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帰る途中で、安いことで有名な牛丼のチェーン店で牛丼を買い家路を急いだ。
この時、私の頭の中は・・・ただ単純に自分が日本を守った、という実感と、あの戦闘中に感じた謎の高揚感に対する疑問でいっぱいだった。
だが、そんな頭の中のことは家の前で座り込む
(たしか・・・キャンプは2泊3日で明日、帰ってくるはずだったが・・・もしかして出先で何かあって戻ってきたのか?)
そんなことを考えながら一夏に近寄る―――近づいてわかった。一夏は座り込んでうつむいたまま・・・肩を震わせていた。
「いち、か?・・・」
恐る恐る、そう一夏に声をかけると、すぐに一夏は顔を上げて・・・私に飛び込んできた。その時、なぜ一夏が肩を震わせていたのかが、わかった。
泣いていたのだ―――肩を震わせ、声を上げずに
「千冬ねぇー!!」
とりあえず、牛丼を地面におろし一夏を安心させるために抱きしめる。そのまま、一夏に何があったのか聞く。普段はあまり泣かない一夏がなくほどのことだ。きっとよっぽどのことがあったのだろう。“何があろうと私が何とかしてやる”そう、思っていた。
一夏の言葉を聞くまでは・・・
「どうした?一夏?」
「千冬ねぇは・・・“ここにいる”よな!“いなくならない”よな!」
“ここにいる”?“いなくならない”?一夏は何を言っているんだ?
それにしてもかなり動揺しているな・・・詳しく話を聞く前にまずは一夏を落ち着かせようそう思い、問い詰めるより先に優しく一夏に声をかける。
「ああ・・・私はここにいるぞ」
その言葉で、少しは落ち着いたのか一夏はポツリ、ポツリと、話を始めてくれた。
初めてキャンプに行ったはいいが、誰も知り合いがいなくて独りぼっちになってしまったこと。そんな時に“はる”という男の子が話しかけてくれてすぐに仲良くなったこと。その子のおかげで前に喧嘩して以来、疎遠になっていた箒ちゃんと仲直りできたこと。
そして、昨日の晩にその子の父親が死んだこと
昨日の晩?―――まさか!!
だめだ・・・一夏には、一夏にだけは―――知られるわけにはいかない
私は最悪の事態を想定して混乱する頭と、折れそうになる膝に力を入れて一夏に買ってきた牛丼を持たせ食べて待っているようにと言い残し、さっきまでいた束のラボ―――いや篠ノ之神社に向かって駆け出した。
◆ ◆
私は急いだ。ついさっきゆったりと歩いてきた道を全力で駆け抜け・・・白い玉砂利の敷かれた境内に駆け込む。―――いた!
全力で走り、急いだ甲斐あってちょうど雪子さんが社務所から出るところに鉢会うことができた。神社に全力でかけてきて、肩で息をしている私を見て、雪子さんは驚いて駆け寄ってきた。
「千冬ちゃん、そんなにあわててどうしたの?」
「いえ・・・まずは・・・一夏の面倒を・・・見ていただき・・・「まずはひといきついてからはなしなさいな」・・・はい」
自分の息を整えてから、改めて口を開き・・・また初めから話を始めた。
「まずは一夏の面倒を見ていただきありがとうございました」
「いいえ、面倒なんて・・・それにこんなことになってしまったし」
―――やはり、雪子さんは何か詳しい事情を知っているのか!?
自分の中にあった焦る気持ちを抑えつつ・・・雪子さんにここに戻ってきた本題について話を切り出した。
「それで・・・キャンプで何があったんですか?」
雪子さんは表情を曇らせ、あなたに話すべきことでないけれど、と前置きを置いてから話してくれた。
「キャンプに参加していた保護者の男性がなくなったの・・・昨日、あんなこともあったわけだし・・・キャンプは途中で中止になったわ」
「失礼ですが・・・その方とお知り合いで・・・?」
「ええ、私の昔からの親友の・・・旦那さんよ」
私はその話題を意図的に避けていた。頭の隅っこのほうでこれ以上は聞くな、と誰かが言っている気がする。
そんな頭に響く警告を無視し、雪子さんに聞いた。
「一夏が・・・怯えていました。そんなに、ひどい遺体だったのですか?・・・」
その質問をした瞬間、いつもは温厚でころころとよく笑っている雪子さんが・・・怒りと悲しみに顔をゆがめて、声を荒げて、目に涙をためて、吠えた。
「ひどいなんてものじゃなかったわ!!賢の・・・彼の体は、おなかに何か“大きな金属片”が刺さっていて・・・背中が、全部やけどのせいでただれて・・・!!」
「もう、結構です・・・すみませんでした・・・こんなことは聞くべきではなかった」
私の目の前で「ごめんね」と言いながら流れる涙を止めようと手のひらで目をこする雪子さん―――どの口で言っているんだ?
