているうちに近場から発射されたミサイルが上昇をやめ、下降を始めていることをディスプレイが警告し始めた。
「ちーちゃん!いまその子にかけられていたリミッターを全部取り払ったから」
「気楽に言ってくれる・・・」
「じゃあ日本をよろしくね♪」
こんな状況で、不謹慎かもしれないが・・・燃えてきた
「フッ・・・任せろ!!」
そう微笑を湛えながら友に返し、私は機体を加速させた。
いかがだったでしょう外伝三作目は?
それはそうと次の外伝4作目の話になるのですが・・・4作目の予定だった「ああやって私は世界にケンカを売った」は投下を中止します。
どうしても、まだ本編再開してないのにすごく先の展開のネタバレになってしまうと気が付いたからです。
毎度毎度、予定を変更してしまい申し訳ありません。
さて現在書き溜めは外伝5の所まで来ています。これが終わったらやっと本編に戻れますので・・・もう少しだけお待ちください
私も外伝5だけはは上下に分けないように頑張りますので
ではおやすみなさい