お前の責任だろう?
「・・・それで、一夏から聞いたのですが、息子さんがいらっしゃると聞いたのですが・・・」
やっとのことで涙を止めた雪子さんは私の目を見て
「たしかに、彼には息子さんがいるわ・・・それがどうしたの?」
「雪子さんのご友人・・・今回亡くなった人の奥さんがいるんですよね?」
内心、すがるような思いだった。だが雪子さんはその“賢”という男性とはまるで関係のない私に・・・いう必要のないことなのに・・・真実を話してくれた。
「もう、その子には誰も親戚はいないわ・・・さっき言った晴香―――私の親友も去年、交通事故で亡くなってね・・・」
「そう、ですか・・・」
雪子さんは私にそのことを伝えると、その子がまだ現地で一人きりだから・・・と言って神社を後にした。
これで、はっきりした。
火のもとのない、森の中で背中に大きなやけどを負った“賢”という男性―――そして“大きな破片”・・・疑う余地はないだろう。
私はミスをした
しかも、そのミスの結果が・・・一夏と同い年の子供から、永遠に肉親を奪った。
その時自分は何を感じていた・・・?
ISの真の力を見れるという“期待感”?
“昂揚感”?
“愉しさ”?
それをいまさらになって“後悔”しているだと―――ふざけるな!
“普段は抑えている力”をセーブすることさえ忘れ、思いっきり・・・すぐ隣にあった篠ノ之神社の御神木を叩く
あまりの衝撃に本殿よりも大きな御神木が揺れる―――だが、そんなことなどお構いなしに私は・・・本来は自分に向けるべき怒りをぶつけた。
何が“期待”だ!
私がもっとしっかりと現実を認識していたのなら・・・こんなことにはならなかった。
“昂揚感”、“愉しさ”だと!織斑千冬、お前は一体何様のつもりだ!人の命がかかっている状況でそんな“くだらない”ことを考えている余裕はあったのか!?
無かったはずだろう!!
それになぜあの時、各国の軍隊と無駄に戦闘を行った!!
そんなことしなければ・・・白騎士の力で救える命がほかにもあったはずだろう!!
自分を抑えられなかった―――そんなことは言い訳にもならない!!
実際に“ISというモノ”の全力を使ってみて初めて分かった。
あれは・・・たやすく人を殺せる“兵器”だ。
少なくとも、世界中の人は“それ”以外の用途で見ようとしないだろう・・・
そして・・・今の私に“IS”をすてて一夏を育てていくことはできるだろうか?
―――否
私は一人の・・・いやもしかしたらそれ以上の人の命を犠牲にして“IS”というモノを世界に知らしめた―――知らしめてしまった
おそらく・・・これから私は否応なく、ISにかかわって生きていくことになるだろう・・・
だとしたら!完璧に自分を自分の制御下におかなければならない!
もうこんなことが起きないように!
二度と後悔するようなことが起きないように
◆ ◆
・・・あれから、この出来事は私の取っ手の教訓となった。
“人知を超えた”力をふるうものとしての、な・・・
あの後、何とかハルという少年にあって・・・可能ならば謝りたかった。両親の代わりに―――彼を守ってやりたかった。
だが、私は若く・・・彼は自らの意志で違う家庭に引き取られていったと雪子さんから聞かされた。
もう相当前のことになるが・・・今でも鮮明に思い起こせる。
私の無知と増長の結果を・・・今では
ふと、控室のドアが開く。
そちらに顔を向けると・・・この試合の前の準決勝で破ったドイツの代表が現れて
「Ms.織斑・・・あなたの弟が誘拐されたとの情報が入りました」
「ッ!・・・それで・・・?」
私は、もう“あの時の自分”とは違う・・・体はhotに頭はcoolに―――自分が今、すべきことを見極めるだけだ。
いかがだったでしょう。外伝第三弾織斑千冬編は?
実は、外伝2と一糸に見ると伏線がわかるかも・・・
話はさておき、この外伝自分で書いててイマイチだったので、また今度書き直すかもしれません。
では、今日はこの辺で失礼します。
おやすみなさい